8月25日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.08/24 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.424~18追分通信Ⅴ 早稲田ラグビー奮起!】

 信州の高原地、信濃追分での山荘生活もお盆が過ぎると、ぐっと秋めいて気温もかなり下がり朝夕などは寒いほどだし、それに伴い(?)この時期になると、人の姿もめっきりと減ってくる。まあ静かなことは好ましいことだが、いささか寂しくもある。

 
そんな地での山荘生活の愉しみの一つ、と言うよりも最大の愉しみとも言えるのが菅平詣で、即ちラグビーのメッカ菅平でのラグビー観戦である。と言っても数ある(50を超える)菅平ラグビーグランドの中でも、ぼくが通うのはメイン会場とも言えるサニアパーク(スポーツ施設)と早稲田大グランドの2か所で、我が早稲田ラグビー部の試合会場だけなのである。毎年夏の合宿時には少なくとも一度は山(菅平)に上がるのだが、今年は2度山登りをした。早稲田ラグビー部の今年度の練習試合は3回。帝京大、大東大、そして東海大と言った強豪3大学との対戦で、中でも最大のポイントはもちろん目下大学選手権9連覇と言う首位の帝京大戦。一昔前までは帝京などは歯牙にもかけない状況だったが今は全くその位置が逆転、どうしたら勝てるのか策を練ってもひねりつぶされると言った悲しい現実。それにもめげず何時かは...と言う思いで山に上がるのだが...。

 まあ今年は昨年のラグビー部のごたごたもあって監督が交代、春シーズンも負けが込み余り期待薄と言った状況だったので、帝京戦(ラグビー仲間=ジャズ仲間も観戦に来る)以外はスルーするつもりだったが、初戦の大東大戦(この日はぼくの誕生日でもあった)の朝はピーカンの好天気。こうなる時気持ちも逸り足がひとりでに動いてしまう。と言うことで朝から早稲田グランドに車で向かい、大東戦も最初から観戦。平日の昼間だがかなり熱心なファンは東京や名古屋などからも駆けつけ声援を送る。

 
大学ラグビーは今年からルールが改正され外人選手は3人まで登場可と言うことになり、外人選手を多く抱えているチームが断然有利となり、早稲田の練習試合の相手もどれも3人以上の外人選手を抱えたチームばかり。その上に春シーズンは負けが込んでいるチーム。大東大の3人の外人にコテンパンに打ちのめされるに違いない...と落胆ムードだったが、これが案に相違して互角以上の戦い。確かに外人に振り回されはしたがかなり果敢に止めており、そのディフェンス振りは驚嘆に値するもの。特に大ラスの早稲田ゴールライン付近での数分に渡る攻防は見ごたえ充分。最後は大柄な外人パワーに屈してしまったが、久々に早稲田ラグビー魂を実感させられる感動の戦い振り。これはひょっとすると...と言う期待を抱かせる試合で、無理して菅平に上がって来て良かったと思えるものだった。

 
それから数日した日曜日、メインイベントである帝京戦観戦の為、ラグビー仲間(=ジャズ仲間)も来て車で菅平に向かう。この日は遠く八ヵ岳から御嶽山、北アルプス連峰までが見通せるめったにないほどのラグビー日和。何か予感をはらんだような好天で、先日の大東大戦での奮闘振りなどを仲間に聞かせ期待を煽る。試合開始の3時間ほど前に主会場のサニアパークに到着、既に芝生の観客席に陣取るファンも少なくない。まだ試合まで間があるので早稲田グランドや他のグランドなども1時間ほどかけてぶらぶらと歩いて見物、席に着いたのは試合開始1時間ほど前。早稲田の試合前のアップ(練習)などを見ていると、いつも以上に気合の入っており期待が高まる。1年生を3人も抜擢した若い布陣で大東大戦とほぼ同じメンバー。

 
午後1時いよいよ試合開始。会場もかなりな数が詰めかけており、弱い早稲田だが人気だけは相変わらず健在である。試合当初は矢張り帝京大は勢いがあり押され気味。然し果敢に1年生を筆頭にディフェンスに励み、余りゲインをさせない。前半1本取られるが積極的な守備からチャンスをつかみ早稲田も取り返しどうにか互角の試合運び。ただ肝心のフォワードが押され気味で選手も大きなファールを犯してしまい、10分間のシンビン(退場状態)。この間一人少ない早稲田は帝京の攻めに耐えきれず再度失点。いつものようにここからずるずると敗戦に落ち込んでしまうのか...と思いきや、選手達の心意気が高くどうにかこの失点だけで抑え、最少得点差で後半に期待を繋ぐ。

