9月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.09/08 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.374~東京JAZZフェス2017】

 今や日本最大のジャズフェスとも言える「東京ジャズフェス」。夏の終わりの9
月最初の土・日、2日間にわたって行われるこのフェスに、今年も実直に2日間足を運んだ。今回でこのジャズフェスもなんと16回目だが、今年は再出発と言った意味合いもあり、この10数年続いて来た有楽町の東京フォーラム(記念すべき初回は調布の味の素スタジアム)から、今年は主催NHKのおひざ元、渋谷のNHKホールに会場を移しての第1回で、渋谷の街イベントとしての意味合いも含め開催されることになった。まあ一口に渋谷の街と言っても広いので、余り街全体を巻き込んだジャズイベントと言った感じには成り得なかったが、ニューオリーンズから呼んで来たストリートバンドなどの演奏行進などには人も集まったようで、それなりには話題を集めていた。ただ肝心のNHKホールの本公演の方は、ホール周辺事情などかなり疑問符が付く内容。まずホールの脇道=ケヤキ並木での恒例イベントは、外なのに大きな音は禁止とのことで、例年登場していた我らが早稲田ジャズ研のオンステージも実現不可能になり、およそ盛り上がりに欠けた。ホールの中の方も、慇懃無礼でヒラメ主義&半官僚機構のこの放送局らしく、自由度はかなり制限され、ジャズイベントらしい闊達さに欠け、お題目の「渋谷から世界に...(フロム・シブヤ・トゥ・ザ・ワールド)」とはだいぶ雰囲気も実態も違う感じ。更に公共放送のホールと言うこともあり、協賛各社のヴィデオなども昨年までとは違い会場では一切流されず、協賛社メリットはどこに...などと、いらぬ心配迄してしまう程だった。

 
さて昼夜2公演の方だが、山下さんのスペシャルユニットによる「寿限無」セッションの再演で幕を開け、サダオさん(渡辺貞夫)のデイブ・グルーシン、リー・リトナーと言ったかつてのお仲間との「カリフォルニア・シャワー」再演が大ラスを飾ると言う、かつてないラインアップ。J-ジャズ2巨頭の幕開けと大閉め、これが吉だったかどうかは...、聞いた方達それぞれの判断に任せるしかないが、何か今回のジャズイベント全体を象徴しているようで(かなり内向きと言うか縮み傾向)、ぼくは否定的に捉えざるを得ない。観客席はかなり満杯で興行的には成功とも言えそうだし、サダオさんとグルーシン、リトナー再開セッションも、あの時代を良く知るものには胸を打つものもあった(一番観客のリアクションが多かった)としてもなのだが...、全体の運営や仕切り、ステージ起用等々には、疑問符を付けざるを得ない感じがする。

 
さて今回の出し物の目玉になったのは2日目のトップに行われた、話題の才媛、狭間美帆が全体ディレクションとデンマークのフルバンドの編曲(作曲も...)を担当、かなり大掛かりなジャズ史俯瞰ステージ「ジャズ100年プロジェクト」だと思われる。ニューオーリーンズジャズから現代のコンテンポラリージャズまでをスクリーン映像も交え、リー・コニッツ、リー・リトナー、日野皓正、山下洋輔(彼女の師匠)など豪華ゲスト陣をフューチャーした形で、音で綴り上げると言う大胆な企画。彼女はコンパクトに見事にその企画のコアを抉り出し、その才能の豊かさを実証して見せてくれた。
 
この他にぼくが興味を引かれたのは、今年結成されたばかりと言うチック・コリアとスティーブ・ガッドの双頭新バンド(ラテンジャズ色横溢したぼくのお好みの生きのいいバンド)、ユダヤ系に中近東の音要素も加味し、ピアノトリオの新たな展開を提示したイスラエル出身の注目のシャイ・マエストロ・トリオ、そして大トリを彩ったサダオさんのスペシャルユニットの3ステージだった。また狭間セッションのゲストで登場したリー・コニッツは80才を優に超す高齢。さすがにその音はよれてはあったが、意気込みはまことに立派で、胸打たれる所も多々あった。

 これまでは毎回の昼夜公演にはそれぞれなにがしかのお題目(「ブルースの夜」等)が付けられていたのだが、それも今回は無し。いかに編成に苦労したのかが良く分かる訳だが、まあそうは言いつつもそれなりにそれぞれのステージを愉しんだのもまた事実ではある...。
 
特にサダオさんがアンコールに、グルーシンと二人であの復興応援ソング「花は咲く」を吹き始めた時は、いささかグッと来てしまった。やはりあれだけ感動的な場面を演出できるのは、サダオさんならではであった。
  
 
最後に一つ大変に残念だったのは、このジャズイベントを当初から実質的に仕切り、そのPRも兼ね我がジャズ番組にも毎年登場してくれていた、敏腕ジャズプロデューサーの八島敦子女史。その彼女がこの初夏、様々なストレスの為(?)からか病に倒れてしまい、このイベントの新たな立ち上がりを陣頭指揮出来なかったこと。彼女の心境を察すると本当に残念な思いもあるが、今回のジャズフェスはどうにか成功、来年もまた彼女のあの雄姿を見れるはずである。今年以上に真に開かれた素晴らしいフェスを作り上げてくれるに違いない。彼女のカムバックとその健闘を心から望みたい。

