1月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.01/20 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.341~またひとり音楽仲間が】

  昨年暮れ、それもどん詰まりの大晦日にかつての音楽仲間が一人突然逝ってしまった。石坂敬一氏。ユニバーサルミュージックやワーナーミュージックの社長・会長なども務め、日本レコード協会の会長も経験した、洋楽業界の大ボスともいえる人物だが、死んだのが大晦日の朝だけに元旦の新聞欄でも気付かず、その死を知ったのはかつての音楽仲間からのtelによってだった。

 
今や音楽業界のボスとも呼べる彼を、仲間等と呼ぶのは些かおこがましい気もするのだが、学年で1年先輩(彼は慶応大)で、入社歴も1年早い(彼は東芝音楽工業)だけにほぼ同期の音楽仲間と言った感じで、20代~30代初め頃は一緒に番組作りなどもした仲なのだ。それだけにかつてのぼくの中には、「困ったときの石坂頼み」といった迷言もあり、2時間とか3時間といった超ロング音楽特番(「ビートルズ・スペシャル」「ピンク・フロイドの魅力とは」等々)しばしば彼の登場をお願いしたものだった。彼とは仕事を始めた時が近い...と言うだけでなく、彼の勤務先=東芝音楽工業が当時の日本短波放送(現ラジオ日経)から歩いて数分と言う地の利もあり、彼に出演依頼をし易かったということもあった。

 慶応大相撲部出身(?)などと言う噂もあったが、およそそんな風には見えないやせ型の慶応ボーイで、当時の経団連会長で経済界の重鎮、石坂泰三氏の血縁と言うお坊ちゃんだった。無類の音楽好きであるのと同時に仕事熱心、ピンク・フロイドの『アトム・ハート・マザー』と言うアルバムに『原子心母』と言う邦題を付け大々的に売り出したのは伝説にもなっているが、何より驚かされたのはグラムロックの売り出しでたんぱ放送のスタジオに現れた時のこと。このグラムロックとは初期のデビッド・ボウイやアリス・クーパーと言ったロックシンガーが代表格で、派手な化粧をしたロッカー達のロックを指し、一時期かなり売れたものだった。そこで彼から頼まれグラムロック特集を組み、当然彼にもご出演願ったのだが、仕事熱心な彼はスタジオに自身も化粧して表れ、このグラムロックの面白さをとうとうと述べ捲った。その登場時、廊下を歩く姿を当時の局の先輩達が不審がり、総務部担当がお出ましになる等というハプニングもあった。まあお堅い当時の短波放送なら至極当然のことで、化粧姿の彼を最初に見たときはさすがにぼくもびっくりしたと同時に、その余りの仕事熱心さにいささか辟易もしたものだった。

 
そんな彼も洋楽本部長から邦楽本部長も兼任、氷室京介やユーミンなど日本のロックやニューミュージックの売り出しでも大成功、世界的音楽メーカー「ユニバーサル」に転身し社長・会長ととんとん拍子に出世、そうなると余り接点も無くなってしまい、年に数回の音楽関連パーティーなどで顔を合わせる位のものになってしまったが、その折には「小西さん、またあの頃の様に好き勝手に番組作りたいね...」等と、共にあの良き時代を懐かしんだものだった。

 
世界のジャズ市場の殆どを独占しているユニバーサルミュージックの代表を務めていた頃は、ジャズ関連のイベントやパーティーなどにも時々顔を見せており、ロックとポップス専門でジャズ門外漢だったため「頼むからジャズのことも一寸教えてよ...」等と冗談交じりに話しかけてきたが、そこはもう業界のお偉いさん、余り長いことは話もしなかった。最後に彼を見たのは昨年の秋、やはりあるパーティーの席だったが相変わらず元気一杯の様子。「憎まれっ子世に憚る...」の口かな...などと遠くから眺めていたが、それが暮れに突然の訃報。至って元気だったが朝の入浴中に心臓発作で突然に逝ってしまったとも聞く。お偉くなると外目では分からないストレスも多かったに違いないが、残念だし寂しい思いでも一杯だ。