 
迎えた後半、これは互角にやれるぞと思ったメンバーの意気は高く、帝京大のミスもありそこを衝いて早々と同点に持ち込み、後はかなり早稲田ペース。SO(スタンドオフ)の蹴ったボールをチャージ、そのままインゴールへトライとここで勝ち越し。以降も少しも引けを取らないばかりか返って押し気味に試合を進め、2トライをもぎ取りダブルスコアで早稲田が頑張る。こうなると日頃は殆どリードを許したことのない帝京大だけに焦りも出て、体格差も目立つ有利なフォワードでごりごりと攻め続けるが少しもものにならず、最後は帝京の反則でのスクラム勝負。これにも耐えボールをグランド外に蹴りだし、ここで早稲田の劇的勝利。この8年間、練習試合を含め一度も勝ったことのない相手を遂に倒したのだ。ファンも狂喜乱舞状態。ただすぐにBチームの試合が開始され、その勝利の余韻に浸る間もなく勝利挨拶を済ませると選手は淡々と退場。この感動的試合はあっけなく幕を閉じたが、ここ10数年菅平での試合を見続けた者(このぼくのことですが)には、涙がちょちょ切れるほど嬉しいことで正に感涙ものの出来事。

 
そう言えばあの御影用水で3グループもの鴨の大群、その数にして50羽近くが見れたことで何か良いことが...などと、この追分通信に記したのもつい数週間前のこと。その良いことが実現したのだと思い返す。
 さあこの調子で秋の本番にも向き合って欲しい。今年の早稲田ラグビーは創立100周年と言う記念すべき節目年。その年に優勝と迄は行かなくても、少なくとも正月越え(正月に大学選手権の準決勝戦がある)を果たして欲しいと望むのは、ぼくだけではない筈だ。
頑張れ早稲田ラグビー、そしてオメデトウ創部100周年! 

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
今週はジャズトーク、白人男性ジャズボーカル特集でお話し頂きました。
M1「It's Been A Long, Long Time / Bing Crosby」
M2「Moonlight in Vermont / Frank Sinatra」
M3「What Is This Thing Called Love? / Mel Torme」
M4「Skylark / Jackie Paris」
M5「I Left My Heart In San Francisco / Tony Bennett」
M6「What Are You Doing New Year's Eve?  / Harry Connick Jr.」
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8月18日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.08/17 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.423~18追分通信Ⅳ 音楽関連書】

  追分に居ると野生動物に出くわすことがたまにある。かなり頻繁に出くわすのが日頃からその鳴き声をよく耳にする雉。「ケーン・ケーン...」と鋭い鳴き声は印象的だが時々早朝などは林から出てきて散歩したりしており、犬の散歩の前を横切ったりするのでヒヤヒヤものだがどうにか共生しているようでホッとする。
 ひところ軽井沢のメイン旧軽井沢では、ごみ集積場がクマに荒らされると言ったニュースが聞かれたが最近はあまり耳にしない。これもクマと人間の棲み分けがどうやら上手くいっているのかも知れないし、うちの屋根で寝ていたこともある猿軍団もこの所とんと見かけなくなった。ぼくが出くわした動物では鹿とイノシシが印象深く、どちらも夜中の国道沿いでのこと。鹿の方は夜中小諸の国道を横切ろうとして上手く行かず、一方イノシシはウリ坊とも呼べそうな子供のイノシシが2頭。軽井沢駅の駐車場の近くをうろうろ、真夜中だったので車はなく、かなり我が物顔で2頭で闊歩していた。人間と野生動物の棲み分けは実に難しい問題だし、山荘に居ると考えさせられる所も多い。


 ところで山荘生活ではこれといってやることも無い時は、音楽(ジャズ)を聴くと言うよりももっぱら読書と言う感じになってしまう。当然大好きな和洋の私立探偵の活躍するハードボイルドものがメインなのだが、同時に音楽書も手にすることも少なくない。番組にも出演頂いたことのあるジャズライターの村井康司氏の『ジャズ100の扉』、レコードバイヤーにして選曲家など多彩な顔を持つ山本秀樹氏の『クワイエット・コーナー』など、今回も興味深い音楽本を幾つか選んで読んだが、この両方ともアルバム紹介本。その視点のユニークさ、センスの素晴らしさなど、それぞれに興味深いものだったし教えられることも多々あった。


 しかし最も面白かったのは音楽を生業にしている人のものではなく、それ以外の分野の人の書いた音楽関連本だった。その一つが直木賞作家で無類のロック好き、奥田英朗の『田舎でロックンロール』。彼は岐阜市の隣の各務原と言う田舎町育ちで、この町の中学生時代にロックに目覚め、田舎町で孤独にロック音楽を聴き、岐阜の高校時代にようやくロック仲間に出会うと言った、70年代ロック青春エッセイ。ビートルズやストーンズはもちろん、ハードロックからプログレ、ウエストコーストロック、そして遂にジョニー・ミッチェル、ドナルド・フェイゲンにまで行き着くと言ったそのロック修行過程と、専門家でない切り口も愉しく面白い。その上彼は演奏はやらず(悪友に誘われるが...)聞く方だけでそこら辺も面白い所。この各務ヶ原と言う町、ぼくもかつて取材で2回ほど訪れたことがあるが確かに何にもない田舎町。ここの中学で誰にも理解されずロックを一人でいきがりながら孤独に愉しむ。このいきがった悦楽が何とも言えず微笑ましくも面白い。