【今週の番組ゲスト:ブルーノートジャパン広報の岡田安正さんと、コットンクラブ広報の上神彰子さん】
今年3回目の開催となる「Blue Note JAZZ FESTIVAL」、横浜赤レンガ倉庫特設会場で923日・24日に開催されます。 

M1
FIRE / 上原ひろみ×Edmar Castaneda
M2Change of the Guard /  Kamasi Washington」
M3Holding On / Gregory Porter
M4Rock With You / DANI & DEBORA GURGEL QUARTETO」
 
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9月2日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.09/01 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.373~ジャズ映画「ロウ・ダウン」】

 ジャズプレーヤーあるいはシンガーをモデルにした映画、いわゆる「ジャズフィルム」はどうも今イチ面白味に欠ける物が多い感じがある。この手のものとしては、前にこのコラムでも取り上げた、チェット・ベイカーを描いた『ブルーに生まれて』、帝王マイルスの沈黙時代を取り上げた『マイルス・アヘッド』などが最近公開された。『ブルーに...』の方はかなりな佳品だったが、マイルスの方は愚作、そしてこの手の作品の代表格が、ジャズ好きの巨匠、クリント・イーストウッド監督による、天才チャーリー・パーカーの伝記作品『バード』と言うことになるが、これもイーストウッドらしからぬ余り感心しない出来栄えだった。どうもこうした作品、取り上げる対象に監督達の思い入れが強すぎたり、演じる役者の演奏風景などにもいささか熱が欠けているなど、様々な状況にもよるが余り芳しいものがない。そんな中ある友人から、あの伝説のピアニスト、ジョー・オーバニーを描いた映画があるそうで、これが結構良いらしいよ...と言う話を聞き、興味を掻き立てられたのが、その実態は分からなかった。それが先日国立にある行きつけのヴィデオ屋を覗くと、伝説のジャズピアニストを描いた作品...と惹句にあり、それが噂のジャズフィルムに違いないと確信、早速借り受け見てみることにした。4
年ほど前の作品で、日本未公開のこのジャズ映画のタイトルは『ロウ・ダウン』。

 「
ロウ・ダウン」とは俗語で実情と言った意味合いで、伝説のピアニスト、オーバニーの実情を描く...と言った感じなのかと思っていたら、これには原作があり著者は娘で作家のエイミー・オーバニーと言うことが資料から分かった。70年代初めその才能が再び認められつつあった時代の彼を描いたこの映画も、娘エイミーから見た父親、ジョーの姿が活写されており、このロサンジェルスのハイスクールに通う娘を演じるのが、美形ファニング姉妹の妹の方、エル・ファニング。このヒロインの彼女が実に可愛らしく素晴らしく、不安と期待が入り交じるこのアドレセンス期の少女の実情を見事に演じ切る。これだけでこのジャズフィルムは成功と思わせるほなのだが、父親のジョーを演じる個性派として結構注目を浴びている、ジョン・ホークス(今回初めて知ったがい渋くいい役者)も、写真で見る実際のジョー・オーバニーにも良く似ており、この繊細で天才肌のバップピアニストの心情・実情を描き出す。そしてもう一人、ジョーの母親を演じるのが名優グレン・クローズ。ジャンキーで薬を止めることが出来ず、収容所と自宅を行き来する(人生の半分は収容所にいたと自身で語っている)彼を励まし叱り愛おしみ、可愛い孫の世話も一人で引き受けると言う難しい役柄をこなしている。こうしたメインの役者達が全員実力派揃いだし、また余りクラブなどでの演奏風景も出て来ない~ジャズを前面に打ち出さない~のも好感が持てる。

 
ところでバップの興隆期、始祖チャーリー・パーカーともしばしば共演(パーカーの最初のピアニストとも言われた)、パーカーもその才能を評価していた白人ピアニスト、ジョー・オーバニー。彼が何故、伝説のピアニストと言われるかと言うと、パーカー共演時の素晴らしさでジャズ仲間達の口コミで評判を呼ぶが、実際にその演奏はアルバムに収められておらず、57年に吹き込んだ唯一のリーダー作も、リハーサルを収録したプライベート盤だと言うことで、実態の分からないピアニストとして幻度が高まったと言う訳。それだけにファンの関心も高くなる訳で、この映画の舞台となる70年代初め頃からカンバックも果たし、再び彼に注目が集まり以降88年に63才で亡くなるまで、10作近いアルバムを吹き込み、それらはどれもバップ魂の横溢した、切れ味抜群の素晴らしいものだった。しかしその生活は薬に溺れた、なんとも貧しく寂しく自堕落なもの。そんな彼を敬愛し常に行動を共にするいじらしい迄の娘エイミーの姿。離婚し別に暮らす母親もジャンキーで娼婦まがいの生活、エイミーに向かって"あんたは実の娘ではない"とまで言い切る。そんな悲惨な中にも、常に前向きに行動する彼女の目を通してみた天才ピアニストの実情。どうも一般の映画ファンは単なるジャンキー映画としか見ていないようで、「暗いだけで面白くない」と評価は良くないようだが、心に沁みる素晴らしい作品と思う。画面のトーンも暗く沈んだものだが、そこはかとない哀愁が感じられ胸に迫る。異色のジャズフィルムで一見の価値ありの作品だと思います。

【今週の番組ゲスト:ジャズテナーサックス奏者の中村誠一さん、ジャズボーカリストの紗理さん、父娘のお二人】
M1「小さな花 / 中村誠一」
M2
How Deep Is Your Love / 紗理」
M3
Joy Spring / 紗理&中村誠一」
M4
I've Got You Under My Skin / 中村誠一&吉岡秀晃」