 
彼の死を悼んで久々にピンク・フロイドの『原子心母』をアナログ盤で聴いてみた。石坂氏がプレゼントしてくれた箱根での野外コンサート。あの神秘的な情景体験を思い出しつつ、雄大なスケールを誇る彼らのスぺーシーなサウンド、心に沁みながら味わい尽くしました。 合掌 石坂敬一!          
【今週の番組ゲスト:disk unionのニュージャズレーベル「Playwright」
のディレクター谷口慶介さん】
M1「the Gift / fox capture plan
M2「Voce / Immigrant's Bossa Band
M3「Aqurium / bohemianvoodoo
M4「Close My Eyes / MASSAN×BASHIRY


1月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.01/13 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.340~吉祥寺のJAZZ親父】

 「中央線ジャズ」と言う言葉、ひところ程には余り見掛けなくなったが、決して死語では無く今でもしたたかに生き続けている。世界中どこでも電車路線にジャズという言葉が結びつくなぞということはまあ考えられない訳で、しいて言えばあのジャズの代名詞、デューク・エリントンの名曲「A列車で行こう」くらいなものか...。このA列車とはNYの街中ダウンタウンからハーレムを通り郊外へと向かう路線のことで、一方の「中央線ジャズ」とは中央線を根城にしているジャズメンやその拠点のライブハウス等を指す言葉。今は国立のジャズバーのオーナーである村上寛氏が、レコードチェーンの新星堂グループでジャズを担当、「オーマガトキ」と言うレーベルで日本人ミュージシャン達のアルバムを発表、また中央線の西荻窪にある老舗ジャズライブハウス「アケタの店」のオーナーで天才ジャズピアニストでもある明田川壮之氏のレーベル「アケタズ・ディスク」など、この2レーベルでアルバムを発表している連中のジャズ、それを総称して「中央線ジャズ」という呼び名が付けられ、その「中央線ジャズ」は一冊のジャズ本にもなっている程。そしてその中心にいるのは、勿論明田川と村上のお二方と言う訳。

 しかしこの2人に象徴される、西荻、国立と言う2つの街だけでなく、かつてのジャズタウン=新宿、そして阿佐ヶ谷(ジャズフェスもある)、中野など、この路線にはジャズに関わる店やプレーヤー等も数多く、その代表格ともいえる街が、今や住みたい街のトップにランクされる吉祥寺であることは、ジャズファンならば周知の事実でもある。

 今でもジャズライブハウスやジャズバーが10軒以上もある吉祥寺、そんな「吉祥寺ジャズ」を隆盛に導いたのが「ファンキー」のオーナーだった故野口伊織氏。そしてもう一人が「メグ」のオーナーにして、売れっ子ジャズエッセイスト、更にはジャズレーベル「寺島レコード」の代表でもある寺島靖国氏。このライバルは卒業大学も早大(寺島)慶大(野口)と別れ、性格も対照的。それだけに互いを意識しあい「吉祥寺ジャズ」を盛り上げていったのだが、野口氏が亡くなってもう10年以上、今や吉祥寺の主となった感もある寺島氏も、ぼくより大分年上なので、もう大層なオールドボーイ。その上今年は寺島レコード設立10周年という節目の年でもある。師がこのところ余りスタジオに遊びに来ていないのと周年記念と言うお祝いの意もあり、一度はスタジオに招いておかないと、コロッと逝ってしまうかも...とも考え、新春のスタジオに馳せ参上して貰うことにした。

 このジャズ師(彼に敬意を表して寺島レコード関連アルバムでは、この師という呼称を使うことにしている)、もう大分の御年だが相変わらずの憎まれ口で元気一杯、スタジオでも変わらぬ元気っ振り。それにしても自身のレーベルを、10年も続けられると言うのは本当に驚くべきことだが、それだけ彼のファンが多いと言うことだし、彼が作る作品には絶大の信頼を置いていると言うことでもある。このレコード(CD)不況時代には考えられない大プロデューサーでもある。