 そしてもう一冊、こちらは素晴らしいインタビュー集なのだが、ドキュメンタリー作家、沢木耕太郎による『流星ひとつ』。流星とはあの数年前に自死してしまった70年代のアイコンとも言える天才演歌歌手、藤圭子のこと。藤圭子と言っても今の若い人は何それ...と言った感じで、その存在を知らない歌手かも知れないが、あの宇多田ヒカルのお母さんとしては名前を聞いたことが...と言った忘れられた存在だろう。当時はぼくの大好きな「圭子の夢は夜開く」「女のブルース」などの大ヒットを飛ばし、演歌の新星として一時代を築いた後、あの安室奈美恵のように突如引退宣言をしてスパッと表舞台から姿を消してしまった伝説の人である。その彼女が世間を驚かした引退宣言をした直後の28才の時、沢木がウオッカ(火酒)を片手にインタビューしたもので、全編会話だけで構成された特異なインタビュー集。元々は「インタビュー」と言うタイトルで出そうと沢木氏は考えていたのだと言う。しかし諸々の事情などもありこの秀逸なインタビュー集は世に出されることも無く時は過ぎる。しかし数年前偶然TVで藤圭子の自死(高層マンションから飛び降り)のニュースを見て、再度圭子28才の時のこのインタビュー集を読み直し、「輝くような精神の持ち主がこの世に存在していたこと」を改めて再認識、この本の出版を考え、類い稀なる演歌歌手、藤圭子の真実が浮き彫りにされた会話のみによるこのインタビュー集が、日の目を見ることになったと言う次第。
 娘のヒカルは母親の死にあたって「誤解されることの多い彼女でしたが、正義感に溢れた誰よりもかわいらしい人でした。母の娘であることを誇りに思います」と語っていたが、沢木も書く「あの水晶のように硬質で透明な精神」を持った歌い手などほとんどいないと...。娘へ彼女の真実を知らせたいと言う意図もあったとも言えそうなこの本。昨今のアイドル歌手などには望むべくもない(幼いころの過酷な生活などその生きざまも凄いもの)、その歌に賭ける硬質で透明な視線。感涙間違いなしのインタビュー集で、世に数多い馬鹿げたアイドルおたく達にも是非読ませたい一冊で、だらけたぼくの山荘生活に一つの喝を入れられた心持ちにもなりました。


【今週の番組ゲスト:第17回目東京ジャズプロデューサーの山中宏之さんと前川樹里さん】
M1「いつかどこか / CORNELIUS
M2Resting Warrior /  R+R=NOW
M3Can't Dance  / John Scofield Combo66
M4My Dear Life  / 渡辺貞夫」


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8月11日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.08/10 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.422~18追分通信Ⅲ 祝「オーベルジュ・デュ・グルマン」始動】

 ぼくが自称私設応援団を務めていた軽井沢・追分の外れにある、何とも心地良いカフェスポット「カフェ・グルマン」。元外資系広告代理店に勤めていたマスターの平井さんが、3年がかりで独力(!)で建てたパオハウス風なこのカフェは軽井沢でも指折りの好店だったが、6年目を迎えた昨年の暮れにいったん店仕舞い。新たに半年ほどかけ平井さんが自力で全面改装を施し、宿泊も出来るレストラン「オーベルジュ・デュ・グルマン」として7月28日に新たに生まれ変わった。オーベルジュとは宿泊施設も持ったレストランと言った意味合いで、教養のないぼくなどは仏語なのでてっきりフランス料理を出すレストランに...と勘違いしてしまったが、実際は以前のようにガレットをメインにしたランチメニュー中心の気楽なカフェレストランといった趣きの店。オープニングの7月28日は丁度「軽井沢ジャズフェス」の本番当日、それに再開初日だけに客も込んでいるだろうとも思い、数日後にお店を訪れることにした。昨年の11月末から7か月余り、その間山荘に来たときは折を見て立ち寄りその改装進捗状況も見させてもらったが、完成したレストランそして宿泊施設は未見だけに、愉しみにお店に向かう。

