7月23日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.07/22 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.315~時代は】

 7月初め、軽井沢ジャズフェスなどの用事もあり追分の山荘に数日滞在、10日の参議院選挙投票を行うために帰京、何か悪い予感がしていたが、その夜の開票速報番組スタートと同時に、自公など改憲勢力が3分の2か...とテロップが出て、以降もその通りの動き。まあある程度予想はしていたがこんなに急速に時代が悪い方に向かいつつあるとは、流石にびっくりだった。世界に冠たる平和憲法とその根本にある平和主義を、時代を読まないある意味KYな考え方だとして排斥しようとする、悪しき傾向が広がりつつある。ぼくのようなオールドボーイが、そんな危険な傾向を嘆いてもどうしようもないのだが、考えてみれば今や若年層から子供たちまで、街にはゲームと言う形でウオー=戦争で溢れ返っており、無自覚に戦争を愉しんでいる傾向すらあるこの時代に、平和や個人の人権などの意味合いを説くのは大変なことだが、そこは何とか頑張らねばならないのだ。
 あのトレンディ俳優とされる石田純一が、突如として都知事候補として立候補...(結局はやめたのだが...)と言ったニュースはある意味驚かされもしたが、悪しき時代へ向かう流れへの精一杯の抵抗の現れだったとして、彼の少し先輩としてはその心情、良く分かる。
 そしてついにジャーナリストの鳥越俊太郎が立った。かつて何回かインタビューもさせてもらった鳥越氏。同世代の彼の不退の決意。かつてガンを患いながらも、その心配を乗り越え良く決意したものである。その心意気、高く評価したいし、最大限に協力したいが、結果はどうなるか神のみぞ知るや...である。

 
ちょうどこの大変な時にタレントの永六輔が亡くなったと言うのも、ある象徴的な事件だった。永さんとは番組などでのお付き合いは一切なかったが、全国各地の廃れ行く放浪芸を探し歩く特番を制作している時には、そうした演芸者の会での楽屋(浪速の浪曲師、広沢瓢右衛門や越後のごぜさんの生き残りなど)ではよく一緒になることもあり、確か瓢右衛門さんの大阪花園の実家では、一緒に酒を飲んだりもしたはずである。
 「大往生」等のヒット作も書かれた永さんは、異様なほど礼儀に厳しい人で、瓢右衛門さんに対する敬意がお前には無い、それでは制作者として駄目だ...などと叱られたこともあった。口うるさい人でありTBSのラジオ番組デは、晩年ほとんど口が廻らないところも多かったが、番組に賭ける情熱は凄いものがあり、それは同時に平和憲法を守ると言った戦後マスコミ知識人としての矜持でもあった。彼は廃れ行く芸能の理解者であると同時に、ジャズ愛好家でもありそうした議論は楽しいものでもあった。合掌!

 
ところでジャズも軽井沢ジャズフェスを始め、盛夏を迎え佳境に入りつつある。かつての大規模ジャズフェスこそ影を潜めてしまったが、9月初めの東京ジャズや横浜のブルーノートフェスなど、いくらかかつての隆盛を取り戻しつつはあるようだ。どれほどそれらに参加できるかわからないが、行けるものは行きたいと思っている。しかしこの時代の悪い流れ。それが気になって音楽にも没頭できないのもまた事実なのだが...。

【今週の番組ゲスト:ジャズサックス&フルート奏者の多田誠司さん】
M1「OLEO」
M2「残照」
M3「WARM WOODS」
M4「HACKER」

7月16日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.07/15 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.314~ジャズDJ】

 昔から「都会の田舎っぺ」と言われてきただけに、東京の杉並育ちで今は文化タウンの国立に住まいながらも、余り都会的な流行事象には詳しくない。一時ジャズは時代の先端を行くまさに流行音楽だったが、この数十年はどうも雲行きは怪しく全体に元気がない。しかしこのところ都心のクラブ(もう殆どご無沙汰なのだが...)では、ジャズを媒体にしたDJがかなりな人気を博しており、ラジオNIKKEI第2のRNⅡ立ち上がりを担当していた、我が大学クラブ&局の後輩、エルカミナント岡本君もサルサDJの権威とのことだが、そうした有力ジャズDJ達によるコンピレーションアルバムも結構売れ行きがいいとのこと。残念ながらそうしたDJとはほとんどお付き合いが無い。そこでこのジャズDJのトップ的な存在で、レコード番長とも異名を取る(アナログアルバムに詳しい)須永辰緒氏を、知り合いを通して紹介してもらい、彼に新しく出した彼のジャズコンピレーションアルバムを持参、スタジオに遊びに来てもらった。

 
須永辰緒氏のジャズコンピレーションシリーズは、「夜ジャズ」と言う名前のシリーズで既に15作以上を数える人気シリーズになっている。初対面の須永氏、今流行りのトップDJだけに、夜の収録にも関わらずグラサン(サングラス)をかけ、かなり強面の風情。これまでの夜シリーズはほとんどが海外のジャズレーベルからコンパイルされたものだったが、このところ日本人の若いジャズメンにも面白い存在が登場するようになり、ここらでそうした推薦株を集めたものを作らねばと言うことで新作は夜シリーズの別冊という意味合いで、「番外編」と名付けたのだと言う。
 
