10月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.10/21 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.597~チューバ・ジャズ~】

  貴方はチューバと言う楽器ご存じだろうか...。吹奏楽などでよく見かける大きな低音楽器で、高校などの吹奏楽部で女子学生などが担当していると、演奏だけで無くその持ち運びどうするのか...等といらぬ心配までしてしまう、ある意味厄介なそして困難な楽器でもある。
 ジャズの世界ではかつてのニューオーリンズジャズでは(今でも健在で再注目の存在ではあるが...)、かなり重要な役割を担っていたこの重厚な低音楽器も、モダンジャズ時代になるとその余りの重厚さ故に、ほとんど見向きされなくなってしまった。しかしどっこいこの楽器はしぶとくしたたかに、その困難な時代を生き抜いて来て、21世紀に入ると息を吹き返しつつある。その困難な時代にこの楽器で頑張って来た立役者の一人がハワード・ジョンソン。彼は今年の1月に79才で亡くなってしまったが、その功績は大変に大きいものがある。『グラビティ―』等のリーダー作を発表し、この難しい楽器で見事なソロワークを披露していたが、彼はまたあのジョン・レノン&オノ・ヨーコの『ダブル・ファンタジー』にも参加、この楽器の再認識にも寄与していた。さらに彼の元からはボブ・スチュアートなど次代を担うプレーヤーも巣立っている。このジョンソンと並ぶ需要人物として、もう一人レイ・ドレーパーの名前も忘れられない。ジョン・コルトレーンなどとの共演アルバムによって知られる彼も、ジャズにおけるこの楽器の意味合いを認識させた貢献者の一人でもある。

 まあこうしたミュージシャン達の努力によって、このチューバと言うある種の異端にして興味深い低音楽器は、ジャズの世界を生き抜いてきたのだが、21世紀に入るとその存在がそれなりの注目を集め出したのは興味深いことだと言える。それには今のニューオリーンズ・ブラス・バンドが新たの注目を集め出したことも大きく関わっているかも知れない。若いロックやヒップホップに関心を持つファンが、そこに登場するこの楽器の面白さ・異様さに目を付けつつあるので、また新たな展開が開けるかも知れない。

 ぼくがこの楽器に注目するようになったのは、今最も熱く激しいジャズを展開している(らしい)ロンドンのジャズシーン。その中心に位置するサックス奏者、ぼくのお勧めNo1プレーヤーでもあるシャバカ・ハッチングスのバンド「サンズ・オブ・ケメット」からだった。このバンドがこのチューバをその楽器編成に起用しており、そのプレーヤーがまた仲々に強力で魅力的だったのである。彼の名前はテオン・クロス。
 そのデビュー作「ファイア」のキャッチフレーズには、「アフロ・ビートを軸として、ヒップホップからクラブサウンド迄を展開するチューバ・ジャズ」とあるが、正にその通りの新しくもありながら伝統にも則った不思議な魅力を秘めた、ファイア(炎)の様に燃え上がるジャズを展開しているのである。チューバでアドリブを展開するのは中々の荒業ではあるが、それをクロスは現代感覚で巧くこなしている。その魅力の程は皆さまが実際に耳にして欲しいものである。チューバと言う楽器が21世紀のジャズの展開に新たな彩りを添えることが出来るか...。テオン・クロスの活躍ぶりに注目である。

【今週の番組ゲスト:ピアニストの山本剛(つよし)さん ベーシストの香川裕史(ひろし)さん】
Misty for Direct Cutting』から
M1Misty
M
2Midnight Sugar
M
3Yesterday
M
4The In Crowd



【特番のお知らせ】

「テイスト・オブ・ジャズ」は、放送開始から57年。そして現在進行の山本郁さんが担当するようになってこの秋20周年を迎えました!

11月23日(祝)朝9時30分から1時間特番『テイスト・オブ・ジャズ・スペシャル 私とジャズ~なんだかんだで57年、そして20年~』を放送する予定です。

特番では、みなさんのジャズに関するメッセージやリクエスト曲を募集します。

初めて聞いたジャズ、ジャズとの思い出......など、何でも構いません。

メッセージ・リクエストの他、郵便番号・住所・氏名・電話番号を明記して、

ラジオNIKKEI・番組サイトのメールフォームからお送りください。

締め切りは11月10日です。

メールを採用した方には、JAZZ関連の書籍やCDなど素敵なプレゼントを差し上げます。数に限りがございますのでご了承ください。どうぞお楽しみに!

 

10月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.10/14 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.596~ジャズ・ロフト~】

 今まだロードショウの最中だと思う話題の映画に、ジョニー・デップが制作・主演した「MINAMATA」がある。これは報道写真家ユージン・スミスが、あの悲惨を極めた水俣病の患者さん達を追って撮り続けたその晩年の姿を描き出した劇映画。制作陣は水俣市の協力を得られずに苦労した...と言ったエピソード等も伝わっている作品だが、ジョニー・デップと言う人気俳優の社会性やその気概、正義感等が良く伝わってくるものと、中々に評価が高いフィルムだ。その主人公のユージン・スミス、彼は元々アメリカの人気写真誌「ライフ」のカメラマンとして売り出し、全米を代表するドキュメンタリー写真家として知名度を上げたが、ある日突然家族を捨てNYのど真ん中にある小汚いロフトの一室に居を移し、そこで写真とジャズ三昧の生活を送る。そのドキュメンタリーフィルムがもうすぐ公開される。

