【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.824~ハリーとトント~】
このところTVも余り見なくなってしまった。昨年の12月始めに入院生活を送り、その後もどうも余り調子戻らず...と言った時に、長年の酷使に耐えかねてか、家のTVが全く駄目になってしまったのだ。電気屋に行くのも面倒だし...と、そのまま放っておいて1ヶ月余り、殆んど困らず...と言うよりも、積極的に見たい番組が殆ど無し状態なのに気づいた。まあ然し今の時代にそれもマズかろう...と言うことで、知り合いから以前よりもかなり小型のTVを貰い受け、一応マスコミ人の体裁を保つことにした。
この様に今はTVと余り関わりない生活だけに、新聞のラテ欄にも無関心なのだが、先日偶然にもNHKのBS放送で、映画「ハリーとトント」の放映があることに気付いた。あの銘品「ハリーとトント」、ぼくの生涯ベスト10作品の一つにランクインされるものだが、最後に見たのは確か40代の頃で、ヴィデオも探したのだが見つからず残念に思っていた。それだけにこれは何を置いてもと...、休日(毎日がほぼ休日状態ではありますが...)の昼間、TVの前に陣取った。
この「ハリーとトント」は、1974年発表もので、監督はポール・マザースキー。彼は後年監督よりも俳優としての仕事が多かったが、70年代のアメリカニューシネマの系列に属するこの作品で、アメリカ映画の歴史にその名前を残すことになった。主演の老人ハリー役はアート・カーニーで、この役でアカデミー賞を獲得。全体には70年代のノスタルジックな良きアメリカが描かれた老人ロードムービーで、アメリカと言う国の大きさ、その自由さと寛容さなど、今のトランプアメリカでは殆んど失われてしまった、良きアメリカの姿を描き出した珠玉の作品。実際の旅と心の旅、その双方の旅を鮮やかに描き、主人公のハリーは72才の引退した大学教師で、子供は3人と言う設定。今のぼくよりも若いのだが、あの当時からすると今は10才程皆んな若返っている感ありなので、丁度年齢的には今のぼくと「ため」と言った感じ。それだけに以前に見たときよりも、更に身につまされ心打たれるところが多く、何よりも相棒の猫トントとの、麗しくも愛しい関係が、なんとも心に刺さる。そのトントを連れて子供達3人の家を訪ね、またアメリカ各地を巡る(放浪)ハリー。その心持ちが淡々と情緒タップリに描き出されるが、ビル・コンテの音楽も、淡彩風でシンプルだが滋味あるもので印象深い。この今風に言えばアメリカーナ的風情には、この音楽あり...と言った感じである。
この作品をぼくが最初に見たのは、確か試写室だったが、初めての試写室体験は業界人の仲間入りの感もあって嬉しかった覚えがあり、その上に映画の出来栄えも、特に大の猫好きだっただけに、よく染みた。だがハリーを越えた今の年齢になってみると、あの頃感じなかった細部の良さやしんどさ、哀愁・愛着など、様々な感情をかなりしっかりと感じ取れる。主役のアート・カーニーは当時52歳、20才も上の老人役を見事に演じきっているが、戸惑いも多かったはずだ。一方縞虎ネコの相棒トントには、2匹の猫が用意されていたとも聞くが、このトントもアカデミー賞に値する名役者振り。これら全てが揃った銘品だったのだ。ただ一つ残念なのは最後ハリーがフロリダに流れ着き(トントは途中で死ぬ)、そこで暮らすことを決めるハリーの姿...、それがもう少し細かく描かれていたならば、間違いなく絶品ロードムービーになったとも思う。しかしそれは少しばかり、ぼくの欲張り過ぎかも知れませんが...。いずれせよ、良い映画です。
【今週の番組ゲスト:ピアニストの野本晴美さん】
4thアルバムの『Anitya』から
M1「青藍」
M2「Sudoku」
M3「Cucumber man」
M4「Anitya」
●タイムフリー:右下「radikoで聴く」をclick♪(2026.3.15)