 と言うことで彼がプロデュースした新作を数枚スタジオに持参してもらい番組を進めたが、その一番の目玉は一人のピアニスト(大橋祐子と言うお気に入りの女流ピアニスト)を、スタジオとコンサートホールの双方で録音、2枚組のアルバムで中身はほぼ同様の選曲にして、そのサウンドの響きがどう違うかを聴き比べてもらう...という世界でも余り例のない大胆な企画。寺島レコードはアルバムの演奏内容だけで無く、その音質の良さも売りの一つで、特性を最大限発揮した企画でもある。師は自慢気に「こんな無謀な個人的趣味の企画をやれるのは俺だけ...」と豪語していたが、悔しいかな確かにその通りで、それでも売れるようだから言うことなしなのである。憎らしいが売れれば勝ち。

 それにしても寺島師、10年を迎えますます意気盛んに頑張って欲しいもの。同世代の人は次々逝ってしまうが、憎まれ口をつきながらも何時までもお元気で...。応援出来ることは最大限御協力しますから...。
【今週の番組ゲスト:
吉祥寺のジャズ喫茶メグの店主、寺島靖国さんと、ディスクユニオン 寺島レコード担当の坂本涼子さん】
M1Estrellita / 大橋祐子トリオ」
M2Esperame en el Cielo / Franco Piccinno
M3Poinciana / Mike Longo
M4Wild Tales-Closing- / 栗林すみれ」


1月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017.01/06 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.339~17年の幕開け】

 あけましておめでとうございます。いよいよ波乱の年、2017年が幕を開けました。ここ10数年で最も波乱と言うか混乱、そして暗雲立ち込める年になるのは、まず間違いないと思われますが、こうした波乱の年に限って(?)その幕開けが風もなく暖かく天候は実に穏やか...というのも不思議なものです。さてあと数週間で米国ではあの「マッドドッグ」トランプが大統領に就任、それ以降世界がどう変わるのかは、流石に時流を占う識者達も全く読めず、ましてや我らは何とも言い難く、ただ流れに身を任せるしかない訳ですが、トランプの閣僚名簿を見ると株屋と成り上がりの資本家、そして軍人とこれまでの米国政府とは全く異なった経歴の顔触れが揃っています。軍人は戦争を仕掛けること、成り上がり資本家や株屋達は自身が儲けること、マッドが宣う米国を強くするという言葉は、そのまま自分達の利益を増やすこととその為には手段を択ばないという宣言にも取れます。彼の大統領就任演説を聞かないと、今後の方針や根本の真意は汲み取れませんが、典型的な成り上がり金持ちの自己中心思想(=米国
中心主義)と彼は考えているようですから...。いずれにせよその行動、考え方など安倍首相の行動と共に、これからしっかりとウオッチしていかなければならないでしょう。大変な時代が来たものです。

 
まあそんな世界情勢はさておいて、この正月は天気も良く絶好の初もうで日和。早朝出発し恒例参拝の富士吉田市の浅間神社に向かったのですが、余りに中央高速道路が順調に進んだせいか、富士吉田市に向かう車線を通り過ぎてしまい、次のインター出口は遥か遠い甲州の勝沼。こうなるともう引き返す訳にもいかずそのまま勝沼で降りて一路進んでいくと、なんと幸運なことに浅間神社の分所とも言える甲斐一宮の浅間神社に出くわし、こちらで初詣を済ませることとしました。本宮に比べるとかなり小振りですが、人もさほどは多くなく心行くまで願い事が出来ました。怪我の功名と言うやつですかね。
 
初詣をすませれば次は今年の初温泉。一宮となれば眺めの良い露天風呂のほったらかし温泉となる訳ですが、ここは新年で天気も良し...と言うことで、少し遠いもののお風呂からの南アルプス連峰や八が岳の眺めも抜群な、市川大門そばのみたまの湯に行くことにしました。正月はさすがに日帰り湯も営業しているところは少なくお客で満員でしたが、南アルプスの北岳など眺望ばっちりで愉しい温泉気分に浸れました。
 
翌2日はTVでのスポーツ観戦で、箱根駅伝とラグビー大学選手権。駅伝は早大が健闘し往路2位に食い込んだのですが、ラグビーの方は正月越え出来ず不甲斐なかった早大ラグビー部。そのせいで余り試合観戦も楽しむことも出来ずにお開き。いささか寂しい思いでした。まあこんな正月ですがこれからが本番、今年もオールドボーイらしくせいぜい頑張るつもりですので、お手柔らかによろしく...。

