12月28日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019.12/27 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜18:00-18:30(本放送)ほか、土曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.493~今年の一枚】

 いよいよ2019年も打ち止め。来年以降この世界はどうなって行くのか...。東京の片隅にひっそりと暮らすオールドボーイにとっても、そこは大いに気になる所。なにせイギリスのEC離脱が来年は本格化、アメリカや台湾、EC諸国などそれぞれのトップがどうなるのか、まさに混沌とした状況はさらに混迷の度合いを深め、予断を許さない。振り返って我が日本だが、今年は紛れもなくラグビー年、そして来年はオリンピック本番。スポーツお祭り騒ぎとかなりお気楽なお国だが、大本の首相自身はこれまでの様に、やりたい放題とはいかない筈である。
 
ぼく個人としても、今年は間違い無くラグビーの年だった。「4年に一度ではなく一生に一度」を体現化でき、数年前からのラグビー番組計画、H女史の手掛ける藤島大氏のラグビー番組も至って好調。更にその締めでジャパンチームの凱旋パレードまで見られたのだから、もうこれ以上言うことなし。

 さてジャズ番組の方だが年末最後の番組は、ジャズ評論家青木和富氏による、恒例「今年印象に残ったジャズ作品(海外編)」紹介である。青木氏の紹介作品は別項に挙げられている筈だが、マイルス、コルトレーンと言ったジャズ界の巨匠の発掘作品、そして現代きってのピアニスト、キース・ジャレットのソロ作品などの大作揃いで、ぼくも異議なしの青木氏らしい、至って妥当なラインアップ。ぼくも3つほど関連雑誌やジャズサイトから頼まれベスト作挙げてみたが、大体似たようなラインアップになった。ただ今年ぼくが最も印象に残ったジャズ作品は、いまNYと並ぶジャズ発信地として、大きな話題を集めつつあるロンドンのジャズ=UKジャズシーン。その南地域と言われるサウスロンドン(訪れたことが無いので想像がつかないが...)のジャズムーブメントの中心に位置し、シーンの牽引役でもあるテナー・タイタンのシャバカ・ハッチングス。その彼のユニット「サンズ・オブ・ケメット」によるアルバム『ユアークイーン・イズ・ア・レブタイル』。

 シャバカはカリブ海出身の両親に連れられてロンドンに渡って来た様なのだが、彼のジャズにはカリブの音楽、キューバンジャズやレゲエなどの極楽音楽の要素に、ジャズの原点とも言えるニューオリーンズミュージックなどもミックスされ、ジャズをコアにした、独特な明るさとリズム感も有する蠱惑的な音楽。そのテナーもかつてのタイタン達と同じく朗々と響き良く唄う。全7曲はアンジェラ・デイビス、ルシェット・タクマンなど、黒人や女性の地位向上に貢献した、彼のクイーンとも言える革新的女性達に捧げられており、ジャケットもプリミティブなブラックアート風な魅力的なもの。今のロンドン周辺の力強い息吹が感じられる力作だ。
ジャズ全盛時の活力と愉しさ、そしてフリージャズの熱気も加味されたこの魅力的ジャズ。ぼくの今年度お勧めの一作です。

 なお「
テイスト・オブ・ジャズ」は来年より日曜日の夕方に時間移動されます。翌週木曜日の夜に再放送。益々のご声援を...その初回に登場するのは、J-ジャズの巨匠、山下洋輔さん。久々の登場、ジャズ生活50年を振り返り、新たな発展を語ってくれる予定。乞うご期待!

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
今年印象に残ったアルバムをご紹介頂きました。
M1Rubberband of Lifefeat.Ledisi/ Miles Davis
RUBBER BAND』より
M2Blue World / John Coltrane
BLUE WORLD』より
M3The Garden / Brad Mehldau

FINDING GABRIEL』より
M4Happy Talk / Diana Panton

CHEERFUL LITTLE EARFUL
M5Somewhere Over the Rainbow / Keith Jarrett

MUNICH 2016』より


12月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019.12/20 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜18:00-18:30(本放送)ほか、土曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.492~ジャズ重大事】

 今年もいよいよ大詰め、現役諸兄は何かと大忙しの筈だが、こちらはフリーのオールドボーイ、流石にそんなことも無い。しかし今年は暮れに恒例の「台湾特番」がずれ込むなど、年令の割には結構バタバタしている。その暮れ行く19年だが、やはりラグビーの年だった。先日のジャパンの丸の内凱旋パレード、こんなものが実現する日が来るとは本当に考えられない変わり様だ。先日もツイッターを覗いていたら、こんなものを発見。あの台風来襲でスコットランド戦が中止かどうか騒がれていた時のものの様だが、「神風などは吹かない。そんなものを期待しなくてもジャパンは勝つ...」こんな勇ましいツイートを発信していたのはあの漫才界の大看板、内海桂子師匠。90才を優に超えている筈の大師匠までも、こんなに熱く興奮させるラグビーの素晴らしさ、改めて感じ入りました。
 一方ジャズの方だが、そんなこんなで番組も来週は今年度の最終回、ジャズ評論家の青木和富氏に自身の印象に残った作品をいくつか紹介してもらうつもりだが、ジャズコラムらしくぼく自身もここで今年のジャズ話題を...。

