9月16日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.09/16 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.592~チャーリー・ワッツ死す~】

 ビートルズと並び、世界のロックシーンの頂点に君臨するローリング・ストーンズ。ビートルズがポップ史に残るレジェンドユニットなのに対し、ストーンズの方は今なお現役の存在と言う大きな違いがあるし、ミック・ジャガーを筆頭とした永遠のチャンジー悪ガキ集団と言ったイメージを保ち続けている、言うなればロックの本源的な部分を体現化し続けたこのグループ、本当に凄いの一言。その上ストーンズのアルバムには、バックでソニー・ロリンズやウエイン・ショーターなどと言った大物ジャズメンも参加したりもしている。そんな悪ガキ集団(?)の中にあって異色の存在と言うか、ただ一人大人の渋さを保ったスーツの似合うロック紳士...、それも独特な妖しげな渋さなのだが、それを誇っていたのがドラマーのチャーリー・ワッツだった。その彼が8月末、享年80才で亡くなってしまった。

 高校生の頃からジャズに親しみ始めたぼくにとって、ロックはそう馴染あるものではないのだが、この2つのグループはほぼ同世代のもの。それだけに残念な感はあるが、やはり向こうの存在だと言う感も否めない。ただこのワッツと言うドラマーだけは、何か不思議な愛着がわいてしまうのだ。と言うのも彼はあのストーンズの基底部をがっちりと固め、ストーンズならではのグルーブを叩き出していたロックドラマー(音楽誌で世界のドラマーの3位とか12位にも選出さたこともある)だが、ジャズドラマーを自任し他でも広言もしていたと言う、変わり種のジャズフリークでもある。彼のご贔屓はトニー・ウイリアムス等のジャズドラマーで、実際に彼が単独リーダーとしての来日公演は、大編成のジャズバンドを率いてのもの。それもトラッドやスイング色の濃いものだったとも聞く。また彼には7枚ほどのリーダーアルバムが残されており、その中にはジャズの始祖とも言うべきバードことチャーリー・パーカーに捧げられたものを始め、そのほとんどが純生ジャズアルバムなのである。彼はあるインタビューで「俺にとってビートルズ、エルビス(プレスリー)はノー、マイルスはイエス」だとも答えているが、「ロックで稼ぎジャズに貢ぐ」。まあこんな男まず他にはいない筈だ。

 ぼくは彼のリーダー作2枚持っているが、当然2枚ともジャズ色の濃いもの。そのうちの1枚は『ロング・アゴー&ファー・アウエー』(96年)スタンダード曲をタイトルにしたこのアルバム、「アイ・シュッド・ケア」「ワッツ・ニュー」などのスタンダードの歌ものを取り上げたある種のボーカル作品。黒人シンガーがフルオーケストラとワッツのジャズユニット(ブライアン・レモン(p)ピート・キング(as)等のイギリス有名ジャズメンを含む)をバックに唄うと言う趣向のもの。リーダーのワッツはブラッシュやスティックワークを巧みに扱い、実に気持ち良さそうにドラムを優しく叩き上げる。いかにも金を掛けたと言った感じの、ある意味単なる彼の道楽アルバムなのだが、そこに不思議なワッツのジャズ命と言う感情が滲み出ており、また何とも言えない。
 再度言おう こんな男(ジャズ・フリーク)そうめったにいないと... 合掌!

【今週の番組ゲスト:トランペッターの島裕介さん】
新譜『Silent Jazz  Case4』から
M1「Adhesion」
M2「Grand Central NY」
M3「Japan Beauty」
M4「Never Die Miles」

9月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.09/09 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.591~ハービー・マン~】

 追分の山荘でCD整理をしていると、色々と懐かしく珍しいアルバムなどがひょこっと顔を出し、それなりの愉しさがあるもの。但し一枚見付けるとそれに聞き入ってしまい、なかなか作業が捗らないこともしばしば。そんな中今回拾い出した1枚がこのアルバム。ぼく等ジャズ黄金時代を堪能したチャンジー世代にとって、忘れられない存在のジャズフルート奏者、ハービー・マンの『アット・ザ・ヴィレッジ・ゲイト』(62年12月/アトランティック)である。

 ぼくが未だ大学生の頃から若きラジオ局員だった20代の頃、1960年代後半から70年代にかけてのジャズ全盛期。当時のファンは新宿や渋谷のモダンジャズ喫茶に通い、ジャズを聴き漁ったもの(アルバムが高くて買えなかった為なのだが...)だが、その頃客のリクエストも多く、良く掛かっていたのがこのアルバムだった。タイトル通りNYにかつてあった有名なライブハウス「ヴィレッジ・ゲイト」でのライブ盤で、ライブ演奏だけに演奏も長尺で、全部で3曲しか収録されていない。今人気盛り返しつつあるアナログ盤では、A面2曲B面1曲のみの収録となっている。アルバムの人気曲は何と言っても冒頭の「カミン・ホーム・ベイビー」。ここでベースを弾いているベン・タッカーのオリジナルで、メル・トーメの歌唱盤などでも人気を博した曲。数あるジャズ曲の中でもデイブ・ブルーベックの「テイク・ファイブ」と並ぶ最大のヒット曲と言えるが、当時はこの曲が掛かると「なんだこんなシャリコマ(コマーシャリズム)のナンバーをリクエストしやがって...」と、席を立って店を出て行くファンも少なくなかった...などとも、まことしやかに語られた曰く付きのジャズヒットチューンである。ぼくなども露骨に嫌な顔をしたファンの一人だったが、今はあの当時のこと反省しています。

