【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.817~新宿ピットイン60周年記念コンサート2日目~】
昨年暮れに新宿文化センター大ホールで2日間に渡って行われた、「新宿ピットイン60周年コンサート」、前回は初日12月27日(土)のコンサートをレポートしたが、今回は2日目(28日)の方を...。
前回のレポートでも記したが、初日は石若駿に始まり森山威男で終わるステージ構成、期せずして日本のモダンジャズドラマーの系譜が、実感出来る流れになっており、坂田、本田珠也など曲者も登場し、色々な意味で興味深いステージだった。特に初日のラストナンバーが森山グループのゲスㇳとして登場した、ピアノの板橋文夫の名曲「グッド・バイ」だったのは、ぼくの大好きな曲ということもあり、かなり感激モノで、森山と板橋の破壊的ソロも相まって、嬉しくも素晴らしい演奏でもあった。
さて2日目の方だが こちらには新宿ピットインの精神的支柱とも言える、サダオさん(渡辺貞夫)と洋輔さん(山下洋輔)のユニットが揃い踏みで登場、特に洋輔さんはもしかしたらこれが最後のステージ(一時的な引退を表明...)かも...と言う話題も相俟って、早くから前売りチケットは完売...とも言われていた。それだけに招待席も初日ほどにはいい席ではなかったが、まあそれも仕方なし...。ただ全体の印象は、初日が素晴らしかっただけに、一寸インパクトに欠ける...と言った感じは、否めなかった。
皮切りは今色々と話題の人で波に乗っている感もある、大友良英のスペシャルビッグバンド。なんと16人編成のスペシャルバンドだが、リハーサルバンドといった意味合いも濃く、なかでも女性陣がその3分の1を占めるのも仲々に見事...。今のJ-ジャズの女性陣の活躍振りを象徴するようなバンドでもあった。ここでは山下さんもゲスト登場、十八番の「ぐがん」を共に演奏したが、洋輔さんの元気がいまひとつで...、期待程には盛り上がらなかった。バンド自体はいかにも大友リハーサルバンドらしい、フリーな要素も満載の攻めの演奏で、中々に面白いものではあったのだが...。続いては在米生活も長いケイ赤城をリーダーに、井上銘、竹村一哲などの若手を集めたスペシャルセッション。続いて我が友=チンさんや峰厚介、原朋直などベテランメンバーが集合の、ピットイン特製スペシャルユニット「Jマスターズ」が、ジャズメッセンジャーズやハービー・ハンコックなどの、モダンジャズクラシックを数曲演奏、渋谷毅オーケストラのステージに引き継がれた。どうもこの2つのユニットの演奏、余りピリッとしなかったせいもあり、2日目の印象がいささか芳しくないものに...の感ありだった。
続く渋やん率いる渋谷毅オーケストラは、こうちゃんこと峰厚介や林栄一、松本治など、ベテランの腕達者が集まった9人編成のユニットで、新宿ピットインでも人気のラージユニット。もう30年近く活動を続けているだけに、メンバー間の信頼度も厚く、演奏内容も期待通りの出来栄えだったが、それ以上の何かを...と言った期待には、イマイチ...だったように思えた。サダオ、洋輔と並ぶJ-ジャズの立役者と言えば、ヒノちゃんこと日野皓正だが、彼は現在療養中、療養先のフロリダ(!)からのヴィデオメッセージだったが、いかにも派手好きなヒノちゃんらしい趣向。それにしても療養先がマイアミとは...。
さてお次は、今回の演奏がもしかしたら最後のステージか...とも言える洋輔さん。スペシャルカルテットでの登場だったが、珍しく類家心平のトランペットが加わったユニットで、TP入りのユニットは確か初めてではないか...。それに池田篤、中山拓海の2アルトも加わり、「クルディッシュ・ダンス」などおなじみの洋輔ナンバーを演奏、洋輔さんもお得意の肘打ちなども披露したが、やはりどこかいまいち元気無く疲れている印象もあった。ぼくは洋輔さんとはもう本当に長い付き合い。タモリが人気出だした頃に4時間近い狂喜乱舞のタモリ特番を放送、その締めが洋輔さん・坂田明・小山彰太の山下トリオの演奏で、なんと20分を越す長時間プレーだったが、そのタイムキーパー役(洋輔さんに時間表示を出す役)をやっていた、早稲田大の後輩=中原仁くんが今や偉くなって、このコンサートの司会をやっているのには、なにか感慨深いものがあった。また洋輔さんのプレーからも、これまでの長い付き合いが思い出され、様々な感慨も交差したものだった。
そしてこの周年コンサートの大ラスは、やはりサダオさん=渡辺貞夫さんしかいない。もう92才か93才になっている筈だが、本当に元気でJ-ジャズいや世界中のジャズシーンの至宝と言っても過言ではない、正に稀有な存在。一音アルトを吹いただけでサダオさんだと分かる...、こんなプレーヤー今や世界中に殆んどいない...。バックは小野塚晃、竹村一哲など、ここ数年行動を共にしている若手の面々だが,彼らもサダオさんに合わせておとなし目の演奏に終止している。ただ彼ら自身の番になった時には、もう少し自己主張するべきでは...とも思われたが、まあサダオさんを前にすると...この感じになるのも仕方ない処か...。色々考えさせられもしたが、御大の演奏にはただただ感服...でした。2日間 新宿ピットインの歴史の重みを、ひしひしと感じさせられたものでした。新宿ピットインそして我が「テイスト・オブ・ジャズ」、共に60周年。次ぎの70周年を目指して、お互いに頑張っていければ...、会長の良武氏と共にコンサートの合間に、そう語り合った...ものでした。
【今週の番組ゲスト:「ゼロから分かる!ラテン音楽入門」監修兼執筆者の伊藤嘉章さん、岡本郁生さん】
M1「Nica's Dream / Eddie Palmieri」(『 Listen Here!』より)
M2「 NUEVAYoL / Bad Bunny」(『DeBÍ TiRAR MáS FOToS』より)
M3「Cuban Fantasy / 見砂和照と東京キューバンボーイズ」(『WITHOUT YOU 〜至高のキューバン・ビート~』より)
M4「Abre Cuto Güiri Mambo / Miguel Zenon 」(『Vanguardia Subterránea: Live at the Village Vanguard』より)







