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競馬が好きだ!

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 こんばんは、大関隼です。

 この1週間くらい前から、気持ちが張り詰めながら迎えた先週の日曜。ワタクシ大関、中山競馬場で秋のGIシリーズの開幕戦、スプリンターズステークスを実況してきました。

 勿論、これまでのGI実況3度の経験を踏まえて、出走馬の下調べ、参考レースの見直しはじっくりやって挑みました。1200mという余計な事が言えない短距離戦の中で、いかにレースの要となる部分を捉えて描写するかを考えて準備に励む事に。

 そして、久々にGIの緊張感(何度やっても胃がキリキリするんですよ、これ)に包まれて迎えたレース。ちょっと前のスプリント路線のハクサンムーンやローレルベローチェのような「徹底先行型」がいないメンバー構成、どの馬が行くのか、そして人気どころがどんな位置取りをするのかに、道中は神経を尖らせていました。

 【以下、レース中の自分の心の中】おっ、ワンスインナムーンが逃げた。フィドゥーシアは前に馬をやって先団か、ビッグアーサーもこの枠なら揉まれない位置を取ったなぁ。レッツゴードンキは...ああ、やっぱり岩田騎手はこの枠なら内ラチ沿いを絶対離さないなぁ。レッドファルクスやメラグラーナは脚をタメるのは思った通りだけど、結構後ろ。ラインミーティアは思った通りタメるだけタメて勝負、シュウジは逃げなかったけど最後方...?【ココまで】もうあっと言う間に4コーナーです。

 いざ直線。もう無我夢中でした。こういう時こそ、普段からいかに意識的に馬の脚色を見極めて、良い伸びを見せている馬と先頭争いを描写しているかが問われる局面です。最後の最後、坂を上り切ってからの攻防。前の争いは3頭に絞られた局面でしたが、自分はこんな組み立てでゴールさせていました。

 「内からワンスインナムーン、レッツゴードンキ、外から8番レッドファルクス、レッドファルクスかゴールイン!最後は接戦!」

 ...ハッキリ言って「組み立てのミス」。映像を見て頂ければ分かりますが、この3頭の中の比較で、明らかに伸びが目立っていたのはレッドファルクスで、残り距離を考えてもゴールで前2頭を差していても不思議ないような勢いでした。

 このような局面で実況はどうすべきか。実は、大阪時代に大先輩である藤田直樹さん(ディープインパクト、メジロラモーヌの三冠達成を実況した方)から「脚色を見極めて、伸びてくる馬から優先的に実況せなあかんのや。俺はそれを先輩から厳しく言われ続けたから、先輩の技を盗んで身に付けてやろうと死ぬ気で努力した」と口酸っぱく言われ続けていました。しかしワタクシ大関はそれが出来ないことが多数。つまり、その時点で先頭に立っている馬に反応して言ったがために、その馬名が出て来た頃にはその後ろからグーンと伸びた馬に先頭が変わっている(つまり、実況が嘘になっている)という失敗パターンが多かったのです。

 分かっていたのに。よりによって、GIの最後のゴール前で、自分の最大の弱さを出してしまうとは。

 レッドファルクスは去年のように、坂を上ってから最後の最後でまたギアが入って伸びる馬、という事は分かっていて、伸びているのも見えていたのに。3頭の争いになって最初に口から出て来たのが、脚色で一番勝っている(しかも差し切らんばかりの勢い)レッドファルクスではなく、先頭に立っているが内からレッツゴードンキに交わされる脚色のワンスインナムーン。もうこれで「大関は自分の課題をまたここでクリア出来なかった」と告白したに等しい訳です。

 最後に「(先頭ではないが脚色は前2頭に明らかに勝っている)外から一気にレッドファルクス(この間に、ワンスインナムーンが内からレッツゴードンキに差されて3頭から2頭へ絞れる)、内レッツゴードンキ、レッドファルクス、レッドファルクスゴールイン!最後は接戦!」と言えていれば。

 皆様も、先に文字起こしした実際の実況と比べて、どちらが実際の映像に近い表現かと考えてみてください。せめて、実際の実況の「レッドファルクスか」の「か」1文字が抜けていれば。ハッキリ言って、この「か」を言う必要は無い訳です。「最後は2頭接戦!」で、どちらとは言っていないのですから。

 「か」の1文字があるがために、あのレッドファルクスの鋭い脚色がぼやけてしまっている。映像を見ている方からすれば「どう見たってレッドファルクスが勢いで勝っていて、差していそうだったじゃないか!どうしてそんな疑問形な実況なんだよ」とお叱りを受けて当然のモノです。

 何度かGIを実況して「GIは実況するアナウンサーの普段の努力、人間としての品位、技量を問うてくる」と個人的に感じていました。終わった後に、こうして頭を抱えている以上、自分には技術も足りていないし、それ以前に人間としての甘さがあり過ぎるんでしょう。今回もGIの実況は色んな事を教えてくれました。

(実況後の塗り絵。また大量に書き込みが入ってます)



 この悔しさを忘れてはいけない。1文字でも余計な文字を削ることに拘って、その分を要となる部分に振り向ける、結果脚色も見極められるようになる。今週末からまたその気概を持って実況して来ようと思います。自分が一ファンだったころに競馬場に流れていた実況の主たる先輩方は、当たり前のようにそれを実践している方ばかりだったのですから。

 さて本題。今日3日(火)の「競馬が好きだ!」では、9日(祝・月)に盛岡競馬場で行われる交流GI=マイルチャンピオンシップ南部杯の話題を中心にお送りします。今年秋はJRAのGIが無い週でも、地方のGIが組まれていて毎週のようにGI(JpnI)を楽しめるのです。お楽しみに!

(スプリンターズSの表彰式。この段階で半分放心状態でしたが...)



【今後1週間、オッズパークで購入可能な主な地方重賞】
5日(木) サンライズカップ(門別)
7日(土) 耶馬渓賞(佐賀)
8日(日) ハーベストカップ(盛岡)
8日(日) 九州ジュニアチャンピオン(未来優駿シリーズ・佐賀)
9日(月) マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnI・盛岡)

 

 

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