 
まず今年のベストアルバムだが、今や世界的なスーパーウーマンとして、八面六臂の活動を展開している上原ひろみ。彼女の10年振りになるソロアルバム『スペクトラム』を挙げたい。正に縦横無尽に鍵盤を駆け巡る彼女、向かうところ敵なしといった趣きで、そのソロ作も絶品。脱帽ものである。その他の話題としては何と言っても帝王マイルスの35年振りに日の目を見た幻の一作『ラバーバンド』、テナーのカリスマ、ジョン・コルトレーンの未発表音源『ブルー・ワールド』の発掘と言う、2大巨匠の作品が新たに日の目を見た事実だろう。どちらも素晴らしい作品だった。
 しかしそれ以上にぼくが印象に残ったのは、非ジャズ系音楽雑誌「ミュージックマガジン」が、その創刊50周年を記念し40人程の音楽ライター達(残念ながらぼくは入っていないのだが...)に、この50年間のジャズアルバム・ベスト100を選出、なんとそのトップを飾ったのが、鬼才オーネット・コールマンの『ダンシング・イン・ユア・ヘッド(77年/ホライズン)』だったと言う事実なのである。この40名近いライターのほとんどは、雑誌の関係上あまりジャズと関りを持っていない連中。その彼らの投票で集約されたトップが、オーネットだったと言うのは、かなりな驚きだったし嬉しいことでもある。ぼく自身が選者だったら、このアルバムをトップに押したかは...しかとはしないが、少なくともベスト3の1枚に入れたのは間違いない。それ程このアルバムはぼくの好きなものだし、ジャズ史を揺るがす衝撃作だとも言える。

 
フリージャズの鬼才と評されるオーネットのこの作品について、小出斎氏(本職はブルースやロック系ライター)は、「これでいいのだ。見事なちゃぶ台返し...」と、マガジン本誌でその驚きを表現していたが、まさにそのとおり。これはジャズのお祭りアルバムであり、フリージャズのしかつめらしい深刻さを完璧に取り払った、祝祭フリージャズなのである。オーネットのアルトに、ベース&ドラムス、更にツインギター(これが良い)、この5人がにぎにぎしく自在に踊り狂うフリー、まさに究極のジャズ世界の実現なのである。この暮れの忙しい一時ですが、皆様も是非この至極の音群に触れてみて欲しいものです。そうすればこの世もまんざら捨てたものでないことを感じるかも知れませんね。

 さてここでお知らせ。来年から我が「テイスト・オブ・ジャズ」(開始以来50余年目を迎える)は、放送日時が毎週日曜日の18時30分~19時に変更されます。なお再放送は木曜日の22時半~23時の一度きり。いささか放送回数が減少してしまいますが、よろしくお付き合いください。このコラムも同様によろしく...。


【今週の番組ゲスト:CORE PORT主催の高木洋司さんQuiet Corner主催の山本勇樹さん】
「CORE PORT×Quiet Corner: Landscape 01」から
M1「The End Of A Love Affair / Joe Barbieri
M2Rings / Ricardo Grilli
M3The Stars, The Sun & The Moon / Triosence
M4A Child Is Born / Laila Biali

12月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019.12/13 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜18:00-18:30(本放送)ほか、土曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.491~ワンチーム】

  今年の流行語大賞は「ワンチーム」に決まった。もちろん日本中を巻き込んだRWC(ラグビーワールドカップ)効果によるところが大きいが、今やダイバーシティー&コンクルージョン化が進みつつある日本にとって、かなり重大な意味を持つ言葉になっているとも言えそうである。競技スポーツでは当然「ワンチーム」の一体感は勝利の為に必要だが、ラグビーみたいに国籍主義ではなく在地主義を採用する競技、特にラグビージャパンの場合には半数以上が外国生まれの選手と言う状況だっただけに、この言葉は全体を纏めその士気を高めるために、確かに必須の要因であったと思われる。ぼく自身は「4年に一度ではない、一生に一度だ」と言う、あのキャッチフレーズが最も印象深かったのだが、言葉の持つ訴求力やその持つ意味合いから、やはりこの「ワンチーム」なのだろう。キャプテンのマイケル・リーチや最年長のトンプソン・ルークなど、この言葉を体現化したジャパンの外国出身選手たちを誇りに思う。 

 
今の日本は人口減など様々な要素がからみ、どんどんと縮み&竦み傾向にあるのは間違いないが、かつて世界をリードして来た諸企業が一概に元気が無く、長年漫然とトップを務める安倍首相が、し放題で許容されてしまうような国になってしまっている。これは忖度や過度の従順さなどの国民性も大きいが、正にへつらいでは無い真の意味での「ワンチーム」としての気構え、これが極端に薄らいでしまったことによるものだろう。そして日本でも在日の人々へのヘイト主義や弱者排除などが横行、旧来的な「ワン」への回帰傾向を政府も押し進めつつあるようにも思える。ただこれは日本だけでなく、今や全世界的な傾向とも言え、その際たるものが「ワンアメリカ」を標榜する独裁権力者トランプを始め、EC各国での自国第一を掲げる右派勢力の台頭等々。同じ「ワン」でもこの2つは正反対の意味合いを示している。

 ジャパンが実現した「ワンチーム」、それが象徴した全てに開かれている、「ワン」の持つ意味合いの重要性。その為にもラグビーという競技が、より日本に根付くようになればいいなと今は切にそう思う。先日も我がラグビー番組で、パーソナリティーの藤島大さんがラグビーの面白さを一人語りしていたが、このワンチームも、その面白さ・素晴らしさに加えられるべきものだと思う。


 ところで今回の流行語大賞に関しては、「タピる」という言葉も入っていた筈だが、今回の台湾特番(12月29日放送)の一つの主要タームが「タピオカ」。そのため台北の街でも我々スタッフは大いにタピって来た。またどうしてタピオカが日本の国民食の一つにもなり、台日友好の象徴になったのかについても、特番では取り上げるつもりにしている。
ジャズは優れて個の音楽だが、同時にダイバーシティーの音楽でもある。虐げられた者達の苦しみ、悲しみ、そして僅かな喜び。その原点を忘れて何がジャズだ...と今つくづく思う。「ワンチーム」意味深い好い言葉である。

【今週の番組ゲスト:チカブーンのリーダーで
サルサ・ラテン音楽情報フリーペーパー『SALSA120%』エディターの森村あずささん、マルチ・シンガーソングライターの エリック フクサキさん】
M1「いつまでも・・・/ Chica Boom
M2Ai Yai Yai/ エリック フクサキ」
M3Puente sobre el mar / Oruqesta Del Sol
M4Lagrimas Negras / Gonzalo Rubalcaba & Aymee Nuviola