 タイトルは「ジャズ・ロフト」。宣伝のキャッチに「写真家ユージン・スミス×気鋭のジャズアーティスト達」とある。このドキュメンタリー映画のDVDが配給会社から送られて来たので、直ぐに見ることにした。ユージン・スミスとジャズの関係。それを知ったのは10年ほど前に、恵比寿にある写真美術館で行われた彼の大規模回顧展だった。代表作の「MINAMATA」や第2次大戦の報道写真、フィラデルフィアの労働者達のポートレート等と並んで、セロニアス・モンクやレスター・ヤング等の大物達の写真や、一連の私的なジャムセッションの模様などを写し取ったものもあり、その時始めて彼がジャズ好きで、ジャズ関連の素晴らし写真も撮っていることを知り、ちょっとしたショックだったし、それをこのジャズコラムでも書いた筈なである。

 そのジャズ漬けだった60年代のユージン・スミスの姿を、友人やミュージシャンの証言などで紹介したのがこの作品であり、インタビューに登場するのはカーラ・ブレイ、フィル・ウッズ、チャック・イスラエルなど錚々たる面々。映画のハイライトを形作る今は亡きモンクやズート・シムズ、ホール・オーバートンも写真と声のみの登場だが、この3人は重要な役割を占める。モンクの歴史的な演奏会になった10人編成のビッグバンドによるタウンホールコンサート、彼のロフトで行われたそのリハーサルの模様なども、音声と写真で生々しく収められており、ジャズファンならば間違いなく心躍るもの。このコンサートの編曲者が現代音楽家でジャズ演奏家でもあるホール・オーバートンで、彼はユージン・スミスの隣人にして友人。この2人の関係も大変に興味深いものだし、挿入される写真群も素晴らしいものばかり。異色のジャズフィルムだが、ジャズファンには是非お勧めの1作です。

【今週の番組ゲスト:ギタリストの中鉢洋夫さん、ドラマー/プロデューサーの平井景さん】
Volvox』から
M1「雲の河」
M2Dali's Car
M3Volvox
M4Midnight Old Tree


10月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.10/07 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.595~春樹とモーズ・アリソン~】

  日本を代表する作家、村上春樹。彼は早稲田大文学部卒業で、かなりな母校愛の持ち主。自身の蔵書やレコードコレクションを母校に寄贈、そのコレクションを中心に収められた春樹記念館がこの度大学内に作られ、この10月には開館を迎えるとも聞く。まあこれは卒業生としては是非一度は行ってみないとならないし、そのコレクションもかなりなものだと聞くので、ジャズ関係者としても閲覧しなくては成らないだろう。ハルキとぼく...などと偉そうには言えないのだが、彼はジャズファンならばご存じだと思うが、作家デビュー前は「ピーター・キャット」と言うジャズ喫茶のマスターで、単なるジャズ好き、ジャズファンと言うよりも、ジャズ関係者と言った方が良いような存在で、ジャズ本も何冊も書いている。その「ピーター・キャット」、最初は国分寺駅北口にありその後千駄ヶ谷に移り、数年ほどで作家として彼が売れてしまったので店仕舞いになったのだが、ぼくは彼の知り合いに連れられ、何回か千駄ヶ谷の店に通ったものだった。それだけに当時は会えば会釈する位の仲だったが、単にマスターと客と言う関係。もう少し話をすれば...と、今となっては残念には思うが、その当時の彼はほぼ無口な若いジャズ喫茶マスターでしかなかった。

 そんな彼はかつてこんな風に語っていた。「ぼくは13才か14歳の頃からずっと熱心にジャズを聴いてきました。コードやメロディー、リズム、そしてブルースの感覚、そういうものはぼくが小説を書くにあたって、とても役に立っています...」。普通ジャズファンと言うとほぼモダンジャズのファンと言うことになるのだが、彼は水道橋駅の近くにかつてあった(半世紀ほど前の話だが)、「スイング」と言うトラッドジャズやスイングジャズだけを掛ける、ある種の偏屈ジャズ喫茶でバイトを1年間ほどしていたことがあり、そのトラッド分野に強いのも彼のジャズ趣向の特徴だと言える。

 彼が最近再開させたFMラジオ番組「村上ラジオ」では、ジャズはもちろんビートルズからビーチ・ボーイズ、クラシックナンバー迄、彼の好きな曲を自由気ままに紹介する云わば彼の道楽番組なのだが、その村上ラジオで最近「モーズ・アリソンを知っている...」と言うテーマで、「モーズ・アリソンのナンバーがいくつか紹介されたらしいよ...」と、ジャズ仲間から連絡があった。番組は聞き逃してしまったのだが、いかにも春樹らしいマニアックで凝った選択だなーと、いたく感心し嬉しくもあった。と言うのもこの渋い白人カントリーブルースシンガーは、ぼくが大学生時代、ジャズ研の部誌に最初に書いたシンガーの一人だっからなのだ。モーズ・アリソンと言う人は弾き語りを得意とするブルースシンガー兼ピアニストで、1927年にミシシッピー州で生まれ、この地だけに本物の黒人ブルースをたっぷり浴びて育った人。2016年に亡くなっており、90才近くまでほぼ現役で活躍した元気印だったが、その出世作が『バック・カントリー・スーツ』(pres)で、弾き語りによる白人ブルースの極致にある様な名品。彼はロックシンガーなどにも大きな影響を与えた人だが、ことジャズファンには余り感心を持たれていない。その名盤は1曲々はどれも短いものだが、白人カントリーミュージックと黒人のブルースが相乗された独特な味わいを持っており、未だ20才前のぼくが何故あの世界に惹かれたかは、今となってはしかとはしない。だが今聴いてもその独特な味わいは魅力たっぷりで、チャンジーになった今こそその魅力に浸れる感もあるだけに、春樹氏が今回わざわざモーズ・アリソン特集を組んだのも、大いに納得の一言。
 10月には完成と言う早大に出来る「春樹記念館」。年内にはぜひ訪れてみないと...。今から本当に楽しみです。