ここには若いギンギンに突っ走ったジャズが全部で10数曲集められており、人気バンド以外にもいわゆるジャズ屋(ジャズ関係者)とはちょっと違う視点で採用されたものも多い。これがジャズなのかと言ったものもいくつかあるが、須永氏の言うジャズ=初期衝動としての音楽と言う視点からすると、まあジャズだなと頷かされるものも少なくない。

 
こうしたジャズ及びジャズ周辺の音楽をクラブで掛け、来場者を躍らせ、聴かせるその腕前が問われるなかなかに厳しい仕事でもある。客は20代がメインで30代や大学生、高校生も参加しているとも聞く。「そうした若いファンはジャズ愉しんでますか...」と聞いてみると、特にジャズなどと言うことを意識することなく、他の音楽同様愉しんでいるのだと言う返事、「かなり激しいリズムのジャズナンバーでも、軽くステップを踏むんですよ、今の若い人は...」等と言われるが、オールドボーイのぼくには、その光景ちょっと想像もつかない。

 「
夜」ジャズコンピレーションを仕上げるときにはかなりな数の関連アルバムを聴き、そこからいくつか候補作をピックアップ、特に全体の流れを作るのに腐心をするとのこと。ただ長年のDJ勘でどうしたら聴くものが心地良くなれるかは、自ずと決まってくるものだとも言う。ジャズはかつてその歴史を紐解きながらのお勉強と言った側面も強く、番組でもジャズ評論家、青木和富氏に新しい観点でジャズのおさらいをしているが、若い人たちにはジャズの流れや歴史などと言ったものは、あまり関係無いのかもしれない。すこし寂しく諦めの境地でもある。
 「
オールドボーイのジャズファン達を集め、一度青山や六本木のクラブに視察に行こうかな...」と言ったら、「是非そうしてくださいよ。今の若いファンの気持ちが良く分かりますから...」と励まされてしまった。どなたかクラブご一緒しませんか。
【今週の番組ゲスト:音楽プロデューサーでDJの須永辰緒さん】
M1「Nomad/bohemianvoodoo」
M2「Little Italy/TRI4TH」
M3「襟裳岬/T字路's」
M4「Don't Look Back in Anger/fox capture plan」

7月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.07/08 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.313~若手トランペッター】

 先日ラグビースーパーリーグの国内最終戦が秩父宮で行われた。猛暑の中、日本のサンウルブスの国内最終戦の相手は、冬真っ最中の南半球からやって来たオーストラリアのワラタス。暑さという利点を最大限生かし、意外に善戦するのでは...と言う期待も大きかったが、南半球有数の強豪ワラタスはその実力通りの力を見せつけ大勝した。今年からSR(スーパーリーグ)に初挑戦した日本チームは、短期間で結成されたものだけに準備不足だったが、その割に良くやったと思うし、ニュージーランドや南アの強豪チームと戦うなどというのは、夢のまた夢だったかつてのことを考えれば、まさに信じられないラグビーシーズンでもあった。ただサンウルブスの今シーズンを振り返ると、選手層の薄さはどうしようもない現実だった。

 と書いてくると今回もラグビー話かとお叱りを受けそうだが、決してそうではない。日本のジャズシーンを見ると、ラグビー同様まだまだ若手の人材が少ないのに気づかされる。ピアノとボーカル、ここは若手がどんどん登場しているが、そのほかの分野ではこれといった人材も少ない。そんな中にあって若手の代表格の一人として奮戦しているのがトランぺッターの類家心平である。彼は青森県の八戸出身。自身の出身地の緯度をタイトルにしたアルバム『Ñ40』を、同郷のピアニスト中島錠二と共に発表したりしている、なかなかに郷土想いだが、今や数少ない若手の俊才トランぺッターとして、自身のバンドを始めさまざまなミュージシャンやシンガーからオファーを受け、共演を果たしている。

 その彼が新作『UNDA』を携え、スタジオに遊びに来てくれた。UNDAとはラテン語で波。自身のバイブレーションを体現化したこのアルバムは、若手達を集めた彼のレギュラーユニットによるもの。如何にも彼らしいエッジの利いたナンバーが並び、タイトルもかなりとんがったものが多い。その中にあって、1曲だけ敬愛するマイルス・デイビスの「マイシャ」を彼流の解釈で取り上げたものがあり、これが素晴らしい。世界的なスケールのトランぺッターと言う印象は、スタジオに来ても良く分かったが、その彼と並ぶ逸材が中近東出身のイブラヒム・マーロフ。半音の更に半分の音程を鳴らせる「微分音トランペット」を自在に使いこなすこの中近東出身のトランぺッターは、リズム感覚も素晴らしく新たな金管楽器を未来を切り開く逸材でもある。
 類家&イブラム。この2人の本場アメリカ以外から現れた俊才達によって、ジャズトランペットと言うよりもジャズの新たな展望が開けることを大いに期待したい。
【今週の番組ゲスト:トランペッターの類家心平さん】

M1「UNDA」
M2「Haoma」
M3「Danu」
M4「Pirarucu」

7月2日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.07/01 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.312~才人・佐山雅弘】

 5月に女王、寺井尚子が登場したと思ったら、今度は彼女のユニットの音楽監督とも言える立場のピアニスト、佐山雅弘がスタジオに遊びに来てくれた。確か5~6年ぶりの登場になるはずである。彼はまさに才人と言った表現がぴったりのミュージシャンで、寺井バンド以外にも自身のトリオ、音大のジャズ科主任教授、川崎の大ホール・ミューザ川崎の音楽監督、ジャズプロデューサー等々、実に多彩な活躍を繰り広げる売れっ子。その彼と久しぶりに会うと、大分痩せた感じもありいささか心配で聞いてみると、胃の半分近くを切り取る大手術をしたんだと言う。もうだいぶ調子は戻っているが、未だ食事などに気をつけない部分もあるとのこと。ただ数日前からお酒も飲めるようになったと嬉しそうに語ってくれたので、じゃ収録後に近くで一杯やろうでは...と言う話になった。