12月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019.12/06 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜18:00-18:30(本放送)ほか、土曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.490~廖修平先生(台湾取材旅行)】
 
 恒例の台日友好特番(12月29日放送予定/1時間番組)取材の為、先週5日ほど台北をメインにした台湾取材旅行に行ってきた。例のごとくの貧乏取材旅行で苦労の連続だったが、これを余り書くと担当のO局長にまた赤貧ツアー話ですか...と、厭味を言われそうなので今回は止めにしておくが、もう少しオールドボーイに相応しいツアーを実現したいものである。ただ全部が全部辛かったと言うことでも無く、今回の収穫は台湾到着の初日にこれまで待ち望んでいた温泉ホテルに泊まれたこと、更に台湾観光局や取材先の全面協力などもあって、リスナープレゼントもこれまでにない豪華なものになったことなどである。今回のプレゼントは台湾熊の大きなぬいぐるみや台湾銘茶等々豪華絢爛、是非皆様も実際のオンエアーをお聴きになり、プレゼント応募されれば...どうですか...。
 
 
 さてその温泉だが、これはかつて一度取材で訪れたことのある宜蘭県にある礁渓温泉。台北から列車で1時間半ほど、車で行けば雪山トンネルと言う長いトンネルを抜けて1時間弱、かなり近い所にある台湾を代表する温泉地の一つ。10年ほど前に訪れた時は、鄙びた温泉地と言う感じで立ち寄り湯に入っただけだったが、今は様変わりですよ...と言った観光局のお偉いさんの話通りに、華やかで賑やかな温泉街に変貌していた。駅を降りるとすぐに温泉街で、山間地が多い台湾の温泉としては至極便利で、台北から日帰りの客も多いと言う。ホテルの数も数倍に増えている様でかつては豊富な温泉量を誇っていたが、
今は乱立気味で温泉としてはいささか魅力薄(なんと言っても台湾では湯量が勝負だけに...)ではあるが、そこは台湾を代表する温泉の一つだけにそれなりに愉しむことは出来た。ホテルは日式(日本風)が売りでフロントも法被姿の女性が担当と、かなり日本温泉を意識している。大浴場はイマイチだったがそれぞれの部屋に温泉が引かれており、個室で温泉を愉しめるところはグッドそのもの。スタッフ一同(と言っても3名)も大満足だった。

 
しかしその温泉訪問以上に今回の取材での感激は、廖修平先生のアトリエを訪問出来たこと。廖さんは台湾を代表する美術家(文化勲章に相当する賞も受賞)にして、アジア有数の版画家でもある。日本の東京教育大(現筑波大)に留学、その後NY、パリと修行を続け、台湾に戻り実作を続けている版画家で、現在80代半ば。廖家は台北の代表的ホテル「福家大飯店/ハワードホテル」の支配家と言う名門で、彼はそこの4男坊。今なお創造力旺盛で現役バリバリ。数年前に国立美術館での大回顧展も素晴らしいものだった。

 この廖さんと知り合ったのは10年以上前、本当にひょんな切っ掛けからだった。当時台湾代表部の中にあった文化センター(台湾文化を紹介するセンター)で新特番について所長と打合せを終えた時、壁に掛けられた素晴らしい版画(廖先生の代表作の一つ、家具や道具と漢字を組み合わせたタイポグラフィー風大作)に目が行った。同行のコーディネイターM女史もその作品に感服。異口同音に素晴らしさを称賛したところ、廖修平と言う台湾きっての美術家・版画家で、丁度いま東京の代表部(大使館)にいるから紹介するよと言うことになり、即席のインタビューを敢行。そこで親しくなり、その後も台北を訪れるたびに、総統府にほど近いまさにロフト風なそのアトリエを訪れていたのだが、6年ほど前にそこが取り壊されてしまい、以降は残念なことに新たに作られたアトリエを訪れる機会は無かった。それが今回歓談の後でアトリエに連れて行ってくれることとなり、ぼくもM女史も大感激。新しいアトリエはビルの一室をそのままアトリエに改造したもので、その新作過程も伺え、代表作も何点か展示されているまさに感激の場所。帰りには彼の全作品を収録した豪華画集などもプレゼントしてもらい、またまた大感激。

 
この台湾紹介特番の継続動機の一つが、廖先生の作品やその存在の素晴らしさを、日本のリスナーに紹介すること...と言っても過言でない程、ぼくもM女史も先生に入れ込んでいる。今回も特番では彼のアジア美術論が登場するはずだが、どうにかして先生の大回顧展を東京の美術館で実現したいものとも思っている。それ程に素晴らしい美術家・版画家なのです。廖修平先生は...

【今週の番組ゲスト:ベーシストでエンジニアでプロデューサーの塩田哲嗣さん】
今年8月8日に誕生した新しいレーベル
『Steelpan Records』を主宰

M1「Gravity / Bei Xu」
M2「Minor Blues / 1969 Quintet」
M3「What I did for Love / 岡まゆみ」
M4「I Love You / Bei Xu」


11月30日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019.11/29 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜18:00-18:30(本放送)ほか、土曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.489~茅ヶ崎あさまる会】