【今週の番組ゲスト:選曲家/Quiet Corner主催 山本勇樹さん】
Diana Panton for Quiet Cornerfairy sings love suite』から
M1It's A Most Unusual Day」
M2Tea For Two
M3And I Love You So
M4Moonlight Serenade




9月30日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.09/30 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.594~J・Pベルモンド~】

 J・P(ジャン=ポール)ベルモンドが亡くなってしまった。享年88才。アラン・ドロンと並ぶフランスを代表する俳優で、ぼくの大いなるご贔屓スターだった。欧州映画の新潮流~一時代を画したヌーベル・バーグを代表する監督、ジャン・リュック・ゴダールの「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」などで主役を務め、フランスの顔とも謳われた人気俳優だった。アラン・ドロンは今なお日本でもその名前が知られているが、ベルモンドの名前は、もう今では若い人達はほとんど知らないと思う。大変に残念なことである。

 ゴダールなど一連のヌーベルバーグ作品に出演、個性的な演技派としても売り出していた彼だが、ゴダールと演出上の問題(台本がなくアドリブ演出中心)などで喧嘩別れ、以降は「リオの男」などの男シリーズのエンタメ作品で人気を挙げ、親しまれるようになった。ドロンが典型的な2枚目だったのに対し、ベルモンドは愛嬌ある顔つき、個性派役者として人気を高め、容姿や人気など全ての面で2人は良きライバルで、彼の死にドロンも哀悼の意を捧げていた。

 ベルモンドの出世作ともなった「勝手にしやがれ」。先日彼の死を受けNHKBSで放送されていたが、その邦題も中々に魅力的だし、まさに勝手にしやがれ...と言うことで奔放に生きて行く若き彼の姿、ラストは警官に撃たれてよろよろ街をさ迷い死んでいく姿、今なおその演技、ハンドカメラによる映像美は鮮烈なものだった。音楽も全編モダンジャズで、あの頃のフランス映画にはジャズが使われることも多く、その代表作の一つでもある。これによりベルモンド=モダンジャズと言うイメージ付けにも成功していた。

 ぼくが彼の作品の中で好きなのは、ゴダールの最高傑作だと思う「気狂いピエロ」、そしてもう一作「雨のしのび合い」。後者は何か安っぽい恋愛映画風タイトルだが、フランスを代表する女流作家、マルガリット・デュラス小説「モデラート・カンタビーレ」を映画化したもの。監督はイギリスのシェークスピア作品の演出家として有名なピーター・ブルックで、主役はジャンヌ・モローが務め、彼女がフランス南部の大都市の大富豪婦人を演じる。その彼女が強く惹かれるのが、夫の経営する工場の若い労働者。実際の逢引きシーンなどは恋愛話ではあるが、夫人の心の揺れの描き方も素晴らしく、何とも官能的な作品に仕上がっており、ベルモンドも印象的な工場労働者役を演じている。

 ドロンが貴族とか高貴な役が合うのに対し、ベルモンドは労働者やチンピラなどの役も多かったが、実際の境遇は正反対でドロンが貧しい家庭育ちなのに対し、ベルモンドは彫刻家と画家と言う家庭の出身で典型的なボンボン育ち。労働者やチンピラなどを演じても、どこかに家柄の良さなどが滲み出ている所がその魅力で、後年のヒットシリーズ「リオの男」などのコミカルで行動的な役でも、その育ちの良さがプラスされていた。

 ところで35年ほど前、ドロンと一緒に仕事をしたことがある。ファッションショー関連の仕事もしていた局のある先輩に頼まれ、京都の呉服屋主催の新潟各地で行う呉服ショーツアーの演出を2か月半程の間手伝ったのだが、その呉服屋がドロン監修名義の呉服を売り出し、最後のショーが新潟のホテルでドロンもゲスト登場するというものだった。1月から3月位まで冬の真っ盛りの厳寒の中、新潟県内各地を転々とした最後、最高級のお部屋にお泊りの大役者ドロンは、ショーのフィナーレに重々しい表情で登場、その彼を誘導する役もぼくの担当だったが、ハンサムながら結構気さくな所もある人だった。確か新潟市長など新潟の要人やその令婦人など、数多くの有名人が参加したこのショー、ドロンが登場し軽く手を挙げるだけで皆んな大満足で大拍手。さすが世界一の美男ぶりだった。そのとき彼は「ご苦労さん...」と一言ねぎらいを呉れたはずなのだが、フランス語の分からないぼくは曖昧に返礼しただけ...、今ではある意味もったいないことをしたと思っている。ベルモンドはもういなくなってしまったが、その彼は未だ健在のようである。時の経つのは思いのほか早いものだ。