 この人気曲がÀ面だけにその裏面の曲が何なのかは当時さっぱり気にしなかったのだが、今回その裏ナンバー=CDでは3曲目は、アメリカを代表する作曲家、ジョージ・ガーシュインの銘曲「イット・エイント・ネセサリー・ソー」であることに気が付いた。その上裏面一杯に収録されたこのナンバーの演奏時間はなんと20分弱。当時にしてはかなりな長尺ものなのだが、今でも結構最後まで飽きずに聞き通せる。これは中々凄いことで流石にこの当時10数年に渡って、ジャズフルート界の頂点に君臨していたハービー・マンだけのことはある。そしてもう一つ今回気付かされたのは、このメンバー構成。2人のパーカッション奏者が参加してこのライブを盛り立てているのだ。一人はチーフ・ベイ、そしてもう一人がレイ・マンティラ。2人とも今はもう物故してしまっているが、ベイの方はアフリカンパーカッションの第一人者、そしてマンティラの方は、つい最近までラテンジャズの第一人者として大活躍していた、この分野のボス格の一人。この2人の起用が無ければ、いくら大ヒット曲が収録されているとは言え、ここ迄人気も出なかったのでは...とも思われる。ジャズフルートの顔役にして商売人でもあったハービーの面目躍如といった所だろう。なお肝心のハービー・マンは2003年長年の癌との闘いの末、73才でこの世を去っている。ジャズ商売人でもある彼は、商売上手なユダヤ系で生涯になんと80枚以上の作品を残している。

 まあこうした今まで気付かなかった発見も幾つかあり、CD整理の道楽も中々に捨てたものでは無い。それにしてもジャズフルートシーン、日本では何人かの若手女流奏者も育っているのだが、本場アメリカでハービー・マンや彼に続くヒューバート・ロウズ以降、これと言った人材が出現していないのは寂しい限り。ラテンジャズの世界では相変わらず重宝されているが、肝心のジャズでもう少しこれといった人材の出現を強く望みたいところ。今回ハービー・マンの大ヒットアルバムを聴きながらそんなことを思った次第なのです。

【今週の番組ゲスト:ピアニスト、ヴォーカリスト、コンポーザーの橋本一子さん】
12年ぶりのアルバム『view』から
M1「view」
M2「blackbird」
M3「giant steps」
M4「blue」



 

9月2日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.09/02 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.590~菅平にむかう~】

 前回のコラムで今年はコロナ禍にも拘わらず、各大学ラグビーチームは合宿を敢行
、菅平での練習試合なども行われる、そこで菅平詣でをするか今悩んでいるのだと言うことを記した。我が早稲田ラグビーも合宿と練習試合を行うとのことで、信濃追分の山荘からは車で1時間強。最注目の試合~早明戦練習試合もやれそうだとの情報があり、何はともあれ菅平に上がることにした。例年だともう合宿は終了、下山している8月最終土曜日。早明戦練習試合のインフォーメーションなどは、早明どちらのラグビー部のスケジュールにも一切載っていない。そこで上田市役所の知り合いに聞くと午後1時からのキックオフが予定されているとのこと。本当に久しぶりの練習試合、そして今年は対抗戦も有観客で行われるのか定かでなく、12月の早明戦本番すら観戦出来ない危険性もある。となれば東京での予定などは先延ばし、まずは何はともあれ...と言うことで菅平に向かう。

 例年だと菅平の最高所に位置する運動公園、サニアパークでは多くのラグビー試合が組まれ、隣の陸上競技場と並んで、運動部員がごった返すのだが、12時過ぎについても人はまばら、途中色々なラグビーグランドも覗いたが選手などは一切いない。8月末だからかも思ったが、もう少し早い時期でもコロナ禍もあって練習選手は少なかっとのこと。その上菅平の中心地、メイン交差点に行ってみると店はほとんど営業しておらず人通りも無し。こんな風景初めてだった。サニアの駐車場もがらんがらで拍子抜けしてしまった。サニアパークのメイン競技場の芝生に陣取りメンバー表などを眺め時間を過ごす。抜ける様な青空のドピーカン。さすがに雲はもう秋雲と言った感じで、高原の涼風も気持ちよく、菅平の主峰、根子岳と四阿山もくっきりと見え、いささか暑い瞬間ももあるが、最高の観戦日和。こんな中たった一人で優雅な試合観戦、言うこと無しである。

 試合は数名の有力選手をケガなどで欠きながらも、良いメンツが揃って好試合になった。出だしは早稲田が先手を取り直ぐに明治が反撃、点の取り合いで早稲田が一歩上回り前半を終える。選手の豊富さではやはり明治が上を行くが、そこを耐え勝負に賭けるのが我が早稲田。前半終了直前の明治の反則。センターラインから長距離のペナルティーキックに挑んだ早稲田スタンドオフが、このキックに見事成功。何かこのキックが試合を決めるのでは...と思ったが、やはりその通りの結果に終わり、シーソーゲームの練習試合、早稲田が辛くも勝利を収めた。トライ数では明治が上回っており、試合は互角とは言えいささか明治が実力的に上廻っていた感もあったが、結果は早稲田勝利。聞くところによると早稲田ラグビー部は、今期の夏合宿練習試合、同志社、帝京、そして明治、全ての有力大学に勝利したとのことで、こんなことはここ10年余り無かったこと。実に気持ち良しである。