 先週の終わり小雨降る寒い日、新宿から湘南ラインに乗って茅ケ崎に向かった。この街の魚料理屋「あさまる」で、毎年2回ほど仲間と開いている昼飯&飲み会に参加するためである。通称「あさまる会」は、ぼくの敬愛するラジオ&TVドキュメンタリーディレクター、河内要氏ご夫妻を囲む会で、総勢6~7名。待ち合わせの茅ヶ崎駅に11時ギリギリに着くともう皆さんほぼお揃い、ただ一人三鷹から参加の女性監督だけが30分ほど遅れると言うことで、会場に向かう。ここのオープンは11時半だが、こんな小寒い日にも拘らず既に10数人待っており遠方からの来客も多い。茅ケ崎にはこうした海鮮料理&飲み屋が数軒ある様で、どこも自前の船を有しており、その船の名前がこの店では「あさまる」と言う訳。そしてその船取りの魚をメインに出しており、それがどれも旨いと評判で、河内さんのお勧めでこの店の食事&飲み会を始めようとなってからもう10数年。幹事役はぼくの古くからのジャズ仲間の一人のO氏で、彼の奥さんがかつて河内さんと仕事をしていた仲。またその他の連中もジャズやドキュメンタリー、古本など何らかの繋がりでこの会に参加している面々で、気の置けない愉しい会である。オーダーのメインは相模湾が誇る金目鯛の煮つけ。その他にもシラスなど色々な魚介を勝手に頼み、飲み歓談する愉しみな数時間。


 さて主役の河内さんだが、このコラムにもこれまで数回は登場したはずで、今やマスコミ(TV&ラジオ)の長老的立場のおひとり。元々東京放送(現TBS)に入社、その後TV制作会社に移り数多くの制作賞などを受賞し、自身で「ラジオの本」等と言うラジオ制作者の回顧&教則本なども出されている方。ぼくよりも大分先輩の早稲田大OBであり,10数年前に知った事実なのだが、彼はなんと我がジャズ研の第2期生と言う偉い先輩でもある。当然ジャズにも詳しく、その昔は富樫雅彦、菊池雅章などにラジオ・ドラマの音楽制作などを頼み、今は亡き彼らからも信頼絶大だったお人で、最近の仕事では何と言ってもキース・ジャレットのビデオ制作。キースも河内さんでなければ撮影を許可しないと言う程、信頼している仲。この所キースは体の調子を崩し演奏活動を中止、河内さんも半引退状態で平塚市に隠居してしまったので、そのキースビデオが観られないのは残念なことだが、まだまだ元気で彼と話をしていると制作者として感じいることも多い。

 ぼくが最初に知り合ったのは30数年前のこと。当時毎週3時間半のスペシャル番組をほぼ一人で半年間、それも2年半程続けており(プロ野球中継の裏番組)、およそ50本を超す特番を作り続けていた時期。その頃流石に一人ではこの時間を持たせられないために、「テレビズマン・ユニオン」や「テレコム」と言ったTBS関連の制作会社と共同で制作したものもあったが、その「テレコム」のメインが河内さんであったと言うこと。まだ現役バリバリの彼からは色々喝を入れられたりもしたのだが、教えられること多々だった。数本一緒にやった仕事のうち最も印象に残っているのは、世界的な映画監督鈴木清順のドキュメンタリー。かつて日活映画全盛時代「けんかエレジー」「東京流れ者」など独特な美学の映像を作り上げ、世界的な名声を獲得しながらも、会社のトップと喧嘩別れしてしまった、この孤高の天才。ぼくも大好きなこの監督の再起作品、「チゴイネルワイゼン」等の音楽監督ものを河内さんが務めていた関係で,鈴木氏のドキュメンタリーを3時間の長編で作ることになったのだが、映画本編の音などの借り出し、そしてこの鈴木映画は今は亡き荒戸源次郎と言う、いささかやくざがかった強面の役者&プロデューサーが、テント上映で全国を回る趣向で、その上映の模様なども織り込んで番組を作った。その上映場所の一つ、吉祥寺のパルコの屋上での公開収録の場で、局の技術陣が映画の音声を場内に流す担当も兼ねていたのだが、それに失敗してしまい、一時音声が流れず大騒動、荒戸を始め彼の配下の若者が因縁(と言っても悪いのは局の方なのだが...)を付けて来て、あわやの大騒動。それやこれやを河内さんにうまく纏めてもらい、どうやら大ごとにならずに済んだ苦い思い出などもあった。このラジオ作品も素晴らしいものでしたが...


 ところでぼくが河内さんの作品に初めて触れたのは、ラジオたんぱ入局当時にラジオ東京で流れていたドキュメンタリーシリーズの一つで、ぼくと同期のラジオ東京アナウンサー見城美恵子(その後大学の副学長なども務める)を起用し、今やジャズべーシストの大御所になった、ゲイリー・ピーコックの居所を探す(実際は京都の禅寺で修行中だった)と言うロードラジオドキュメントで、彼のうわさを聞き歩き最後に禅寺で出会う素晴らしいものだった。こんな作品を作りたいと思った10数年後に、実際に一緒に仕事を出来たのは本当に幸運だったが、それから今まで交友が続いているのも更に嬉しいこと。何時までもお元気でいてください。ラジオ&TVの巨匠、河内要さん!そしてまた来年の春、茅ケ崎の「あさまる」で共に飲み食いいしましょう。 

【今週のゲスト:音楽評論家の青木和富さん】

今週はジャズトーク。青木先生にアルトサックスの世界についてお話頂きました。
M1My Little Suede Shoes / Sonny Stitt
M2Waltz for Debby / Cannonball Adderley
M3Topsy / Lee Konitz With Warne Marsh
M4A Million or More Times / sonny Criss
M5Free Jazz / Ornette Coleman


11月23日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019.11/22 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.488~シンガー海原純子】

 本当は先週にこのコラム記事を載せる筈だったのだが、色々と当方の手違いなどもあり1週ずれての登場となった。今回の主役は先週我がジャズ番組に出演した海原純子。まだ再放送中でもあるので、決して時期外れではありません...と、先生(海原さん)向けの弁解をまず一つしてから...。


 海原純子と言えば、この所は余り見かけなくなってしまったが、一時はワイドショーの医学や心の問題関連などで引っ張りだこ、心療内科医にして医療系TVタレントとして余りにも有名な存在で、確か数年ほどラジオNIKKEIの番組審議員もやっていたと思う。現在の正式な肩書は心療内科医にして日本医大客員教授、その他にも幾つかの医療系役職を有している。彼女が有名になったのはもう30年以上前、初めて女性専門のクリニックを青山に開業して以来のこと。今では至極当たり前の女性専門クリニックだが、それまでには女性専門に医療問題を扱う所などは無かったし、そこに目を付けた海原先生は流石...と言った感じ。

