「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中(再放送は毎週金曜日 18:30~19:00 ※特別番組放送により休止の場合あり)。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.662~ブルーノート東京】
日本には数多くのジャズのライブを聴かせる店(ジャズバーを含む)がある。その多くは首都圏と関西圏(大阪・京都・神戸)にあり、その中でも圧倒的なのはやはり東京になる。その東京でのジャズライブのメッカと言うと、ぼくの様なチャンジー(爺さん)のジャズ関係者やファンにとっては、すぐに新宿の「ピット・イン」になるが、50代より若いファンの方達にとっては、多くのトップミュージシャンが海外からも集まり、華やかにステージを飾る、青山の「BN(ブルーノート)東京」になるだろう(姉妹店の「コットンクラブ」も同等だが)。
このBN東京、そのスタートは1988年11月で、同じ青山ながら今とは少し場所が異なっており、やや狭いライブハウスだった。今でも良く覚えているのはそのオープニングアクト。当時絶頂期の偉大なシンガー、トニー・ベネットを迎えてのステージで、招待を受けた関係者などが多数集まり、入り口の階段まで人で溢れたもので、ベネットのステージも流石と思わせる内容だった。当時はまだバブルの末期、何れはダメになるのでは...などとも思っていたが、東京で唯一とも言える本格派ライブハウスとして順調に営業を続け、現在もジャズの素晴らしさ・華やかさを演出、日本でジャズライブと言えば、BN東京と言うことになっている。まあ凄いのは海外の一流ミュージシャン達もこのステージに立ちたいと熱望している...面々もかなり多いと言うこと。
ところでこのBN東京には、そのスタート時からいささか関わりを持ってきたので、好きなミュージシャンやシンガーが来店の折には良く行かせてもらっていた。しかし御多分に漏れずこのコロナ禍で、外来ミュージシャンの往来もままならず店自体もかなり大変な模様、どうにかスケジュールを組んでいる感もありありだった。知り合いのスタッフの苦労も察せられたが、ぼく自身もこの2年半ほど店に行くことも無かった。それが昨年初頭からまた本格稼働を再開、知り合いのスタッフからも是非...と言うお誘いも受けていたので、先日ぼくの大好きな白人サックス奏者の第一人者、クリス・ポッターの公演を見つけ、久々に足を運ぶにした。
知り合いの妙齢の女性をお誘いしての鑑賞だったが、定刻の45分ほど前に店に入るともう既に店は満杯。やはり素晴らしいプレーヤーの登場と、あのBN独特な雰囲気を味わいたい...と願っていたファンが多くいることを物語っていた。いつもの壁際端っこの定席はもう埋まっており、どうにか着席したが、こんなに活気溢れるBNを見るの久しぶりだなー、としばし感激...。この日のステージはエリック宮城(tp)をリーダーにした「BNオールスターズ」と言う臨時編成のフルバンドに、ポッターがフューチャされる形式のもの。ポッターも現在の第一人者振りを如何なく発揮した、圧巻のプレーを全編展開しファンを唸らせてくれた。ぼくも当然大満足で、お連れの女性も喜んでいた。店はBNグッズの売り場なども無くなっており、いささか寂しい気もしたが、そこでも繰り広げられる音楽はやはり超一流の、世界にも冠たるものだった。BNのスタッフ達にも感謝しつつ店を後にしたが、久しぶりに気持ち良い一夜でした。
【今週の番組ゲスト:ジャズシンガーの たなかりかさん】