【今週の番組ゲスト:ピアニスト立石一海(かずみ)さん】
新譜『Peace of Mind ~スタジオジブリ・ミーツ・ジャズ・ベスト~』より
M1「海の見える街(魔女の宅急便)」
M2「となりのトトロ(となりのトトロ)」
M3「人生のメリーゴーランド(ハウルの動く城)」
M4「いのちの記憶(かぐや姫の物語)」

 

9月23日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.09/23 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.593~なんやかんやで57年 そして20年~】

 番組「テイスト・オブ・ジャズ」についてしばしば記してきたが、恐らく日本でも最長にランクされるジャズ(音楽)番組だし、ことジャズに関しては世界でも珍しい程の長寿番組の筈である。その歴史なんと57年余り。番組をスタートさせたのは、ジャズ界ではかなり有名なプロデューサーで今は亡き木全信氏(最後はアルファ・レコード副社長)先輩。彼の話や局の番組表などを探ると、スタート以来もう57年余り。当初は月1回ぐらいの特番扱いだったが、2年目あたりからレギュラー化され今に至るという訳。沢山のジャズアルバムをプロデュースしたと言うことで、ギネスブックにも登録しようか...などと言う野望も抱えていた木全氏(残念ながらその案は実現せず)。その彼が局員時代に人事異動で営業局に移り、その後RCAに転職してしまったので、番組を手伝っていたぼくに声が掛かり「お前受け継げ...」と強制的に番組担当になり、以来早や半世紀で50年弱になる。まあこの番組だけで50年とは、完璧にチャンジー(爺さん)プロデューサーなのだが、今は周囲の迷惑も省みず、まあやれる所まで...などとも思っている次第。許せよ!

 そのジャズ番組の進行役は、局の女性アナに担当してもらって来たが、長かったのは大宮杜喜子、富永陽子のお2方。2人とも7,8年は担当してくれたと思うが、最も長いのは言うまでも無く、現在の担当の山本郁アナ。その彼女がこの10月でなんと担当して20年になるのだと言う。ぼく自身は気づかなかったが、もうそんな長い時間が経っているのである。ほとんど迷惑かけられぱなし...と彼女は語っており、まあその功績をねぎらう意味合いも込め、この11月23日の祝日に1時間のジャズ特番を放送する予定にしている。 

 タイトルは「テイスト・オブ・ジャズ・スペシャル 私とジャズ~なんやかんやで57年そして20年(仮)」という長たらしいもの。サブタイトル「私とジャズ」と言うことで、久々にリスナーやジャズファンからのジャズに関するお便りを紹介、またリクエスト曲もかけようではないかと言った企画。今やJ-ジャズ界の名士になった感もある山本郁嬢。それだけにその20周年を祝して、彼女がジャズに目覚めるきっかけになったと言う某有名トランペッターか、番組にちょくちょく遊びに来るNo1べーシストの某氏のどちらか...、また親しくしている秀麗ピアニストの国府弘子、担当して最初に出演したピアニストの野口久和等から、お祝いメッセージが届く筈である...。そうなれば結構豪華なジャズ番組になりそうな予感充分。

 この番組もかつては、良くリクエストなども募集しており、かなりな数が舞い込んできたりもしたものだが、山本嬢の担当になってからはリクエストやお便りの紹介は一度も無し。まあそれだけにどれほどのお便りなどが集まるかいささか心配だが、これにはお便り等採用された方全員に、豪華ジャズプレゼントを...と言うことにした。そのプレゼントの中身は、最新のジャズCD(ダイアナ・パントン、セロニアス・モンク等々)やジャズ本(ロン・カーター自伝、クワイエット・コーナー紹介本など)で、それなりに豪華なもの。なお、お便りなどはこの番組のプレゼント応募フォームからお願いします。

 さらにこの企画を決めた直後に、ぼく自身も長年のジャズライターやプロデューサー活動で、日本のジャズ啓蒙に貢献したと言う由で、どうやらある有名ジャズ団体から表彰を受ける...と言う、仲々に名誉な話も舞い込んで来た。詳細はまたこのコラムなどで紹介したいが、まあその結果がどうなるか...。もう少しではっきりする筈なので、そうなれば手前味噌ながら、そのお祝も兼ねて...と言う、結構虫の良いことも考えているのです。
 いずれにせよプレゼント付きのジャズ特番企画、皆様のご協力で成り立つものなので、是非宜しく協力の程お願いします。

【今週の番組ゲスト:サックスプレイヤーの山中一毅(かずき)さん】
ブルーレイアルバム『BEYOND PURGATORY -Live at Pit Inn 2020 -』より
M1「Dancer in Nirvana」
M2「Beyond Purgatory」
M3「Tears of Hiroshima」
M4「Reminiscence」




 

9月16日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.09/16 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.592~チャーリー・ワッツ死す~】