 ぼくが彼女と知り合ったのも丁度その直前の頃で、当時のラジオたんぱでは「オールナイト・ニュース」を始めようとしていた時期。そのニュースパーソナリティーを一般の女性達に担当させようとし、公募したのだった。それに応募してきたのがまだ現役の慈恵医大の勤務医で、山っ気たっぷりだった海原女史。1年半ほどそのパーソナリティーを務め、その頃は若くて中々にチャーミングな女性だった。当時ぼくも報道部で時々その深夜ニュース番組も担当していたが、誰かからぼくがジャズ番組を担当と聞いた彼女が声を掛けて来て、ジャズが大好きということでジャズ話や医学生時代にバイトでジャズクラブで唄っていたなど身の上話なども良くしたものだった。
 その後も色々と付き合いが続き、確か番組としての付き合いの最後は、香港の観光協会協力の2時間近い香港特番、一緒に数日間現地に行ったのが10数年前のこと。以来余り付き合いは途絶えてしまったが、先日彼女から突然TELがあり、「お久し振り...、わたし今度ジャズアルバムを出したの...。ジャズ業界のことには疎いので、パブリシティーなど是非協力してくれない...」と彼女にしては至って低姿勢のお願い。元々気弱なぼくとしては、女性からの頼みとあれば断り切れない。ましてや海原女史からのお願いとあっては...。ただことジャズ話となると...、と言うのももう10年以上前に、彼女のジャズボーカルアルバムを...と言う話になって、ぼくがプロデューサーの様な役割を務める羽目になったのだが、なんとこれが直前でお流れ、言うなれば彼女がドタキャンしてしまったのである。ぼくも色々仲介やプロデューサー役としてレコード会社などに頭を下げることになってしまった。
 そんなこんなあって、彼女とジャズ話は...と思っていたのだが、やはり直接の頼みとなると気弱なぼくとしては...。あの頃はまず彼女の名前を生かす(利用する)と言うのが第一で、その実力は本当に疑問符だらけだったのだが...、などと思いながら送られてきた彼女の初めてのジャズアルバム『ロンド』に耳を傾けてみると...、これがいささか吃驚なのだが、かなりな出来栄えなのである。あれから十数年、彼女が時々六本木や青山などのジャズクラブでライブをしているニュースや彼女からの招待状などでも知っていたが殆ど無視していた。しかしその間彼女は、彼女なりにかなり充分に研鑚に励んでいたのだった。その成果がかなり良く分かる内容に仕上がっており、これには正直一寸ばかり驚かされた。バックの面々も良く一緒にやっている、東大出身の俊才ピアニスト若井優也君を始め、ベースの安カ川大樹などかなりな実力者揃い。その上嬉しいことにはぼくとも本当に長い付き合いであるNY出身のスティーブ・サックスが付き合っていること。彼は彼女のボサノバナンバー詞にポルトガル訳詞も付けているではないか...。これならば充分に安心と...色々なジャズ関係者や出版社にもアルバムを推薦、結構インフォメーションも載るようになって、彼女も大喜び。そして先週の番組への登場となったのである。

 以前のアルバム話の時に、ぼくは星と月に関したナンバー(「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」「アラバマに降る星々」など)を集めて歌うことを提案、彼女も喜んでその提案を受け入れたのだが結果は前述したとおり...。今回でもその時提案のナンバーの1曲「ムーン・レイ」を歌っており、その他に雲をテーマにしたボッサナンバーを自詞にまとめており、その他もう1曲、彼女が詞を書いた曲「ゼン&ナウ」も収められている。それ以外は「エンブレッサブル・ユー」「アイ・ガット・リズム」等8曲が所謂スタンダードナンバー。こうしたお馴染みのある意味唄い過ぎの感もあるナンバーも、結構自身の個性を発揮して歌いこなしており、中々に天晴れと言えそうだし、改めて彼女の素晴らしさに感服した。

 ぼくはここ数年、中野区の公民館から頼まれジャズ講座を年数回ほど実施しているが、来年の2月にまた実施することになっており、その初回にはおばちゃん達からも人気の海原純子先生を、心療内科医としてでなくジャズシンガーとして招き、ジャズ話を展開する予定にしている。乞うご期待である。

【今週の番組ゲスト:バンドネオン奏者の仁詩(ひとし)さん】

新譜『FELIX』から
M1Oblivion
M2FELIX
M3Tango Tempest
M4Nuovo Cinema Paradiso


11月16日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019.11/15 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.487~ラグビーの宴終わる】

  異様とも言える盛り上がりをみせたRWC(ラグビーワールドカップ)が終了して数週間、何とも言えない高揚感と何か物寂しい感時のない混ざった不思議な感覚に今なお拭い切れない。これがラグビーロスと言う感情なのだろう。RWCの44日という1か月以上の期間、長いようでいてあっという間でもあった。数々の試合も観戦させてもらいましたし、インタビューなど取材もさせてもらいました。今は協会や局へ...感謝・感謝の想いしかありません。

