習近平政権はデフレを甘くみていないか

日本経済新聞編集委員で前の中国総局長の高橋哲史氏が、中国の政治経済を音声で読み解く番組「NIKKEIで深読み 中国経済の真相」。今回はキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の岡嵜久実子さんにお話を伺いました。
※2025年3月26日収録
音声文字起こし・要約機能を活用しています。
Topics from China
日中韓接近にトランプ氏の影 中国、日韓・米の分断狙う
高橋氏:
中国共産党の政治局員で外相を兼務する王毅氏が来日し、6年ぶりに日中ハイレベル経済対話を開きました。
王毅氏は日中韓の自由貿易協定(FTA)の交渉再開を求め、日本が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟にも意欲を示しました。
これは、トランプ政権の関税政策に対抗するため、日本と韓国をアメリカから引き離す狙いがあると考えています。
しかし、中国は日本産水産物の輸入再開を表明しながらも実現しておらず、尖閣諸島周辺での領海侵入も続けています。
これらの行動から、中国が本気で日本との関係改善を目指しているのか疑問に思っています。
岡嵜氏:
従来は政治と経済を分けて考えることができましたが、最近は経済安全保障の観点からアメリカとの同盟関係が重視されています。
中国から見ても、日本はアメリカの同盟国として動くことが前提となっています。
経済面では、日本から中国への投資は減少していますが、中国市場は依然として重要です。
日本企業は中国で大きな雇用を生み出し、技術力も高い水準にあります。
経済関係をうまく維持することが重要ですが、中国からの具体的な動きが見られない点が難しいと感じています。
中国、新エネ車やスマホにもデフレの足音 節約志向濃く
高橋氏:
中国のデフレ懸念が続いており、2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で0.7%下落しました。
特に自動車やスマホなどの耐久消費財の値下がりが大きな要因です。
高級品が売れず、低価格帯の製品が売れ筋となっています。
例えば、アップルのiPhoneは中国での出荷台数が前年より5%減少し、低価格品を揃えるvivoがシェア1位となっています。
ファーウェイも復活し、アップルは3位に後退しています。中国の深刻な不動産不況が需要不足を引き起こし、典型的なデフレの兆候が見られます。
岡嵜氏:
中国経済が完全なデフレに突入したとは言えませんが、デフレの足音が聞こえている状況です。
特に1月2月は旧正月の影響があり、物価の動向がわかりにくい部分もあります。
高級品の売れ行きが悪いのは事実ですが、アップルの苦戦は米中対立の影響もあります。
中国の技術力が向上し、低価格で高性能な製品が提供されていることもデフレ現象とは異なります。
問題は、節約志向が強まり、余ったお金を他の消費に回さないことです。
将来に対する不安や雇用情勢の不満が影響しており、対策を打たないと危険な状況になる可能性があります。
中国、幼児教育「段階的無償化」 韓国に次ぐ養育費高騰
高橋氏:
中国では教育費の高騰が少子化の大きな要因となっています。
習近平政権は2021年に学習塾を事実上禁止する政策を打ち出しましたが、これは失敗だったと言われています。
お金持ちの家庭は高額な家庭教師を雇うようになり、教育費はかえって膨らみました。
今回の幼児教育の無償化は、規制強化から補助金支給への大転換です。
しかし、地方政府は深刻な財政難に直面しており、実行可能性に疑問があります。
岡嵜氏:
地方政府に幼児教育の無償化を任せるのは難しいです。
豊かな地域では実行可能ですが、貧しい地域では難しいでしょう。
中央政府が全国にお金を配分する必要があります。
中国の義務教育は基本的に無償ですが、幼児教育の高いレベルの教育には費用がかかります。
教育費の問題は、教育の機会が均等でないことが大きな要因です。
習近平主席は学習塾の閉鎖を試みましたが、抜本的な改革が必要です。
本編
中国首相、追加の景気対策を示唆 貿易戦争に備え
高橋氏:
李強首相が外国企業のトップを招いて追加の景気対策を示唆しましたが、中国経済は非常に悪い状況が続いていると言ってもよいと思います。
習近平政権は全国人民代表大会(全人代)で歳出の拡大を決めましたが、十分な対応であるかについては疑問に思っています。
岡嵜氏:
中国政府は歳出を増やす意思を示しましたが、4%の増加では思い切った対策とは言えません。
追加の景気対策が必要になるでしょう。アメリカの政策に対応するため、手元に余裕を持たせているのかもしれません。
中国の不動産不況が需要不足の原因であり、出口が見えない状況です。
中央政府が地方政府に対策を丸投げしているように見えますが、中央がもっと積極的に関与する必要があります。
習近平政権はデフレに対する危機感が足りないと感じます。
番組の感想はXで #中国経済の真相 をつけてポスト!次回は2025年4月3日の配信です。お楽しみに!

