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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.613~石原慎太郎逝く~】

 元の都知事にして政治家、作家、ヨット乗り等々、様々な肩書を持つ石原慎太郎が亡くなった。都知事を引退してからももう大分経つが、傍若老人として小言を言いつつもがんばっているのかと思ったが、結構長い間患っていた末の死だとのこと。それにしても毀誉褒貶の激しい人~政治家だったが、どこか憎めない所もあったので、それなりに人気を保っていたのだろう。

 ぼくが彼と関わったのは3度ほど。最初は入局して間もない頃、当時先輩の女性ディレクターの方(今はドイツ在住で、ドイツのラジオ局に移り、長い間努めていた)に頼まれ。彼女の担当する文芸番組で彼のインタビューをした時のこと。「私あの男大嫌いだから、頼むわ...」と言うことでインタビューをした訳だが、当時はまず仕事に慣れていないうえに、相手が相手、彼が代議士になったばかりかは良く覚えていないが、なにせ彼が最も血気盛んだった時代。緊張しながらもどうにか、15分ばかりの番組に仕上げた覚えがある。次はそれから5年ほどしてからの事。今度は政治番組で、聞く項目なども決まっており、ぼく自身もどうやら仕事にも慣れて来ていたので、横柄な態度には辟易としながらも、番組は粛々と作り上げた。そして最後が東京都知事時代。台湾特番でのインタビューで、台湾びいきの彼に是非出演して欲しい...と台湾政府からの要望もあり出演依頼をしたのだが、何せ週に1~2日しか登庁しないと言うお方、こちらは少なくとも半分は出ているものと思っただけに、そのスケジュール調整には大分面食らったが、どうにか収録日も決定。それ以前の森田千葉県知事の時の様に、お付きの10人近くが彼を囲むのか...と思いきや、流石は実力派知事、秘書が一人いるだけで結構気さくに応じてくれた。しかしその表現の問題。台湾贔屓は良いのだが、中国の事を揶揄する言葉で連呼する。これには本当に困ってしまったが、どうにか巧く編集し、事なきを得た。

 彼との想い出はこんな有様だし、政治信条などは全く相いれないものなので、彼の死亡ニュースにもそう感慨も無かったが、ただ作家としては一つだけ、強烈に残っているものがある。芥川賞をもらい学生作家として華々しくデビューした作品、あの映画化もされ、裕次郎の本格デビューとなる記念作「太陽の季節」。その次辺りに書かれたもので、小品と言ってもいい「ファンキー・ジャンプ」という作品。ぼくが唯一認めると言うか...、もしジャズ小説と言った分野があるとしたら、恐らく世界で何本かの指に入る、ジャズ小説の傑品だとぼくは信じている。この小説だけでも、石原慎太郎と言う毀誉褒貶激しい男の、存在価値はあったのだと思うが、ジャズの持つエネルギッシュな蠱惑力、それをこんなに見事に表現したものはまあ他に余り無い。あの当時のファンキージャズの持つパワー、それがこの小説には見事に凝縮されているのだ。彼の死のニュースを聞いて、久々にこの作品を再読したいとは思ったもの。

 そしてもう一つ、彼の死に関して載った記事で、彼が大学生時代(一橋大)に良く通ったのが、我が街國立の老舗「ロージナ茶房」で、良く食べたのはうま辛のドライカレーだったと言う。そしてそこの先代マスター夫婦に可愛がられたと記してあったが、それによればぼくも良く通うあの茶房の先代(好好爺で時々話もしたもの)の奥さんが、ジャズピアニストだったとのこと。そんな情報はついぞ知らなかったことで、慎太郎死亡のニュース無ければ知り得なかった知識、これも何かの縁で、感慨深いものがある。

【今週の番組ゲスト:サックスプレイヤーの橋爪亮督さん】
incomplete voices」より
M1Still
M2July
M3Song Unknown
M44-18(よんいちはち)」

 

 

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