 Bチームの試合も続けてあったが、こちらはスルーさせてもらいすぐに菅平を下り、東御市の温泉施設湯らり館に向かい、たっぷりと温泉を愉しんだ。湯の丸山の中腹に地あるこの施設の露天風呂からは、はるか下方に上田と東御の市街地が眺められ、何とも言えぬ風情。これで心置きなくこの夏もジエンド。一時的にコロナも吹っ飛ばした心持になれる、快適な夏終わりの一日でした。

【今週の番組ゲスト:ジャズベーシストの石原雄介さん】
「Yusuke Ishihara Trio」の1stアルバム『Dig Into Jazz』より
M1「Brand New Days」
M2「ERA」
M3「Just Do It」
M4「Someone To Watch Over Me」

8月26日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.08/26 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.589~最近読んだ本から~】

 信濃追分での山荘生活では、1時間近いウオーキングや音楽鑑賞、読書などほとんどステイホームなので、軽井沢の町や人気のアウトレットモールに出没することもなく、生来の怠け者なので庭も草ぼうぼう。まあ例年だとこうした生活に、ラグビーのメッカ~菅平詣が加わるのだが、昨年からはコロナ禍真っ盛りで早稲田大などグランド見学が禁止。昨年は合宿なしだったが今年は合宿での練習試合なども組まれており、それだけにどうするかだが、やはり一度は菅平には上がりたいもの。
 その山荘生活の大きなポイントの一つになっている読書。軽井沢の町立図書館や御代田、小諸など近隣の図書館を廻り、読みたいものをかき集め期日までに読み通そう...と思うのだが、これが意外にままならない。チャンジーだけに視力の問題などもあり、読むスピードが目に見えて落ちている。それだけに7~8冊借りるとその半分ほどは、画集や絵本、読み易い音楽ムック本にしているが、東信の図書館では数も多くないし絵本などは児童室なので、ぼくの様なチャンジーは余り長くは居られない。まあそう言いながらも絵本探しは愉しいし、評論家の柳田男もかつて「日本の大人ももっと絵本を見る(読む)様になれば、日本も落ち着いた良い国になるのだが...」と書いていた筈。ぼくもその意見に大賛成なのだが、絵本についてはまた改めて書きたいと思う。そこで今回は今年夏に図書館から借りて読んだ、20数冊の中から印象に残った2冊をここで紹介してみたい。

 その1冊は翻訳家の内藤里永子のエッセイ「森の生活」、そしてもう1冊は現役のTVドキュメンタリー作家、河野啓のドキュメンタリー「デス・ゾーン~栗城史多のエベレスト劇場」で、こちらは昨年の開高健ノンフィクション賞作品。この両書に通底しているのは高山経験、即ち本格の登山、クライマーだということ。内藤さんの本には山のことは直接には出て来ないが、彼女が町を離れたった一人で10年間近く森の生活をしていたのは、同じ翻訳家仲間でかつてクライマーとしても行動を共にした親友を失くしたことが切っ掛けになっている。一方の栗城のドキュメンタリーは、「ニートのクライマー」としてTVなどでも話題を呼び、自身の登山の模様をSNSで生中継し、その登山スタイルが賛否を呼んだ若きクライマーの実像に迫ろうと言うもの。8回目のエベレスト挑戦で命を落とした若き栗城の話なので、当然山岳が主舞台となる。 

 絵本作家、ターシャ・デューダなど数多くの翻訳で知られる内藤さんの森の生活の舞台は、中軽井沢千が滝に広大な敷地を誇る「国営小鳥の森」に隣接した小さな小屋。彼女自身はその森について直接には紹介していないが、中西悟道(日本野鳥の会創始者)のレリーフがある「小鳥の集まる森」と記されており、こうなれば星野リゾートに隣接したこの森しかない。たった一人でこの深い森の小屋で孤独に生活し、そこで思索すること。親友の死など親しい人達の死、深い森の中での孤独な黙想、訪れる小鳥との会話等、その思考は森羅万象に及び読む者の心を深く動かす。追分と中軽、ある時期は結構近くに暮らしていながらも、思うこと・感じることはまさに月にすっぽん、深く反省である。

