「輸送用機器が下落率トップ」
「ドル安円高が株式市場のネガティブ要因に」
「"円売り・株買いポジション"解消に押される」
「今後の為替相場は...」
「日本人の外貨需要値強い」
7月11日の東京株式市場では、日経平均が小幅高となる一方で、TOPIXは小幅安でした。業種別株価指数では、輸送用機器が下落率トップとなりました。
為替市場では、ドル安円高が進んでいます。6月末に1ドル145円台まで上昇したドル円相場は、11日には140円台まで下落しました。ドル安円高を受けて、輸送用機器の株価が下落しました。
米国の金融政策や金利動向と合わせてドル相場を説明する動きが一般的です。しかし、今回のドル安円高は「米国金利上昇にも関わらず、ドルが上昇しなくなったため、円安進行の短期的な限界を感じた投機筋がドル買い円売りのポジション解消を急いだ」ことにあると考えます。
この1週間の株価下落(日経平均は10日までの5日間で約1500円下落)と円高の動きは、関連性があります。5月から6月にかけて、短期筋の「円売り・日本株買いトレード」が活発でした。短期筋のトレンドフォロー売買(円売り・株買い)が日本株を押し上げた面が大きいと見られます。そのトレードの巻き戻しが、今のマーケットに反映されています。
短期筋の売買による上昇部分は剥げるのも仕方ありません。しかし「円安に伴う日本企業の収益上方修正期待」を、マーケットは本気で織り込んだ訳ではありません。「円安に伴う上方修正期待」はそもそも織り込んできたわけではないので「円高に伴う業績期待値の目減り」が、株価を押し下げる余地も少ないと考えます。
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米国金利が高止まりして、日銀の緩和的な金融政策が続くのならば、日本人はドル建てを軸とする外貨建て債券を継続的に購入します。4%超の米国債投資に魅力を感じる投資家も多いのでしょう。
為替相場は投機筋の短期的売買によって動きます。お湯を沸かすヤカンに例えるならば、ヤカンの注ぎ口の部分が投機筋の売買によって湯気が出たり引いたりします。でも、基本的には、ヤカンの外側からは見えない中心部が熱くなるかどうかが、注ぎ口の温度を左右します。ヤカンの中心部では日本人の円売り需要が強いために、基本形としては円安になってしまいます。
財務省が公表している国際収支状況によると、今年の中長期債への対外証券投資は、
1月 8903億円の買い越し
2月 4兆3505億円の買い越し
3月 4兆7437億円の買い越し
4月 1兆1330億円の売り越し
5月 3兆1629億円の買い越し
6月 2兆3945億円の買い越し
と推移しました。
今年6月までの半年間累計で、日本人投資家は外国の中長期債を14兆4000億円買い越しています。
昨年2022年は1年間で23兆7810億円の売り越しでした。昨年は円安進行に伴う外貨建て債券の利益発生、金利上昇→価格下落に伴う金融機関の損切需要等も発生したため、大幅な売り越しとなりました。今年は、ドルが下げた場面で日本人は積極的に外債を買っています。
ちなみに2014年~21年の8年間で、日本人は外国の中長期債を96兆円買い越しています。8年間で100兆円近くも買ったので、昨年のドル高場面で23兆円売った訳ですが、今年は再び買い姿勢を強めています。エネルギー価格上昇の経験等も踏まえ、日本人は生活防衛のために外貨建て債券の購入に努めています。
平坦な言葉で表現すれば「多くの日本人が外貨建て資産で運用をしたら円安になる。円安になって輸入エネルギー価格が高くなったら、自分の生活が苦しくなってしまう。生活防衛のために自分も外貨建て債券を買おう」の発想になります。
7月11日午後3時20分記