 
その彼が今回スタジオに来てくれたのは、久方振りに新作を発表したからなのだが、ベーシストの藤原清登とのデュオによるそのアルバムのタイトルは『思い出す、会いたがる、恋い慕う』と言うロマンティックなもの。韓国の人気作曲家チームの作品で、この曲が気に入ってアルバム作りをしようと思ったと言い、それならば初めて藤原とデュオでやってみよう...と考えたとのこと。このアルバム、このタイトル曲以外にも、彼が大好きだと言うシャンソン歌手、シャルル・アズナブールの「返り来ぬ青春」や、これもフランスで大ヒットした童謡風な「マルセリーノの歌」、 ボブ・ディランの曲でキース・ジャレットの若かりし頃の名演で知られる「マイ・バック・ぺージ」など、実にいい曲が並んでいる。面白いのはあの韓国民謡アリランを佐山流に解釈し直した「花アリラン」と,フレンチテイストの小洒落たナンバー「すれ違いのロンド」と言う2曲の彼のオリジナル。いかにも才人、佐山ならではのセンスに溢れたナンバーで、名手、藤原とのデュオも抜群。大人が楽しめる心地良いジャズになっている。

 
スタジオ収録には、コーディネート役を務めた、キングレコードのお偉いさん(になってしまった)森川進氏も立ち合いに現れたが、スタジオ録音は初共演にも関わらず実にスムーズで、匠同士の共演と言った和気藹々のものだったと彼も語ってくれた。今は大病後なので仕事は控えめにしているともいうが、それでも週3日ほど大学に通い、頼まれたアレンジ作業やライブハウスでのギグ(仕事)など、スケジュールはびっしりのようだ。「少し休んだら...」と言うと「そうはしたいんだが、どうにもままならないんですよ」と言う返事。才覚溢れた御仁だけに、周りもほっとかないはずで、才人はなにかと大変と言った好例とも言えそうだ。

 番組終了後虎ノ門の酒場に、山本アナも加え4人で向かう。魚の旨いことで知られるこの店は満杯、ようやく席を見つけ潜り込むと、 久々の酒と言うことで佐山氏は大喜び、実に愉しいアフターセッションになった。席上どういう訳か山本嬢のヌード写真集出版と言う話で盛り上がり、それならば佐山氏のピアノ伴奏付きのこれまでに無い貴重な写真集にすれば...と提案すると、佐山氏も大乗り気。じゃやりましょうよ、と言う実現性ないお話でお開きになったが、佐山氏は終始ご機嫌だった。才人との愉しいひと時でした。

【今週の番組ゲスト:ジャズピアニストの佐山雅弘さん】
M1「すれ違いのロンド」
M2「花アリラン」
M3「ダヴィデの万年筆」
M4「帰り来ぬ青春」

6月25日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.06/24 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.311~はな子&カシアス・クレイ等々】

 我がジャズ番組「テイスト・オブ・ジャズ」では、この4月から毎月月末の時間は、評論家の青木和富氏を招き「ジャズのお勉強」と言うことで、ジャズ史をベースに様々なジャズのお勉強をしようという企画を実施中。今回は第3回でいよいよジャズのスタート時点、ビ・バップに突入。バップとは騒々しいと言ったスラングのことだが、この音楽を作り上げた天才バードことチャーリー・パーカーをメインに、彼とタッグを組んだディジー・ガレスピーなど、モダンジャズの創始者とも言える巨人達にスポットを当てることとなった。パーカーはクリント・イーストウッド監督(大のジャズ好きで息子はジャズベーシスト)の映画「バード」でお馴染みの存在だが、まさにジーニアスそのものとも言える天才プレーヤー。これぞジャズメンと言う典型的な破滅型プレーヤーでもあった。従来のスイングジャズを革命的に変化させた彼のプレーは、録音状態の悪さなどもありファンには意外なほど聞かれることも少ないのだが、今回はそのプレーとじっくり向き合おうと言うもので、ジャズの「大本」をこの機会に皆様もご堪能下さい。

 
さて番組の方はこんな感じだが、ぼくなりに感じ入る事柄がこの所多々ある。そのまず第一は、象の「はな子」の死。井の頭動物園で亡くなった最長齢のこのインド象、ぼくが小学生時代に上野から井の頭動物園に引越し、娯楽のない時代には大人気の存在だった。杉並区のお坊ちゃんヴァイオリ二ストだったぼくは、同区の小学校代表の一人として学校から派遣され、この象の一日飼育係代理を、学校一の美少女と共に行った。この当時はほとんどの子供が貧しく、いわゆる原始共産制の中にあったとも言えるのだが、彼女は隣のクラスで学校一の金持ち~土地持ちの美人の子として知られていた。高円寺の駅から2人で井の頭動物園に向かうその間も、また園に着いてからも、ぼくは緊張続き。肝心のはな子のえさやり作業などは良く覚えていないが、2人で園のお弁当を食べ語り合ったことは印象に残っている。当時はお金持ちの娘は美少女、と相場が決まっていたので、その日だけで後は接触はなくなってしまったが、今も楽しい思い出の一つだし、身近で見たはな子の人気も凄いものがあった。その象が...,何か寂しい。

