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菅波美玲,冨田菜々風,鈴木亮,栗林さみ

3・11。東日本大震災から10年が経つ。大きな波が押し寄せ、家や車を飲み込み、押し流していく。そんな衝撃的な映像を、余震の気配が残る東京のオフィスで、ただ呆然と見つめるしかなかった。

あの日、あの時、あなたはどこで何をしていましたか。そばに誰がいましたか。すべての日本人にとって、3・11は忘れられない記憶だろう。

あれから10年後の今日、3月11日は出張先の神戸からラジオNIKKEIに直行した。26年前の1月、ここでも大きな地震があった。当時インターネットはなく、携帯電話も普及しておらず、情報の伝達速度は今よりはるかに遅かった。地震発生から3、4時間経過してようやく届いたテレビの映像に息をのんだ。高速道路が崩れ、横転していた。そこで初めて、これはえらいこっちゃと思った。生きているうちに、これほどひどい災害はもうないだろうと思った。それから16年、この国は阪神大震災を上回る規模の災害に見舞われた。

10年という歳月は長くもあり短くもある。社会人生活が30数年になると、直近10年間の変化はさほど大きくない。一方、11日の放送でゲストに来てくれたノットイコールミーの冨田菜々風さんや菅波美鈴さんのように、当時、小学生だと、10年の変化は大きい。テレビに映るAKB48に憧れていた菅波さんは、10年経って、今度は自分がアイドルとして憧れのまなざしを向けられる側になった。鹿児島の小さなお祭りイベントで踊っていた小学生の冨田さんは、知らないおじさんに誉められ、それが嬉しくてアイドルを目指し、その夢を叶えた。

この国は自然災害が多い。地震だけでなく台風被害も毎年のようにある。火山の噴火、土砂崩れ、竜巻被害、冷害などなど、日本人の歴史は自然との闘いの歴史であり、自然との共存の歴史でもある。まもなく桜が咲く。春を実感する。季節はうつろい、時は流れる。そんな平凡でのどかな時間が、いかに貴重で有難いものなのか。失われて初めて気が付く。私たちはそれを東日本大震災で実感し、今またコロナ禍で痛切に感じている。

3・11から10年という節目の日の放送に、福島で10年前に被災した菅波さんが来てくれ、小学校時代の体験を語ってくれたのは、実に意義深かった。前回12月の放送で会えなかった冨田さんに会えたのも、嬉しかった。

アイドルの持つ力は大きい。好きなアイドルの歌を聴き、動画を見るだけで、ファンは元気になれる。今置かれた状況がつらかったり、厳しかったりすればなおさら、アイドルの癒す力は大きくなる。阪神大震災でも、東日本大震災でも、アイドルの歌を聴いて顔を上げ、前を向き、歩き出した人は少なからず、いただろう。アイドルは偉大だ。3・11の今日、改めてそう思う。

(日本経済新聞 編集委員 鈴木亮)


鈴木亮,栗林さみ

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