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10月7日と8日、日本武道館で開催されたAKB48のライブ「新チームお披露目コンサート」と「カップリングリクエストアワーベスト30」を拝見した。本来なら2月に予定していたがコロナ禍で延期となっていた。メンバーもファンも待ちわびていた日が、ついに実現した。

「日本を代表するアイドルグループは?」と尋ねたら、おそらく多くの人は「AKB48」と答えるだろう。メンバーの固有名詞や楽曲は知らなくても、AKBなら誰でもその名前くらいは聞いたことがあるはずだ。もはやアイドルや芸能という枠組みを超え、日本の文化の一翼と言っていい。そんな領域にあるのがAKB48だろう。

実際、AKB48は日本のアイドルの歴史や概念を大きく塗り替えた。雲の上の存在だった昭和時代のアイドルから、会いに行けるアイドル、集団で行動するアイドルという新しいコンセプトを確立し、握手会などCDの販売方法でも新しいビジネスモデルを構築した。いわば今の日本のアイドル界の先駆者であり、中核であり、多くの現役アイドルがAKB48に憧れて、この世界を志した。

そんなAKB48の武道館ライブ、さすがのひと言だった。王者の貫禄だった。7日のライブではAKBの奥の深さを感じた。かわいい選抜、セクシー選抜、イケメン選抜など様々なコンセプトで登壇者が変わるのだが、多くのメンバーと多くの楽曲を有するAKBだからこそ、どんな切り口でも、それにぴったりのメンバーと楽曲を用意できる。

今年リリースした「元カレです」や後半は「ポニーテールとシュシュ」など筆者のようなAKB初心者でも知っている曲を披露するなど、最後まで飽きさせない構成だった。圧巻だったのは、最後の曲となった「根も葉もRumor」。岡田奈々さんが曲目を紹介すると、会場の温度が間違いなく上昇した。オリジナルを生で見るのは初めてだった。隣で栗林さみさんがつぶやいていた。「かっこいい!」。まったく同感で、瞬きを忘れるほどのスピード感と切れ味、ど迫力だった。

8日のリクエストアワーも楽しかった。このコンセプト、筆者が以前応援していたアイドルグループのライブでもやっていた。その時は表題曲もカップリング曲も交えてのファン投票だったが、上位にはカップリング曲が多く並んでいた。AKB48のこの日のライブは、カップリング曲限定なので、ファンの思い入れが、より色濃く表れた。順位が発表されるたびに、どよめきや小さな歓声が上がり、ファンはそれぞれの思いを投影していた。

AKB48初心者の筆者は、この日披露された30曲のうち、29曲は初めて聞く曲だった。それでも楽しかった。クラシックのコンサートで知らない曲が演奏されている時の、間延びしたあの感じはまったくなかった。思うに、AKB48の楽曲は、旋律が日本人の耳になじみやすく、親しみやすい作りになっているのかもしれない。歌詞も日常生活のひとこまだったり、身近な風景だったり、親近感を感じるものが多い。AKB48が国民的なアイドルグループになった背景には、そんな魅力的な楽曲の数々があったのだろう。

筆者が唯一、知っていたのは「365日の紙飛行機」。柏木由紀さんの独唱がしみた。たった1人で、1万人の観衆をくぎ付けにした。豊富なアイドル経験に裏打ちされた貫禄のなせる技だった。ラジオiNEWSに出演してくださったメンバーたちを、ステージの上で探すのも楽しかった。⻑友彩海さんがセンターを務めた「ヘビーローテーション」は実に良かったし、山根涼羽さんや大竹ひとみさん、黒須遥香さんなどの元気な笑顔を拝見できたのも嬉しかった。

そもそも今回のライブは60曲目のシングル「久しぶりのリップグロス」発売記念と銘打っているのだが、この曲が披露されたのは7日、8日ともアンコールの後だった。アンコールでは、両日ともサプライズがあった。7日はチーム8の活動休止、8日は武藤十夢さんの卒業が発表された。

AKB48では発足以来、多くのスターが生まれ、卒業していった。十夢さんの卒業は寂しいが、これもAKBの宿命だ。集まり散じて人は変われど、AKB48というプラットホームは変わらず残り、楽曲は歌い継がれる。そこが素晴らしい。応援してきたアイドルグループが解散し、2度とその楽曲が聞けなくなることほど、悲しいことはない。AKB48はそのDNAや楽曲という財産を大事に受け継ぎ、ファンは息長く応援できる。時には卒業生がライブに飛び入りする。これこそがAKB48最大の魅力であり、国民的アイドルたるゆえんだろう。 そんなAKB48のメンバーを代表して13日、岩立沙穂さんと武藤小麟さんがラジオiNEWSにきてくれる。今からとても楽しみだ。

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(日本経済新聞 編集委員 鈴木亮)

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