 一方栗城の方は「エベレスト劇場」のサブタイトルにもある通り、「7大陸最高峰無酸素単独登頂」を売り物に、若さをばねに怖いもの知らずでがむしゃらに山頂を目指す。エベレスト以外は全て登頂に成功したのだが、「他とは格が違う...」と言われるエベレスト登頂は、全く歯が立たず最後は滑落死でその若い生涯を閉じてしまう。ぼくの知り合いの山岳関係者(一応ぼくも日本山岳会会員です)は、異口同音に彼のエベレスト挑戦はただ死にに行っている様なもの...と、その挑戦を評していたが、多分その通りだったのだろう。その上SNS中継だけは単独挑戦の様に見せながらも、実際は多数のシェルパがサポートなど、そのキャッチフレーズに疑問符が付く行動も数多い。著者はかつてTVマンとして栗城の山岳ドキュメンタリーを作成した仲だが、行き違いがあり長い間音信不通だったと言う。その彼が死亡のニュースを聞きドキュメンタリーを書くことを決意、北海道放送のディレクターだけに、同じ北海道、道南出身の彼の友人や山の先輩などをこまめに訪ね、その証言を集め登山家像を描き出すが、小柄でなよなよとしたその姿は、ぼくの知る多くのヒマラヤクライマーとは大分様相は違う。但しスポンサー獲得法とかSNSの利用など、これまでのクライマーには無い新たな登山家の姿を実現した。河野は栗城自身もエベレスト登頂は困難だと自覚しており、その為に南壁最難ルートを選び、結局死亡してしまった、劇場型登山家だったのでは...と推測しているが、これからも次々に栗城のようなクライマーが登場することも予想される。その生き方、行動パターンなど色々考えさせられる力強いドキュメンタリーで、一気読みしてしまった。静と動と言うか対照的な2冊だがどちらも興味深い内容だった。
 
 そう言えばもう何年も、少しは手応えのある高山に登っていないなーと、これ等を読んでまた反省の念が沸く。どうもチャンジーのぼくは、反省の毎日なのです。

【今週の番組ゲスト:ドラマー 高橋徹さん】

初リーダーアルバム『TOKYO GROOVIN' HIGH』より
M1「Theme Of Tokyo Groovin' High」
M2「Limbo Jazz」
M3「Forest Flower」
M4「When You Grow Too Old To Dream」

8月19日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.08/19 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.579~オリンピック終幕~】

 賛否両論、毀誉褒貶、悲喜交々等々、様々な形容句が飛び交った東京2020オリンピックが終了した。開会式に至る混乱からすると、良く無事に終幕にたどり着いた感も強いが、なにはともあれ目出度し々である。ぼくはこの期間TV無しの山荘にいたので、その狂騒曲をオンタイムで見ることはなかったが、関心のある7人制ラグビーや幾つかの陸上競技などは、知り合いの所でウオッチさせてもらっていた。
 そんなだから直前に大騒ぎだった開会式も見ていなかったのだが、聴くところではあの世界的ジャズピアニストの上原ひろみが登場したと言う。これは痛恨の極みとヴィデモを見させてもらい、その雄姿を確認した。流石上原ひろみ、堂々の存在感だったがその登場をほとんどマスコミはスルーしてしまっていた。これはまさに大"喝"もの。ただしこれでジャズファンはオリンピックの可否は別として、かなり満足を覚えたことは間違いないだろう。

 さて今大会に関しては、復興とか平和・調和等といったその根底をなす大事なスローガンは、目前に立ちはだかるコロナ禍拡大の勢力が増したほか、主催のJOCもその意義を果たそうとしなかったように見えたことなどで、忘れ去られてしまっていた感も強い。これもまた至極残念な事だが、今回新たな種目に登録されたスケートボード。10代の選手の独壇場だったこの競技で、選手達がお互いの技を褒め合い愉しみ合う、和気あいあいとはしゃぎ合う。この光景に調和や友和の精神が期せずして具現化されていたのは、何とも皮肉な事だったと思う。

 最大の関心事、7人制ラグビーの日本勢は無残とも言えそうな惨敗振り。リオ大会ではあのニュージーランドを破り、4位と大躍進した面影は全く無かった。これはひとえに指導層の問題(直前での監督交代等々)だと思われるだけに、ラグビー日本協会の猛省を促したい。また花形の陸上競技では、最終日の男子マラソンでの大迫傑の頑張りに大拍手...。佐久長聖高から早稲田大陸上部そして単身アメリカに渡り修行と...、常に孤軍奮闘して来た彼の集大成が見られた(ダイジェスト観戦ではあるが...)ことは嬉しい限りだった。かつて高校のグランドで彼の走っている姿を見たことがあったが、あの頃から若くして孤高と言った雰囲気を漂わせており、ただものでは無い感があったが、その締めくくりがこのマラソン。彼の今後にも熱いエールを送りたい。そしてもう一人が女子中距離の田中希実。1500メートルの決勝では惜しくも8位だったが、何と伝説の名選手人見絹代以来89年振り、女子中距離決勝進出と言うのだからこれもまた大拍手である。まだ同志社大の現役学生と言うから凄いし、次回のパリ大会ではより良い結果も得られそうで期待大である。そしてもう一人現役大学生の金メダリスト。早稲田レスリング部4年、須崎優衣。父と姉も早稲田大レスリング部と言う早稲田ファミリーの彼女。その存在を今回初めて知ったが、その余りの強さにヴィデオを見て舌を巻いた。早稲田レスリングは時々ラグビー部の練習を手伝うことがあるのだが、こんな小柄なアマゾネスがいたとはついぞ知らなかった。反省しきりである。

 まあ他にも気になる選手も少なくなかったが、こんな風に書くと如何にもオリンピックに浮かれているに見えるが、さにあらずで結構厳しく見ていた心算。普通は「宴」が終焉するとなにかもの寂しさが残るものだが、今回だけは寂しさどころか厳しさとやるせなさなどの悔恨の思いの方が強い。日本の抱える病根が顕わになってしまい漂流するこの国はこれからどうなるのか...。ぼくの様なチャンジーには「ケ・セレラ・セラ」の心境ではあるが、本当に心配しかない...

