【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.850~人生さまざま~】
人生の晩秋期を迎えると、数年前まで一緒に酒場などで飲み明かしていた大学時代の学友や仕事仲間などが、不意に姿を見せなくなる等ということもしばしばだ。そうなると気になりTELなどで消息を確かめるのだが、残念ながら病を患っている...などで、快い返事はほとんど無しである。年令も年令だけにこうした事態はもう避けられないものだが、中でもショックを受けるのは、やはりアルツハイマーに侵されてしまった友人達で、大学時代の山仲間や高校時代の仲間など、これが結構いるのだ。昔はかなり張り切りタイプの連中だったが、会うと本当に元気も無くなっており当然話も続かず、こちらも困惑するし慰めようも無い...。まあぼく自身も鍵をなくす等の物忘れも多いし、人の名前を失念することもしばしば。友人や後輩たちからも「大丈夫か...、アルツ気味じゃないの...」などと揶揄されることも多いが、まあ言われているうちが華...というもの、余り気にしていない振りを装う。だが実際にそうした友人を見ているだけに、内心はビクビクもの。まあ人生この年令まで生き続けたのだから、もっと恬淡として...とも思うのだが...。
そんな折に漂泊とも言える人生を送る有名人達の存在を雜誌の記事で知り、彼らへの憧憬と言った想いも強くなっている。その一人はナレーター&俳優として知られる森本レオ。そしてもう一人ではなく一組が、俳優の矢崎滋と日本の歌謡界に燦然と輝く都はるみの熟年カップルである。独特の癒しボイスで知られる森本は、名古屋に家があり妻子がそちらにいながらも、東京の高円寺で長い間単身下宿住まいだったと言う。高円寺はぼくが育った地元で、時々飲み屋などにも立ち寄ることがあるが、もう10数年ほど前にお隣の阿佐ヶ谷の飲み屋で彼と出くわしたことがあった。一人で杯を傾けなにかかつての文人...と言った趣きもあるその毅然とした姿に一寸感動を覚えたものだが、まさか長年この中央線界隈で単身生活を送っているとはその時は思いもよらなかった。なにかいい年令の過ごし方...を見せ付けられたような何とも言えない気分だった。
そしてもう一組、矢崎&都の熟年カップル。都はるみのかつての相方、中村氏(日本コロンビア・ディレクター)とは仕事で何回か一緒になったが、偉ぶらない良い人だった。その中村氏の紹介(2人とも東大出)で知り合った2人は、中村氏の死去後に矢崎がほぼ現役引退をしてから、色々な紆余曲折を経て今は東北のある都市のビジネスホテルで、隣り合ったシングルルームで暮らし行き来していると聞く。このカップル記事は、確か5&6年ぐらい前に週刊誌で知ったのだが。それが今は更に密接になっている様なのだ(昔は都が東京から通っていたと聞くが、今は2人ともホテル住まいだと言う)。2人のカップル話は、ぼくのようなチャンジー(爺さん)には、なんとも身につまされるの話なのだが、またなんとも微笑ましくもある...。矢崎がこのホテルを選んだのは、場外馬券売り場が近くにあるためというのも、また漂泊者の生き様として泣かされる。一方都はもう第一線で唄を歌うことは無い...と宣言している事も、女傑らしい決然さで羨ましい。
人生は様々だが、余りそれに固執すること無く、飄々として枯淡な気分で生き抜く...。大事な心構えだと思うし、それへの憧れもぼくには強くある。改めて同世代の彼らに学ぶこと、多々なのだと思いますね。...と記してコラムの担当者に送ったなんと次の日、レオさん亡くなるというニュースが流れました。漂泊の最中の死、無念でしょうが、結構恬淡としていたのかも知れません。享年83才。合掌!
【今週の番組ゲスト:音楽活動45周年のジャズギタリスト 布川俊樹さん】
25thアルバム『BC→DC→AC』から
M1「Go Back In Splendid Time」
M2「Ben's Voyage」
M3「Interzone」
M4「星砂」