 ビートルズと並び、世界のロックシーンの頂点に君臨するローリング・ストーンズ。ビートルズがポップ史に残るレジェンドユニットなのに対し、ストーンズの方は今なお現役の存在と言う大きな違いがあるし、ミック・ジャガーを筆頭とした永遠のチャンジー悪ガキ集団と言ったイメージを保ち続けている、言うなればロックの本源的な部分を体現化し続けたこのグループ、本当に凄いの一言。その上ストーンズのアルバムには、バックでソニー・ロリンズやウエイン・ショーターなどと言った大物ジャズメンも参加したりもしている。そんな悪ガキ集団(?)の中にあって異色の存在と言うか、ただ一人大人の渋さを保ったスーツの似合うロック紳士...、それも独特な妖しげな渋さなのだが、それを誇っていたのがドラマーのチャーリー・ワッツだった。その彼が8月末、享年80才で亡くなってしまった。

 高校生の頃からジャズに親しみ始めたぼくにとって、ロックはそう馴染あるものではないのだが、この2つのグループはほぼ同世代のもの。それだけに残念な感はあるが、やはり向こうの存在だと言う感も否めない。ただこのワッツと言うドラマーだけは、何か不思議な愛着がわいてしまうのだ。と言うのも彼はあのストーンズの基底部をがっちりと固め、ストーンズならではのグルーブを叩き出していたロックドラマー(音楽誌で世界のドラマーの3位とか12位にも選出さたこともある)だが、ジャズドラマーを自任し他でも広言もしていたと言う、変わり種のジャズフリークでもある。彼のご贔屓はトニー・ウイリアムス等のジャズドラマーで、実際に彼が単独リーダーとしての来日公演は、大編成のジャズバンドを率いてのもの。それもトラッドやスイング色の濃いものだったとも聞く。また彼には7枚ほどのリーダーアルバムが残されており、その中にはジャズの始祖とも言うべきバードことチャーリー・パーカーに捧げられたものを始め、そのほとんどが純生ジャズアルバムなのである。彼はあるインタビューで「俺にとってビートルズ、エルビス(プレスリー)はノー、マイルスはイエス」だとも答えているが、「ロックで稼ぎジャズに貢ぐ」。まあこんな男まず他にはいない筈だ。

 ぼくは彼のリーダー作2枚持っているが、当然2枚ともジャズ色の濃いもの。そのうちの1枚は『ロング・アゴー&ファー・アウエー』(96年)スタンダード曲をタイトルにしたこのアルバム、「アイ・シュッド・ケア」「ワッツ・ニュー」などのスタンダードの歌ものを取り上げたある種のボーカル作品。黒人シンガーがフルオーケストラとワッツのジャズユニット(ブライアン・レモン(p)ピート・キング(as)等のイギリス有名ジャズメンを含む)をバックに唄うと言う趣向のもの。リーダーのワッツはブラッシュやスティックワークを巧みに扱い、実に気持ち良さそうにドラムを優しく叩き上げる。いかにも金を掛けたと言った感じの、ある意味単なる彼の道楽アルバムなのだが、そこに不思議なワッツのジャズ命と言う感情が滲み出ており、また何とも言えない。
 再度言おう こんな男(ジャズ・フリーク)そうめったにいないと... 合掌!

【今週の番組ゲスト:トランペッターの島裕介さん】
新譜『Silent Jazz  Case4』から
M1「Adhesion」
M2「Grand Central NY」
M3「Japan Beauty」
M4「Never Die Miles」

9月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.09/09 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.591~ハービー・マン~】

 追分の山荘でCD整理をしていると、色々と懐かしく珍しいアルバムなどがひょこっと顔を出し、それなりの愉しさがあるもの。但し一枚見付けるとそれに聞き入ってしまい、なかなか作業が捗らないこともしばしば。そんな中今回拾い出した1枚がこのアルバム。ぼく等ジャズ黄金時代を堪能したチャンジー世代にとって、忘れられない存在のジャズフルート奏者、ハービー・マンの『アット・ザ・ヴィレッジ・ゲイト』(62年12月/アトランティック)である。

 ぼくが未だ大学生の頃から若きラジオ局員だった20代の頃、1960年代後半から70年代にかけてのジャズ全盛期。当時のファンは新宿や渋谷のモダンジャズ喫茶に通い、ジャズを聴き漁ったもの(アルバムが高くて買えなかった為なのだが...)だが、その頃客のリクエストも多く、良く掛かっていたのがこのアルバムだった。タイトル通りNYにかつてあった有名なライブハウス「ヴィレッジ・ゲイト」でのライブ盤で、ライブ演奏だけに演奏も長尺で、全部で3曲しか収録されていない。今人気盛り返しつつあるアナログ盤では、A面2曲B面1曲のみの収録となっている。アルバムの人気曲は何と言っても冒頭の「カミン・ホーム・ベイビー」。ここでベースを弾いているベン・タッカーのオリジナルで、メル・トーメの歌唱盤などでも人気を博した曲。数あるジャズ曲の中でもデイブ・ブルーベックの「テイク・ファイブ」と並ぶ最大のヒット曲と言えるが、当時はこの曲が掛かると「なんだこんなシャリコマ(コマーシャリズム)のナンバーをリクエストしやがって...」と、席を立って店を出て行くファンも少なくなかった...などとも、まことしやかに語られた曰く付きのジャズヒットチューンである。ぼくなども露骨に嫌な顔をしたファンの一人だったが、今はあの当時のこと反省しています。