【今週の番組ゲスト:Jazz ベーシストの鈴木克人さん】
『LIBERTAS』より
M1「Smooth as the Wind」
M2「Libertas」
M3「Heal the World」
M4「Moon River」


8月12日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.08/12 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.578~ビストロジャズ~】

 久方ぶりで雑誌「ポパイ」を読んだ。特集が「なにはともあれ、良い音楽が必要だ...」と言うもので、この至極当然な特集惹句につられ、今時の若い連中は...等と言ったチャンジーならではのスケベ根性で、読んだと言うよりもざっと眺めた感じ。驚いたのはその中のある記事。10代半ば位の音楽好きの子~恐らく高校生だろうが、その子にCDの面白さ・愉しさ・便利さ等を伝えようと言う趣旨のものだが、彼の音楽体験、音楽を楽しむ手段がまず第一に当然のことだが配信。次に来るのがアナログアルバムと言った感じで、CDなどはほぼ関係なし。その人物がレコードショップを訪れるのだが、CDと言うものに殆ど接していないのである。
 今から5年ほど前、台湾取材の折台北の文化発信基地とも言うべき「誠品書店」の地下のレコードショップ。ここで前年とはガラッと趣きが変わり、アナログ一色になっているのに驚き、それからほどなくして日本でもアナログアルバムが持て囃されて来たのは知っていたが、CDを殆ど知らない音楽好きの世代がいるとは、本当にびっくりしてしまった。時代は大きく変わってきている。

 さてその「ポパイ」の特集記事にも顔を出していたDJの一人、鈴木雅尭が自身のDJプレーでよく掛けるアルバムを、仲間のDJと共に紹介した音楽本「レコード・アワー」(DUブック)があったので、こちらは結構詳しく見てみた。全体カタログ本と言った体裁なので、読むと言うより眺めると言った感じか...。この音楽本、「ブルー・カフェ」「サタデー・ジャポン」など5つのチャプターに分かれており、それぞれ多くのアルバムが紹介されているのだが、ぼくが関心を持ったのは「ビストロジャズ」と言うチャプター。
 ビストロジャズとは初めて聞く用語なので、彼の紹介文を見るとビストロジャズとは、ジャズ、スイング、ジャイブなどのグルーブベースにしたDJパーティ―名で、気厳しいマナーや知識が求められるリストランチでは無く、敷居の低いビストロのように誰もが気軽に楽しめるジャズをサーブして行くもの、とのこと。少しばかり意味不明だがまあ我々の世代で言えば、ジョージシアリングやポール・スミスなどのイージーリスニングジャズのことか...と納得。チャプターを覗くと1ページに5枚ほどのアルバムジャケットが紹介されており、見開きで10枚ほど。そのうち知っているのは2枚ほどで5分の1の確率である。まあ最初のページは仕方ないが...と、次のページを見てもほぼそれ位の割合。サックス奏者のロニー・ロス(ロンドンのライブハウスオーナーとしても知られる)やピアニストのオイゲン・キケロ等、けっこう知られた名前も散見されるが取り上げられているアルバムはほぼ知らない。ジャズだけでなくボサノバ関連も多く、ここら辺もDJならではの綾か...。

 まあこのアルバムの数々、自身の無知さに気付かされた感じだが、こうしたDJの連中はいかに人に知られ無い秘密のアルバムを発掘するかがその仕事の肝。それも1曲でもお気に入りのDJ用ナンバーがあれば充分...と言った、超マニアックな世界なのだから...と言った言い訳を見つけ、自身に納得させる。それにしても良く見つけ出すものですね。流石ほぼ毎日中古レコードショップを探り廻っているだけあります。感心・感嘆の境地です。見習わないと...。

【今週の番組ゲスト:コンサートプロモーターの小高秀一さん レコードプロデューサーの青野浩さん 音楽プロデューサーの八島敦子さん】
M1「Steps - What Was / Chick Corea」『Now He Sings - Now He Sobs』より
M2「Noon Song / Chick Corea」『Chick Corea Solo Vol.1』より
M3「Spain / Return to Forever」『Light as a Feather』より
M4「Light Years / The Chick Corea Elektric Band」『Live in Tokyo 1987』より


8月5日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.08/05 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.577~追分通信21夏~きみはポール・ジャクレーを知っているか...~】 

 巷ではオリンピック狂騒曲が続いているが、山荘にはTVが無いために少しも感興が沸かない。どうやら日本選手の金メダル・ラッシュが続き、興奮度もかなり高くなっているようだが、この地では殆ど関係無し。その上期待していた7人制ラグビー。これが男女共に惨敗、協会の指導に問題ありだけにもう何をか況やである。そんな巷とは趣きを異にした追分の山荘周辺だが、個人的な大事件と言えば、御影用水に群れ集っていた30羽以上の鴨達、これが一羽残らず居なくなってしまったこと...。夏の盛りには珍しいことだが、果たして一時的な現象か、はたまた何かの異変を感じていなくなってしまったのか...、大いに気になる所ではある...。

