【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.846~マリア・シュナイダー公演~】
打ち合わせなどもあり、8月の初めに数日間帰京したが、その数日は思った程暑くは無かった。ただこの帰京、ある大きな目的があり、それに託けて打ち合わせを入れ込んだのである。その大事な用件とは、9年振りというマリア・シュナイダー・オーケストラのBN東京公演、それを堪能しようということなのです。9年前は聴くこと叶わずで、かなり悔しい思いをしただけに、今回は何を於いても...と思い、やっと実現したのだった。知り合いの多くのジャズプレーヤーや関係者なども、この公演を聴きに行き、異口同音にその素晴らしさを絶賛していた。BN東京の隅の席でこのオーケストラを聴いたぼくも、他の面々と全く同じ感想を持った。
彼女のオーケストラを聴くのは今回で2回目。以前に聴いた時よりも、オーケストラはそのスケール感を増し、現代のジャズラージアンサンブルの頂点に立つ存在であることを、我々にはっきりと印象付けてくれていた。ダニー・マッキャスリン(ts)、スコット・ロビンソン(BS)ライアン・ケバリ―(tb)など、古くからのスター達のプレーも素晴らしいもの。それにマイク・ロドリゲス(TP)などの新顔も加わり、ソロを採る彼らのプレーも痛く刺激的だったし、それを盛り立てるバックのラージアンサンブルも。深く鋭く突き刺さってくる。何より全身をフルに作動させ、踊るように指揮する(ジャズのラージアンサンブルでも、彼女ほど魅力的な動きをする指揮者はいない)マリアの姿に魅了され尽くした。
21世紀のコンテンポラリー(現代)ジャズは、小編成のユニットがメインで、卓抜な個性やアドリブを競い合う、20世紀のモダンジャズの時代から、こうしたラージアンサンブルの時代へと、大きく変化しつあるとも言える。又かつてはジャズボーカルとして別枠的存在だった、ボーカル&ボイス(人声)が、今はかなり重要な意味合いを持ってきていることも、コンテンポラリージャズの大きな変化として上げられるだろう。
そのコンテンポラリージャズの頂点とも言える音景色が、遺憾無くBN東京のステージで提供されたのだから、ぼくら聴衆は興奮せざるを得なかった...とも言えそうだ。彼女は今回の公演では、新作のナンバーをメインに30を越すレパートリーを用意した...とも聞く。全部で5日間各日2回公演という、今回のかなり異色なロングラン公演では、連日ステージごとにレパートリーを変えて臨んだ様だが、その全てを聴きたかった...と殆どのファンが思ったのだろう。それほど色々な感慨を残した刺激的で素晴らし公演だった。
次の公演ないし新作では、ラージアンサンブルともう一つの重要な要素、ボイスを大胆に挿入・融合する試み、ラージアンサンブルとそれに絡むボイス群といった音像を実現するのでは...と、ぼくは秘かに期待している。ミネソタ州生まれのこの可憐な女傑の作り出す、万華鏡にも似た魅力的なマリアンミュージック。それをチャンジー(爺さん)のぼくが、果たして何時まで味わう事ができるのか...。愉しみであるとともに、いささか不安でもあるのですが...。
【今週の番組ゲスト:夏のラテン特集第4回。ゲストフルート奏者赤木りえさん、ドラマーの藤井摂さん】
お2人のユニットWatusi Improvisczarioの1stアルバム『LIVE! BOOTLEG』より
M1「Uptown Dance」
M2「Up In The Hill」
M3「Cleaning Just Now(ただ今清掃中)」
M4「War Medley(Lowrider〜Ballero〜Cisco Kid〜Lowrider)」



