【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.811~変わり始めた米国~】
どうやら今アメリカが大きく変わろうとしているようだ。あのトランプが大統領を続ける間に、どんな風に変わるのか...は誰にも予測が付かいないだろうし、頑迷なアメリカファースト主義のトランプ教信者達は、いずれにせよトランプ信仰をそう変えることもないだろう。だが何よりのアメリカの変化は、アメリカきっての大都市NYの市長選で、民主党左派のイスラム教信者、南アジア系のゾーラン・マムダニが当選したことに表れていると言えよう。トランプはこのNY市長選のために、敵対していた感もあるコスモ前NY州知事を、応援するようにと様々なメディアで語っていたが、それも功を奏せず、なんとユダヤ系市民の多くがマムダニに投票したとのこと。トランプは彼に投票するユダヤ系は馬鹿だ...と警告していたが、それも通用しなかった。
そしてもう一つの大きな変化の波は、1950年代のあのマッカーシーの赤狩り事件以降、およそ禁句とされていた社会主義、そして驚くべきことに共産主義すらも...、ひょっとしたら今のアメリカ資本主義なんかよりも、かえって良しなのでは...と言った意見~論調も、若い知識層、特にハーバード大やコロンビア大等のアイビーリーグ大学生、NY州立大やカリフォルニア州のバークレー大などといった公立校の学生の中にも、拡がっているとも聞く...。それはある意味NY市長選でも見られた現象だが、カリフォルニア生活も長い、ぼくより大分年下の知人が、一時帰国の時に語っていたことの受け売りでもある...。
しかしこれはまあかなり信じられないことで、あのトランプの大統領2期目は、廻りは絶対服従の面々、自身も大統領というよりも、全米帝国...と言った気分で当人もいる感も強いだけに、全米で相当な分断を招いていることは想像に難くない。そのうえやること殆どがかなり無茶苦茶。関税交渉を始め、カナダをアメリカに組み入れるとか、グリーンランドもアメリア領に...など等。中でも最も許されないと思うのは、自身は兵役にも行かなかったくせに、あの激戦の硫黄島での国旗掲揚記念画に、ネイティブアメリカンの兵士が一人描かれていて、これはけしからん...と、国防省(今は戦争省)での展示(?)を止めさせたと言う出来事。
まあこのような愚行がまかり通るアメリカではあるが、まさかその国で共産主義の良否に迄、学生の話題が及ぶ...とは、全く考えられないことだった。ただぼくが最も注目しているアメリカの政治家、このジャズコラムでも前に一度取り上げたことがある、民主党左派の若手で、女性のラテン系政治家オカシオ・コルテス(彼女はジョージ・サンダース上院議員の薫陶も大きい様だが)、かなりはっきりとアメリカでの社会主義を標榜しており、今回の新たな民主党左派のNY市長(彼は典型的な移民エリートではあるが...)にせよ、民主党内での穏健派と左派との意見の対立が、反トランプとしてのうねりを現出できず纏まりにも欠け、民主党の最大の弱点だとも、カリフォルニア在住でジェリー・マリガン大好きなジャズフリーク...でもある彼は、悔しそうにそう語っていた...。
それにしてもあのケネディーやオバマに代表される、自由と進歩・民主のあの理想主義的「良きアメリカ」は、一体どこへ消えて行ってしまったのか...。ぼくらの若い頃、ぼくや学生仲間たちは、アメリカという強国に強い反発を感じ、色々行動したりもしたが、その根本にあるアメリカンデモクラシーには、強い憧憬と信頼を寄せていたものである。そしてその延長線上に「ジャズ」という稀有な要素を持ったアメリカ音楽もあったのだ。そのアメリカが今大きく揺れ、ひび割れつつある...。本当に寂しい限りだし、心配の限りでもあります。
【今週の番組ゲスト:ジャズ評論家でジャズマニアの寺島靖国さん ディスクユニオンDIWの寺島レコード担当の吉田 綾さん】
25年目を迎えた寺島レコードをご紹介いただきました。
M1「Love Song / Helge Lien Trio」(『Jazz Bar 2025』より)
M2「Koln, January 24, 1975 Part IIb / 山口ちなみ」(『The Koln Concert』より)
M3「Prisoner of Love / Ken Peplowski」(『For Jazz Ballad Fans Only Vol.6」より
M4「L'incontro / Alessandro Galati Trio」(『Jazz Bar 2025』より)






