【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.819~久米ちゃん、亡くなる~】
ある朝何気なくテレビのモーニングショーを見ていたらば、久米ちゃんこと久米宏が正月に亡くなっていたことを番組が伝えた。久米ちゃん...などと書くといかにも親しそうだが、実際の所ぼくは彼とは面識無しで、仕事上の接点もない。一度だけTBSの打ち合わせ室で、局員の大学後輩ディレクターと話をしている時に、隣の席に彼が居た。後輩に紹介を頼もうと思った所...、なにか打ち合わせで揉めているようで、後輩は一寸無理そうですね...と言い、彼との関わりはそれっきり...、以降は全く接点無しだった。但し月とスッポンほど規模の違いはあれ、同じ放送業界の一員、そのうえ年齢も一緒で彼のほうが現役なので、大学では1年先輩になる。彼が所属していた学生劇団こそ知らないが、同じ早稲田の「自由舞台」や「劇研」などの花形劇団には、ぼくも知り合いも多く、大隈講堂裏の芝居小屋溜まりには時々顔も出していただけに、その頃は何度かすれ違ったりもしていた筈...なのだ。更には放送や広告関連業界の仲間内で飲んだりすると、時々彼の話も出て来るし、電通のある友人は彼と実に親しい仲...などということもあり、実際には知り合いでもなんでもないのだが、結構知っている...などと、少し勘違いしてしまう程...でもある。
唯し彼は若くして放送業界のスターに躍り出た人物だけに、結構長い間年齢はかなり上の人と思っていたが、実際にはため(=同年齢)であることを知り、同じ業界人としてその違いにがく然としたものだった。「ぴったしカンカン」「ザ・ベストテン」などTBS時代の花形番組、そしてテレ朝に移っての「ニュース・ステーション」のキャスターなど、常に脚光を浴びる立場に居た彼。早口で淀みないその喋りは切れ味鋭く圧倒的な才覚を感じさせ、その司会態度は一見軽薄なものに見えつつも、実に細かい段取りも為され、またジャーナリストとしての強い矜持を底に秘めていたのだと思う。自身は「一介のアナウンサー...」と何時も公言していたし、決して偉ぶるところもなかったとも聞くが、彼の中ではオレこそ真のジャーナリ言う強い信念があった筈なのだ。そしてその基礎を形作ったのは、やはり早稲田の学生劇団時代ではなかったかとも思う。権力の行使には常に敏感で、権力というものに何時も対峙しようとする姿勢...、その無垢な反権力...と言った意識~無意識の意識。それを醸成したのが、早稲田の学生時代~劇団員時代だったのでは...と思えてならない。そんな意味でもかなりナイーブな感性の持ち主だったとも思われる。しかしその反骨精神は時に権力側とも軋轢を生み、一時街録や外出などにはボディーガードをつけることもあったとも聞く。それだけ単身で頑張っていた人でもあった。
それにしても放送業界は、稀有な人材の一人をまた失ってしまったものである。どんどんと右傾化して、どうやら歯止めも効かないこの現代。ジャーナリズムもまたそうなりつつあるこの今という時代に、もう少し生き続けて発信し続けて欲しかった。久米ちゃん 貴方には...。
【今週の番組ゲスト:ピアニストの栗林すみれさん】
新譜「Orbital Resonance」をご紹介。
M1「七夕Song」
M2「Deep Breath」
M3「Family」
M4「同じ船に乗る」
●タイムフリー:右下「radikoで聴く」をclick♪(2026.2.1)



