9月18日の「アサザイ 今日の1社」は、artience(4634・東証プライム)を放送しました。
今回は、執行役員 グループ経営部 部長 長坪 正樹 様にお越しいただき、事業内容や社名変更に込めた想い等についてお話を伺いました。
井上哲男より取材後記が届いております。ぜひご覧ください。
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取材後記
artience(4634)(東証プライム市場)
ラジオNIKKEIにて収録
お相手は、執行役員グループ経営部部長 の 長坪 正樹 (ながつぼ まさき)様
「分散の技術とEV向けリチウムイオン電池用材料」
創業は1896年で、今年で129年目を迎えるが、今年1月に社名を「東洋インキSCホールディングス」から現在の「artience」に変更された。
新たな社名は、「人の心を動かす、ワクワクさせる、感性」といったものを象徴するARTと「技術やテクノロジー」を意味するSCIENCEを組み合わせた造語であり、技術で「人々の感性に響く価値」を提供したいという願いが込められている。
「東洋インキ」といえば、株式投資家であれば誰もが知っているように、祖業は教科書など書籍用の印刷インキの製造であるが、その技術を発展させ、インキの原料である「顔料」と「樹脂」をベースに事業を拡大させてきた。
インキの部分では新聞や雑誌などから始まり、冷凍食品やスナック菓子などの食品パッケージのほか、缶コーヒーなどの飲料缶などにも使用されている。また、樹脂や顔料で培った技術をベースにエレクトロニクス分野でもシェアが高い製品が多くあるほか、現在はEV向けリチウムイオン電池用の材料に注力しており、インキ以外の顔料系、樹脂系のビジネスで半分以上の利益を稼いでいるのが現状だ。
この、インキ系、顔料系、樹脂系が3つのビジネスであるが、事業セグメントとしては、インキ系ビジネスを「印刷・情報関連事業」と「パッケージ関連事業」に分け、顔料系ビジネスは「色材・機能材関連事業」、樹脂系ビジネスは「ポリマー・塗加工関連事業」とし、4つの事業構成となっている。そして、この4つのセグメントがほぼ売上高で四分の一ずつを占めており、事業ポートフォリオの分散が図られ、バランスが取れた構成となっている。
それぞれの説明であるが、まず「印刷・情報関連事業」は、新聞、チラシ、書籍、雑誌、などいわゆる紙に印刷するインキの事業であり、デジタル化の中で先進国を中心に市場が縮小しているが、その一方で、紙のパッケージにも使われていることから、こちらは今後も堅調な需要が見込まれている。同社の技術力は高く、紫外線で一瞬で固まるUVインキや、紙の表面に特別な手触り感を与える製品など、特色のある製品が国内外で差別化を図ったうえで展開されている。
もう1つのインキ系ビジネスである「パッケージ関連事業」は、レトルト食品やお菓子、洗剤の詰替え包材などプラスチックフィルムに印刷するインキがメインの製品だ。そして、同社は、このタイプのインキで国内シェア1位となっている。このような食品パッケージの需要は、人口増加と経済成長に伴い伸びていくことから、インドや東南アジアなどの新興国を中心に、事業を拡大している。
(インキの原料である色の基である)「顔料」をベースとした「色材・機能材関連事業」は、シャンプーのボトルやプリンターのようなプラスチックに色をつける着色剤に加えて、テレビやパソコン等のパネル用のレジストインキ、そして、現在同社が一番注力している電気自動車、EV用の電池材料などがそのセグメンの範疇となる。
(インキのもう一つの原料で、くっつける役割をもつ)「樹脂」をベースとした「ポリマー・塗加工関連事業」は、缶詰や飲料缶の内面・外面を保護するコーティング剤、食品パッケージやエレクトロニクスの部材を貼り合わせる接着剤や粘着剤、そして、それを塗工して導電性などの機能を付与した機能性フィルムをモバイル用などに展開しているが、アサヒビールが世界初の生ジョッキ缶を発売し、大きな話題となったが、これは、同社が缶の内面に凹凸を形成し、泡立ちを最適化させる技術を活用したものだ。社名変更にもあった、人々をアッと驚かせるような「感性に響く価値」を実現した製品となっている。
同社の高い技術力として評価されているのが「分散力」。
インキでは原料を混ぜ合わせる「分散」を行うのだが、混ぜる事自体は簡単に思えるかもしれないが、顔料はナノサイズと非常に細かいもので、ベタベタした樹脂と均一に混ぜ合わせるのはとても困難を極める。その技術を磨き上げた結果、色の代わりに導電性の素材を混ぜ合わせてエレクトロニクス用の材料にすることや、更に細かく分散して透明度を高め、ディスプレイ用の材料にするなど、製品を進化させてきた。
その同社が現在最も注力しているのが「EV向けリチウムイオン電池用材料」であり、成長戦略の柱として490億円規模の投資を計画している。
電気自動車は足元では市場が鈍化しているが、長期的には脱炭素社会の達成に向けて、台数が増えてくることが予想されており、その市場向けに、同社は既にカーボンナノチューブ(CNT)という、炭素の材料を液体の中に細かく混ぜた液体を供給している。
このCNTは電気を流す、導電性を助ける役割を持つ材料で、これがバッテリーの高容量化に繋がり、結果として電気自動車の航続距離を伸ばすことに貢献するものだが、CNTは非常に細かい、細長い繊維のようなもので、簡単に切れてしまったり、壊れてしまう材料である。そのため、いかに壊れないようにうまく混ぜるかが鍵なのだが、ここで同社がインキの製造で培ってきた「分散の技術」が活かされるのだ。
現在は、複数のバッテリーメーカーから採用を獲得しており、増産の準備を進めているという。高い技術力に加えて、米国、欧州、中国、日本に5つの製造拠点を構え、いち早く生産・供給体制を整備していることも強みとなり、今後も顧客の拡大が期待される。現在は米国と欧州を中心に供給しているが、今年9月には中国向けの供給が始まり、来年は更に米国で1社、再来年は更に3社向けに供給を行う予定で準備を進めている。
この成長戦略の柱「EV向けリチウムイオン電池用材料」については、既に二回、このことについてのみの説明会を行っている。丁寧に状況をアナリスト、投資家向けに説明しているその姿勢や良しである。
今後も大きなカタリストとして期待されるこの「EV向けリチウムイオン電池用材料」の同社の説明、計数を追っていく必要がある。
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取材後記は以上です。いかがでしたか。
本日の放送はPodcast配信にて早速アップされております。
それでは来週もお楽しみに!
(関連ウェブ)
■artience IRサイト https://www.artiencegroup.com/ja/corporate/ir/
執行役員 グループ経営部 部長 長坪 正樹 様と



