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5月末に向け、全力疾走中のラストアイドル、今日は篠原望さん、高橋みのりさん、畑美紗起さんが来てくれた。プロダクションのマネージャーさんにお願いし、素晴らしい顔ぶれを揃えていただいた。

筆者が初めてラスアイの存在を知ったのは、おそらく2017年の秋ごろ、たまたま見た深夜の番組だった。繰り返されるバトル、酷なシステムだなと思いつつ何かしら気になった。後にこれほどラスアイを好きになるとは、当時は夢にも思わなかった。
ラスアイは発足時からユニークな存在だった。プロアマ経験問わず、他のアイドルグループとの兼任もOK。すでに何年もアイドル経験がある人もいれば,昨日まで普通の中学生、高校生だった人もいる。出身地も北海道から九州まで幅広い。多様性のあるアイドルグループ、ダイバーシティーの走りのような存在だった。 良く言えば個性が際立つ。悪く言えば寄り合い所帯。そんなラスアイが短期間で1つにまとまったのは、団体行動や高速ダンスなど、次々課される過酷な試練を全員で乗り越えたからだろう。ラスアイほど汗と涙を流したアイドルはいない。試練を乗り越えて勝ち得た連帯感と一体感、ラスアイの大きな魅力だ。
篠原さんは大学4年生の時、就職活動の始まる寸前にラスアイに挑戦した。ラストチャンスだった。そしてアイドルという職業を選択した。暫定メンバーが召集された合宿には、大学の試験の合間を縫って駆け付けた。バトルで敗れた後、篠原さんは一人バスに乗り、仲間の元を離れた。その時の篠原さんの心情、いかばかりか、胸が熱くなる。アイドルという夢があっけなく消えかかったが、篠原さんは直後にオファーされたアンダーの道を、迷った末に選んだ。
ファンの1人として言う。のんちゃん、よくぞ夢をあきらめなかった。よくぞラスアイを続けてくれた。だからこそ、私たちはあなたと出会えた。そしてデビュー、あなたを待っていた運命の楽曲が「サブリミナル作戦」だった。ライブでこの曲のイントロがかかるだけで、もう涙腺が緩んでしまう。ラジオや新聞の仕事で何度もご一緒し、篠原さんの人柄に、すっかりはまった。どうやって育てれば、こんないいお嬢さんができるのだろうと思うほど、篠原さんは人間的な魅力がある。あるメンバーが言っていた。「のんちゃんに大丈夫だよと言われると、不安が小さくなっていく」。篠原さんは、そこにいるだけで周りの人を幸福にする。アイドル業界の中で、聖母マリアのような存在だ。よくぞアイドルになってくれました。そしてよくぞラスアイに入ってくれました。心からそう思う。
畑さんもラスアイが運命の分岐点だった。広告会社から内定をもらい、そのまま会社勤務をしていても不思議でなかったが、アイドルの神様は、この逸材を見逃さなかった。オーディションバトルを勝ち抜き、アイドルの道へ。畑さんにも言いたい。よくぞ内定を断りアイドルになってくれました。よくぞラスアイを選んでくれましたと。
筆者は畑さんのダンスが大好きだ。何度も足を運んだラスアイのライブ、畑さんのダンスが楽しみの1つだ。身長の高いメンバーのダンスは迫力があるし、圧倒されるが、筆者の視線はいつも、気が付いたら畑さんを追っている。引き寄せられる。上手いダンスを表現する言葉として、キレキレ、バキバキなどと言われるが、畑さんのダンスはキレキレなだけではない。そこに、しなやかさが加味される。なんとも言えぬ優美さ、優しさが漂う。だから大柄なメンバーの中で踊っても埋没せず、逆に目を引く。
ボリウッドダンスの最終オーディションで、この人のダンスは蝶が舞うような美しさだと思ったが、青春トレイン、Break a leg!でも、しなやかな切れ味という、畑さんにしか出せない魅力が滲み出ていた。ラストライブでも畑さんのダンスを目に焼き付けようと思う。
高橋さんは地下アイドル経験もあったが、ステーキ店でアルバイトをするなど苦労もあった。そこから開けた道がラスアイだった。高橋さんにもいいたい。よくぞ夢をあきらめず、ラスアイに入ってくれました。
この人の明るさ、前を向く姿勢が素晴らしい。周りを元気にしてくれる。ムードメーカーとして欠かせない存在だ。高橋さんの武器は当意即妙なトーク力だ。ラジオで何度もご一緒し、この人の頭の回転の早さと、適切な言葉を選ぶ力を目の当たりにした。今は死語になったが、昭和の時代、バラドルという言葉があった。バラエティーもこなせるアイドルという意味で、井森美幸さん、山瀬まみさんなどがバラドルと言われた。高橋さんには将来、この人たちの占めていたポジションを襲える可能性を感じる。
アンダーヨルライでの高橋さんの言葉が忘れられない。「時計の針を戻すことができても、私はまたアンダーの道を選ぶ。この仲間たちとまたアイドルをやりたい」。人を笑顔にするのがアイドルの仕事、高橋さんなりのアイドル像をこれからも模索してほしい。
今日、番組に来てくれた3人は、運命の針が示す方角がちょっと違っていたらラスアイはなかった。ラスアイはラストチャンス、ラスアイでなければアイドルにならなかったかもしれない。運命の糸に手繰り寄せられるように、ラスアイに集い、そして散じていく。切ない。
ラスアイ最後の曲となる「僕たちは空を見る」、聞くたびに心にしみる。筆者が特に好きなのが後半、転調するところ「誰かと巡り遭って そして恋に落ちて 何周か季節が過ぎ去り 別れが来たとしたって...」。私たちはラスアイと巡り遭って、そしてファンになって、何周か季節が過ぎ去り、別れが来てしまう。カウントダウンがつらい。何とか存続できないか、間際になっても思う。
この日、オンエアでかけたアンダーの楽曲「なんか、好きだよ」も泣ける。来年の今ごろ、この曲を聴きながら「あれから1年か。今でもラスアイのこと、ずっと好きだよ」と独り言つぶやくファンがきっといるだろう。

(日本経済新聞 編集委員 鈴木亮)

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