 店は以前のお山(浅間山)の見晴らしも抜群なテラス部分に外壁を付けるなど大幅改装しレストランスペースにしてあり、以前のあの開放感が失われてしまうのか...といささか心配だったが、窓を大きくとってあり決してそんな感じではない。食事テーブルが8つほどで定員は20人弱。今は宿泊施設に改装された以前の店内部分も入れると、前はもう少しキャパは多かったかもしれないが、改装後は丁度いい塩梅。
 午後1時に行ったのだがお客は誰も居ずいささか心配だったが、15分ぐらいすると犬連れ客などが集まりほぼ満杯になり一安心。今までは平井さん一家で切り盛りだったが今度は新たに可愛らしいウエイトレスさんが1名加わり、彼女が客接待で娘さんが調理、そして平井さんと仏語通訳者でもある奥さんが全体の統括と言った感じ。スープなどの前菜、メインのガレット、そしてデザートにドリンクと言ったガレットランチコースがメイン料理で、それぞれ4種類ほどから選べる形式。料理を待っている間に平井さんが席に来てくれた。開口一番「どうにか7月中に間に合って良かったですよ...」と言われる。時折のぞいた際に、はたして7月末に間に合うのかいささか心配な感もあったが、そこは熟練カーペンターの平井さん。きっちり纏めて内部の改修造作も仕上げはほぼ完ぺき。店内も大きな窓もあって明るくお山から御影用水周辺の見晴らしも申し分なし。

 「開店からようやくひと段落ですが、オープニング数日はてんてこ舞いで、お客さんにも迷惑おかけしてしまったかも...」といささか恐縮の体。ぼくはオーソドックスにそば粉のガレットコースを頼んだが、娘さんの腕前も以前より上がっているのは間違いなく、どのランチメニューも満足感たっぷり。新しい試みの宿泊施設の方だが、これは訪れた数日前に町から許可が下り宿泊受け入れに動き出すと言った感じで、今月末ないし9月初めの始動を考えていると言うこと。一日2組限定(4人まで)と言う宿泊客が泊まる2部屋も見せてもらったが、平井さんと奥さんのセンスも加味され、中々に小洒落たロフト風お部屋で、若い女性好みのものに仕上がっている。どんなお客が来るのか楽しみでもある。 
 昨年御影用水脇に出来た有名ドッグホテルは、流石の超一流お値段でそれを聞いて本当にビックリ。今は亡きバカ犬ピーちゃんには絶対に泊まらせられなかったなーと感嘆しきり。新しい宿泊施設は犬連れも歓迎の様だが、リーズナブルな値段設定にしますよと平井さんは約束してくれた。お店の看板や名刺のマークは平井家の一員の秋田犬を写したもの。知り合いのデザイナーに作ってもらったと言うそのマークも実に可愛い。













 
いずれにせよ動き出した御影用水脇の「オーベルジュ・デュ・グルマン」。娘さんのガレット料理も最高だし、カフェタイムも午後の3時からに設定されており暇があればまたまたお邪魔するはずだが、ぼくも出来るだけお店のPRに協力したいと思っている。その一環として軽井沢ジャズ主催者や大賀ホールのスタッフの方達にも早速宣伝、かなり関心は持ってくれたようでもある。皆様も軽井沢を訪れた折には、少し足を延ばし追分の外れ(住所は御代田町)御影用水脇にある「オーベルジュ・デュ・グルマン」に立ち寄ってみてください。色々な発見・愉しみがあるのは間違いなしですし、ランチそしてランドスケープの素晴らしさも保証済みですよ。お店のTelは026-731-6554。

【今週の番組ゲスト:
ジャズベーシストの藤原清登さん】
ご自身のレーベル「GARUGANTUA」からリリースされたアルバム「I'll Catch the Sun」「Koffee Crush」から
M1「I'm A Believer」
M2「 Lo Straniero (Ihojin / Saki Kubota)」
M3「Davide's Fountain Pen」
M4「20th Century Boy」



 
8月4日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.08/03 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.421~追分通信2 軽井沢ジャズフェス】

 台風一過ようやく追分も暑さも一段落、こうなると夏本番がかえって涼しくなるのでは...と言った心配をしたのもつかのま、ふたたび日本全国が酷暑に襲われている。この台風12号が通り過ぎた翌日の早朝、恒例の一万歩ウオーキングで御影用水脇を歩くと、台風一過だからかも知れないが...用水の鴨ご一同様の数、前には20羽前後などと言っていたが今回正確に数えるとなんと48羽、ほとんどがコガモだがこれは驚くべき数であり、3家族でこの数何か嬉しくなってしまうほどの壮観さ。この夏はひょっとして何かいいことがあるかも...。

  さて台風襲来当日の28日(土)、今年もまた軽井沢ジャズフェスが滞りなく行われた。7回めである。御代田町最大の祭り「竜神祭」は早々と中止が決定され、町の広報車が慌ただしくその中止を告げ廻っていただけにいささか心配だったが、会場の軽井沢大賀ホールに着くと開場15分前にも関わらず、例年以上に入場者で混雑、これはチケットの売れ行きも良かったのでは...とスタッフの一人に聞いてみると、やはりそのようだとのこと。まあこれで主催者「88プロ」の伊藤妙子女史(伊藤八十八氏未亡人)も一安心と言った感じ。彼女に良かったですねと声掛けしてから楽屋に向かう。奥に陣取る構成・演出の高平哲郎氏とサックス演奏と司会を兼ねる誠一ちゃん(中村誠一)に挨拶をし、タモリの不倫週刊誌ネタなど友人をネタにバカ話をして客席に...。ほぼ満杯の客席に主催者でもないのになぜかホッとし、これならばと...演奏の方にも期待が膨らむ。