 何回か前のこのコラムで、ブレーブ・ブロッサムズ=ラグビー・ジャパンの狂騒曲は終焉したが、ラグビーの世界的な宴は続く...などと書いたばかりだが、それも遂に終焉を迎えてしまった。いささか前のことだが少し前の様にも思える、南アフリカ(スプリングボックス)とイングランドの南北対決による決勝戦。7万を超す大観衆が集まったこの試合、マスコミ関係者でも両国の試合にこれほどの客が集まる(外人と日本のファンの比率はざっと見て4対6)とは...一様に驚いていたが、びっしり埋まった観客席は見事の一言。結果は皆様ご存じの通り、32対12でスプリングボックスの圧勝。しかし後半途中までどちらに転ぶかわからない緊迫感ある試合が続き、後半途中から南アの執拗なボディーブローが効き、最後はかなりな差がついてしまったが、決勝に相応しいグッドゲームだった。前半イングランドが執拗に攻め続ける場面があったが、称賛に値する秩序あるディフェンスでその危機を凌ぎ、ゴールを割らさせず、力量差が出たフォワード力で南ア=スプリングボックスが、見事に前評判を覆しイングランドをねじ伏せた。スポーツ史上最大のアップセットと言われた、前回大会のジャパン戦での屈辱負けの一大ダメージを払拭する快勝だった。

 ぼく自身は久々に思い入れ強く、スプリングボックスを応援していたのだが、勝利の瞬間ホッとすると同時に嬉しさも募った。前にも書いた通りスプリングボックスの主将は、初の黒人プレーヤーのシヤ・コリシ。彼がゲットーと言ういかにひどい境遇で育ち(食事もとれない幼少時代だったと記者会見でぽつりと漏らした)苦労してラグビープレーヤーになったかは、あのラグビー界のレジェンド(彼も南ア黒人)、ブライアン・ハバナから早稲田大の上井草グランドで直接に聞いていただけに、コリシが優勝杯のエリスカップを高々と掲げるところをぜひ見たいと思っていた。そしてそれこそが今回のRWCの象徴、ダイバーシティー&インクルージョンスポーツとしてのラグビーRWCの意味合い...とも思っていただけに、かつてない大成功をこの大会が収めた最後のピースが、彼のエリスカップ獲得の瞬間だったのだと僕は信じている。本当に素晴らしい大会でした。
  それにしても我らのラグビー番組の主、藤島大さんが試合後いみじくも言ったように、この決勝戦はまた如何にジャパンのフォワードが強かった(=頑張ったか...)ということのはっきりとした証明でもあった。前半からイングランドのFW陣は南アに押されまくっていたのだが、ジャパンはなんと前半はほぼ互角に、この強烈FW陣に伍していたのだから...。本当にご苦労でした、ジャパンの選手の皆さん。特にFWの皆さん。

 ただこの決勝戦、いささか残念なことが2つほど。試合が終わっての表彰式で、なんと2位のイングランドの選手の何人かが銀メダルの授与を拒否したのだという。ピッチから遠い記者席では詳細は分からなかったが、記者の間でもそんな話が出ており、ネットニュースにも載ってかなりな問題になっており、はなはだ残念と言わざるを得ない。そしてこのイングランド、監督のエディーは記者会見ではブスッと無口だったのだが、ミックスゾーンでは(監督がこの場に出ることも珍しいのだが...)至って明るく雄弁。どうやらこの後は母国オーストラリアの監督就任の話もあるようだが、どうやらそれが本当なのかとも推測されそうな快活さだった。
 もう一つぼく個人として残念だったのは、試合後のミックスゾーンで南アの主将、シヤ・コリシのインタビューを取れなかったこと。ほかの何人かの選手には聞けたのだが、肝心の彼の感激の声はダメ。祝勝会などでついに時間までにゾーンに現れなかったのだ。直接この感激の想いを聞きたかっただけに、至極残念なことだった。しかし本当におめでとう、南アフリカ=スプリングボックス、そしてシヤ・コリシ主将。
 そして新生ジャパンは、来年イングランドと日本で対戦、遠征してスコットランドとアイルランドとの試合を行う。「ティア1」と同等の扱いを受けることに決まった。頑張れ新生ジャパン。それにしても監督は誰がなるのか...。ジェーミーは新生オールブラックスの監督候補と言うではないか...。心配の限りですね。

 さて最後に今回RWC関連のジャズお勧めアルバムは、南ア出身のジャズキング、トランぺッターにしてボーカリスト、作曲家の故ヒュー・マセケラ(18年没。享年78才)の『レコンストラクション』。クルセイダーズと共に吹き込んだアルバム(77年)で、邦盤も出ていたもの。彼は未だアパルトヘイト政策(人種隔離)が続く時代にあって、果敢にそれに対峙し遂に外国亡命を余儀なくされた悲運のミュージシャン・シンガー。カミさんは黒人運動家としても知られるシンガーのミリアン・マケバ。夫妻ともにジャズ&ポップスの世界で世界に知られているが、アルバムも数多く、どれもなかなかのものだが、アメリカ吹込みでクルセイダーズとの共演などと言う話題性も買ってこのアルバムにした。この偉才が亡くなってしまったのは本当に惜しい。

【今週の番組ゲスト:シンガーで心療内科医の海原純子さん】
初のジャズアルバム『RONDO』から
M1Give Me The Simple Life
M2O Conto das Nuvens(雲の物語)
M3Everything Happens To Me 」
M4Ordinary Fool

11月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019.11/08 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.486~村上ソングス】


 つい先日まで残暑厳しき折などと言っていたのが、このところめっきり寒くなって来た。ラグビーワールドカップ・ロスも加算され、寒さ・寂しさは更に増しつつあるのだが、この寂しき秋に因んだスタンダードナンバーも数多い。中でも最も有名なものと言えば、やはり「ニューヨークの秋」と言うことになるだろう。バーノン・デュークが1934年に書いた(作詞・作曲)このナンバー、当然ニューヨークの秋について唄っている訳だが、その詞はこんな風なもの。現代の文豪にしてジャズ通の村上春樹はこう訳している。


