「重要決算発表を控え、利益確定売りが先行」
「ASML、1-3月期受注高37億ユーロ(10-12月期比4割減)」
「日経平均8連騰中、予想PER13.16倍→13.73倍に上昇」
「PER上昇の理由は?」
「24年3月期の日本企業の業績動向を注視」
「信用取引活用の投資家からは空売り需要も活発に」
4月19日の東京株式市場は軟調な展開となっています。日本時間の19日午後から、グローバル企業の重要な決算発表が本格化します。日本時間19日午後2時にASML、19日から20日にかけて、IBM、ラムリサーチ、テスラ、TSMCが1-3月期決算を発表します。決算内容と株価の反応を見極めたいとの声が広がるのは当然です。
オランダの半導体製造装置メーカーASMLが日本時間の午後2時、1-3月期の決算を発表しました。ASMLは18日の米国市場における時価総額が2662億ドルに達する、世界最大の半導体製造装置メーカーです。
ASMLの1-3月期売上高は67億ユーロ(10-12月期比+5%)、純利益は19億ユーロ(同+7.6%)となりました。順調な収益状況です。しかし、1-3月期の受注高は37億ユーロとなり、10-12月期の63億ユーロに対して約4割の減少となりました。ASMLの四半期ベースの受注動向を以下に示します。
ASMLの受注高実績
2021 2022 2023
4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q(今回発表)
7050 6977 8461 8920 6316 3752
23年1-3月期の受注高が大きく落ちていることがわかります。台湾の半導体メーカーTSMCの新規発注が抑制されていることを裏付けるデータとなります。19日の欧米市場での株価動向に注意します。
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日本企業でも、決算修正の動きがあります。住宅資材・建材大手のLIXIL(5938)は18日、23年3月期の営業利益を下方修正(390億円→250億円)しました。スマホの電気接続部分のメッキ薬を供給する高純度化学(4973)も18日に業績下方修正を発表しました。両社の株価は19日の東京市場で軟調に推移しました。
3月期決算企業の1-3月期は、第4四半期決算なので、株価を見る上で、より重要なのは今後の見通し、24年3月期の見通しです。現状では、楽観できる状況にはありません。
これまでの日本株の上昇は、PERの上昇で説明できます。6日に13.16倍だった日経平均の予想PERは、18日終値では13.73倍に上昇しました。
日経平均の予想1株利益(日経平均÷予想PER)は6日に2087円、18日も2087円です。時系列で記載しましょう。
4月3日 28188円15銭 13.53倍 2083円
4日 28287円42銭 13.57倍 2084円
5日 27813円26銭 13.31倍 2089円
6日 27472円63銭 13.16倍 2087円
7日 27518円31銭 13・18倍 2087円
10日 27633円66銭 13.26倍 2083円
11日 27923円37銭 13.46倍 2074円
12日 28082円70銭 13.48倍 2083円
13日 28156円97銭 13.48倍 2088円
14日 28493円47銭 13.56倍 2101円
17日 28514円78銭 13.63倍 2092円
18日 28658円83銭 13.73倍 2087円
日経平均8連騰は、完全にPERの上昇によるものです。米国金利の上昇・ドル高によって日本株へのトレーディング意欲が高まり、海外投資家の買いによって日本株のPERは上昇しました。業績動向に対する期待値が明確に高まったとは、私は考えていません。
物足りない決算内容でも「株価下落後」は「株価が大幅に下げるほど悪くない」と捉えられます。逆に「株価上昇後」には「業績面と比べて株価は楽観に傾き過ぎた」と反省されるケースも増えます。株価上昇時を経て、決算発表を待つ段階では、あまり前のめりにならない姿勢が無難なのでしょう。
そのあたりの投資家心理を示すデータもあります。日本証券金融の貸株残、融資残のデータです。毎日、日本経済新聞のマーケットデータ欄に掲載されています。6日に日経平均が安値を付け、8連騰となった際のデータを転載します。
貸株残 融資残 (単位 100万円)
4月6日 169937 180481
7日 175851 166834
10日 182722 163836
11日 201503 156291
12日 215691 156965
13日 231535 161836
14日 260106 163881
17日 264922 171012
18日 278310 175568
貸株残の増加が目立ちます。6日に対して18日の貸株残は63%も増えています。貸株残の増加は「信用取引の空売りを行うために株を借りる需要が増えている」ことを示します。つまり、信用取引を行う投資家は、空売り行動を積極化させているのです。
企業の事業環境好転の期待が薄い中でのPER上昇に対して、警戒する投資家が存在します。極めて当然のことです。実際に事業環境が好転するのならば、株価上昇の方向は変わりません。しかし、事業環境不変にも拘らず、PER上昇が進んだのならば、株価の調整場面が訪れます。事業環境が改善する企業への選別投資を徹底する場面です。
4月19日午後2時40分記