8月26日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.08/25 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.372~菅平詣で】

 ここ追分山荘での愉しみの一つに菅平詣でがある。まあ一つと言うよりもむしろ高原暮らしの愉しみの半分ほどは、この菅平詣だと言えるかも知れない。菅平と言えばかつてはスキーのメッカ。その上質なパウダースノーはスキーヤー達の憬れの的だったが、今はスキー界全体が絶不調で、若い人達が菅平に上がってくることも余り無い状態。それだけに当然スキー客目当てのホテルや民宿も冬シーズンは振るわない訳だが、ここにはスキーに変わる強いコンテンツがある。それがラグビーで、関東を中心に全国の大学・高校のラグビー部が集まり、これによりホテルや民宿等も充分に潤っているのだ。

 
この地での活動は早稲田大ラグビー部が皮切り。(確か)戦前からここにグランドと合宿所を持ち、その早稲田と練習試合をする為に他の大学もこの高原に来て、それにつれ高校ラガーマンも集まるようになり、今のラグビーのメッカとしての形が誕生したと言う次第。10年ほど前までは菅平に正式のグランドを持っている大学は、早稲田以外にほとんど無かったのだが、ここ数年は慶応、明治、そして帝京などもそれぞれに宿泊施設と提携、各々のグランドを持つようになっており、菅平のメイン通りに立て掛けられた試合予定表には、今日は○時から慶応グランドで試合あり、などの予定が書かれるようになってきた。菅平の老舗、早稲田グランド・合宿所は菅平の高原入り口近く、本道から分かれた脇道の横にあり、大きなグランドが上下に4面ほどで、練習試合はその下のグランドで行われる。その上下の僅かな斜面が見学スペースで見難いことこの上ないし、斜面の芝生は安定感に乏しく、滑り落ちるファンも少なくない。そこで早稲田グランドの試合はなるべき敬遠気味なのだが、10数年ほど前に菅平が上田市に組み込まれることとなり、それを記念して菅平の高台にラグビーグランド(数面はある)や陸上グランドを併設した高地スポーツ施設、サニアパークが誕生、主要な練習試合はそこで行われるようになり、見易い環境も整った。このサニアラグビーグランドのこけら落としの試合は慶応戦で、上田市の稲門会(早大)・三田会(慶大)と言うOB会共催で行われ、これは確か有料試合だったと思う。このサニアグランドは早稲田グランドからはかなり高い所にあり、下の(早稲田)グランドは雲・霧の中でもサニアの方は好天とか、その逆の場合もあり、僅か100メートルぐらいの高度差が観戦には大きく響くこともしばしば。7年ほど前にサニアグランドで早稲田が法政(?)とやった時などは試合開始と同時に濃霧が立ち込め、試合観戦どころかやっている選手達も少し離れればお互いが確認できない程、それではパスも通らないと思われるのだがこれで試合を完遂させてしまったのだから、立派と言うほかない。

 
さてこの菅平、我が山荘からは浅間サンラインと言う立派な広域農道を走って1時間ほどの距離。それだけに例年2~3回は早稲田の試合を見に上がることにしているのだが、今年はあいにくの天気、その上早稲田の主力選手もユース日本代表等に取られてしまい、それでなくても層の薄い早稲田は期待薄。それやこれやで初戦の大東大との一戦はスルーしまったのだが、春には完封された相手になんとこれが逆転勝利。更にはAチームからÐチームまで全てのチームが勝利と言う考えられない結果。そこで日曜日に行われる本命の帝京大戦には是非...と言うことで、東京から駆け付けた友人と共に早めにサニアグランドに向かう。天候も徐々に回復し数時間ほど後の試合開始時にはかなりな好天。これは幸先良しと胸躍らせたが、結果はこれまでぼくが見た数多くの菅平で見た早稲田の試合の中でも最低・最悪。現在の王者、帝京大には大分実力的に及ばないとは思っていたが、ここまでひどいとは...。スクラムは崩されるは...、バックスは相手のスター選手にいいように走られるは...と全くいいところなく、83対0と屈辱の完封負け。しかし多くの早稲田ファンは余りのショックの為か罵声すら出ない。トホホ極まれりと言った感じで、もう今年の本番の対抗戦も見るのはやめ...と思ってしまったほど。

 
 帰りはこのむなしさ・寂しさを一変に洗い流そうと、あの玉村豊男氏の有名ワイナリーのすぐ上にある大田区の大きな保養施設にある温泉(金原温泉と言う良湯)に浸かった。口惜しくも悲しい一日で、翌日の仕事の為に東京に直行。奮い立て早稲田ラグビーである。我がラグビー番組のパーソナリティー、ラグビー部OBの藤島大さんも激怒しているに違いないが、この屈辱晴らして欲しい。
と言うことで今は今週の1曲などは考えられない心境です。お許しあれ。

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】

ジャズトーク、青木先生にJoe Zawinulについてお話し頂きました。

M1Mercy, Mercy,Mercy / Cannonball Adderley

M2BADIA / Weather Report

M3THE HARVEST / Joe Zawinul

M4THE SEARCH /  Joe Zawinul
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8月19日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.08/18 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.371~追分通信17(Ⅲ)変わりゆく追分周辺の自然・風景】