 さて今回のサブタイトル、良く使われる「君は...を知っているか...」のパクリパターンなのだが、その肝心の主ポール・ジャクレー、この人物のことを知る人はまずいないだろう。かく記すぼくも、その存在今回初めて知った位なのだから、普通の人はまず知らないはず。避暑地の軽井沢にかなり詳しい人ならば、もしかしたら...と言った位か...。この人物、外国では一風変わった存在として、それなりに知られているのだ。種明かしをすると、フランス人ながら日本に長く住みつき、第2次大戦以降は軽井沢を本拠に活動していた西洋浮世絵師なのである。フランス人で浮世絵師。如何にも外国人が好みそうな人物だが、その人の全作品展を追分にある軽井沢追分塾郷土館でこの8月頭から10月末まで、2期に分けて開催している。中軽井沢にある図書館でそのチラシを見て、木版画大好きなぼくは直ぐに心動かされた。チラシに写っているその作品は、南太平洋のどこかの島の若い女性を描いたもので、なんとも言えぬ味わいがある。その上「全木版画展」とあるので、これは是非に...と勇んで郷土館に向かった。その上軽井沢図書館は結構この展覧会に力を入れている様子、司書の人は作品集もありますよ...とわざわざその全作品集も持って来てくれ、少しばかり予習も済ませ郷土館に向かう。

 このポール・ジャクレーと言う浮世絵師、1896年(明治29年)パリに生まれたが、父親が一橋大学などのフランス語教師として来日したため3才で日本に渡る。以来1960年(昭和35年)に軽井沢で没するまで、日本に生涯住み着いたと言う、日本人以上に日本の文化に精通したフランス人絵師だった。今年は彼の没後60年と言うことで、その画業を記念し回顧展が開催された訳だが、その全木版画160数点が2期にわたり展示される。会場の追分郷土館、追分宿の端に位置するこの資料館、その存在は知っていたが中に入るのは今回が初めて。いつもは追分宿の歴史などを展示しているらしいのだが、今回はモダン浮世絵版画の展示だけに雰囲気も一変、かなり派手やかな装いでお客も予想以上の入り。前期の今回は戦前までの作品がメインで、90近い作品が展示されており、中でも興味深かったのが、セレベスなどの南洋の島々を巡った時のもの。江戸時代以来の浮世絵版画の技法に基づく南太平洋の島々の美しい女性たちの艶やかで逞しい姿。ゴーギャンの女性を日本的な版画に仕立てたと言った趣きもあり、何とも言えない明るさと心地よさ。その上彼の版画、誰かに似ているなーと思いながら見ていると、思い出したのは画伯、横尾忠則の名前。彼の描くポートレート版画によく似ているのである。即ち彼は、その戦前の作品から極めてモダン=現代的な色彩感を有していたということ。戦後は軽井沢に住み着いたまま生涯を過ごしたということだが、もう少しその存在が知れても良かったのでは...と、この展覧会を見ると残念な気持ちも強くなる。

 彼の全版画集は岡部出版という出版社から、大枚6千円で出されているが、近くの図書館などで一度その作品確認してみれば、その画業の素晴らしさに驚かされる筈だし、何せ全画業が見れる作品集など、そう多くはないと思われる。こんなフランス人がいて日本で浮世絵版画を作り続けたこと、このオリンピック狂騒曲の時期に知るのも、決して無駄では無いと思いますよ。

【今週の番組ゲスト:サックスプレイヤーの鍬田修一さん】
Marveling』より
M1「宝島 feat. 本田雅人」
M2FLAMENCO feat. 本田雅人and 鍬田修一」
M3FANTA SEA feat. 鍬田修一」
M4FUSION JUICE feat. 小林太 and 鍬田修一」

7月29日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.07/29 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.576~信濃追分2021夏】

 信濃追分~軽井沢の夏はやはりコロナ禍の影響か、もう2年越しで人出はそう多くはない。追分の山荘に来ると健康維持の為、毎朝ウオーキングを行っているが、早朝山荘を出て御影用水沿いの散歩道から越生学園のグランドを回る、全体で1時間弱、8000歩程の結構高度差もあるウオーキング。その最大の愉しみはなんと言っても、用水に集う鴨の群れを見ること。例年は500メートルほどの用水の各所に散らばって、幾つかの群れが点在するのだが、今年は用水の開口口(その上は小川になっている)に20数羽が群れており、その他には一羽も見掛けない。今までにこんな例は見たことない程に珍しいこと。鴨の群れもこのコロナ禍、そしてその禍々しさを...予感しているのかも知れない...。

 ところでこのコロナ禍が生み出した大きな社会変化、その一つが在宅勤務だと言えよう。その影響をもろに受けたのが、軽井沢及びその周辺の東信地域の市町村で、在宅勤務が始まると共にこの地に居を求める若いサラリーマンも増え、森や林が伐採され宅地に変わっていると言った例も数多い。我が山荘の周辺も知らぬうちに3件ほど住居が立ち、どうもそのいずれもが首都圏からの移住者のようである。旦那は朝早くから東京に新幹線通勤と言った感じだが、軽井沢から東京駅まで1時間強、東京やその周辺に住んでいても通勤にその位時間が掛かる人もざらだけに、時間的には決して厳しいものでは無い。だが何と言っても大変なのは通勤費~定期代だろう。まあぼくのような無職のチャンジーには到底無理なのだが、ここら辺に住まいを移すような方々は、若くても高給取りだろうから、そんなことは少しも心配していない筈。最近では高崎辺り迄ならば、通勤費を補助すると言った企業もかなりあるとも聞く。時代は大きく変わったものである。
 