 この人気曲がÀ面だけにその裏面の曲が何なのかは当時さっぱり気にしなかったのだが、今回その裏ナンバー=CDでは3曲目は、アメリカを代表する作曲家、ジョージ・ガーシュインの銘曲「イット・エイント・ネセサリー・ソー」であることに気が付いた。その上裏面一杯に収録されたこのナンバーの演奏時間はなんと20分弱。当時にしてはかなりな長尺ものなのだが、今でも結構最後まで飽きずに聞き通せる。これは中々凄いことで流石にこの当時10数年に渡って、ジャズフルート界の頂点に君臨していたハービー・マンだけのことはある。そしてもう一つ今回気付かされたのは、このメンバー構成。2人のパーカッション奏者が参加してこのライブを盛り立てているのだ。一人はチーフ・ベイ、そしてもう一人がレイ・マンティラ。2人とも今はもう物故してしまっているが、ベイの方はアフリカンパーカッションの第一人者、そしてマンティラの方は、つい最近までラテンジャズの第一人者として大活躍していた、この分野のボス格の一人。この2人の起用が無ければ、いくら大ヒット曲が収録されているとは言え、ここ迄人気も出なかったのでは...とも思われる。ジャズフルートの顔役にして商売人でもあったハービーの面目躍如といった所だろう。なお肝心のハービー・マンは2003年長年の癌との闘いの末、73才でこの世を去っている。ジャズ商売人でもある彼は、商売上手なユダヤ系で生涯になんと80枚以上の作品を残している。

 まあこうした今まで気付かなかった発見も幾つかあり、CD整理の道楽も中々に捨てたものでは無い。それにしてもジャズフルートシーン、日本では何人かの若手女流奏者も育っているのだが、本場アメリカでハービー・マンや彼に続くヒューバート・ロウズ以降、これと言った人材が出現していないのは寂しい限り。ラテンジャズの世界では相変わらず重宝されているが、肝心のジャズでもう少しこれといった人材の出現を強く望みたいところ。今回ハービー・マンの大ヒットアルバムを聴きながらそんなことを思った次第なのです。

【今週の番組ゲスト:ピアニスト、ヴォーカリスト、コンポーザーの橋本一子さん】
12年ぶりのアルバム『view』から
M1「view」
M2「blackbird」
M3「giant steps」
M4「blue」



 

9月2日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.09/02 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.590~菅平にむかう~】

 前回のコラムで今年はコロナ禍にも拘わらず、各大学ラグビーチームは合宿を敢行
、菅平での練習試合なども行われる、そこで菅平詣でをするか今悩んでいるのだと言うことを記した。我が早稲田ラグビーも合宿と練習試合を行うとのことで、信濃追分の山荘からは車で1時間強。最注目の試合~早明戦練習試合もやれそうだとの情報があり、何はともあれ菅平に上がることにした。例年だともう合宿は終了、下山している8月最終土曜日。早明戦練習試合のインフォーメーションなどは、早明どちらのラグビー部のスケジュールにも一切載っていない。そこで上田市役所の知り合いに聞くと午後1時からのキックオフが予定されているとのこと。本当に久しぶりの練習試合、そして今年は対抗戦も有観客で行われるのか定かでなく、12月の早明戦本番すら観戦出来ない危険性もある。となれば東京での予定などは先延ばし、まずは何はともあれ...と言うことで菅平に向かう。

 例年だと菅平の最高所に位置する運動公園、サニアパークでは多くのラグビー試合が組まれ、隣の陸上競技場と並んで、運動部員がごった返すのだが、12時過ぎについても人はまばら、途中色々なラグビーグランドも覗いたが選手などは一切いない。8月末だからかも思ったが、もう少し早い時期でもコロナ禍もあって練習選手は少なかっとのこと。その上菅平の中心地、メイン交差点に行ってみると店はほとんど営業しておらず人通りも無し。こんな風景初めてだった。サニアの駐車場もがらんがらで拍子抜けしてしまった。サニアパークのメイン競技場の芝生に陣取りメンバー表などを眺め時間を過ごす。抜ける様な青空のドピーカン。さすがに雲はもう秋雲と言った感じで、高原の涼風も気持ちよく、菅平の主峰、根子岳と四阿山もくっきりと見え、いささか暑い瞬間ももあるが、最高の観戦日和。こんな中たった一人で優雅な試合観戦、言うこと無しである。

 試合は数名の有力選手をケガなどで欠きながらも、良いメンツが揃って好試合になった。出だしは早稲田が先手を取り直ぐに明治が反撃、点の取り合いで早稲田が一歩上回り前半を終える。選手の豊富さではやはり明治が上を行くが、そこを耐え勝負に賭けるのが我が早稲田。前半終了直前の明治の反則。センターラインから長距離のペナルティーキックに挑んだ早稲田スタンドオフが、このキックに見事成功。何かこのキックが試合を決めるのでは...と思ったが、やはりその通りの結果に終わり、シーソーゲームの練習試合、早稲田が辛くも勝利を収めた。トライ数では明治が上回っており、試合は互角とは言えいささか明治が実力的に上廻っていた感もあったが、結果は早稲田勝利。聞くところによると早稲田ラグビー部は、今期の夏合宿練習試合、同志社、帝京、そして明治、全ての有力大学に勝利したとのことで、こんなことはここ10年余り無かったこと。実に気持ち良しである。