 肝心のフェス内容だが、今年は出演者の顔ぶれからも余りジャズ色は...と言う感じもあったが、やはりそのようで...「純生ジャズ」を期待した向きにはいささか物足りなかったかも知れない。だがリゾート地でのジャージーな音楽祭としては、それなりに良かったようにも思える。ただ全部で6つのユニットが登場、午後2時開始で6時まで15分間の休憩をはさ4時間6バンドの出演。セットチェンジなどの関係もあってか一つのユニットの演奏時間が短めな印象もあったのは残念な所(これはトリを務めるパブロ・シーゲル。ジャズタンゴユニットに時間を割いた為もあるかもしれない...)。

 フェスのオープニングは妙子さんが是非聴きたかったと言う、西脇辰弥のクロマティック・ハーモニカユニット。全体をハーモニカの巨匠トッーツ・シールマンスに関するナンバーでまとめた辺りもなかなかのステージ構成で、「真夜中のカーボーイのテーマ」「ブルースエット」等お馴染みのナンバーが並んだ演奏も実に心地良いもの。驚いたことには彼がハーモニカを始めたのは30才になってからだと言う。それまではピアノをやっていて、ある日突然ハーモニカの音色に惹かれこの楽器を始め、今では第一人者だと言うのだから...、まあこんなこともあるのだ。
 次は先日番組にも登場してくれたギター&作曲、プロデューサーの鳥山雄司のデュオユニットで、相方はピアノの和泉宏隆。「オーケーボーイズ」の名称でも活動をしていた2人は、その名称通り幼少からの慶応ボーイで、慶応高校時代からのバンド仲間だけに息の合った演奏ぶり。鳥山の代表作「世界遺産のテーマ」等を演奏、彼ら自身も言っていたように「僕らはジャズでないし、なんと言ったらいいのか...」と言った感じで、フュージョンとも言い難く正に2人だけの音楽世界と言ったものだが、彼ら目当ての客もいたようで、CD売り場で彼らのアルバムを探している人も結構いたようだ。続いて台湾のバイオリン奏者ダフニィ・スーのユニット。ただし突然登場しコメントも無く演奏、観客の多くは彼女が何者か余り良く判らなかったのでは...。

 ここで15分間の休憩が入り、続いては結成50周年目と言う大ベテランのコーラスグループ、タイム・ファイブの登場。彼らが手本にしている「フォー・フレッシュメン」張りにそれぞれが楽器を奏でながら、見事なコーラスハーモニーを聞かせる。中々の達人技だったがどうも音響が良くなく、今一つその魅力が伝わらない感もあり、その音響問題は続く誠一&寺久保エレナ・サックスユニットでも感じられた。NYで活躍中のエレナは夏のこの時期に日本へ里帰りで、確かこのフェスでは皆勤賞の筈。本場仕込みの力強いアルトプレーで毎回フェスを盛り立ててくれるのだが、今回は誠一ユニットへの客演の形で、いささかその本領発揮と迄は行かない感もあった。司会も兼ねる誠一ちゃんは流石ベテランの風格充分のプレー。ただこのユニットがどういう訳かベースレス。本来のベーシストが都合つかなかったのかも知れないが、ここは今回唯一のジャズユニットだけに誰かトラ(臨時)のベーシストを入れるべきだったと思う。

 今回のオオトリはフェスの目玉とも言うべき、パブロ・シーグレルの「ジャズ・タンゴ・アンサンブル」のステージで、シーゲルは本場のミュージシャンとのユニットでグラミー賞も受賞している。今回は日本のミュージシャンとの特別ユニットだったが、これは期待通り聴き応え充分なものだった。今や帝王アストル・ピアソラ亡きあとのポストピアソラを担う第一人者のシーゲル。彼のかなり難解なオリジナルタンゴをメインに、ピアソラ・ナンバーも2曲ほど。鬼怒なつき、ヤヒロ・トモヒロ、そして今や小松亮太と並ぶ日本のバンドネオンの代表格に成長した北村想など日本のミュージシャンも奮闘、ジャズタンゴと言う新しい分野の創出にも力を発揮、シーゲルを中心にしたその力強くももの悲しさも秘めた演奏は、多くの観客を魅了した様だった。シーゲル・タンゴ・ユニットは1曲のアンコールをはさみそのままラストのセッションに突入。ここには誠一、エレナ、西脇の3人も加わりお馴染みの「枯葉」を演奏、フィナーレを華々しく飾ってくれた。これまでこうしたフィナーレセッションが無いことがいささか寂しく思えていたので、今回は色々曲折は有ったようだがこのフィナーレセッションが実現したこと、グッドでもあった。良い心持ちで会場を後にすると台風の風雨強しで、軽井沢駅までずぶぬれになりながらようやく到着。しかし「雨に唄えば...」で、結構軽やかな心持でした。来年もこのジャズ・フェス是非続いて欲しいものです。期待してますよ!