 8月11日は山の日だった。まさに信濃~長野県の為に作られた休日の様なもので、この日は県下各地の山々で小学生から高校生まで、多くの学生の集団登山も行われた。ただ麓はどうやら晴れていても山はあいにくの天気だけに、子供達も苦労したと思う。ぼくもお山(浅間山)の周辺から、八ヵ岳連峰、美ヶ原などが一望出来る高台に上がって眺めてみたが、残念なことに山々はどれも雲の中のだった。まあこの夏の最中の休日、ぼくのような暇人には余り関係ないが勤め人や工員さんなどはお盆休みが長く取れ、全く山に関心が無くとも嬉しいには違いない。ただし鉄道や道路、海外への航空便なども大混乱で、帰郷や遠出の人達は大変だったろう...と同情に堪えない。

 さてこの追分周辺もこの時期は大分人が込んで来ており、朝夕などは御影用水脇の小道は犬連れの家族連れで一杯。柴犬からプードル、チワワなどさながら犬の品評会の様相。
 
御影用水と言えばこの前は何と鴨が10数羽、こんなに多くの鴨の群れを見たのは初めてのこと。かなりな感激ものだった。また中軽井沢の商店街の外れでは雉の親子が悠然と散歩しており、これにも驚かされた。ただ以前は我が山荘の屋根にも寝そべっていた猿軍団は最近とんと見かけることも無くなってしまった。居ると厄介だが居なくなると何か寂しく、また自然破壊も進んだのでは...などと勘ぐってしまう。そう言えば今年この山荘が出来て10数年目、初めて蛍を見た。明け方何か明かりがふらふらと飛んでいる。よく見ると一匹の蛍。これには感激した。近くに用水から引いた小川が流れているのでそこで孵化・成長したものかもしれない。たったひとつ(蛍は一羽か?)だったが、実に愛おしい感じがしていつまでもそのか細い光を眺めていた。

 
サル軍団は消え蛍現れる...など、追分周辺の自然・風景もここ10数年で変化しており、何より気になったのは周辺に家(自宅・別荘)が増えたこと。また太陽光発電設備の増加とそれに反比例したコスモス畑の減少などである。御影用水の南側には今までほとんど家などなかったが、ここ数年林が切り開かれ次々と家が建てられている。まあこれもしょうがないことだが、何より家を建てるとその周辺の木々が全て伐採され、丸坊主になってしまうのだ。もう少し自然と調和させてと考えるべきだろうし、特に別荘を建てるならばなおさらのこと。これはなにも追分周辺だけでなく軽井沢全体に言えることで、近い将来軽井沢は別荘地としての地位を、蓼科、安曇野、那須などもう少し自然を大事にしている地域に奪われること必定の様に思われてならない。

 そしてもうひとつ気になっているのは太陽光発電施設の多さ。今ある空地や草地、あるいは林なども次々とこの施設に取って代わられている。原発などよりもはるかに良いとも思うのだが、こう多すぎると考えもの。荒れ地が売電で少しでも金になれば...と考えているのだろうが、そろそろ過飽和状態のようにも思える。そしてこの為にこれまであったコスモス畑(ほとんどが荒れ地に咲いている)を見かけることも無くなってしまった。これもまたこの時期としては寂しい限りである。赤・紫・白、色とりどりのコスマスが咲き乱れる景色、これもまた追分周辺の夏から初秋の美しい風景だっただけに残念至極である。

 
追分とコスモスと言えば、追分を「美しい村」と呼び、そこをこよなく愛した詩人、立原道造のことが直ぐに思い出されるが、軽井沢図書館で「立原道造の夢見た建築(種田元晴/鹿島出版会)」と言う本を見つけ、借り出して読んだ。立原は病の為に夭逝した(24才)抒情派の天才詩人として知られるが、また東大の建築科を首席で卒業した若き建築家としての一面も持っていた。夭逝したために実際の建築物としての作品は殆どないが、東大時代に最優秀賞を取った作品が「追分の芸術家村構想」で、図面だけでも素晴らしい作品と知れる。そうした立原の建築家としての側面にスポットを当てた珍しい評論集で、彼の生い立ち、追分に向けられた比類ない愛情などが、同じ建築家としての目で描かれており大変に面白かった。山荘に居る間はTVもないし新聞も取っていないので、もっぱら読書かジャズ・クラシック鑑賞。面白い本もいくつか読んだので、それらはこれからおいおい紹介していくことにしたい。では最後にぼくの最も好きな立原の作品から少々...


 夢はいつも帰っていった 

 山のふもとの寂しい村に。

 水引草に風が立ち 

 草ひばりの歌い止まない

 しずまりかえった午さがりの林道を...

 「のちのおもいに」

【今週の番組ゲスト:女流2トロンボーンユニット「THE BON BONES」の上杉優さん(写真右)、駒野逸美さん(左)

2ndアルバム『Celebration』より
M1
Celebration
M2
Night Lights
M3
Sudpol
M4
April in Paris

8月12日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.08/11 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.370~追分通信17(Ⅱ)祝5周年!カフェ・グルマン】

