【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.853~伝説のライブハウス~】
渋谷にある「ボディ&ソウル」(9月)。新宿の街を象徴していた「ダグ」(6月)。ジャズに関わる2大スポットが、9月一杯で遂に無くなってしまった。ダグは中平穂積、ボディの方は関京子、共にジャズ界を代表する有名人だが、「ボディ」の方は青山から渋谷に移って来て未だ長くは無い。だがこの2店の閉鎖は、ある意味日本のジャズ文化の衰退基調を象徴する、大きなイベントと言えるだろう。中平さんはもう亡くなられてしまったが、京子ママは未だご顕在。いつまでも日本のジャズ振興の為に、ご尽力をお願いしたいものである。
ところでジャズクラブと言えば、この2店と同様に、いやそれ以上に幻度では遥か上とも言える、今でも語り継がれる「伝説のジャズクラブ」が、かつて短期間だが青山の地にあった。青森出身のあの矢野顕子が、高校生時代(?)に同地から時々上京、この店に出演したことからも、その店の存在が有名になった感もある。その店とは青山「ロブロイ」。「塀の中の懲りない面々」などででも知られる作家~安部譲二がオーナーで、ママはその何番目かのカミさんで、エッセイストでもある遠藤櫻子。この異色のコンビによるジャズクラブには、60年代なかばを代表する文化人達が集い、ジャズ演奏を聞くとともに、喧々諤々の飲みトークや馬鹿宴会などを開いた...と言うので、余りにも有名というか伝説化した店でもあった。
ぼくが局に入った頃は、未だ「ロブロイ」は存在した筈だが、余りにも敷居が高い為かこの店には一度も顔を出したことも無い。その店には大学時代のクラブ先輩で、某有名広告代理店勤務のある人物が良く通い詰めており、「お前面白いから、一度連れて行ってやるよ...」と自慢めいた話は何回も聞かされたが実際には一度も連れて行ってもらったこと無し。そのまま肝心の店もフェードアウトしてしまい、残念ながら見学することすら叶わずだった。その幻の「ロブロイ」の店を再現し、当時の賑わいも描こうという古いTV番組のビデオが、ユーチューブにある...と言う話をジャズ仲間に一人から教えられ、先日それを見させてもらった。
番組は「お仲間集合...」と言った趣きのもので、主役の安部譲二と遠藤櫻子は勿論、山下洋輔(安部の麻布学園時代の後輩で、当時店にも良く出演していた)や誠一ちゃんこと中村誠一などのジャズ陣。そして主役の一人はSF作家の小松左京。もう一人の主、筒井康隆はなにか仕事でこれなかったのだが、この他にも画家やデザイナーなど有名文化人が続々登場。異色なのはかんちゃんこと三上寛、そして晩年は国立在住だった俳優のハッポンこと山谷初男など。主役の安部はかつての豪放さで豪華な客達を軽くあしらい、当時のカミさん(TV番組時には離婚していたはず)のママ、遠藤櫻子もその艷やかさや闊達さ・才気活発さなどで、ロブロイの全盛時を彷彿させる抜群な面白さだった。ヴィデオ全体の主役はこの2人に前述の小松左京。そして我らが山下洋輔である。ことに山下さんなどは、この店に通ったのが未だ20代前半の筈だが(TV番組も30代前半か...)、実に堂々とした60年代文化人の代表格と言った風格。流石と思わせるものがある。なおこの直後に我らが森田一義くん(タモリ)が上京、センセーションを巻き起こす筈なのだが、それはまた別の四谷「ホワイト」物語へと発展する。そちらはぼくも少し関わっただけにかなり語ることも出来るのだが、青山「ロブロイ」だけは今なお鬼門なのである。
それにしても本当に良き・面白き・ワクワクのジャズエイジだったのですね。
【今週の番組ゲスト:トランペッターの類家心平さん ドラマーの福盛進也さん】
新譜『Coerulea』より
M1「Coerulea」
M2「Noema」
M3「Kichimu」
M4「NIVA」