【今週の番組ゲスト:ジャズギタリストの松尾由堂さん】
新作「Song in Motion」から
M1Blue Violet
M2Time Thieves
M3Croquis
M4Sound of Snow
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7月28日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.07/27 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.421~追分通信18-1】

  ようやく追分の山荘に来ることが出来た。本当はもう5日ほど早くこちらに来るはずで、番組収録や原稿、打ち合わせなどをかなり無理して済ませ準備万端だったが、なんと移動する前日の夜にメールとTelが入り、局の先輩と古くからの知り合いが相次いで亡くなってしまってと言う。その葬儀が行われるので予定は即キャンセル、両方の葬儀参加の為に5日ほど山荘にたどり着くのが遅れてしまったのである。7月の東京は歴史始まって以来とも言われる酷暑、2人とも癌を患っていたようでこの暑さに耐えきれず逝ってしまったのか...。それにしてもこの葬儀は対照的で、一方はほとんど人がいずの寂しい思いだったのに対し、もう一人の方は通夜には人が溢れ賑やかこの上無し。この2人年令は6つほど違うが同じく悠々自適の身、この年令の差、それに人徳など様々な要素でこうした差が出てくるのだろうが...、自身のことなど色々考えさせられるものだった。

 さてどうやらの山荘到着だったが、いつもだと北陸長野道を使ってダイレクトに軽井沢入りとなるのだが、今回は中部横断道が八ガ岳山麓の八千穂ICまで伸びたこともあり、うちから近い中央道を使い小淵沢ICで降り蓼科高原、麦草峠を越え佐久の八千穂に至る高原ルートを走って山荘入りすることにした。このうち中部横断はまだ全線開通していないせいか、八千穂から山荘近くの佐久北ICまでは無料のこともありこの道路を使ったのだが、出発の朝はいくらか曇り具合が甲府盆地に入る頃から快晴、、流石に富士山は見えなかったが南アルプスや八ガ岳はどれもバッチリ、少し暑かったが実に快適な山岳ドライブだった。
 メルヘン街道と名付けられた麦草峠越えは吉永小百合のJR広告の影響もあり、白駒池周辺の苔の森が大評判となり今回も駐車場は満杯、池に通じる遊歩道も混雑していた。麦草峠にある麦草ヒュッテで一休み。ここはもう35年ほど前のGWに行楽地を繋ぐ休日特番を組み、部長だったぼくは勝手に山班を担当、北八ッの素晴らしさを中継するはずで、今は亡き山岳写真家の近ちゃんこと近藤辰郎さんを伴いこのヒュッテに一泊、前日は遅くまで酒盛りだったがこれが悪かったのか中継のある翌日は夜中から猛吹雪。ヒュッテの電話を借りて生中継なのだが外は吹雪で何も見えず、近藤さんも担当女性アナも何も伝えることは出来ず実に困ってしまった苦い思い出のあるヒュッテ。間の悪いことには中継が終わると徐々に晴れだし夕方は快晴。そこでもう一泊伸ばし横岳に上り帰りは蓼科の共同浴場で入浴、帰京とそれなりに楽しい思いもしたが、局に出るとスタッフから「日頃の行いが悪いせいですよ...」などと窘められてしまったものだった。今になってみれば苦くもありつつ愉しい想い出山行でもある。


 さて山荘到着の翌日は早朝の恒例一万歩ウオーキング。御影用水を歩いていると2か月ほど前には、一羽も見掛けなかった鴨の親子集団がなんと上流から下流にかけ3つもいて、その総勢はなんと20羽を超す大所帯。こんな数の鴨は今回初めて見たがどれもコガモがメイン、母親らしき鴨が世話を焼く様子も実に微笑ましい。それにしてもかつての用水の主だった3羽のはぐれ鴨、そしてぼくの散歩のお供だったバカ犬ピーちゃん。みんなもういない、寂しい限りである。用水脇のおなじみ「カフェ・グルマン」も店主の平井さんが自力で半年ほどの改装作業を済ませ、丁度この原稿が載る土曜日に「オーベルジュ・グルマン」としてレストラン及び一日2組限定のペンションとして再出発。御目出度いことなのだがぼくはどうもフランス料理が苦手、「オーベルジュ」等と聞くと腰が引け気味になってしまう。丁度その日は軽井沢ジャズフェスの当日で朝から会場にいるので店には窺えないが、翌日には立ち寄ってみないと...。果たしてカフェ時代の様な気さくさも残しておいてくれればと願うのだが...。