 「ニューヨークの秋はなぜこのように人の心をそそるのだろうか...。ニューヨークの秋は初めての夜の心の震えを運んでくる。(中略)宵闇を愛でる恋人たちはセントラルパークのベンチに寄り添う。それがニューヨークの秋。 わたしはまたそこに戻って来た」。
 これは村上春樹が文章を書き、それに和田誠がイラストを付けた「村上ソングス(中央公論社)」に収められたもので、全部で30近いスタンダードソングスを村上が選び、それについての思いを記した実にチャーミングな音楽本。村上、和田共にスタンダードに精通しており、特に和田氏はスタンダードソング・コンピレーションアルバムを幾つか残している程だし、一方の村上の方は作家になる前はジャズ喫茶「ピーター・キャット」(国分寺→千駄ヶ谷)のマスター。両者ともにこの分野に詳しく、その上良く食事などをする親しい仲。良い本が出来るのも至極当然と言った感じ。

 ただ惜しむらくは和田氏が今年の10月に急逝してしまったこと。この名コンビの作品はもう見れなくなってしまったのは寂しいが、週刊文春の表紙は相変わらず続いている様でなによりである。

 さて肝心のニューヨークの秋だが、ぼくは一度だけこの季節のNYを体験しているが、短期間の滞在だけに情緒もへったくれも無く、ライブスポット巡りと友人に会っただけ...。そう言えばこのコラムを担当してくれているO局長、彼はかつてNY支局長を1年間ほどやっていた筈(羨ましい限りですね)。彼にNY体験を聞いてもと思ったが...、余りこの詞の情緒を解するような男でも無さそうなので止めにした。この歌は最後にNYに戻ってきた...とあるように、どこか田舎街に長い間滞在しており、そこから大都市NYに戻ったばかりの男の心境を歌ったもので、「私が憎みつつも憧れ続けるこの街」などという詞も見られ、これは東京と言う大都会に対する多くの日本の人達の感情にも通じる所も多い筈。村上ソングスではこの歌に和田氏がセントラルパークからのNYの摩天楼を描いたイラストを付けているが、これがまたなんとも素敵なのだ。実に旨く・上手いのである。

 ところで摩天楼と言えば、あの9・11のNY同時多発テロで霧消してしまったビルもその一つ。その犠牲になった人達への鎮魂歌としても、この歌が良く使われる...という事実は余り知られていない。TV番組などでも良く流されるとのことで、これはNY在住の公認会計士の後輩から聞いた一口知識。村上ソングスでは、この歌の代表的歌唱としてテッド・ストレイターと言うシンガーのものを挙げているが、恥ずかしながらぼくはこのシンガー&ピアニストの存在を知らない。「アトランティック」にあるアルバムに収録されているそうだが、スモールコンボをバックに彼はピアノの弾き語りでこの曲を取り上げていると言う。まあそれなら一度調べてみる必要もありそうだが...、ぼくはこの曲の演奏ものではMJQ(ぼくがジャズに嵌る切っ掛けの1曲でもある)、そしてサックスの名手デクスター・ゴードンのものを挙げたい。そして歌ものでは、やはり名花ジョー・スタッフォード。彼女のそのものずばりの代表作『ニューヨークの秋』に尽きると思うのだが...。ここはひとつ、村上春樹先生のジョー・スタッフォードについてのお話などもお伺いしたい所ですが...。

【今週の番組ゲスト:THE DOOOD(ザ・ドゥードゥ)』のキーボーディスト 斎藤タカヤさん パーカッショニスト 松岡"matzz"髙廣さん】
9月にリリースされたアルバム『DOOODISM』から
M1Interceptor
M2GangDingBop
M3YEMAYA46
M4HYPNORISHA


11月2日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019.11/01 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.485~ラグビーワールドカップ、ついに終幕】

 このコラムをお読みの方達はもう既にご存じの筈。今回の世界的なラグビーの宴=RWCの勝者について...。しかしこの原稿をものしている現在の時点では、ぼくは未だイングランドと南アフリカという、南北の強豪国同士の戦いになる...と言うこと以外、その結果など未だ知らない。まあぼくの希望的観測ではスプリングボックス=南アフリカに是非勝って欲しい、そして同国初めての黒人キャプテン=キキが、優勝のエリス・カップを高々と掲げて欲しい...。そしてそれこそがl究極のラグビー・ダイバーシティーの実現だけに、是非それを見させて欲しいものと切望しているのだが...、果たしてどうなるものなのか...


 ところでRWCの準決勝が行われた次の月曜日(28日)、上井草にある早稲田ラグビー部のグランドにラグビー界のレジェンドたち10名余りが集まり、子供達にラグビーの愉しさを伝えるイベントが行われた。集まったのは日本や外国の子供たち70名ほどで、これもまさにラグビーを通してのダイバーシティー・ワールドの実現。午後3時ぐらいから開始されたこのイベントに、ぼくも早稲田のラグビー部員たちが手伝いをするというので、取材に駆けつけてみた。
 定刻には大勢の子供たちが集まり、取材陣も多数。抽選で漏れてしまったという親子連れも何組かいて、かなり遠方から来たのでせめて見学だけでも...と、主催者のランドローバー社の関係者の頼み込んでいたが、それも叶わずかわいそうな思いもした。
 確かにハバナ(南ア)、ウイルキンソン(イングランド)、オドリスコル(アイルランド)、グレーガン(オーストラリア)など、ラグビー界のレジェンドが一同に会するこのイベントは、ラグビー好きの子供達には憧れに違いないが、ただラグビー初心者も多く彼らの偉大さは余り伝わっていない感もあった。そんなことは関係なくレジェンド達は、鬼ごっこや球回しなどで子供たちと無邪気に戯れており、その光景は実にほほえましいものでもあった。
 一方手伝いをしていた早稲田ラグビー部は、斎藤キャプテンをはじめレギュラー陣を中心に10数名ほど。イベントの手伝いの合間にレジェンド達にサインをもらったり、一緒に記念撮影をしたりと大興奮の面持ち。口々に「早稲田でラグビーをしていて良かった...」と語っていた。このイベントなにより凄いのは、真ん中に本物のエリス・カップが置かれ、そのもとでブレーできること。