 
ところで今年最初のジャズ番組のゲストは、大学時代からの仲間、J-ジャズベースのレジェンド「鈴木"チン"良雄」と、1学年下で森田一義=タモリと同期でNY在住のギタリスト増尾良秋の2名。学生時代からサダオさんに認められプロ入り早くから人気者となった彼ら。2人ともNYにわたり修行、増尾の方は美人の米国女性と結婚してそのまま現地住まい。美少年だった増尾ちゃんはジャニーズ並みの人気を誇ったものだが、その彼ももう70才、そのお祝いライブにはタモリも祝福したという。良き仲間を迎え今やベテランの彼らにいろいろと話を聞きます。

 
今週の推薦ナンバーは当然2人の共演曲ですが、年始と言うことでもう1曲是非オススメしたいのが、「ブギウギの女王」として戦争直後に一世を風靡した、笠置シヅ子の「ラッパと娘」。戦前の昭和13年ごろの録音で、作曲・作詞は日本ジャズの大立者、服部良一。どうしてこんな曲を選んだかと言うと、今月の末から月1回「ジャズは愉し...(仮題)」と言う教養講座を、とある区役所から頼まれ引き受けることにしたのですが、そのテーマがこれまで余り関心の持たれなかった「日本のジャズ」。ぼく自身もこの分野をそんなに知っている訳でもなく、鋭意勉強中なのですが、そこで驚かされたのがこの笠置シヅ子の「ラッパと娘」。ドライブ感、卓抜なフィーリング、力強い歌い口等など、まさに天才の名にぴったりで、本場の歌手にも充分に伍せるだけの実力の持ち主。それだけに戦後直ぐ「東京ブギウギ」などで大ヒットを記録したのも至極当然なのですが、その魅力は今のジャズファンを揺り動かすに違い有りません。彼女の音を見つけ出すのはいささか大変かも知れませんが、是非聞いてみて欲しいものです。ジャズソングに対する認識が一変するはずです。それと安倍政権のおかげで今や時代はまたどんどん戦前回帰に向かいつつあり、そうなればジャズやロックなども退廃音楽として敬遠される悪しき風潮も蔓延るかも知れないだけに、この笠置シヅ子の歌声はそうした風潮への強い歯止めとしても、意味あるものとも思うのですが...。
 
それにしてもこうした悪しき時代に抗い、皆さまもまた良いお年を...。  
【今週の番組ゲスト:ベーシストの"チンさん"こと鈴木良雄さんと、NY在住のギタリスト増尾好秋さん】
M1「Around The World In 80 Days
M2「Sailing&Rolling
M3「I'll Be With You
M4A Nightingale Sang In Berkley Square
 
12月31日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.12/30 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.338~16年も終焉】

 いよいよ2016年もどん詰まり。あと一晩眠れば新しい年となる訳だが、その2017年は、ここ数十年の内で最も予想の付かない激動の年になるのは間違いなく、そうなれば16年は後年そのプレリュ-ドイヤーだったと位置付けられるに違いない。その激動~暗雲の最大要因は、誰もが予想しなかった「マッド」トランプの米大統領就任。日本にとってほとんど良いこともない筈であろうに、アメリカがマッドへの期待感で株式が高値を付けると、日本の株式市場も活況を呈すると言う魔訶不可解な現象が起きており、これに伴い完全に破状したアベノミクスも、その責任を問われることもなく雲散霧消...と言う、首相にとってはウハウハな結果に終わってしまった。マッドが大統領就任後に何をやらかすかは、世界中がしっかりと監視していかないとならないが、ただ2点だけぼくも彼を買う処有りなのだ。
 
その一つは70才という高齢で有り余る資産を持ちながらも、大統領などという未知の分野の激職にチャレンジしようとして、それを実現させてしまった点(アメリカンドリームの悪しき例ながらも、日本の高齢社会ではある意味希望の星とも言えそうだ)。そしてもう一点は電話会談とは言え、台湾の女性英雄、蔡英文総統とコンタクトを持ったところ。中国からの強烈な反発は目に見えていたのだが、それを押し切った辺りは、マッド大統領の面目躍如と言った感じで、この2点だけは評価できるのだが...。