 次回はオーベルジュに変身したグルマンの様子や7回目を迎えた「軽井沢ジャズフェス」、そしてぼくの軽井沢お勧めスポットなども紹介するつもりです...。

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
今週はジャズトーク、白人の女性ジャズボーカル特集として青木先生にお話をうかがいました。
M1「 Boogie Blues  / Anita O'Day」
M2「I'm Glad There Is You/ June Christy」
M3「He was too good to me / Chris Connor」
M4「Sweet Talker / Karin Krog」

M5Waltz for Debby  / Monica Zetterlund



7月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.07/20 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.420~軽井沢ジャズフェス】

  今年もまたこの季節がやって来た。サマー(=夏)音楽フェスの季節である。かつてならば夏=ジャズフェスの季節などと宣うものだが、今はそんなことも言えない。ジャズという単語を音楽に変えないと...などと邪念が働いてしまう。実際のところロックフェスは入場者、登場ミュージシャンなど隆盛を極めているが、ことジャズフェスはかつての山中湖、斑尾、田園コロシアムなど大型のフェスはことごとく潰えてしまい、僅かにNHKが主催する「東京ジャズフェス」くらいになってしまい、全く寂しい限りである。これにはジャズフェスの主催者達が本来の入場料収入で勝負するのではなく、広告代理店などと組みスポンサー探しに熱中、フェス開催前にすでに収益の損益分岐点を超える...と言った姑息な考えが続いてきたからではと...ぼくは密かに考えており、ジャズの衰退も相俟って観客動員を第一に考えるロックフェスに、ジャズフェスが大きく水を上げられてしまっている...とも言えそうなのだ。

 
しかしそうはいっても日本全国ではまだまだ頑張っているジャズフェスもあり、その筆頭格が7月最後の土曜日、28日に軽井沢を象徴する音楽ホール、大賀ホールで行われる「軽井沢ジャズフェスティバル」言うことになる。40年以上の付き合いもあった今は亡きジャズプロデューサー伊藤八十八氏。彼がアメリカを代表するリゾート地、ニューポートで行われて来た有名なニューポートジャズフェスの日本版を目指し、企画実施したこのジャズフェス、その彼があっけなく逝ってしまい、奥さんの妙子さんがプロデュース役で継続してはや3年目。伊藤氏との繋がりや軽井沢と言うぼくの第2の故郷への恩返しと言う意味合いもあり、これまでも出来ることは協力して来たのだが、特にヤソさん(伊藤氏)亡き後のフェスは啓友・高平哲郎氏が構成・演出を担当、昨年からは司会もサックス奏者の誠一ちゃん(中村誠一)に変わったことなどもあり、今回もどうしても更なる協力を...と言うことで番組でもPRに務め、今年もまた妙子さんとスペシャルゲストに来てもらって、フェスの全貌紹介を行うことにした。

 
今回登場してくれたスペシャルゲスト、それは人気フュージョンギタリストにして数多くの歌手たちのプロデュースも担当している鳥山雄司氏。あのTV番組「世界遺産」のテーマ曲を作ったことでも知られる才人で、故伊藤氏との繋がりで今回初めて軽井沢のステージに立つことになった。我がジャズ番組にも初登場なのである。その彼、フェスではフュージョン仲間のキーボード奏者、和泉宏隆とのデュオで演奏を展開してくれるようだが、番組でも軽井沢フェスに出れる喜び、フェスへの期待などを率直に語ってくれている。また今回のフェスの目玉は、アストル・ピアソラ亡き後のモダンタンゴ界を一身に背負っている感も強い、バンドネオンの名匠パブロ・シーグレルの登場。彼は日本のタンゴ関連ミュージシャンとの共演ステージを行う予定だが、その圧倒的な演奏は多くのファンに感銘を与えるに違いない。

 
その他司会役の誠一ちゃんは、もうこのフェスでお馴染みのNY在住の若い女性サックス奏者、寺久保エリナとツインサックスユニットで登場、若い彼女を相手に彼がどんな力演を聴かせてくれるか、古くからの友人として大いに楽しみでもある。また妙子さんが大好きだと言うハーモニカ奏者の西脇辰弥氏や異色な所では台湾のジャズバイオリン奏者ダフニ・スーも顔を見せてくれる。どれも今までとは一味違った演奏で愉しめるはずである。

 
この原稿をものしている時点ではまだ暑い東京。はるか追分の山荘を思いつつ毎日を過ごしている訳だが、あと数日で現地入り。今年は大賀ホールでのリハーサルの様子も覗いてみようと思っている。さあ後数日ここは出来るだけ頑張らなくては...。そして来週からは昨年同様「追分通信」をお送りします。

【今週の番組ゲスト:軽井沢ジャズフェスティバル
プロデューサーの伊藤妙子さんとギタリストで音楽プロデューサーの鳥山雄司さん
http://eighty-eight.jp/news/388

M1「The Song of Life(世界遺産テーマ曲)/ 鳥山雄司」
M2「An Evening Calm / 鳥山雄司」
M3「 La rayuela(石蹴り遊び) / Pablo Ziegler」
M4「Summer Time  / Kenny Barron」















