「日本株上昇、4-6月期決算よりも将来期待を重視」
「エンプラス、2日連続のストップ高」
「村田製作所、4-6月期大幅減益→株価は4%高で高値更新」
8月1日の日本株は上昇しました。決算内容を参考にした意欲的な個別企業評価の動きが見られています。今回の場合、「4-6月期決算を評価」というよりも「4-6月期を参考に将来の事業拡大期待を反映」と表現した方が適切です。
例えば、電子部品メーカーのエンプラス(6961)が2日連続のストップ高です。7月28日にエンプラスが発表した4-6月期の営業利益は14億円(前年同期比-27%)となりました。減益決算です。株価が急騰するような業績には見えません。
エンプラスの決算説明資料を見ると、「Digital Communication事業」が7億8000万円と前年同期比2.2倍の大幅増加となっています。この分野の伸びについて「光通信関連は、AI用途等のハイエンド領域が伸張し、増収」、「生成AI技術の進展、社会実装の始まりによる生成AI市場の拡大」と説明されています。
おそらく、エンプラスは「生成AI市場の拡大に伴って中期的な成長の期待できる企業」として評価され、2日連続のストップ高となったのでしょう。4-6月期の業績面で、その傾向が確認され、現実買いを呼ぶ展開になった、と解釈されます。だから、4-6月期決算の内容が大切なのではなく、4-6月期の決算をヒントに将来の成長が期待できるかどうか、ここが重要なのです。
生成AIの開発促進を背景に、大規模データセンターの需要が増加します。エンプラスによると、大規模データセンターの光トランシーバーの中に、同社の「通信用レンズ部品」などの電子部品が採用されているとのことです。
電子部品メーカーでは、村田製作所(6981)の大幅高の意味合いも大きい。4-6月期の収益が1-3月期を上回り、業績の底打ちが確認された決算内容でした。会社側によると「スマホ市場の在庫調整は解消」です。しかし、単なる底打ちではなく、将来の電子部品需要再拡大のストーリーが効いたと考えます。
村田製作所の決算資料には2030年代の電子部品業界需要のキーワードとして「CPS(サイバーフィジカルシステム)」が掲げられています。CPSの説明を、会社公表資料から以下に引用します。
「海・空・宇宙に通信カバレッジが拡大。さらに多くの人やものがつながる世界に」
「センサ類の進化により計測可能なあらゆる情報がデジタル化」
「デジタル化されたビッグデータをAIで処理し対応する、サイバーフィジカルシステムが普及」
現実社会の様々なデータをセンサーネットワークによって収集し、それをサイバー空間で解析して、世の中に役立てる、それがCPSです。家や町や車から人の生活に関するデータを収集・解析して世の中に役立てる。事故を減らし、病気を治す。
未来社会のために必要になる電子部品需要を意識して村田製作所の株式に投資をする。株式投資の目的は、あくまでも未来社会に役立つ企業への投資です。4-6月期決算は、未来社会の企業像を考える上での1つの参考データに過ぎないのでしょう。
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トヨタが1日の後場取引時間中に発表した4-6月期の営業利益は1兆1200億円(前年同期比+93%)となりました。極めて高い水準です。4倍すると4兆5000億円になります。トヨタの通期の営業利益計画は3兆円ですので、4-6月期の水準の高さが認識されます。
トヨタの株価は決算発表後に上昇しました。素直に評価してよいのでしょうが、これだけ4-6月期の水準が高いと、今後、四半期ベースでの利益はだんだんと落ちていく可能性も意識しておくべきかな、と感じています。
8月1日午後3時10分記