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ザ・マネー~西山孝四郎のマーケットスクエア

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「世界で最も隔絶された都市の幸せの秘密〜パース訪問記②」をお読みくださりありがとうございます。「パース訪問記①」の前回は、豪州経済の概要をおさらいしつつ、その中でも州都パースを中心とした西豪州の特徴、住宅価格等についてお伝えしました。そして今回は「いま熱い観光」をテーマに取り上げたいと思います。なぜ観光が「いま熱い」のか。株式投資をされる皆さまにおかれましては「インバウンド」という言葉をもう何度となく耳にされたことかと思いますが、株式市場でも相当な盛り上がりを見せましたよね。

昨年、2015年の訪日外客数は約1,973万人(前年比47%増)と、JNTO(日本政府観光局)が統計を取り始めた1964年以降で最大の伸び率となりました。また、1970 年以来 45 年ぶりに訪日外客数が出国する日本人の数を上回ったというエポックメイキングな年でもあったわけです。これだけ海外からの旅行者が増えた背景にはいくつかの要因が複合的に関わっていると思われますが、円安による割安感の定着、ビザ発給要件の大幅緩和、消費税の免税制度拡充等が指摘されています。さらに、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)[i]の報告書によると、GDPに対する旅行・観光産業の直接寄与額は、2015年度が12兆8,958億円、そして2016年には13兆3,677億円になる見通しで、総寄与額[ii]に至っては2015年が約39兆円、2016年は40兆に達する見通しです。[iii]

では、世界の観光産業の状況はどうなっているのでしょうか。こうしたトレンドは日本だけが特別なのでしょうか。世界観光機関(UNWTO)[iv]が2016年1月18日に発表した2015年の海外旅行者数は世界全体で12億人(前年比4.4%増加)に達しました。増加は6年連続、また2016年についても4%の増加が期待できるとしています。観光業は今後、世界的な成長が見込める分野であり、またそれぞれの国においては雇用や消費の拡大につながることが期待できるため、世界各国がいかに海外からの観光客を呼び込むのか国をあげて取り組んでいる「ホットな」テーマです。

ちなみに、世界一の観光大国といえば、そう「フランス」です。人口6,600万人ほどのフランスには毎年それを上回る8,000万人超の観光客が訪れています。観光による収入はGDPの7%ほどを占めており、観光事業の雇用者は200万人を超えているそう。[v]ざっくり計算すると人口の3%程が観光関連に従事していることになる一大産業であることは間違いありません。

豪州の観光の現状はどのようになっているのでしょうか。以下は、豪州への訪問者の推移(短期・1年未満)を示したグラフです。2015年は約744万人、日本には年間2000万人に迫る海外からの訪問者がいるのに対し、予想外に少なく、個人的にとても驚きです。

(豪州統計局ABS[vi]のデータから作成)

ではどんな国からの訪問者が多いのでしょうか。以下は、観光局の統計[vii]による「国別訪問者数」です。トップはお隣のニュージランド、次いで中国、3位は英国でした。英国は旧宗主国ですし今でも豪州との関わりが深いと思われます。

 
(豪州観光局のサイトhttp://www.tra.gov.au/index.htmlより)

ちなみに、豪州は今後、拡大する旅行需要(特に中国がターゲットになるのでしょうが)を取り込むため、豪州全州から最大で観光事業者200社、アジア各国から旅行代理店300社が参加するCorroboree Asia 2016を2016年9月4〜8日の日程で開催するそうです。その開催場所として選ばれた都市が西豪州の州都パースです。西豪州のキム・ヘイムズ医療/観光大臣は「観光業は約94,000名の雇用を生み、昨年一年間での観光客による消費金額は89億ドルを記録しており、西豪州経済にとりなくてはならない産業。州政府は、2020年までに観光客の消費額を120億ドルまで増加させる戦略を立てており、Corroboree Asia 2016のような展示会によりアジアの主要マーケットからの西豪州への訪問者の増加が期待できる。」[viii]とコメント。資源依存経済からの脱却も含め、観光が成長への重要な産業であることが分かります。

続いてここからは、パースにある「一度は絶対に訪れて欲しい観光スポット」をご紹介します。パースから高速船で30分ほど、インド洋に浮かぶA級自然保護指定の国立公園のロットネスト島です。キレイなビーチと豊かな自然はもちろんのこと、さらにこの島では固有のキュートな生物にも出逢えます。