 
そして死亡ニュースと言えばもうひとつ、世紀のボクサー、カシアス・クレイことモハメッド・アリの死。齢74というから、こう見るとぼくとそうは違わないのだが、その本名のクレイは、白人から与えられた奴隷の名前だとして廃棄、イスラム教に回収したモハメッド・アリ名を堂々と名乗り、敢えてベトナム戦争の従軍拒否を敢行、世界タイトルを剥奪...と、まさにアフロアメリカンの代表格として差別撤廃などに孤軍奮闘して戦った信念の人でもあった。その姿は学生運動華やかなりしわが国でも、その果敢な行動は若者の英雄として大きくクローズアップされ、永遠のボクサーとして名前を残すことになる。タイトル剥奪から数年後のアフリカ・ザイールでの無敵ジョージ・フォアマンとのキンシャサ・リベンジ・マッチ。この凄みたっぷりな試合を、もう一人の時代ヒーロー、作家のノーマン・メイラーがドキュメントした観戦記も最高の内容だった。さんざんフォアマンに打たせまくって防戦一方、それを第8ラウンドに「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と言うあの有名なキャッチフレーズ通りに一発パンチでKOしてしまう。まさに凄いの一言。以降はパンチドランカーの常として体を壊し、表舞台には現れなくなるが死ぬまでアリは、黒人達そして世界中の戦うもの達の真のシンボルだった。

 
その歴史的キンシャサ激戦から数年後に我が国で新しい装いの雑誌(ぼくたちの気分を代弁してくれるような雑誌)が、それまで歌謡雑誌「平凡」で売っていた出版社から出された。「ポパイ」である。当時のアイドル雑誌「平凡」を発行する平凡出版は、若者カルチャーを代表する「マガジンハウス」と名前を変え、一躍時代の気分をリードすることになる。それから40年、「ポパイ」今月号はその40周年記念号で創刊誌(ウエスト・コースト特集号)がオマケで付いている。オマケには弱い性格なので直ぐに買い求めてしまったのだが、その最新号の面白くなさ。やはり今の時代からは大分ずれてしまった感もありあり。かつて「ラジオ・ポパイ」等と言った相乗り(共同企画)の2時間特番をオンエアーしたりして、編集部とも良くコンタクトを取り合って、新しいラジオ番組と新たな雑誌を作ろうとしていた、あの時代の面白さ・意気の良さ。もうはるか昔の時代になってしまったのだ。今はあの当時の「ポパイ」のような雑誌はない。いささか悲しいし、残念でもある。
【今週の番組ゲスト:「ジャズのお勉強」第3回 先生は音楽評論家の青木和富さん。Bebop...モダンジャズの始まりについてお話いただきました。】
M1「DIZZY ATOMSPHERE/CHARLIE PARKER&DIZZY GILLESPIE」
M2「WHITE CHRISTMAS/CHARLIE PARKER」
M3「THE CAMP/DIZZY GILLESPIE」
M4「INDIANA/BUD POWELL」
M5「9月の雨/GEORGE SHEARIN'G」

6月18日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.06/17 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.310~軽井沢ジャズ・フェス】

 この夏また全国各地でジャズフェスが
開かれる。かつてのような熱気はないし、定例のロックフェスには動員力等及びもつかない(かつてはジャズフェスが凌駕していた時代もあった)寂しい状況だが、それでもフェスが開かれるのはいいことだ。このジャズフェス・シーズンの口火を切って7月末に催されるのが、軽井沢の大賀ホールでの「軽井沢ジャズ・フェス」である。日本屈指の別荘地で開かれるこのフェスも、今年で5回目。前回は主催者で企画立案者でもある「88」レコードの伊藤八十八氏がその前年に死亡、開催も危ぶまれたが奥さんの妙子さんが後を継ぎ、無事フェス運行となっただけに、今年は...と思っていたら、構成作家で演出家、エッセイストなど多彩な顔を持つぼくの古くからの友人、高平哲郎氏が全体の構成と演出を手掛けるという形で、また実施することになった。場所は同じく大賀ホール。これまでは2日間だったフェスを、彼の助言もあり7月30日(土)1日だけとして、昼間の2時から3時間ほどたっぷりとジャズを愉しもうと言う企画。

