「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週日曜19:00~19:30で放送中(再放送は毎週金曜日 18:30~19:00 ※特別番組放送により休止の場合あり)。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。
【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.655~犬猿の仲】
ぼく位のチャンジー(爺さん)になると、かつては犬猿の仲で口もきかなかった様な先輩や後輩などとも、最近では何かの折に顔を合わせれば、チャンジーなりに挨拶を交わしたりもする。それでも何人かはどうしても口もききたくもない輩や女史などは当然存在する。考えてみればこの50数年続いているギネス級のわがジャズ番組も、ウン十年前にぼくが担当になってから初めの頃は、かなりな期間、ラジオたんぱと言う局自体が音楽辺境局だったこともあり、良く意地の悪い先輩に「仕事もしないで遊びの番組ばかりを...」等と、あからさまに暴言を吐かれたりもした。だがその彼らも今では殆ど鬼籍に入っており、生き残っている何人かとも、もう会うことも無いが、もし会っても挨拶もしないと思う。まあこう見るとぼくも、結構引きずる男なのかも知れない...。反省しきり。
さてジャズの世界でも犬猿の仲と言われるミュージシャンは多く、特に個性の強い連中だけに、そういう面々がセッションなどで一緒に演奏すると...、どうしようもまとまらない場合もあるが(多くはセッション途中で帰ってしまったりするのだが...)、これが意外にもかなり面白い結果を生むこともある。有名なのは帝王マイルスと唯一無二の鬼才、セロニアス・モンクとの喧嘩セッション。この2人、険悪の雰囲気の中でどうにか最後まで演奏を続け、1枚のアルバムを完成させたが、これがかえってスリリングな効果を呼び、ジャズ史にも残る銘セッションになっている...などは、まさにその好個の例と言えるだろう。またベース界の巨匠チャールス・ミンガスとそのバンド・メンバーのジミー・ネッパー(tb)も仲の悪さで知られ、ミンガスが殴ってネッパーの歯を数本折ってしまったと言うエピソードもあるほどの仲。しかしネッパーはこの事件以降もミンガス・バンドに留まっていたため、ここら辺も何とも不可解なところ。
まあ犬と猿、確かにこの2匹が顔を合わせれば、まずは互いに威嚇し合うことだろうし、これは犬と猫やその他の動物どうしでもほぼ同じ結果だろうが、犬猫の仲などとは言わない。但し英語で土砂降りはイット・レインズ・キャッツ&ドッグの筈で、仲の悪さを象徴しているものでもある。この犬猿の仲の反対語は「水魚の交わり」だそうだが、犬猿と違いこちらは全くの異なったもの。水の中で生活するのが魚などで、意味は確かに正反対だが、果たして反対語になるのかどうか...。
ところで今回ぼくが言いたいのは、仲の悪い筈の犬猫の仲でも、決して仲も悪くなく兄弟のようにいつも一緒に生活し、互いになめ合ったりしている犬・猫の兄弟・姉妹、これがユーチューブの画面で時々登場すると言うこと。この奇跡のような交感の様子を見ているだけで、チャンジー(爺さん)のぼくなどは、本当にほっこりさせられるし涙腺も緩くなり、挙句の果てに生きててよかった...などと迄思うこともある程なのだ。この仲良し犬・猫の代表例が、どこの飼い犬と飼い猫かは知らないが、柴犬の兄貴の「岳」、ブチトラの弟猫の「寅次郎」。まあ何とも仲の良い犬猫コンビで、いつも一緒に行動し一緒に寝て食事をし、なめ合ったりしている。犬が猫の毛をなめる、また猫が優し気に犬をなめる。この模様を映す何気ない短い動画、偶発や意図した戦争などの一大危機により、人類の先行きは...等と言う危い事態も迫りつつある昨今。ぎすぎすして不安な時代に、何とも言えない微笑ましさと活力を与えてくれる画像がこの仲良し犬猫兄弟なのである。この犬猫交感のユーチユーブ動画、素晴らしいジャズ演奏などと同じ様に、ほっこりとしたある種の癒し効果を、何時もぼくにもたらしてくれるのです。
【今週の番組ゲスト:スイングジャズギタリストの佐久間 和(なごめ)さん】
2ndアルバム『MAHZEL-MEANS GOOD LICK!-』
3rdアルバム『ALL MAKES ME CRY』より
M1「Swing Guitars」
M2「The Very Thought Of You」
M3「When My Baby Smile at Me」
M4「Stardust」