 そんな軽井沢にこの4月に居を移した一人が、かつての局に務めていたこともある後輩女性。彼女から誘われて先日、その家を訪ねてみた。彼女が当時のラジオたんぱ局員だったのは、もう20年以上も前のこと。この時はどうしたことか、3人の新入局員が全員女性と言う珍しい代だった。全員4~5年で局を辞めてしまい、今は全員が結婚し仕事を持ちながら子育て中といった情況。その中の一人は、台湾人の旦那とオーストラリアのTV局で働いており、もう一人は医療系出版社勤務、そして残る一人が、証券会社などを経て今は軽井沢移住し、大学関係の広報の仕事などを行っている...と言った具合。彼女達は在局中には、何回か追分の山荘に遊びに来たこともあり、結構この追分の地が気に入っていた様子。まあそんなこんなもあり、その内の一人が旦那を説得、2人の子供の通学なども考慮し、新学期直前の3月に中軽井沢の地に居を移した次第。ぼくも良く通う軽井沢を代表するスーパー「ツルヤ」からほど近い畑と林に囲まれた、静かな地にある2階建てのテラス付きの一軒家。中古物件を完全リフォームして住んでいるとのことだが、居心地良く住みやすい家で、2人の娘達も伸び々と実に愉しそう。旦那の方は軽井沢からの通勤、最初は少し疲れたし戸惑ったとも聞くが、ゆったり座って通勤できるので、パソコン作業や読書などかえって時間を上手く使えるとのこと。在宅勤務もあるので通勤問題さえ解消出来れば、間違いなく生活にも最高の環境。隣の畑を少し借り受け、野菜も作ったりしているとも言い、自身も含め娘達もこの地に移って喜んでいたと、彼女は語ってくれた。
 若い々と思っていた彼女も、小学生の子供がいると言うそれなりの御年。時は経つのは本当に早いもので、チャンジーのぼくなどは最早消え去るのみ...かも知れないが、まあ無理の無い範囲で、恬淡とやっていくつもりです。よろしくお付き合いの程...。

【今週の番組ゲスト:ジャズヴォーカリストの高樹レイさん】
『Live!! in Jazz 2004』より
M1「Thought About You」
M2「Fools Rush In」
M3「Love for Sale」
M4「Here's That Rainy」


7月22日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.07/22 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.575~グリーンブック】

 以前から見ようと思っていた映画「グリーンブック」を、ようやくDVDで鑑賞することが出来た。封切りを見逃しDVD化されたニュースを知り、レンタルヴィデオ屋に数回足を運んだのだが、在庫は数本あってもぼくが訪れると不思議とどれもレンタル中。もう縁がないのかなーと思っていたが念願叶い、ようやく借り出すことが出来た。18年封切りの作品で、ある種シリアスながらも監督がコメディーを得意としているだけに、何かコミカルな要素も漂う好作品。アカデミー賞でも数部門で賞取りを果たした作品だけに、多くの人が借りたがったのだろう、漸くレンタルで手元に届いたのだが。やはり期待通りの作品だった。

 この作品はある種の音楽映画=ジャズ作品でもあり、未だ人種差別激しい60年代の社会を扱う、シリアスな社会派作品でもあるのだが、そこは前記したように監督がコメディー畑の才人と言うところがミソで、品の良い音楽エンタメ作品に仕上がっている。タイトルの「グリーンブック」とは、黒人(かつてはニグロと言った蔑称で呼ばれていた、アフリカンアメリカン人種)が、差別激しいアメリカ南部の諸州を旅する時に必須の旅行案内書のこと。このグリーンブックを携えて、黒人専用の安モーテルや食堂などを探し、ディープサウスの諸州を演奏旅行した黒人ピアニストとその護衛役(用心棒)兼運転手との3週間にわたるツアーの模様を面白く取り上げた、実話に基づく音楽映画という訳。
 主役はこの用心棒とピアニストで、用心棒にはぼくのお気に入りの一人でもある、渋い役柄の多いヴィゴ・モーテセン。ピアニストは余り名前の知られていない役者だが、こちらもいい味わいを醸し出しており中々の好演。

 映画のストーリーが実話に基づくものだけに、当然ピアニストも実在のジャズ&クラシックピアニストで、彼の名前はドン・シャーリー。ミスターシャーリーとわざわざミスターが付けられると言う程の有名人物。その全盛期はこのツアーの行われた60年代。あのアメリカを代表するシンガー、アンディー・ウイリアムスが主催する(?)レコード会社「ケーデンス」から結構な数のアルバムを出しているピアニストで、ぼくも中古屋で安く出ていたので数枚アルバムを購入した覚えがあるが、余りその作品はジャズとしては感心したものでなく、今はどこにあるのかもしかとはしない。しかしクラシックの作品もかなりな数を残しており、その作曲やピアノのテクニックもなかなかのもの。何せこの時代に住まいがあのカーネギーホールの上に在ったと言うだけでも、黒人としては異色なハイブローの存在でもあった。それだけに南部での演奏旅行は気位の高い彼としては、至る所で拒否され続けと言う苦難の連続だけに、耐え難いものがあった筈。その苦境を用心棒が助ける...と言った予期せぬ展開の連続で、そのエピソードは愉しくも苦く苦渋に富んだものなのである。この2人の友情は21世紀になっても続く生涯を通したものだったのだが、何とも羨ましい限りである。
 