 さて今週は先週のお約束通り「カフェ・グルマン祝5周年」と言うことで...。追分の山荘に7月末に着いて以降、今年の天候はかなりな絶不調で晴れの日も少なく、朝晩などは涼しさを通り越し長袖でも寒い位。まあ天気具合は今イチだが、日常はまったりとして悠々モードなのは例年どおり。山荘に到着した夕方、郵便ポストを見ると何かが括り付けてある。請求書ぐらいで後は殆ど郵便物も来ないので、何事かと思って手に取ると、これが招待状。「カフェ・グルマン5周年パーティーのお知らせ」とある。そうか平井さんのお店「カフェ・グルマン」もとうとう5年目を迎えたのか...と、グルマン勝手応援連の一人としてもいささか感慨深いものがある。「このたび当店は7月8日をもって開店5周年を迎えることになりました。これもひとえに皆様の多大なご愛顧とお力添えの賜物と厚くお礼申し上げます。つきましては日頃の感謝をこめて5周年パーティーを開きたいと思っています...」とあり、パーティー日時が書かれていた。見ると前週の金曜日の夕方から...、もう終ってしまっていたのだ。残念至極。しかし前もって知っていたとしても、その日は東京で仕事があり参加は叶わなかった。じゃ明日の朝(モーニング営業中)お祝いも兼ねてお店に寄ろうかと決め、その夜は早めに就眠。

 
ところでこのカフェ・グルマン(Tel0267-31-6554)というお店、今までこのコラム、特に数年前からの追分通信ではしばしば登場の常連だが、知らない方の為におさらいを...。追分の外れの御影用水脇にある(正確には我が山荘と同じく御代田町の端)、軽井沢随一の眺望と食事を誇るドームハウス型の銘店。知り合いなどが来ればいつも歩いて20分ぐらいのこの店に連れて行き~先日もぼくの台湾取材旅行のパートナーを務めるミス・エミリーとその旦那(ともにラジオたんぱOB)もここに案内し感激されたが、お勧めの軽井沢グルメ&眺望のカフェ(絶品クレープとガレットが売り物)である。そして何よりモンゴルのパオにも似た多面形の独特なドームスタイルの建物で,それを元広告マンのマスター平井さんが、一人で設計から建築まで3年以上かけて作り上げたと言う、涙の結晶とも言える建物。その経過を3年間ほどぼくはうちの亡きバカ犬、ピーちゃんと共に散歩の途中に見続けて来たと言う曰く付きの物件でもあり、それが完成し初めてカフェなのだと知って感嘆、開店2日目に店に顔を出し、直ぐにお馴染みになった次第。

 
翌朝、御影用水脇の小道(少し前まではバカ犬を連れて毎朝散歩していた所)を通って店に着くと、丁度朝8時のモーニング営業開始時。マスターの平井さんの奥さん(フランス語堪能で通訳をこなす)が色々準備をしている最中で、ぼくは当然一番乗り。「あーら、小西さんお久しぶり、何か交通事故にあったんですって...大丈夫なの?」と気さくに話しかけてくる。5周年のお祝いとパーティーに出れなかったお詫び、事故の概要など積もる話をし、娘さんの作るパリパリの皮が病み付きになる絶品ガレットセットを注文。ここのBGMはフランス語の有線トーク放送で、内容はさっぱり分からないがトークが音楽の様でなんとも心地良い。少ししてマスターも登場。改めてお祝いとパーティーの話などを伺う。パーティーには全部で60名ほどが参加、かなり盛況だったと言う。「出たかったんですけどその日は仕事が...」と詫びると、「別荘の方達には余り知らせなかったんですが...」とのこと。

 
それにしてもこうしたお店は5年続くことが一つの目安で、店が始まった頃平井さんも確か「5年持てばいいんですがね...」とも語っていたので、その目標を完全にクリアー、次の10年目を目指しまた新たなスタートを切ったところでもある。「店は5年目ですが、ここで店を始めようと思い立ってからは、もう10年近くになりますかね」とのこと。場所を決め設計をし、ほぼ一人で基礎工事から建築を始め、3年余りでこのパオ形状のドーム建物を作り上げた。キットの工作や電気器具など説明書があっても、容易に組み立てられない不器用なぼくなどからすると、平井さんのこのお仕事振りはもう何とも形容しがたいもの。それだけで驚きなのだが、一方パティシエの娘さんの方は、本場のクレープ、ガレットなどの料理修行にフランスに渡り、そこで腕を磨きお店で披露...。まさに喝采ものの親娘鷹なのである。

 「毎朝バカ犬との散歩の折、変わった作りの家なので、何ができるのか...バカ犬ともども大変愉しみだったんですよ。それがカフェとは本当に驚きましたね」「そういろいろ苦労はありましたが...、まあどうにか出来上がって...」とあくまでも謙虚なマスターで、彼や奥さんの人柄、そして娘さんの腕前等々も相乗され、別荘族だけでなく地域の人達にも愛されている。「矢張り春先とか冬場は地元の人が主体ですから...」と言う通り、地元にも着実に根を下ろしている様だ。
 
そしてこのお店の大きな特色の一つが、犬同伴が許されるお店のテラス席。ここから鴨が群れ集う御影用水越しに眺めるお山(浅間山)の景色は間違いなく浅間山麓地域随一で、いつも犬連れのお客で満杯。その上近くの御影用水脇にドッグ同伴をメインにした小規模高級ホテルも1年ほど前に誕生、そこの客も口コミでやって来るようでもある。まあそれやこれや、これから5年、10年とお店が続くのは間違い無いと思われる。
 
これからも頑張ってください平井さんご一家!ぼくも出来るだけ勝手連で応援します。尚お店の情報はホームページで...、お客の口コミなども載っており、かなり好評です。軽井沢に来たらこのカフェ・グルマン、足を運ぶべきです。きっと満足するはずです。
 