 ぼくが忙しいイベントの間を縫って、どうにかインタビューにこぎつけたのは、RWC史上最多得点をマークしている、スプリングボックスの英雄、ブライアン・オバマと、TVの「ノー・サイド・ゲーム」出演で一躍有名になった、ジャパンの前キャプテン、広瀬俊朗の2人。2人ともこうした子供たち、次代のプレーヤー予備軍達に、是非ラグビーの愉しさを伝えたいし、イベントは意味あることだと語ってくれた。特に広瀬はレジェンド達との共演にワクワクしているし、日本のファンにも感謝の意を述べていた。このインタビューは今度のラグビー特番の中で流れるかもしれない。エリス・カップを囲んでの子供達との写真撮影は、やはりハバナと名手ジャック・ウイルキンソンの2人が大人気で、彼らも気さくにフォトリクエストに応じ、この意義あるイベントは暗くなるまで続けられ大団円を迎えた。

 早稲田ラグビー部の相良監督も子供たちの喜ぶさまを見て「ラグビーってやはりいいものだし、素晴らしいものですね...」と顔を綻ばしていたが、イベントはこの後も全国で展開される予定になっており、地方の子供たちの所も回るようになので、地方のラグビー振興のためにも大いに役に立つに違いない。やはりラグビー、いいものですね。

 さて今回のジャズお勧めナンバーは、NYで活躍する黒田卓也を中心にバリバリのプレーヤーたちが集合したスペシャルユニットが、往年の大ヒットジャズナンバーを演奏した出来立てほやほやのアルバム『ブルー・ノート・ボエージ』から、幼きラグビーキッズたちの巣立ちを祝して、ハービー・ハンコックの名曲「処女航海」にしよう。西口明宏(as)井上銘(g)桑原あい(p)石若駿(ds)など素晴らしい面々が、今の感覚で楽しみながら迫力ある演奏を繰り広げている。J-ジャズの次世代にも大いに希望が持てると思わせる好演奏です。聞いてみてください。

【今週の番組ゲスト:ジャズボーカリストの水上まりさんと、編集プロダクション 天狼の 今岡清さん】

M1KAGARI-BI」(「端縫の郷」より)
M2Paper Balloons Fly Away」(「詩の国」より)
M3「誕生日の夜に」(「誕生日の夜に」より)
M4「ヒカリ・オリナス・モノガタリ」(「詩の国」より)












10月26日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019.10/25 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.485~狂騒曲は終わった、しかし宴は】

 「ブレーブ・ブロッサム」とも呼ばれるラグビー・ジャパンチームの快進撃は10月20日の夜、調布市の「東京スタジアム(味スタ)」でその幕を閉じた。ノートライの3-26。完敗だったが褒め称えられるべき敗戦だったと思う。試合後のミックスゾーン(共同インタビュースペース)で疲れ切った選手達は、口々にこれまでにない強烈なプレッシャーを感じたと語っていた。強豪南アフリカ=スプリングボックスをそこまで本気にさせたジャパンの力量、成長振りを感じることが出来たのは感慨深いものがあった。その中で一人明るく元気だったのは、この試合でジャパンを引退することになる、最年長にして人気者のロック、ルーク・トンプソン選手。「ぼく今度は本当に引退だよ、もう戻ることなし。それにしてもジャパン素晴らしかった。ティア1を相手にあれだけ戦ったんだから...。若い人もきっと出て来る筈、ジャパンの未来明るいよ...。ぼくはまた近鉄で頑張るよ」。

 この試合先述したように、ジャパンは完敗だった。勝機は前半にあったし、(ぼくの見る所では)レフリーもかなり日本寄りだったと思うが、それを生かすことが出来ない...、と言うよりもスプリングボックスの面々がそうさせてくれなかった。南アの選手はジャパンの健闘や審判の捌きなどで、明らかにかなりいら立っており、その象徴がシンビン(10分間の一時的退場)を取られたFWのプレー。一人少ない状況でも彼らのディシプリンは崩れなかったし、却ってそれが結束を固めた感もあった。その実力差は明らかだったのだが、それでも3-5で終わった前半には何かが起こる...とも思わせてくれた。ジャパンの実力が増し、南アと対等に見てしまう錯覚を起こさせるほどだったのだ。これは数年前迄には考えられない程の凄いこと。本当に良くやったジャパンである。

 それにしてもあのシンビンプレー、あれがジャパンとは言わないが、フィジーやサモアなどのアイランダーズのチーム、あるいはアルゼンチン、ナムビアなどのティア1(英連邦諸国)以外のチームならば一発退場だったに違いない。そうなれば...という質問が記者団から出されたが、ヘッドコーチのジェーミーはそうなったら大いに局面は変わり、試合自体もどうなったか分からないね...と答えていたが、まさにその通り...。今回大好評裏に進んでいるRWC、そこでの一つの大きな問題は、そこにあるとぼくは思っており、その点についてはまた書かせてもらいたいと思っているが、いずれにせよご苦労さんでした、ジャパンの皆様。


 更に驚かされるのは今回のにわかファンの多さ、これには心底びっくりだし、私はにわかファンだ...等と堂々と述べる所も面白い。サッカーなどではそんなことはない筈なのだが...。更にTV視聴率の凄さ、南ア戦の瞬間最高視聴率はなんと50パーセント越えと言うことで、まさに前代未聞。この異常なラグビー人気をどう持続させていくか...。主に協会副会長に迄上り詰めた感もある清宮克幸氏の手腕に掛かる所も大きい。我がラジオNIKKEIラグビー班でも、特番などを通しその行く末を藤島大氏とともに注視していくつもりでもある。益々のご期待を...。


 ラグビージャパンをめぐる狂騒曲はこれでひとまず幕を迎えたが、11月初め迄ラグビーをめぐる世界的な宴は続いていく。スタッフの片割れとして、ぼくもその動向を真面目に見つめていくつもりです、よろしく。

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
今週は久々のジャズトーク。青木先生に「楽器の話」と題してお話し頂きました。

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