 Bチームの試合も続けてあったが、こちらはスルーさせてもらいすぐに菅平を下り、東御市の温泉施設湯らり館に向かい、たっぷりと温泉を愉しんだ。湯の丸山の中腹に地あるこの施設の露天風呂からは、はるか下方に上田と東御の市街地が眺められ、何とも言えぬ風情。これで心置きなくこの夏もジエンド。一時的にコロナも吹っ飛ばした心持になれる、快適な夏終わりの一日でした。

【今週の番組ゲスト:ジャズベーシストの石原雄介さん】
「Yusuke Ishihara Trio」の1stアルバム『Dig Into Jazz』より
M1「Brand New Days」
M2「ERA」
M3「Just Do It」
M4「Someone To Watch Over Me」

8月26日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.08/26 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.589~最近読んだ本から~】

 信濃追分での山荘生活では、1時間近いウオーキングや音楽鑑賞、読書などほとんどステイホームなので、軽井沢の町や人気のアウトレットモールに出没することもなく、生来の怠け者なので庭も草ぼうぼう。まあ例年だとこうした生活に、ラグビーのメッカ~菅平詣が加わるのだが、昨年からはコロナ禍真っ盛りで早稲田大などグランド見学が禁止。昨年は合宿なしだったが今年は合宿での練習試合なども組まれており、それだけにどうするかだが、やはり一度は菅平には上がりたいもの。
 その山荘生活の大きなポイントの一つになっている読書。軽井沢の町立図書館や御代田、小諸など近隣の図書館を廻り、読みたいものをかき集め期日までに読み通そう...と思うのだが、これが意外にままならない。チャンジーだけに視力の問題などもあり、読むスピードが目に見えて落ちている。それだけに7~8冊借りるとその半分ほどは、画集や絵本、読み易い音楽ムック本にしているが、東信の図書館では数も多くないし絵本などは児童室なので、ぼくの様なチャンジーは余り長くは居られない。まあそう言いながらも絵本探しは愉しいし、評論家の柳田男もかつて「日本の大人ももっと絵本を見る(読む)様になれば、日本も落ち着いた良い国になるのだが...」と書いていた筈。ぼくもその意見に大賛成なのだが、絵本についてはまた改めて書きたいと思う。そこで今回は今年夏に図書館から借りて読んだ、20数冊の中から印象に残った2冊をここで紹介してみたい。

 その1冊は翻訳家の内藤里永子のエッセイ「森の生活」、そしてもう1冊は現役のTVドキュメンタリー作家、河野啓のドキュメンタリー「デス・ゾーン~栗城史多のエベレスト劇場」で、こちらは昨年の開高健ノンフィクション賞作品。この両書に通底しているのは高山経験、即ち本格の登山、クライマーだということ。内藤さんの本には山のことは直接には出て来ないが、彼女が町を離れたった一人で10年間近く森の生活をしていたのは、同じ翻訳家仲間でかつてクライマーとしても行動を共にした親友を失くしたことが切っ掛けになっている。一方の栗城のドキュメンタリーは、「ニートのクライマー」としてTVなどでも話題を呼び、自身の登山の模様をSNSで生中継し、その登山スタイルが賛否を呼んだ若きクライマーの実像に迫ろうと言うもの。8回目のエベレスト挑戦で命を落とした若き栗城の話なので、当然山岳が主舞台となる。 

 絵本作家、ターシャ・デューダなど数多くの翻訳で知られる内藤さんの森の生活の舞台は、中軽井沢千が滝に広大な敷地を誇る「国営小鳥の森」に隣接した小さな小屋。彼女自身はその森について直接には紹介していないが、中西悟道(日本野鳥の会創始者)のレリーフがある「小鳥の集まる森」と記されており、こうなれば星野リゾートに隣接したこの森しかない。たった一人でこの深い森の小屋で孤独に生活し、そこで思索すること。親友の死など親しい人達の死、深い森の中での孤独な黙想、訪れる小鳥との会話等、その思考は森羅万象に及び読む者の心を深く動かす。追分と中軽、ある時期は結構近くに暮らしていながらも、思うこと・感じることはまさに月にすっぽん、深く反省である。

 一方栗城の方は「エベレスト劇場」のサブタイトルにもある通り、「7大陸最高峰無酸素単独登頂」を売り物に、若さをばねに怖いもの知らずでがむしゃらに山頂を目指す。エベレスト以外は全て登頂に成功したのだが、「他とは格が違う...」と言われるエベレスト登頂は、全く歯が立たず最後は滑落死でその若い生涯を閉じてしまう。ぼくの知り合いの山岳関係者(一応ぼくも日本山岳会会員です)は、異口同音に彼のエベレスト挑戦はただ死にに行っている様なもの...と、その挑戦を評していたが、多分その通りだったのだろう。その上SNS中継だけは単独挑戦の様に見せながらも、実際は多数のシェルパがサポートなど、そのキャッチフレーズに疑問符が付く行動も数多い。著者はかつてTVマンとして栗城の山岳ドキュメンタリーを作成した仲だが、行き違いがあり長い間音信不通だったと言う。その彼が死亡のニュースを聞きドキュメンタリーを書くことを決意、北海道放送のディレクターだけに、同じ北海道、道南出身の彼の友人や山の先輩などをこまめに訪ね、その証言を集め登山家像を描き出すが、小柄でなよなよとしたその姿は、ぼくの知る多くのヒマラヤクライマーとは大分様相は違う。但しスポンサー獲得法とかSNSの利用など、これまでのクライマーには無い新たな登山家の姿を実現した。河野は栗城自身もエベレスト登頂は困難だと自覚しており、その為に南壁最難ルートを選び、結局死亡してしまった、劇場型登山家だったのでは...と推測しているが、これからも次々に栗城のようなクライマーが登場することも予想される。その生き方、行動パターンなど色々考えさせられる力強いドキュメンタリーで、一気読みしてしまった。静と動と言うか対照的な2冊だがどちらも興味深い内容だった。
 