最後に祝5周年と言うことで、ぼくからお店「カフェ・グルマン」へ...、フランスが生んだジャズ・アコーディオンの天才、リシャール・ガリアーノの「リベル・タンゴ」を...。天才がタンゴ界最大の鬼才、ピアソラナンバーばかりを取り上げた傑品アルバムに収録されているこの演奏、フランスならではの強靭さと優雅さのバランスが秀逸です。
【今週の番組ゲスト:
ジャズジャーナリストでSelim Slive Elementzのギタリスト・小川隆夫さん】
8月23日リリースの
1stアルバム『Resurrection』から
M1Strange Vibes
M2Call It Whatever
M3Dark, Dark, Dark
M4Double Image
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8月5日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.08/04 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.369~追分通信17軽井沢ジャズフェス】

 7月も押し詰まってようやく追分の山荘にたどり着くことが出来た。毎年7月半ばには...などと考えているのだが、録音の貯め録りや打ち合わせなどで結局はこの時期。まあこれも仕方ないでしょう...。さて今回の追分通信は「カフェ・グルマン祝5周年」のタイトルで、それをものする為わざわざ朝の開店時(8、9月の土、日は8時から実施)のお店へと足を運び、マスターの平井さんともお話をし、お祝いの言葉も述べさせてもらったのだが...、このテーマは次回に。
 
と言うのもそれほどには期待していなかった第6回軽井沢ジャズフェス(カフェ・グルマンを訪れた日の午後開催)、これが初回にも比べられる素晴らしい内容。充分に楽しませてもらったので、そのフェスレポートを今回はさせて頂くこととした。平井さんスンマセン!

 
今回の「軽井沢ジャズフェス」、この立役者だった伊藤八十八プロデューサーが亡くなって3回目。奥さんの妙子さんが奮闘して今回も開催にこぎつけた訳だが、パンフレットにも構成・演出、高平哲郎氏とその名前が列記されている程に、高平氏の関与が大きかった。古くからの友人である高平氏の演出とあらば...と言うことで、いつもは気弱なぼくなどもフェス評を書かせて欲しい...と、レギュラーでレビューを担当しているジャズ・ジャパン編集部に頼んだ程...。ただこの希望は他のフェス評を色々載せるので今回は勘弁して下さいと体よく断られてしまった。そこでこのコラムと他のジャズ媒体に書かせてもらうことにしたという次第。
 
ところでこのフェス、軽井沢の大賀ホールと言う場所柄どうしてもライター、ディレクターなどジャズ関係者の顔は少ない。それでも新宿カルチャーのボス「ダグ」のマスター中平穂積氏や同じライター仲間の岡崎正道氏、故伊藤氏とも仲の良かったジャズプロデューサー伊藤潔氏(名古屋から駆け付けやようだ)などの顔が散見された。始まる前に楽屋を覗き妙子さんを始め高平氏や司会も務めるテナーの誠一ちゃん(中村誠一)などに挨拶。今回嬉しいことにはモンティー小林(ds)クリヤマコト(p)寺久保エレナ(as)など知り合いも多数登場。それらの人とも軽く挨拶を交わし客席に着く。客席もいつも通り年令層は高いが、ほぼ満杯で一安心。

 
オープニングは地元()での活躍も長い「オプ・サンズ」と言うセミプロ・フルバンド。マスターは軽井沢に別荘を持つゴルフ会社社長でメンバーにはプロも多い。彼らの演奏が終わると次の登場は、今回の目玉の一つ、若手最大の注目株である桑原あい(p)のストリング・カルテット。このユニット、ヴァイオリンとチェロ、それにベースと言うユニークな構成で、普通こうした編成の演奏は意欲が空回りしてしまうか、ストリングスが機能せずに終わってしまうケースも多いのだが、そこは才女桑原。まずそのピアノ技が素晴らしく、またストリングスアレンジも抜群、聴き応えあるものに仕上げてくれた。桑原はスティーブ・ガット、ウイル・リーと言った超大物とNYでレコーディングを行い、そのアルバムも今年春に発売され、いよいよ世界基準のピアニストに成長しつつあることを多くのファンに印象付けた。そのスケールアップした姿をそのまま写し出したステージで、ウエストサイド物語の「サムホエアー」など全部で4曲ほどの演奏だったが、強烈な印象を残した。前作からプロデュースを担当、彼女を飛躍的に成長させた功労者の伊藤潔くんも、「良かったねー」と言うと「今まさに伸び盛りで次も期待大ですよ」と返してくれた。桑原に続いてはこれも若手のホープにしてこのフェスの常連、毎年成長ぶりを窺わせる寺久保エレナ。アメリカで活躍中の彼女は、リーダーではなく師匠ヴィンセント・ハーリングとの2アルトユニット(ドラムはモンティー小林)での登場。相変わらず良く音が鳴っており、女性とは思えないスケール感ある演奏だったが、師匠との共演だけにいささか遠慮も感じられた所は残念だった。次回も彼女は登場してくれる筈で、この次に期待したい。

 
休憩をはさみ続いては仙波師匠(仙波清彦)のパーカッショントリオ。小太鼓の家元仙波流の師匠でもある氏は、あの「スクエアー」のドラマーも担当していた器用な才人。その彼とドラマーの鶴谷智生によるユニット「せんばづる」にもう一人ドラマーを加えたトリオのパーカッションユニットなのだが、これが迫力充分で聴き応えあった。ラテンジャズ系でこうしたパーカッションの饗宴はしばしあるのだが、ジャズ系ではあまり見かけない。その上に邦楽&ジャズに通じた粋人の師匠だけに、エンタメ精神にも溢れステージを盛り上げる。言うこと無しである。そして次が司会も担当した中村誠一ちゃん。ベテランの風格充分でいよいよテナー・タイタン(大物)になった感あり。彼には9月の番組で娘さん(今や売れっ子シンガー)と共に、親子共演で登場してもらう予定。
 