 
さて個人的には、ぼくのようなオールドボーイにとって周りの大事な人やペットが逝ってしまう、寂しい年でもあった。我らがジャズ番組「テイスト・オブ・ジャズ」の生みの親でもある、よき先輩のジャズプロデューサー木全信氏(朝・毎・読という3大紙にその死亡ニュースが掲載された)ががんのため死去、わが愛犬~バカ犬ことピーちゃんも15年生きた結果あっけなく死亡と...、寂しい出来事が続いたが、オールドボーイにとってそれは宿命で致し方無い所。来年はせいぜい頑張るしかない。

 
番組の方は年末恒例の16年のジャズアルバムから...ということで、毎月ジャズのお勉強講座をお願いしている評論家の青木和富氏にベスト盤4枚ほど選んでもらった。彼が選んだのは今最高に充実しているピアニスト、フレッド・ハーシュのNY「ビレッジバンガード」でのトリオライブなど、どれもぼくも納得の4枚だった。ただボーカルだけは以前にこのコラムでも紹介したノラ・ジョーンズ『デイ・ブレーク』ではなく、今年の大詰めに出された大御所、トニー・ベネットの90才(!)を祝うセレブレーションアルバム『ベネット 90才を歌う』にしたかった。スティービー・ワンダーなどアメリカ音楽界の大物達が祝福に訪れた正に夢の豪華ボーカル饗宴作品なのだから...。

 さてぼく自身も、数社から頼まれてベスト作を選出したが、そこでは国内編が渡辺香津美のデビュー45周年記念作『ギター・イズ・ビューティフル』。海外編としてはキューバの若手注目ピアニスト、アロルド・ロペス・ヌッサの新作『エル・ビアッヘ』(旅)としてみた。どちらもそのライブが今年のベストともいえる素晴らしいもので、香津美の方は彼の45周年を祝し、沖仁、井上銘、押尾コータローなど彼を慕う若手ギタリストが集結、彼とデュオを繰り広げるというギターの愉しさが満喫できるもの。一方アロルドの方はドラマーの実弟を伴ったピアノトリオ作で、キューバジャズ+アフロミュージックといった趣きの威勢の良いアルバム。東京ジャズでは彼らのステージが終了すると同時にCD売り場の作品が売り切れてしまったと言う程、観客に興奮を与えた若さ溢れる熱い音が詰まった秀作で、それぞれにライブの感激がそのままCDでも味わる、素晴らしい内容のアルバムとして、皆様にもお勧めしたい逸品だ。
 ところで2017年最初の放送は、今やJジャズの大御所となってしまった、大学時代からの友人2人をスタジオに迎える予定です。 お愉しみに...そして来年もまたよろしく...。
【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
M1CHEROKEE / PAT METHENY
M2RISING GRACE WOLFGANG MUTHSPIEL 
M3FLEURETTE AFRICANE(African Flower) / NORAH JONES
M4 A COCKEYED OPTIMIST / FRED HERSCH
M5BACK BONE /  THAD JONES - MEL LEWIS ORCHESTRA
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12月24日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.12/23 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.337~ジャズクリスマス】

 12月24日はクリスマスイブ。若い頃には色々と楽しみもあった日だが、オールドボーイになってしまった最近では、そんな楽しみも霧消してしまう。ただ今年は24日が土曜日で、我が「テイスト・オブ・ジャズ」の放送日。ここはひとつ何か仕掛けねば...ということで、ビング・クロスビーなど古今東西の鉄板ジャズクリスマスナンバー特集等々幾つか考えたが、なんと今年のクリスマスアルバムでアマゾンのジャズチャートでもトップに輝いているアルバムがあるではないか...。その主役は前々から一度番組に登場してもらいたい、と思っていたシンガーだと気付き、これはラッキーと言うことで早速クリスマスイブ放送分のゲストとして、スタジオに招くことにした。ウィリアムス浩子。今各方面で注目のシンガーである。