 まあこのグリーン・ブックと言うアカデミー賞作品、期待して損はない好作品だけに見逃している方には是非お勧めしたいもの。ぼくが気になったのは、ドン・シャーリーのピアノトリオ。彼のピアノに白人ベーシスト、そしてなんとこれにチェロが加わると言う、今では考えられないトリオフォーマット。チェロ自身がもうフリージャズなどで一部見られるぐらいでまず登場も無いのだが、この当時は結構あったようである。一番有名なジャズチェロ奏者は、あのジャズ映画の傑作「真夏の夜のジャズ」にも登場する、チコ・ハミルトン・グループに在籍していたフレッド・カッツ。彼があの避暑地ニューポートのホテルで、無心にチェロを練習している姿は大変に印象的だったが、今やチェロでジャズを演奏しようと思う様な、奇特な人物も居なくなってしまったのは、ある意味当然とは思うが何か凄く寂しく気もする。

 「出でよ、21世紀のジャズチェロ奏者」と、喝の一言でも掛けたくなる。

【今週の番組ゲスト:シンガーソングライターの町あかりさん 音楽評論家の原田和典さん】
6枚目のアルバム「それゆけ!電撃流行歌」その他から
M1「青空〜アラビヤの歌 / 町あかり」
M2「東京シューシャインボーイ / 町あかり」
M3Mack the Knife / Ella Fitzgerald」
M4Show Me The Way / Jon Batiste



7月15日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.07/15 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.574~ジャパン健闘す】

 季節は初夏、こんな時期にラグビーの話題とは...などとも言われそうだが、今年は別もの。日本ラグビーの頂点、桜のエンブレムを身に着けた我がジャパンチームが、なんとあの英国連合軍=ブリティッシュライオンズと対戦することになったからなのである。ぼくも半世紀ほどラグビーの試合を見続け、早稲田ラグビーだけでなくジャパンの試合も結構見ているのだが、まさかあの4年に一回だけ組まれるスペシャルユニット=ブリティッシュライオンズと、本当に対戦できるようになるとは...。ファンとしてはもう感激の極みと言った感じで、この対戦J-スポーツの中継を夜中まで見続けてしまった。

 この英国連合軍は南半球の3大強力チーム、オールブラックス(ニュージーランド)、ワラビーズ(オーストラリア)、スプリングボックス(南アフリカ)の3か国のナショナルチームと遠征対戦するため、四年に一度組まれるスシャルユニット。このチームに選出されるのは、ラグビー発祥の地=英国(イギリス)でも最も名誉なこと。この誇りあるチームとジャパンが対戦出来る...などと言うのは、一昔前までならばまず考えられないことだった。しかし「ブライトンの奇跡(ワールドカップで南ア軍を撃破)」、そして一昨年の日本で開催されたワールドカップでのジャパンの快進撃...、これらが強力な後押しとなって、南アフリカ遠征に向かうブリティッシュライオンズの遠征前哨戦の相手としてジャパンが選ばれ,この栄えあるテストマッチが実現したと言う次第。 

 ラグビーファンならば興奮せざるを得ない曰く付きとも言えるこの大試合、当然見逃す訳には行かず、深夜まで食い入るように見続けたのだが...。実際のそのビッグマッチ、全英軍はかなりな地力の持ち主だけに、前半にかなりな点差が開いてしまい、これはいつもの負けパターン、ずるずると点差が開いてしまうと思いきや...、ところがさにあらずで、なんと後半に投入された初めてキャップ(ジャパンの登録メンバー)獲得の若い面々が活躍、かなり面白い試合へと立て直してくれたのだった。

 その中心が我が早稲田ラグビーのキャプテンを務め、大学選手権優勝を勝ち取ったスクラムハーフ(SH)の斎藤直人。彼とは早稲田のグランドで何回か話をした仲だけに、その活躍ぶり嬉しい限り。彼を中心に良くこの強力チームに食い下がったものと感心しきりだった。そして1週間後に今度は宿敵アイルランドチームとのテストマッチ。前の試合での働き振りが認められ、斎藤も先発に抜擢され、試合はハラハラドキドキ、2転3転するシーソーゲーム。結果として惜敗してしまったが、ワールドカップでのジャパンの躍進が、フロックで無いことを証明付けたような好内容の試合で、斎藤もトライを挙げたのだった。相手に点を献上するミスもあったが、全体には初スタメンとして上々の出来栄えで、その将来を嘱望できる。
 久方ぶりのテストマッチだったが、またまた世界中にその力量を印象付けたことは間違いない。それにしてもフランスとニュージーランド、世界の第1線で大活躍している、松島と姫野。この2人の実力派は素晴らしい存在。実力はまさにワールドワイドもので、惜しくも姫野は試合前脱落、一方の松島も試合中けがで退出、共にアイルランド戦は残念な結果だったが、今後の活躍振りが大いに期待出来るもの。頑張れジャパン!...、ジャパンのメンバー全員に熱いエールを送りたい。

【今週の番組ゲスト:ピアニストの永武幹子さん】
Into the Forest』から
M1Epistrophy
M2Clover2
M3Along with You, Sunnyman 
M4Prologue- リーベの舟唄」
M5Grotta Azzurr

 

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