そしてイベントのトリを飾ったのが今やJ-ボーカルを代表するマリーン。「私をこうしたボーカリストに育ててくれた故伊藤プロデューサーに感謝の念を込め歌います」と語り、吉田次郎、クリヤ・マコトと言った達人を従え、「レフト・アローン」などを熱唱。まさに力感籠った熱い唄いっぷりで観客を酔わせる。感激、感激の心境である。その上彼女をフォローする吉田、クリヤ、この2人の達人プレーも圧巻。こうした見事な流れを演出する高平氏もやはりお笑い&ショウビジネス界の鬼才にして天才である。
 
全体で4時間強、たっぷり楽しませてもらった一日でした。また来年も大賀ホールで...
【今週の番組ゲスト:
キングインターナショナル RESONANCE RECORDS関口滋子さん】
M1Jingles /   Wes Montgomery-Wynton Kelly trio
M2Bluesette / Jaco Pastorius
M3All My Yesterdays / had Jones - Mel Lewis Orchestra
M4「Big Dipper / had Jones - Mel Lewis Orchestra」
M5「Nardis  / Bill Evans」
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7月29日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.07/28 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.368~青木和富氏ジャズトーク】

 このコラム原稿を記している今はまだくそ熱い東京にいる訳だが、コラムが出る当日はかなり快適な追分の山荘暮らし。その上ぼくも関りを持つ6
回目を数える「軽井沢ジャズ」の当日でもある。そのフェスの模様などは次回以降の追分通信で記すことにするが、先日このジャズコラムを愛読している(?)と言う、某オールドボーイ(何と信州・千曲市在住らしい...)からメールが来て、「ジャズの話題が少ないのは、タイトル違反でどうしたものなのか...」と言う趣旨のお叱り。言われれば確かにご指摘の通りで反省しきりなのだが、これはタイトルの付け方が良くなかったからに他ならない。ぼくの気持ちとしてはこのコラムは『小西啓一のジャージー日和』とでも言った感じのもので、直截にはジャズ(JAZZ)のことを扱っていなくても、そこには安倍政治への怒りから好きな映画、ミステリー、温泉、山行、ラグビー観戦等々、ぼくのジャージーな気分や日常・考え方を反映しているものだとも思っており、そこら辺を汲み取って頂ければ...とも勝手に思っていたりするのですが...。

 
さてそんなお叱りもあったので、今回は丁度今週やっている青木和富氏のジャズトークについて紹介しようかと思う。この企画は今年の春からスタートしたもので、昨年は青木氏にジャズ100数十年の歴史を10数回で語ってもらう...と言う、やや無理な内容をお願いしたので、今年はわざわざ富士山の麓の高原別荘地から通ってもらうお礼として、彼が好きなテーマを選びそれについて勝手にエッセイ風に語ってもらうと言う、かなりお手軽な企画(青木先生の類稀なる博識と個性も出るに違いないと言う深謀遠慮もある)としたもの。ただそこはまじめな青木氏だけに先月はジャズ界きっての鬼才&奇才、ピアニストにして作曲家のセロニアス・モンクにスポットを当てており、今月は夏真っ盛りと言うことで、ジャズフェスをメインとしたライブアルバムの名演と言うことになった。
 夏でジャズフェスと言えば少しジャズをかじったことのある人ならばまず思い浮かべる、ニューポート・ジャズ・フェスのドキュメンタリー映画、バート・スタイン監督の「真夏の夜のジャズ」からアニタ・オデイの名唱。そしてウエスト・コーストを代表するジャズフェス、モンタレー・ジャズ・フェスのチャールス・ロイド・カルテット(キース・ジャレットを含む超豪華メンバー)の「フォレスト・フラワー」等々、別項に記載されている全4
曲。どれも納得のライブナンバーばかりでその魅力を青木氏は軽妙に紹介してくれる。ラストを飾るのは彼が中学生時代に実際にサンケイホールで聴いた、キャノンボール・アダレー・グループの「ニッポン・ソウル」。ここら辺から彼のジャズ遍歴が始まった訳だから半世紀以上良く続いたもので、そう言えばぼくも同じようなジャズ遍歴である。
 

 では青木流でなくお前のベスト・フェス・ライブは...と聞かれたら、演奏内容・観客動員・沸き方、ラジオたんぱとの関わり等々、色々な意味合いからあの今は無き、田園コロシアムで行われたハービー・ハンコックなどマイルス抜きのマイルス・バンド(フレディー・ハバードが代わりに参戦)~スーパーユニット「VSOP」による1979年の「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」ということになるだろう。このライブ、面子が面子で彼らの絶頂期のライブだけに悪かろうはずもなく、そのプレーは今も永遠なもの。ファンの動員も最高で、人気の面でも今のロックフェスに対抗できるような勢いのあるジャズ時代があったことを証明している。
 そしてこのライブには我がラジオたんぱ(現ラジオ日経)の当時の若手局員(入社3年目ぐらいまで)男女10名ほどを引き連れ、田園コロシアムに乗り込んだことである。今は皆定年を迎えたり退社するなどで居ないのだが、ジャズ好き、ライブ好きが当時はラジオたんぱにも数多くいたのであり、彼らの歓声も間違いなくこのライブには収録されている。そうした意味からもこのライブ・アルバムは、ぼくにもまたラジオたんぱにとっても意味あるものと言えるのです。