 
ぼくもこのフェスには色々協力したり、ライブレポートを書いたりしたこともあり、今年もまた...と言うことで、主催の伊藤妙子さんと高平哲郎氏に今回のフェスだけでなく伊藤八十八氏についても2人で偲んでもらおうと、スタジオに招くことにした。高平氏は数年前から軽井沢住まい。正確に言うとお山(浅間山)を超えた北軽井沢~群馬県嬬恋村在住。そんな関係もあり追分での文化シンポジウムに登場してもらったこともあるが、ここから東京に車で通うと言う(往復8時間強)かなりなハードスケジュールを毎週こなしているらしい。
 彼はかつてのフジTV王国~お笑いをメインにしたフジTV全盛期の陰の立役者でもあり、元々は雑誌「宝島」の初代編集長。その彼のインタビュー集を読み、当時のラジオたんぱでスタート予定の紀伊国屋提供のカルチャートーク番組のメインキャスターに起用を考えたのだった。いささか斜に構えシャイな彼だけに、しゃべりは今一つだったが、その交友関係は大変に幅広くゲストは多岐を極め、毎回大変に面白かった。
 また彼は我が森田一義(タモリ)登場の陰の仕掛人で、色々面白いアイデアを提供、タモリを時の人に仕立て上げた面白グループの張本人。その彼を放送の世界に引き込んだのが、かく記すこのぼく(自慢話です)と言う訳で、彼もその恩を感じてくれているみたいなので、彼とは本当に長い付き合い。今のラジオ日経では考えられない様な豪華で面白い特番=石原裕次郎、高倉健、ツービート・スペシャル(メジャー化する前のタケちゃんに焦点を当てる)等々、その裕次郎さんなどかつての日活スター総出演特番「我が愛しのヒーロー達」は同内容のドキュメンタリー映画(作家の矢作俊作氏が監督)にもなったりもした。
 その高平氏と亡くなった伊藤八十八氏とは古くからの仕事仲間であり飲み仲間で、彼を偲ぶ会も高平氏と仲間達主催で開かれたりもした。

 
日本の「真夏の夜のジャズ~ニューポートジャズフェス(アメリカ屈指のリゾート地、ニューポートでかつて開かれていた代表的ジャズフェス)」の再現を目指し、伊藤八十八氏が始めたジャズフェスを、軽井沢在住の演出家が総合企画・演出する今年の軽井沢ジャズ・フェス。例年と少し違う形になるのかも知れないが期待大でもある。出演はケイコ・リー、寺久保エリナ、TOKUなどと言ったお馴染みの八十八ファミリー。妙子さんも出演者一人々に挨拶に行き、今年の趣旨を伝え了解をもらい、ジャズプロデューサーとしての第一歩を歩き出している。軽井沢ジャズフェス、伊藤妙子、高平哲郎、そしてこのフェスを愛するファン、それらすべてに乾杯!
【今週の番組ゲスト:㈱Eighty Eight代表の伊藤妙子さんと編集者で演出家の高平哲郎さん】
M1「I'm a fool to Want you/KEIKO LEE&BILLIE HOLIDAY」
M2「Soul Shadows/団しん也」
M3「MY IDEAL/TEDDY WILSON」
M4「BEAUTIFUL LOVE/KENNY BARRON」

6月11日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.06/10 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.309~ジャズ女王降臨】

 このところ世の中は女性上位と言うか、女性の元気の良さが目立つようだ。それを象徴するのが今の若者達を形容した「肉食女子・草食男子」と言った言葉。これが現在の実態を表しているとは言い難いだろうが、ある真実を突いているのも事実だと思う。翻って日本のジャズ界を見ると、21世紀になってからは徐々に女性陣の進出が目立っており、サダオさん(渡辺貞夫)、洋輔さん(山下洋輔)、小曽根、渡辺香津美などと言ったベテラン陣は別として、若手陣ではかなり女性陣が頑張っている。かつてならば女性はボーカルかピアノと相場が決まっていたのだが、最近は管楽器やベース、ドラムと言った楽器でも、女性プレーヤーの進出が目立つようになっており、時代の大きな変化を感じざるを得ない。

 
そんな女性プレーヤーの中にあって、トップを走り続けているのが、ジャズバイオリニストの寺井尚子。CMに登場したり、様々なジャズイベントでも花形の存在として観客を魅了するなど、女子ジャズの牽引役と言ってもいい存在。ジャズバイオリンと言った分野も、彼女がいなくては考えられなかった世界で、今や彼女に続く存在も(ほとんどが女性)続々と巣立っているといった状況にある。まさにスーパー・ウーマンである。

 
その彼女がこの春に新作『トワイライト』を発表した。ほぼ年1作のペースでアルバムを発表し、J-ジャズ女王としての実績を誇示し続けている彼女。「ああまた出たのねー」と言う感じでニュースを見ていたが、その彼女から新作を紹介して欲しいとのオファーがあり、10数年ぶりに我が「テイスト・オブ・ジャズ」に今回ゲストとして来てもらうことになった。彼女が最初に番組に遊びに来たのは、今から20年ほど前のデビュー直前のこと。レコーディングを終えたばかりのテープを携え、プロデューサーのÈ氏と共にスタジオに顔を見せてくれたのだった。彼女もケイコ・リー、綾戸智恵などと同じく、名古屋のジャズドクターこと内田修さんがその才能を見出した存在。内田さんから「美形で実に上手いジャズバイオリン奏者が名古屋にいるから是非番組で紹介してよ」と頼まれ、プロデューサーがÈ氏と言うこともあり、二つ返事でOKしたのだった。スタジオで見ると彼女は聞きしに勝る美形で、これで技が加わればとアルバムを聴くとこれがデビューとは思えない素晴らしさ。彼女の話よりもそのお顔をボーッと見てしまった程のいい女。その後デビューを果たすと直ぐに人気沸騰。何回か番組にも来てもらったが、その後は若きジャズ女王と言った感じも強くなり、こちらからも声が掛けづらく、彼女の方も...と言った感じで、ここ10数年は番組付き合いはなかった(雑誌のインタビューやコンサート打ち上げ等では何回か顔を合わせていたが...)。それが彼女の方から声が掛かるとは...と思っていたら、この新作は彼女のセルフプロデュース作品。今までプロデュースを務めていたT女史が所属レコード会社を退職、その結果自身で作品を初プロデュースしないとならなくなり、PR活動も積極的に行うことになったのが理由のようだ。

