【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.849~信濃の国には~】
信濃追分の山荘生活が、1年の中で結構な比重になっている今のぼく自身にとって、その帰属意識は3分の2が東京の国立市の民で、残りの3分の1が信濃追分を含む長野県の東部地域、東信の民...、と言った気分も強い(住民票は勿論東京だが...)。それだけに東信のみならず信濃の国(長野県)全体の問題にも、ぼく自身この処かなりな関心を持っている。それだけに前回のコラムでも記した様に、東信のオピニオンリーダーの一人でもある、玉村豊男が亡くなってしまったのは、本当に残念な思いが強いのだ。そこで前回は彼の死をテーマにコラムをまとめたのだが、そのコラムを書いている最中に、又々この信濃の国に関わる、偉大な芸術家の死去のニュースが飛び込んで来た。その人とは画家の草間彌生さん。日本を飛び出し世界で活躍し続けた、世界に冠たる前衛画家である。享年97才。
彼女は松本市の出身で、松本のトップ女子校を出ると数年でNYに進出、その先鋭的芸術活動などで知られるようになり、晩年はかなりポップな画風でも話題を集めた人だが、真の女傑でもあった。家を顧みない父親と何かと束縛する母親、今で言う典型的な毒親(父親は優しかったようだが)の下で育った彼女は、信濃の地を飛び出すことを常に考え続けていたと言う。京都の美術大学卒業と同時にニューヨークへと飛び出し、その地で芸術家として名前を上げるようになリ、晩年は現代屈指の女傑とも評されることになった。
そんな世界的な芸術家の彼女。ぼくとは当然何の関わりもないのだが、水玉模様(ドット)を旨く活かした作品や、独特な感性で描かれる鮮やかな「かぼちゃ画」など、その独特な明るいポップアートは、ぼくも大好きだった。ただその彼女に関してだが、ぼくは大分前にある不思議な体験をしている。確かもう40年以上前のことになる筈だが、いつものようにラジオ局での仕事を終え、中央線に乗って帰宅する途中で、品の良い初老の女性と隣り合わせになった。そうするとその人が突然、「貴方、草間彌生って女性知っている...」と問いかけてきたのだった。偶然隣り合わせた女性に、こう聞かれていささかびっくりしたが「知っていますよ、彼女の絵ぼく結構好きですよ...」と応えると、「それは良かった...。わたしは松本の女学校で彼女とクラスが一緒だったの...。凄く変わった人だったけど、今はあんなに世界的にも有名になってしまって...」などと、その松本の女学校時代の逸話を始める...。まあそれを黙って聞いていたのだが、彼女は荻窪で降りることになり「ごめんなさいね、見ず知らずの人にこんな話をして...」と、詫びながら彼女は車両を後にしていった。どうしてぼくに話しかけたのか、今もって分からないし、実際かなり驚かされはしたのだが、逆になにか心地良くあったのもまた事実で、摩訶不思議な体験だった。
生まれ故郷の信州を飛び出し、世界的な画家に迄なった草間彌生。一方信州を終の住処に決めそこに根を下ろし、画家としてもブドウ農家としも活動し続けた玉村豊男。その2人の軌跡が生前に交わることは、決して無かったのだが、ほぼ同じ時期にこの信濃に関わりある2人が亡くなったこと。これには信濃の地霊の様なものが、お互いを強く引き寄せた、なにか因縁めいたものも感じてならないのですが、皆様はいかがお考えですか...。信濃を強く意識感じさせる、この偉大な2人の魂の交差。改めてお二人に 黙祷!
【今週の番組ゲスト:サックスプレイヤーの山中一毅さん】
新譜『Humanity』
M1「Inner Space」
M2「Tears of Hiroshima」
M3「Humanity」
M4「It May Happen」