その姿がコチラ。


クオッカ(クアッカ・ワラビー)です。ピカチューのモデルになったと言われている有袋類です。口角が上がっていて常に笑っているような表情をしていることから「世界一幸福な動物」なんてキャッチフレーズもあります。このクオッカとセルフィー(自撮り)すると幸せになれるとか。豪州の人気俳優ヒュー・ジャックマンがクオッカとのセルフィーをアップし一躍有名になったそうです[ix]

水辺でじっと動かない物体を発見。近づいてみるとペリカンでした。



ロットネス島では、海水浴やシュノーケリング、サイクリング等、様々なアクティビティを楽しむことができますが、私がなかでもおススめしたいのは「セグウェイツアー」です。


ツアーはオリエンテーションと乗り方の練習からスタートします。最初はおっかなびっくりで恥ずかしいくらいに「キャーキャー」叫びまくっていましたが、5分も乗っているとあっとゆう間に体に馴染み、スピードを上げると全身に風を感じることが出来ます。



アスファルトの道を疾走し丘を登り、舗装されていないラフなデコボコ道を抜けてぐんぐん進むと、目の前にこんな風景が広がります。

 


正味1時間ほどのツアーですが、時の経つのはあっという間。インド洋に浮かぶロットネスト島の風を感じるにはセグウェイでの疾走はもってこいです。ロットネスト島の詳細はコチラのサイトからどうぞ。

思いっきり身体を動かして遊んだ後は、清潔で気持ち良いホテルでゆっくりと休みたいですよね。以前のブログでもご紹介したように、現在、パースはホテル建設のラッシュで新しいホテルが続々と登場しています。今回はタイプの異なる2つのホテルに宿泊しました。

一つ目は「アレックスホテル」です。






シンプルかつスタイリッシュな都市型のホテルです。無駄な装飾は省かれており、フットワーク軽くパースの街を楽しみたいという方にはもってこいではないでしょうか。ちなみに、洗面所に置かれていたアメニティの中に黄色い耳栓が・・・「なぜ?」と思いつつも、そのまま夕食に出てホテルに戻ってきたのが21時頃。その日は金曜日だったこともあり真夜中までお酒を飲んで騒いでいる人々の声が聞こえました。それだけ便利な場所にあるということなのですが、耳栓の謎はそういうことだったんですね。サイトがカッコイイです。 


続いて宿泊したのは「コモ・ザ・トレジャリー」。パース出身のケリー・ヒルが建築設計を手がけました。ケリー・ヒルといえば、あのアマンの建築で世界的にも有名です。140年もの歴史を持つ建物の中に洗練されたホテルが2015年10月オープンしました。


(コモ・ザ・トレシャリーのHPより)

部屋数は48室、すべてが50平米以上で、キングサイズのベッドにゆったりとしたバスルーム。





この「コモ・ザ・トレジャリー」はシンガポール資本のコモホテルグループの最新ホテルです。アメニティのスリッパがフカフカでラグジュアリーでした。

今回は観光をテーマに取り上げました。日本からは時差がほとんどない豪州、特にパースではホテル以外にもレストランやバーも続々と増えており「食」も楽しめる場所です。またパース近郊ではワイナリーもあり、西豪州産のプレミアムワインも楽しめます。次回はそんなワインについても取り上げます。

「地球上で最も隔絶された都市の幸せの秘密〜パース訪問記③」に続く。


[i]世界旅行ツーリズム協議会(WTTC日本における旅行・観光産業の経済的影響を分析した報告書「Travel & Tourism ECONOMIC IMPACT 2016 JAPAN」http://www.wttc.org/
[ii]間接寄与額(将来に向けた投資や政府によるプロモーション関連支出、旅行産業から派生する事業費など)を含むGDP総寄与額

[v]在日フランス大使館 http://www.ambafrance-jp.org/article676
[vi] http://www.abs.gov.au/

[viii] 西オーストラリア州政府 http://www.wajapan.net/news_j/2509

[ix]絶滅危惧種に指定されている。参考記事。http://jp.wsj.com/articles/SB11084297532868194328904582077682377426046