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7月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.07/13 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.419~カズオ・イシグロ】

 ノーベル賞がまさかのセクハラ疑惑騒動で大揉め、その主因だったらしいノーベル文学賞、今年は受賞無しとなりこれからもその存続すら危ぶまれているとも聞く。ここでの一番の問題は、わずか数名それも何年も同じ面子の委員で賞が決められて来たと言う、圧倒的な賞決定の閉鎖性かも知れないが、そんな連中が決めた賞にこれまで一喜一憂して来たのか...となると、なんとも虚しくもなるし馬鹿らしくもなってしまう。特にここ数年は常に文学賞の最有力と言われ続け、世間的には無名とも思われる作家が、次々に彼を追い越していってしまった村上春樹で、世界的な拡がりを持つその応援団にとっても、やりきれない無念な思いが残るに違いない~肝心の春樹氏自身はノーベル賞狂騒曲から逃れ、むしろホッとして居るかも知れないが...。

 さてこのノーベル賞を春樹氏よりも早く手にしてしまった一人の日本人作家がいる。と言っても彼の国籍は英国で英国作家なのだが、勿論純生日本人である。カズオ・イシグロである。代表作「日の名残り」が英国最高のブッカー賞に輝き、アンソニー・ホプキンス主演で映画化もされ話題を呼んだし、「わたしを離さないで」は綾瀬はるかの主演でTVドラマ化された...と言う具合に、かなりポピュラーな存在ではあったが、ノーベル賞受賞によりその作品も再度話題を集め、かなり売れ行きを伸ばしたとも聞く。この彼の作品の翻訳権全部を所有するのが、海外ミステリーなど翻訳本に強い早川書房で、伸び悩み気味の出版業界では、昨年最大の話題を集めたのも記憶に新しい所。


 カズオ・イシグロと村上春樹。現在世界文学の中心に位置するこの2人は同世代で、春樹の方が5才ほど年上。日本人で同世代と言うことだけでなく、2人にはその透明感溢れる蠱惑の文体、その文章の心地良いリズム感など共通する点も数多くある。中でもそのリズム感だが、これは2人のジャズ好きが大いに関係しているのでは...とぼくは密かに睨んでいる。春樹の方は国分寺と千駄ヶ谷で「ピーター・キャット」と言うジャズ喫茶を実際にやっていたし(ぼくもこの店に通い一応春樹氏と顔見知りではある)、イシグロの方はなんとジャズミュージシャンを目指していたが挫折...と言う経歴の持ち主。
 春樹とジャズ、この関係は余りにも有名で作品にもよく登場するし、ジャズエッセイ集なども刊行し好評でもある。
 一方イシグロの方は長編作品が多く、その中にジャズ関連の単語などはあまり見られないが、唯一とも言える短編集「夜想曲集」は、「音楽と夕暮れをめぐる5つの物語」という副題が付くぐらいだけに、ジャズにまつわる好短編もいくつかある。その一つがあのハロルド・アーレン作曲、ジョニー・マーサー作詞の名コンビによる、有名なスタンダードソング「カム・レイン・オア・カム・サンシャイン=降っても晴れても」をタイトルにしたもの。主人公はミュージシャンでは無いがスタンダードソング好きでレコード収集が趣味の教師、現在はスペイン在住。その親友とその妻(彼女も大のスタンダード好き)のロンドンの家を、彼が久しぶりに訪ねそこで起こる出来事をまとめたものだが、そこで重要な役割をするのがタイトル曲をはじめとしたスタンダードソングの数々。こうした設定の短編は春樹にもありそうなもので、ジャズをメインにした音楽を通じて、イシグロと春樹と言う2人の作家の類似性・共通性を窺わせる所も少なくない。長編は一寸と...敬遠気味な皆様にもこの「夜想曲集」は是非お薦めの一冊だし、カズオ・イシグロと言うノーベル賞作家を知る入り口にもピッタリだと思う。

 ところでイシグロはジャズ好きと言うよりもミュージシャンを志向した本格派だけに、英国のジャズ界とも関係が深いようで、中でも彼との親密度を表に出しているのが、日本でも人気の高いシンガー、スティーシー・ケントである。彼女はアメリカ出身で英国に進出と言う変わり種だが、旦那はサックス奏者で夫婦共演で度々来日もしている。彼女の作品にはイシグロが詞を付けた曲も幾つか収録されており、イシグロへの感謝を彼女がアルバムで語っているものもある。現在世界文学の頂点に位置している2人の作家イシグロと春樹。彼らを結び付けるもの、それがジャズと言うのはジャズファンならずとも嬉しいものである。

【今週の番組ゲスト:ジャズピアニスト野力奏一さん】
4月にリリースされた自身名義として30年ぶりで、初のソロアルバム「Piano Solo」から
M1「Seven Steps To Heaven」
M2「Pastoral」
M3「Kitchen / Full Moon」
M4「My Ship」