 
彼女はこの所「マイルーム」と言うシリーズ企画を発表、既にそのシリーズは4作を数えており、このクリスマスアルバムはスピンオフ企画と言うことになる。そのシリーズはどれもジャズチャートのトップを占め、録音の良さを決めるジャズ批評誌の録音賞でもトップに輝くなど、かなりな人気シリーズでもあり、彼女自身も知る人ぞ知る人気のディーバでもあるのだ。そんな彼女、大学を出てからは地元の静岡でOL生活、その後一念発起してロンドンに語学留学、そこでジャズボーカルに目覚め、帰国してからジャズスポットなどで歌うようになったと言う少し変わった経歴の持ち主で、歌はほとんど独学とのこと。
 
番組ではいつものテーマ曲を外し、彼女の歌う「ホワイトクリスマス」でスタート、「レット・イット・スノー」等のアルバム収録のクリスマスナンバーを掛けることにし、曲の間には彼女のクリスマス体験、ジャズ修行なども聞いている。彼女の歌は先ず癒しとも言える柔らかな歌声が何とも魅力的で、同時に発音の良さと言うか、その言葉が的確に聴き取れる辺りも素晴らしい。こうした歌の基本が出来ていない、自称ジャズシンガーが多すぎるだけに、その存在は光つているとも言える。

 
彼女のクリスマスアルバムなどその作品は、自身の会社「バークリー・スクエアー・ミュージック」から出されているが、この「バークリー・スクエアー」とはジャズボーカル好きならばよく知られているナンバー「ナイチンゲール・サング・イン・バークリー・スクエア」から取ったもので、これは実際にロンドンにある美しい公園。この曲を名花、アニタ・オデイが歌っているのを聴き、ジャズボーカリストになろうと決心したと言う、彼女にとっては忘れられない重要ナンバー。実際にその公園にもロンドン時代に訪れ感激したとのことだが、それだけに彼女はこの重要曲をこれまで数回吹込んでおり、「大手のレコード会社ならこんなこと出来なかったと思うんですが、それも自身で設立したレーベルならではの良さですね...。これからもまたこの曲吹き込むかもしれません。私の成長バロメーターの曲でもあるんです」と語ってくれているが、番組でもクリスマスナンバーの中にこの曲を紛れ込ませ、たっぷりとその魅力を味わってもらうという趣向も用意してある。

 
肝心の人気の高いクリスマスアルバムは全15曲。「マイ・ルーム」シリーズでの相棒、ギターの馬場孝喜の他にピアニストなどのゲストも参加しており、定番の「ホワイトクリスマス」で始まり、男性ジャズシンガーの大御所,メル・トーメの「クリスマスソング」で締めるという構成。「ア・チャイルド・イズ・ボーン」などのジャズナンバーから讃美歌まで実にスムーズな曲配列で、彼女のソフトな歌声がクリスマスの雰囲気を充分に高め、楽しませてくれる。あの服部克久氏も「ナイスパフォーマンス&ナイスアレンジメント」と絶賛しており、これからジャズクリスマスの定番アルバムになりそうな予感もしますね。
【今週の番組ゲスト:ヴォーカリストのウィリアムス浩子さん】
M1White Christmas

M2
Let It Snow, Let It Snow, Let It Snow
M3
Christmas Time Is Here
M4
A Nightingale Sang In Berkeley Square
M5
What Child Is This




12月17日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.12/16 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.336~山恋い】

 ぼくの自宅は武蔵野台地~国分寺崖線いわゆる「はけ」のすぐ近くにある。家から数分の神社はまさにその「はけ」の端っこ、それだけにいささか神社の樹木に邪魔されるとはいえ、西の方の展望は抜群。晴れた日にここの階段に立つと、関東平野周辺の山々が一望できる。霊峰富士を囲むように、南の端から大山そして丹沢連山、道志山塊、高尾山などの多摩の山々、その奥に大菩薩や奥多摩、更に秩父連山、そして武甲山で山の連なりは切れる。ぼくのちょっとした自慢はこの神社から見える山々のピークのほとんど全てを登っていること。ただ残念なことに未だ富士山だけはその頂上を極めていない。どうも夏のあの異常な賑わいに心折れてしまうのだ。まあ富士山は別格として、これらの千~千五百メートル内外の山々の中に大山、武甲山と言った目立った形状の山が最初と最位置するところも良く、大室山、大岳山、大菩薩等と言った形の良い山々が目立つ。その山の連なりを見ているだけで山行きの心が疼くのだが、ここ数年は体力の衰えも有り、年数回の山行しかしていない。

