お知らせ:

ラジオiNEWS

番組へのお便りはこちら

IMG_0005.JPG

また1人、記憶に残るアイドルが表舞台を去ろうとしている。ukkaのリーダー、川瀬あやめさんが、今月末をもってグループを卒業、芸能界から退く。ファンの1人として本当に寂しく、やるせないが、川瀬さんご本人に感傷的なムードは皆無で、9年間のアイドル人生をやりきった満足感に満ちあふれている。それが救いだ。

ukkaの存在を知ったのは2022年4月。この番組の担当プロデューサーがukkaの大ファンで、半ば職権乱用的にラジオiNEWSにご登場いただいたのが最初の出会いだ。5月のライブにご招待いただき、そこで川瀬さんの歌に衝撃を受けた。この人は天才だと思った。

歌が抜群にうまいと思うアイドルがもう1人いた。4年近く前に解散したさんみゅ~のリーダー、西園みすずさんだ。西園さんはライブで絶唱する。全身のエネルギーを振り絞るように歌う。その声量は圧倒的で、会場の屋根を突き抜けるような歌いっぷりに、筆者は何度も背筋が続々した。

一方で、筆者が川瀬さんを天才だと思うのは、その域に軽々と達するためだ。にこやかに、何事もないかのように、川瀬さんの喉からこぼれ出る歌声は、ライブ会場を一瞬で貫き、聴衆の心をがっちり捉える。聞けば、デビュー前はそれほど歌が得意ではなかったそうだ。桜エビ~ずの初期、憧れの存在で歌唱力に定評があった、ももいろクローバーZの有安杏果さんの歌い方を必死に真似るうち、みるみる上達したという。まさに世阿弥の風姿花伝「真似ることは学ぶこと」、隠れた努力が天賦の才を引き出した。

9年間の楽しかったこと、辛かったことを尋ねると、いずれもライブだった。いかにも川瀬さんらしい。なりたいと思っていたアイドルという職業に就いた川瀬さん、ただのアイドルではなく、多くのファンに愛される、ライブに足を運んだファンをうならせる、日本を代表するアイドルになった。だからこそ、やりきった満足感に満ちあふれた卒業になる。

事務所からはずいぶん慰留されたと聞いている。卒業を伝えた直後のメンバーたちは涙したという。当然だろう。一方で川瀬さんは語る。結城りなさん、葵るりさん、若い後輩が順調に成長しており、後を託せる手応えを感じたからこそ、安心して卒業できると。

アイドルとして完全燃焼した川瀬さん。それでもこんな思いを禁じ得ない。貴方の歌をまた聴きたい、貴方が歌わないのは日本の損失だと。もう芸能活動はしないという、きっぱりした潔さも、川瀬さんらしく清々しいが、これから人生経験を重ね、深みを増した人格でいつの日かまた、マイクを手に取ってほしい。それが令和の歌姫、川瀬さんの宿命なのだと信じたい。

川瀬あやめさん、9年間のアイドル人生、お疲れ様でした。そして自然とこの言葉が出てくる。私たちと出会ってくれてありがとう。ukkaのリーダーでいてくれてありがとう。貴方の歌からファンはたくさんの感動や喜び、生きる力や勇気をもらいました。これからの貴方の人生が幸福に満ちあふれた日々でありますように。Good luck! 令和の歌姫。

(日本経済新聞 編集委員 鈴木亮)

IMG_0001.JPG

お知らせ

お知らせ一覧