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富先生】
「ライブアルバム」をテーマにお送りします。

M1Tea For Two / Anita O'Day

1958年ニューポート・ジャズフェスティバル「真夏の夜のジャズ」より) 

M2Forest Flower-Sunrise / Charles Lloyd

1966年モンタレー・ジャズフェスティバルより)

M3Compared To What / Les McCann & Eddie Harris

1969年モントルー・ジャズフェスティバルより)

M4Nippon Soul / Cannonball Adderley

1963年東京サンケイホール)

青木先生自慢のキャップ
サンケイホールのライブのメンバーだったJoe Zawinulに生前直接貰ったものだそうです。

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7月22日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.07/21 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.367~日野原重明氏死去】

 日本の医学界の良心とも言える日野原重明先生が亡くなった。享年105才。我がラジオ日経では今年の5月まで週一回のレギュラー番組「日野原重明の輝く顔と輝く心」をこなしており、放送媒体での先生の最後の声もラジオ日経で、と言うことで、局と先生との関係は本当に因縁浅からぬ所。死亡のニュースが出た翌朝のTVワイドショーを何気なく見ていたら、ラジオ日経と局のプレートが大きく映り、カメラはスタジオにパンしていき、そこに居るのが大宮杜喜子女史。日野原番組を先生と務めていた彼女が、番組の最後の収録模様や想い出などを語っており、感慨深いものがあった。彼女はぼくが担当してからの「テイスト・オブ・ジャズ」の2代目担当アナウンサー。局に入って直ぐの彼女に番組担当を頼み、以来10数年色々なミュージシャンやレコード会社のジャズ担当者などをゲストに迎え、番組を続けて来たものだった。あの頃は仲々に可愛い女性だったが、今や医学関連に精通したベテランプロデューサー兼パ=ソナリティーと言うオールドガール。歳は取ったがまだチャーミングさも残した、ぼくにとっても愛しのジャズガールの一人でもある。

 まあそんな脱線話は置いておくとして、肝心の日野原さんだがぼくが初めて先生と会ったのは、タンパ放送の一つの柱だった(今もそうだが)医学関連番組の企画委員の一人としてのこと。担当したこの医学番組は東大の内科教授連中(第3内科まであった)や慈恵医大の教授など錚々たるメンバーばかり。局に入って間がなかったぼくには、超一流が集まる番組だけに企画委員会はそれこそ超が付く高級料亭やレストランで開催、そこだけは初体験ばかりで嬉しくもあったが、企画委員の顔ぶれだけでもかなり荷が重いものだった。その上当時の教授連はどれもその道の最高権威だけに、生意気なぼくなどは態度が良くないと叱られることもしばしば。そんな中にあって一人優しかったのが日野原先生で、他の権威に懲り固まった面々(反権威主義の京大医学部出身も影響あるかも...)とは大違い。当時はまだ学生運動も全盛で、特に大学の医学部変革なども運動の大きなテーマになっていたが、あの日野原さんの存在を一躍有名にした「よど号事件」の直後だけに、教授連も学生を悪者のようにののしることもしばしばだった。ただ日野原さんだけは、あんな死に繋がる様な恐ろしい経験をした後でも、決して彼らのことをひどい口調で語ったりしなかった。まあそんなこんなあって日野原重明と言う先生は、人格的にも素晴らしい人だと敬愛していたし、ある意味憧れの存在のでもあった。ただぼくが医学番組を担当したのは局に入って2年ほどで、以降は他の関係番組の担当になってしまい、先生とは余り関係を持つことは無かった。ただ局で出会ったりした時には挨拶を交わし、音楽の話(クラシックに造詣が深いのだが、結構ジャズなどにも関心があった)などもしたものだった。

 その先生と再び関係が出来たのは、前述した先生と大宮女史との対談レギュラー番組「日野原重明の輝く顔と輝く心」を、ソニー・エンターテインメントの子会社役員E氏(昔はジャズ番組の敏腕ディレクターだった)と共同企画でCDブック化して、ソニーから同名タイトルで発売したことにより、何回か挨拶などで聖路加病院の名誉院長室へもうかがった。このCDブック売れ行きはイマイチだったが内容はソニーミュージック・ダイレクトのスタッフの中でも好評で、ソニーのくんとは日野原企画第2弾として、先生の書いた曲(「葉っぱのフレディー」等々かなりな佳曲多し)をソニーが抱えているクラシックの有名ピアニストなどを起用し、CDブック化しようという企画を立案、先生も乗り気だったのだが、肝心のソニーミュージック・ダイレクトの動きが遅く、同じような企画を他のレコード会社がやってしまい、計画は残念ながらおじゃん、日の目を見ることはなかった。

 先生はあの「よど号事件」に関わったことで、それからの自身は生かされているんだ...と言う強い認識を持ち続けていただけに、心の底からボランティア精神に溢れた博愛の人生を生きた。まさに素晴らしい人だった。合掌! 
【今週の番組ゲスト:シンガーのギラ・ジルカ」さん】
『ギラ山ジル子project  one・two』から
M1「年下の男の子」
M2「あなた」
M3「木綿のハンカチーフ」
M4「喝采」