【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.808~山下洋輔、活動休止~】
先日当番組の収録のためラジオNIKKEIのスタジオに行くと、ゲストのミュージシャンから「小西さん、山下さんの一時休養の話知っています...」と聞かれた。「いやー何のことです...」と聞き返すと、今年暮れに行われる「新宿ピットイン60周年記念コンサート」を最後に、来年初めから山下さんがコンサートやライブ活動を一時中止し、休養期間に入るのだ...とのこと。そう遠くない日にそんな事態もあるか...と思っていただけに、かなりびっくりはしたが、その知らせそれなりに冷静に受け止められはした。
洋輔さんにはこの夏にオンエアーされた、我が「テイスト・オブ・ジャズ60周年記念特番」で、お祝いメッセージをもらった。その折立川の自宅か、所属のジャム・ライス事務所に収録に行く筈ではあったが、わざわざ来てもらうのも申しわけなし...ということで、音声ファイルでのメッセージ...という事になり、結局会うこと叶わずで...、残念ながらもう2年ほど彼とは実際にお目に掛かってはいない。今年もこの秋に、生地の阿佐ヶ谷天祖神社でのソロコンサート(阿佐谷ジャズストリート)や、恒例の和太鼓とのジョイントコンサート等など、あの迫力充分な演奏を数多くこなし、観客を沸かしてくれていた。だがやはりあの鍵盤を疾駆する、力技とも言えそうなフリー演奏は、相当に身体にも神経にも応えるはずで、一時休養というのも良く理解出来、本当にご苦労さまである。
ところでぼくと山下さんの最初の出会い、それはこの12月末放送になる「テイスト・オブ・ジャズ/新宿ピットイン60年記念回」で、ピットイン会長の佐藤良武氏も語る筈であろうピットイン誕生初期の洋輔トリオの連続ライブでのこと。洋輔、中村誠一、森山威男。この3人の凄まじい破壊力を秘めた圧巻の演奏。局員になったばかりのぼくにはまさに衝撃の出来事で、このショックをどう伝えていくかが...、その数年ほど後にジャズ番組の担当になった、ぼくの常に頭にあったことだった。洋輔さんは当時ぼくより大分年齢が上だとばかり思っていたのだが、実際は3才位しか年齢が違わないことを後で知り、そのなせる仕事の質などの違いに、大変ショックを受けたものだった。
その後は何度か大きな仕事を共にして、特に印象深かったのは、2年近く月1回1時間の洋輔対談番組を仕掛けたこと。これは筒井康隆、赤塚不二夫、山口昌夫、綾戸智恵等など、山下洋輔の文化・芸術、政経、スポーツなど、幅広い人脈を総動員した対談番組で、色んな所へ洋輔さんと出向いたが、確か20回きっかりで終了した。番組の最終回は、ラジオたんぱ時代の近くの虎ノ門振興会ビルで、清水ミチコをゲストに呼び、リスナーを招待した公開生放送も実施、洋輔さんもソロ演奏を開示、ミチコさんも数多くのモノマネを披露、2人の対談も興に入り、多くの人からかなりな好評を得たものだった。
そして洋輔さんとのもう一つの思い出は、未だあの森田一義くんことタモリがデビューして間もない折の正月、タモリスペシャルとして3時間の正月特番を組んだ。そのときに山下洋輔トリオもゲスト参加、あの激烈なトリオ演奏を披露、それをバックにお騒がせ日本舞踊家、花柳幻舟さんが日舞を披露など、ハチャメチャな面白特番だった。今でも一部ではこの特番は語りぐさになっており、それにはゲストにツービート時代のたけちゃんこと北野武なども参加していたこと、なども少し関係しているようで、彼が番組にぎわかしの一端を担っていたのも忘れ難い。
まあなんやかんや、半世紀近くになる洋輔さんとのお付き合いだが、彼はある意味ジャズピアニストを超えた存在であった。エッセイストで作家でもあり、ある種の良き時代「ジャパン・アズ・NO1」の頃の、昭和文化を作り上げた人物でもあった。ヤフーのコメント等では、タモリを見出した...ことだけが若い連中に評価されている感もあるが、そうではないのだ。洋輔さんがまた元気な姿で、あの破壊的フリー演奏を聴かせてくれることを切望する。洋輔さん、 またよろしくお願いしますね。
【今週の番組ゲスト:シンガーのギラ・ジルカさん
Duoアルバム
M1「That's All」