 
新作『トワイライト』は、このところ得意としているアストル・ピアソラの斬新なタンゴナンバーを頭に据え、メンバーチェンジした新メンバーの中心存在、ピアノの佐山雅弘(彼も今度新作を発表、それを携えスタジオに遊びに来る予定)のオリジナル、そしてドビッシー、マーラーと言ったクラシックの名曲のジャズ化ナンバーなど全10曲。彼女自身のオリジナルは今回収録されていないが、どれも女王の貫禄十分な充実した内容でスタジオでの話も堂々として風格十分。さすが女王と言った感じ。
 
アナウンサーの山本郁嬢も彼女のファンで、いつか会いたいと前々から語っていたが、今回ようやく実現したのだが、彼女の貫禄に押され気味で結構ビビっていた感じもある。そこら辺の微妙なやり取りも結構興味深い。

 
彼女は今年「東京ジャズ」のステージで、現代タンゴの巨匠達と共演することが決まっている。あのジャズアコーディオの第一人者、リシャール・ガリアーノのバンドに急きょトラ(代役)として加わり、難解なガリア―ノオリジナルを僅か2日で完全マスター、素晴らしい演奏を繰り広げたあの伝説の東京ジャズステージの再現を聴かせてくれるかも知れない。華も実もある凄い女性です。
 収録
が終了し帰り際、彼女に来年もまた...と頼むと喜んでと返事してくれた。嬉しい限りで、プロデューサー冥利に尽きますね。
【今週の番組ゲスト:ジャズヴァイオリニストの寺井尚子さん】
M1「ブエノスアイレスの冬」

M2「チェロキー」

M3「セイム・オールド・ストーリー」

M4「ルナー・ダンス」

6月4日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.06/03 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.308~渡辺香津美コンサート】

 日本が世界に誇るギターの巨星、渡辺香津美の周年記念コンサートが、自身が生まれ育った想い出の街・渋谷のオーチャードホールで5月末に開催された。17才の時『インフィニティ』で衝撃デビューを果たして以降、世界を駆け巡りつつ、シーンの牽引者として疾駆し続けて来たこの永遠のギター青年も、今年でそのギター人生は45年目。自身のスタジオで内外の様々なギタリスト達との親密な対話を交わした周年記念作『ギターイズビューティフル』をこの4月に発表。その好評を受け多彩なギタリスト陣をゲストに迎え『ギター...』の拡大スペシャル版として実施されたこのコンサート「45周年記念祭」は、「祭」だけに興味深い趣向も用意され、足洗音大のカツミ教授がギタリスト香津美の原点、渋谷の街を探索する「ブラタモリ」ならぬ「ブラカツミ」等も画面に流された。そして締めは「天才ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトが1953年5月にこの世を去り、その5か月後にぼくが生まれた...」と言うナレーション。そこに彼がアコギでジャンゴ張りに軽快なマヌーシュ・スウィングを奏でながらおもむろに登場、演奏会がスタートと言う面白がりの渋谷っ子ならではの小粋な計らいで、多くのファンを魅了する。

 第1部は笹路正徳、高水健二、本田雅人など一騎当千の手練れ達が集ったスペシャルユニットとのステージ。ドラマーはなんとかつての僚友、迫真にして入魂の重量ドラミングを誇るオラシオ・エルネグロ。この凄腕達をバックにスペーシーなダイナミックさを感じさせる自身の「JFK」「遠州つばめ返し」軽快なラテン・フュージョン風味の「ハバナ」等の十八番ナンバーを披露、満杯のファンを歓喜させた。
 続く第2部は、ジャズ(井上銘)、クラシック(村治沙織)、ロック(Sugizo,フラメンコ(沖仁)と言った俊才達~香津美を良き兄貴分で師匠格として慕う、様々な分野の香津美チルドレン(押尾コータロー談)10人がゲストで集い、それぞれ1曲ずつ協演・競演を果たす、豪華なギター祝祭絵巻のステージ(曲ごとに主役はギターを持ち替える)。ギターミュージックの奥深さ、幅広さ、柔軟さ等々、その醍醐味をたっぷりと満喫させてくれた。同時に多彩な顔と才を誇る卓抜なギター料理人、香津美の全てが分かる秀逸にして悦楽の音構成でもあった。

 どれも豪華なステージだったが、聴きどころの一つは、親子ほど年の離れたジャズギターのホープ、井上銘との競演で、自身のオリジナル「ジャンミ」を、コンテンポラリギタージャズの水準の高さを頷かせる、説得力のあるアドリブの応酬で聴かせジャズファンを唸らせ、セロニアス・モンクの名作「ラウンド・ミッド・ナイト」は、X-ジャパンなどで活躍するバリバリのロックギタリスト、SUGIZOとの対決&融和セッション。エフェクトなども駆使した力感と熱気溢れる爆音競演で、眠らない街=渋谷の夜を徹した喧騒振りが鋭く活写され、今回のハイライトの一つとして昇華された。そして第2部の大トリは名手、押尾コータロー。彼が得意とするラベルの「ボレロ」を、香津美大兄と熱く激しく絡み合いながらクライマックスへと盛り立てていき、終盤は他のゲストギタリストも全員揃い踏みで、あの有名なメロディを合奏、混沌としながらも一本芯の通った、圧巻にして至高のカタルシス空間の現出、感動的で観客も声が出ない程で、まさに壮大で絢爛なギター合奏だった。
 オーラスのアンコールナンバーは、アルバムでも掉尾を飾った自身のトロピカル風味な軽快オリジナル「アイランドポップ」、出演者全員が愉し気に短くソロを廻し合い、再びテーマに戻され3時間半に喃々とする、この充実の長尺コンサートも大団円を迎えた。