 そう言えばもう何年も、少しは手応えのある高山に登っていないなーと、これ等を読んでまた反省の念が沸く。どうもチャンジーのぼくは、反省の毎日なのです。

【今週の番組ゲスト:ドラマー 高橋徹さん】

初リーダーアルバム『TOKYO GROOVIN' HIGH』より
M1「Theme Of Tokyo Groovin' High」
M2「Limbo Jazz」
M3「Forest Flower」
M4「When You Grow Too Old To Dream」

8月19日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021.08/19 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.579~オリンピック終幕~】

 賛否両論、毀誉褒貶、悲喜交々等々、様々な形容句が飛び交った東京2020オリンピックが終了した。開会式に至る混乱からすると、良く無事に終幕にたどり着いた感も強いが、なにはともあれ目出度し々である。ぼくはこの期間TV無しの山荘にいたので、その狂騒曲をオンタイムで見ることはなかったが、関心のある7人制ラグビーや幾つかの陸上競技などは、知り合いの所でウオッチさせてもらっていた。
 そんなだから直前に大騒ぎだった開会式も見ていなかったのだが、聴くところではあの世界的ジャズピアニストの上原ひろみが登場したと言う。これは痛恨の極みとヴィデモを見させてもらい、その雄姿を確認した。流石上原ひろみ、堂々の存在感だったがその登場をほとんどマスコミはスルーしてしまっていた。これはまさに大"喝"もの。ただしこれでジャズファンはオリンピックの可否は別として、かなり満足を覚えたことは間違いないだろう。

 さて今大会に関しては、復興とか平和・調和等といったその根底をなす大事なスローガンは、目前に立ちはだかるコロナ禍拡大の勢力が増したほか、主催のJOCもその意義を果たそうとしなかったように見えたことなどで、忘れ去られてしまっていた感も強い。これもまた至極残念な事だが、今回新たな種目に登録されたスケートボード。10代の選手の独壇場だったこの競技で、選手達がお互いの技を褒め合い愉しみ合う、和気あいあいとはしゃぎ合う。この光景に調和や友和の精神が期せずして具現化されていたのは、何とも皮肉な事だったと思う。

 最大の関心事、7人制ラグビーの日本勢は無残とも言えそうな惨敗振り。リオ大会ではあのニュージーランドを破り、4位と大躍進した面影は全く無かった。これはひとえに指導層の問題(直前での監督交代等々)だと思われるだけに、ラグビー日本協会の猛省を促したい。また花形の陸上競技では、最終日の男子マラソンでの大迫傑の頑張りに大拍手...。佐久長聖高から早稲田大陸上部そして単身アメリカに渡り修行と...、常に孤軍奮闘して来た彼の集大成が見られた(ダイジェスト観戦ではあるが...)ことは嬉しい限りだった。かつて高校のグランドで彼の走っている姿を見たことがあったが、あの頃から若くして孤高と言った雰囲気を漂わせており、ただものでは無い感があったが、その締めくくりがこのマラソン。彼の今後にも熱いエールを送りたい。そしてもう一人が女子中距離の田中希実。1500メートルの決勝では惜しくも8位だったが、何と伝説の名選手人見絹代以来89年振り、女子中距離決勝進出と言うのだからこれもまた大拍手である。まだ同志社大の現役学生と言うから凄いし、次回のパリ大会ではより良い結果も得られそうで期待大である。そしてもう一人現役大学生の金メダリスト。早稲田レスリング部4年、須崎優衣。父と姉も早稲田大レスリング部と言う早稲田ファミリーの彼女。その存在を今回初めて知ったが、その余りの強さにヴィデオを見て舌を巻いた。早稲田レスリングは時々ラグビー部の練習を手伝うことがあるのだが、こんな小柄なアマゾネスがいたとはついぞ知らなかった。反省しきりである。

 まあ他にも気になる選手も少なくなかったが、こんな風に書くと如何にもオリンピックに浮かれているに見えるが、さにあらずで結構厳しく見ていた心算。普通は「宴」が終焉するとなにかもの寂しさが残るものだが、今回だけは寂しさどころか厳しさとやるせなさなどの悔恨の思いの方が強い。日本の抱える病根が顕わになってしまい漂流するこの国はこれからどうなるのか...。ぼくの様なチャンジーには「ケ・セレラ・セラ」の心境ではあるが、本当に心配しかない...

【今週の番組ゲスト:Jazz ベーシストの鈴木克人さん】
『LIBERTAS』より
M1「Smooth as the Wind」
M2「Libertas」
M3「Heal the World」
M4「Moon River」


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