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テイスト・オブ・ジャズ

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テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.332~米国で大変な事態が】

 米国と言う世界をリードし続けてきた超大国。この国では本当に訳が分からないことが起こる。先の大統領選挙などはその好例で、まさかの大逆転であの「悪役」トランプが大統領になってしまった。選挙スタート時は単なる泡沫候補に過ぎなかった彼が、一握りのエスタブリッシュメント層が支配するアメリカ政治からの脱却を強烈に訴え、彼らを口汚くこき下ろす小気味良さも大うけで、政治の世界に於けるアメリカンドリーム=シンデレラ現象を、あれよあれよと言う間に実現してしまった。

 
実際の選挙戦では、かなり強烈な共和党びいきとも言われるFBI長官のクリントンメール問題再調査のニュースが、選挙の流れを一変させたことは間違いないだろうが、米国の多くの白人層、中にはクリントン支持が多いとされる知的階級層の中にも、多くの隠れトランプ支持者がいたのは間違いない。彼らは表立ってはトランプ支持を語れなかったが、投票所では躊躇なくトランプに一票を投じたことは、ある意味想像に難くない。日本人の殆どはヒラリー・クリントンが、史上始めての女性大統領として登場すると思っていたはずだし、まさかトランプが...などと思っていた人は皆無だったはずである。そしてそれは世界中の誰もがそう思っていただろうし、そう願っていたはずだが、事態は大きく動いてしまい、来年以降の世界情勢は本当に混沌として分からないものになって来た。世界を暗雲が覆うと言った図式だが、奇妙なことに米国の株式市場がトランプ登場を好感し値を上げると、翌日の日本市場も、極端な保護主義者であるトランプが登場すれば日本経済への好影響など皆無だと分かっていながらも、闇雲に値を上げ今年一番の上げ幅を記録と言った、馬鹿げたとも言えそうな現象さえ起きている。

 
一方トランプはある意味成功した実業家だけに、大統領に就任したならば強烈なネゴシエーターにこそなれ、かなり現実的な政策を...などと期待する向きもあるし、彼の勝利宣言やその後の各国首脳との電話会談などを見ると、そんな風に思えないこともないが、今回力を得たアメリカ保守層は決してやわではない。彼が選挙中に約束したメキシコとの国境に壁を...、日本には防衛費の増大を...などと言ったバカげた公約は、実現不可能と分かっていてもそれを押し進めなければならないだろう。となるとこれまでの友好国などとの摩擦は必定で、世界情勢地図も大きく書き換えられるに違いない。まあ来年からの世界情勢は予断を許さないし、一瞬たりとも目が離せない。ただぼくの嫌いなあの安倍ちゃんも、この事態にすぐに動き、彼と会談を行うというのはヒットだった。強烈なネゴシエーターの彼とどこまで話せるのかはわからないが、その行動は大切なものである。

 さてこの所の米国大統領達は概ねジャズ好きのようで、現在のオバマ氏も毎年夏に発表するプレイリスト(夏の休暇中にどんな音楽を聴いたのかリスト)にマイルスやニーナ・シモンの名前が上がっており、奥さんも同様に彼もジャズに愛着があることを裏物語っている。しかし「大統領とジャズ」と言って忘れられないのは、南部出身のジミー・カーター。彼は在任中ホワイトハウスの中庭でジャズコンサートを開催、その場にレジェンドともいえる有名ジャズメンなども招待したが、その中にあの怒れる巨人チャールス・ミンガス(ベーシスト&作曲家&バンドリーダー)の姿もあった。体を壊して車いす生活のミンガスに、カーター大統領が労りの言葉を贈ると、感激して涙に暮れている彼の姿がTVニュースで取り上げられ、多くのジャズファンに少なからぬショックを与えたものだった。あの米国の白人社会に強烈なノーを突き付け続けたジャズ闘士のミンガス。その彼が体を壊していたとは言え、感涙に浸る、全く考えられない出来事だったが、今彼に近い年齢になってみると少しはあの涙も理解できそうな気もしてくる(これは決して好い事ではないが...)。

 果たして次期大統領のトランプが、ジャズ好きかはどうかはしかとはしないがNYを本拠地にしている敏腕ビジネスマンだけに「BN」などの有名ジャズクラブをその社交の場にしていたことは間違いないだろう。果たしてホワイトハウスでジャズパーティーが開かれるのか...ここら辺はジャズファンとして少しは気になるところでもある。
 と言った所で今日の1枚は、あのシンガーソングライターの大御所、ジョニー・ミッチェルがミンガスに捧げたアルバム『ミンガス』(79年/W・B)を推薦したい。ジャコ・パストリアル、ウエイン・ショーター等々、多くの素晴らしいジャズミュージシャンが参加したこのアルバムは、ジャズ、ロックなどのジャンルを超えた、不朽のアメリカンミュージックの傑作。一家に一枚の必須アルバムだとぼくは感じています。
今週の番組ゲスト:INPARTMAINTの西野孝さん】
M1Free Your Dreams feat. Snarky Puppy  / Chantae Cann
M2
  Shake Loose / DONNY McCASLIN
M3
Twin / Christian Scott
M4
oakland feat. Lalah Hathaway /  Terrace Martin


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