 終演後ステージスクリーンに「ギター人生50周年コンサート」の予告(?)が映し出されたが、世界的なギターの匠がこの楽器に注ぎ込む尽きせぬ情熱。本当に素晴らしいもので、何時までもギターを愉しみつつ、頑張ってくださいマエストロ・渡辺香津美氏。
 それにしても彼をスタジオに招き、この周年コンサートの予告をしてもらうはずだったが、何せリハーサルが大変で時間が取れなくなってしまい、予定していたゲスト出演が不可能になってしまったのは、大変に残念なことでした。また遊びに来てくださいね。 
【今週の番組ゲスト:ジャズフルーティストの小川恵理紗さん】
M1「Compleated light」
M2「Freedom jazz dance」
M3「Salt Spring」
M4「Blue Bossa」

5月28日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.05/27 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.307~最近のPIストーリー】

  この4月から番組では毎月最終週のこの時間、ジャズ評論家の青木和富氏にジャズのお勉強と言うタイトルで、20世紀最高のポップミュージック~ジャズを体系的に見直してみようというシリーズ企画をお願いしている。ジャズの歴史を振り返りつつ、これからのジャズも見据えていこうと言うジャズ教養講座(と言っても決して堅苦しい内容ではありません)なのだが、今回はその2回目。初回がジャズの誕生からシカゴ、NYへと進出した辺りまで、そして今回は「スイングトゥバップ」と言うことで、いよいよモダンジャズのとば口へ到着ということになった。狂乱の20年代から30年代、スイングジャズ全盛期のキング、ベニー・グッドマンをはじめグレン・ミラー。更にはスイングからビバップへの移行期の代表的プレーヤー、夭逝したギタリスト、チャーリー・クリスチャン等々、様々なミュージシャンが登場する。このジャズのお勉強、ぼくにとっても思い返すこと、知らなかったことなど数々あって、結構ぼくにとってもお役に立つ講義なのだ。と言う訳でこのお勉強に是非皆様にもお付き合い願いたいと思っている。

 まあ番組はこんな感じだが...、このところハードボイルド系PI(私立探偵)ものの小説や映画などで、かなり面白いものがいくつか出て来ているので、久し振りにそこら辺から紹介してみたいと思う。わが国のハードボイルド探偵小説としては、現在は札幌在住の東直己(大のジャズ好き)が一人気を吐いている感も強い。彼には酔いどれの「名無し探偵」と、かなり生真面目な本格派探偵~畝原ものの2シリーズがあり、松田龍平が出演しかなりヒットした探偵シリーズ映画は酔いどれ探偵の方。この他にも大田忠司など何人か頑張っている人もいるのだが、如何せん衰退状況は否めない。そこで全く違うタイプの探偵ものとして登場したのが、北川景子主演でTVドラマ化もされた「探偵の探偵」。松岡圭祐の書いたこの探偵ものは、タイトルどおり興信所所属探偵の非行を暴く探偵。DV被害者の身元を暴露など、実社会でもこの手の探偵の悪行がニュースにもなっているだけになかなかに興味深いし、良い所に目をつけた感じもある。主役は紗崎玲奈という女探偵。女と言うところもミソで、TVドラマは見ていないが小説は久々にスリリングで面白かった。このシリーズ4巻で収束。

 そしてビデオでは少し前に出たリーアム・ニールソン主演の「誘拐の掟」が秀逸。これは人気ハードボイルド作家、ローレンス・ブロックの私立探偵マッド・スカダーものの映画化で、監督は名脚本家としても知られるスコット・フランクの監督デビュー作。その演出・映像共にハードボイルドの頂点を極めた素晴らしいものとしてお勧めしたい。このリーアムのマッド・スカダーに唸らされていたら、もっと凄い傑作があった。アメリカのTVシリーズの「トゥルー・ディテクティブ」。ウディー・ハレルセンとマシュー・マコノヒー、この実力派・個性派2人がタッグを組むハードボイルドもの。ビデオ屋でそのチラシを見た時、これは傑作と言う予感がしたのだが、それを超える様なまさに素晴らしい逸品だった。全4巻でエピソードは8話。舞台はアメリカの暗部とも言える南部ディープサウスのアラバマ州辺り、バイヨーとも言われる湖沼地帯がメインで、この舞台設定からしてスリリング。主演の2人はこの地域警察でタッグを組む刑事。なんだタイトルと違っていま日本でも大うけの、ぼくにとっては余り好みでない刑事ものか...、と思ったらラストの第4巻、エピソード7から、2人は警察を辞めPI(私立探偵)として迷宮入りの事件を追い、傷つきながらも解決すると言う、なんと20年近い歳月が経過するワクワク・ドキドキのハードボイルドな展開。マシューの方は周囲とは相入れない一匹狼。一方ウディはいかにも南部男と言った、いささか粗野だが感情豊かな刑事。南部だけに悪魔教、幼児虐待・殺害などの暗い事件がベースで、NYやロス、サンフランシスコなどの大都市アメリカしか知らない(ぼくもその一人だが)日本人に、全く異なった考え・生き方をする(ここら辺が大統領候補としてトランプが進出するにも大きくものを言っているはずだが)、その南部の暗い保守体質。日系の新進監督の作品らしいが良く描かれており、何より主役の2人が素晴らしい。彼ら2人にショーン・ペンを加えた3人。彼等こそ今のアメリカを象徴する実力派で、アメリカ映画の肝とぼくは信じているが、その2人の揃い踏み。悪いはずがありません。大推薦です。
 こうしたアメリカTVシリーズもの、今までは殆ど見ることはなかったのですが、いささか驚だされました。音楽担当はシンガーとして以上にプロデューサーとして注目を集めている才人、T・ボーン・バーネット。自身が歌う主題歌だけでなく挿入されるバック音楽も実にスリリングでグッドです。この「トゥルー・ディテクティブ」、役者や舞台(ロス)も大きく変えたシーズンⅡがレンタル開始になっています。果たしてどんな内容なのか...。マシューとウディ―のPartⅠほど食指は動きませんが、これも見ないとならないですね。
【今週の番組ゲスト:「ジャズのお勉強」先生は音楽評論家の青木和富さん】

