【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.493~今年の一枚】
いよいよ2019年も打ち止め。来年以降この世界はどうなって行くのか...。東京の片隅にひっそりと暮らすオールドボーイにとっても、そこは大いに気になる所。なにせイギリスのEC離脱が来年は本格化、アメリカや台湾、EC諸国などそれぞれのトップがどうなるのか、まさに混沌とした状況はさらに混迷の度合いを深め、予断を許さない。振り返って我が日本だが、今年は紛れもなくラグビー年、そして来年はオリンピック本番。スポーツお祭り騒ぎとかなりお気楽なお国だが、大本の首相自身はこれまでの様に、やりたい放題とはいかない筈である。
ぼく個人としても、今年は間違い無くラグビーの年だった。「4年に一度ではなく一生に一度」を体現化でき、数年前からのラグビー番組計画、H女史の手掛ける藤島大氏のラグビー番組も至って好調。更にその締めでジャパンチームの凱旋パレードまで見られたのだから、もうこれ以上言うことなし。
さてジャズ番組の方だが年末最後の番組は、ジャズ評論家青木和富氏による、恒例「今年印象に残ったジャズ作品(海外編)」紹介である。青木氏の紹介作品は別項に挙げられている筈だが、マイルス、コルトレーンと言ったジャズ界の巨匠の発掘作品、そして現代きってのピアニスト、キース・ジャレットのソロ作品などの大作揃いで、ぼくも異議なしの青木氏らしい、至って妥当なラインアップ。ぼくも3つほど関連雑誌やジャズサイトから頼まれベスト作挙げてみたが、大体似たようなラインアップになった。ただ今年ぼくが最も印象に残ったジャズ作品は、いまNYと並ぶジャズ発信地として、大きな話題を集めつつあるロンドンのジャズ=UKジャズシーン。その南地域と言われるサウスロンドン(訪れたことが無いので想像がつかないが...)のジャズムーブメントの中心に位置し、シーンの牽引役でもあるテナー・タイタンのシャバカ・ハッチングス。その彼のユニット「サンズ・オブ・ケメット」によるアルバム『ユアークイーン・イズ・ア・レブタイル』。
シャバカはカリブ海出身の両親に連れられてロンドンに渡って来た様なのだが、彼のジャズにはカリブの音楽、キューバンジャズやレゲエなどの極楽音楽の要素に、ジャズの原点とも言えるニューオリーンズミュージックなどもミックスされ、ジャズをコアにした、独特な明るさとリズム感も有する蠱惑的な音楽。そのテナーもかつてのタイタン達と同じく朗々と響き良く唄う。全7曲はアンジェラ・デイビス、ルシェット・タクマンなど、黒人や女性の地位向上に貢献した、彼のクイーンとも言える革新的女性達に捧げられており、ジャケットもプリミティブなブラックアート風な魅力的なもの。今のロンドン周辺の力強い息吹が感じられる力作だ。ジャズ全盛時の活力と愉しさ、そしてフリージャズの熱気も加味されたこの魅力的ジャズ。ぼくの今年度お勧めの一作です。
なお「テイスト・オブ・ジャズ」は来年より日曜日の夕方に時間移動されます。翌週木曜日の夜に再放送。益々のご声援を...その初回に登場するのは、J-ジャズの巨匠、山下洋輔さん。久々の登場、ジャズ生活50年を振り返り、新たな発展を語ってくれる予定。乞うご期待!
【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
今年印象に残ったアルバムをご紹介頂きました。
M1「Rubberband of Life(feat.Ledisi)/ Miles Davis」
『RUBBER BAND』より
M2「Blue World / John Coltrane」
『BLUE WORLD』より
M3「The Garden / Brad Mehldau」
『FINDING GABRIEL』より
M4「Happy Talk / Diana Panton」
『CHEERFUL LITTLE EARFUL』
M5「Somewhere Over the Rainbow / Keith Jarrett」
『MUNICH 2016』より