M1「HEEBIE JEEBIES」
M2「SUNG SING SING」
M3「FLYING HOME」
M4「SWING TO BOP」
M5「KOKO」 

5月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.05/20 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.306~グランドピアノ】

 日本のファンが最も好むのがピアノジャズそれもピアノトリオもの、ジャズアルバムで売れるのはもっぱらピアノトリオノアルバムだし、それに伴ってかジャズアルバムが出されるのもまたトリオものがほとんど。こうした傾向は決して好ましいものとは言い難いが、ある意味仕方ない面もある。サックスやトランペットと言うかつての花形楽器は、プレーヤー個々の個性と言うか、まずその出す音自体が人によって千差万別。人間ひとりひとりの生理を写し取ったような、その生音を受け付けないとなると、どんな素晴らしいアドリブプレーを繰り広げたとしても、そのプレーヤーは自分にとって無縁な人と言うことになってしまう。しかしピアノに関して、プレーは様々なスタイルがあっても、楽器の特質として、平均律と言うか...根本の音自体は誰もがさほど変わらない。それだけに音に対する好き嫌いは余り派生しない。そのうえピアノはギターと共に「小さなオーケストラ」とも呼ばれ、それ自身で自立できる(=ソロで成り立つ)表現力豊かな楽器でもある。まあそれやこれやでピアノはジャズ楽器の主力として君臨しているのだと言えそうである。

 
さてそんな圧倒的な人気を誇る楽器~ピアノ、その頂点ともなるのが堂々としたグランドピアノとなる訳だが、それをそのままタイトルにしたアルバムを先ごろ発表したのが、ベテランの伊原康二氏。50年近いキャリアを誇る彼にとって、このアルバムは3枚目のリーダー作となり、純粋なピアニストとしては確かデビューアルバムの筈である。その彼の久々のアルバム発表と言うことだし、彼自身も是非番組に来たいという強い要望もあって、およそ10年振りに彼にスタジオに遊びに来てもらうことにした。かつてのフランスギャング映画の出演者のような強面の風貌の彼だが、根は実に繊細でセンス良い人。

 
元々彼は日本を代表するオルガン奏者で、かつては渋谷でオルガン演奏をメインとした珍しいジャズクラブを経営していたこともある。それだけにその前作も当然オルガン・ジャズアルバムで、これが愉しさ溢れた仲々の出来栄え。ジャズ雑誌でレビューを担当してかなり褒めておいたのだが、その関係で彼と縁が出来、そのお店に行ったりもしたものだった。それから10年余り、今の彼はもうほとんどオルガンは弾かなくなってしまい、専らピアニストとして活動しているのだと言う。その彼のピアノに惚れたある篤志家がスポンサーになり新作が誕生したのだが、いささか残念でもあるが、それもまた仕方ない所だし、このピアノジャズアルバムの出来栄えもかなりなものなので、それもまた良しとすべきなのだろう。現在60代半ばの彼は、80才で現役引退を広言しており、キャリア50年で3枚のアルバム、それについては「ゆっくりと生きて来た証しです」と語ってくれた。引退後は」ファンの皆がたまに思い出してくれれば嬉しいです」と言うことだそうだ。

 
アルバムは「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」など良く知られたスタンダードが10曲で、ラストに自身のオリジナル、インド政府の招きで現地のジャズフェスに出演、その時見た現地リゾート海岸での心象風景を綴った「サイン」が収められている。また3曲でストリングスとの共演もあり、ジャズピアニストとしては大変に嬉しいことだったと言うが、確かにウイズストリングスものを1枚は作ってみたい、と言うのは多くのジャズプレーヤー達の願望。その望みが叶えられたのだから、言うことなしである。面白いことにはアルバム出資者でもある篤志家が、数曲で自身のフリューゲル・ホーンの妙演を披露していること。これが素人はだしの出来栄えで、伊原氏のピアノに輝きを加えている。この関係ジャズにしてはかなり良いものですね。まあそれに倣って、どなたかお金持ちのジャズ好きな篤志家の方が、我が「テイスト・オブ・ジャズ」のスポンサーとして、名乗りを上げてくれませんかね。こりゃいささか虫が良すぎですかね、失礼しました。
【今週の番組ゲスト:ジャズピアニストの伊原康二さん】
M1「These foolis things」
M2「You go to my head」
M3「sign」
M4「Fly me to the moon」

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