 
これでも大学時代は、ジャズ研と山の同好会の2つのサークルに所属、最盛期の夏などは合宿など様々に山行もしていたのだが、ラジオ局員になってからは余り山に行くことも無くなり、30~40歳代は殆んど山のことなど忘れていたのだが、40代後半にいささか面白くないこともあり、そのストレス発散にと...再び昔の仲間等と山に向かうようになった。ちょうどその頃、山の専門誌「山と渓谷社」が、中高年向けのトレッキング誌を出すと言う話があり、つてを頼りに山渓社に行き、当時常務だったS氏(編集長)に会いその「ビスターリ」と言う中高年向け雑誌とタイアップする山行番組を決めた。この番組は3年ほど続き、今は亡きコンタツおじさんこと人気山岳写真家の近藤辰郎さんをパーソナリティーに、月に一度は山に行かせてもらい、その山行企画は単行本にも掲載されたりもし、好い想い出になっている。その一泊山行の泊りはほとんどが温泉、その目的の山と温泉を探すのも一つの楽しみだった。50歳の頃はこの仕事の山行以外にも土、日は日帰りないし一泊山行を繰り返し、一か月で6回ほども、今考えれば信じられないこともしていた。それだけに関東近辺から山梨、長野、それと仲間の一人が東北支社長だったので、岩手山、岩木山、鳥海山などと言った東北の有名・無名の山々も数多く登ったものだった。山岳写真家を名誉会長にした、山の同好会も作り上げ、山行&温泉狂いの日々だったとも言えそうだ。

 
しかしこの数年はもうオールドボーイだけに余り高山に登る体力も無くなり、もっぱら温泉三昧。それではいけないと思い先日水止め作業で追分の山荘に行ったついでに、お山(浅間山)の外輪山、小浅間山に20年振りに登ってみた。高さは1300メートルほどだが、昔からの登山道である浅間山正面口(小浅間はその脇に立つ)は上る人がほとんどいない(火山活動のせいもあって閉鎖されているのかも...)。それだけに余り高さはないのだが火山灰に覆われた道はかなり難儀で、昔では考えられないほど時間がかかってしまったが、頂上からの展望は抜群。富士山から北&南アルプス、八が岳から北の菅平、谷川連峰等々、本州の主要な山々が一望、麓の軽井沢の街並みも綺麗で、久々に心軽くなる想いだった。やはり月に一度ぐらいは山行もしないと...と新たに決意を固めた次第だった。

 
と言ったところで今週の1枚はヒーリング系サックス奏者の代表格、ポール・ウインターの『キャニオン』。ポール・ウインターグループは、ホワイトハウスで最初に演奏したジャズバンドと言うことでも知られており、自身のバンド名が「アースバンド」と言うことからも、他のミュージシャンとは違い彼の自然志向がお分かりになる筈。野生動物の鳴き声などを織り込んだ『野生の祈り』などと言ったアルバムも出しているこのアルバムは、ユニット仲間やスタッフと共に、キャニオン=コロラドのグレートキャニオン(大峡谷)を実際に筏を組んで下り、そこで録音をすると言った雄大かつかなり無茶な企画アルバムで、川の流れや鳥の声などもバックに流れていると言った異色作。グラミー賞の候補作品にもなっているもので究極の自然派ヒーリング作品とも言えるものだけに、皆様も一寸変わったジャズアルバムとして、お聴きになってみたらどうだろうか...。

【今週の番組ゲスト:SALSA SWINGOZAのリーダー大儀見元さん】
M1Timbalero
M2Night and day」
M3Bilongo -Remix」
M4Unaflor


12月10日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.12/09 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.335~ミラー星からの使者】

 このコラムでもしばしば記してきたが、我らがジャズ番組「テイスト・オブ・ジャズ」は、その歴史既に55年強。日本の民放ラジオの中で最長・最強?の(いや世界中の中でも最長のジャズ番組かも知れない)ジャズ番組と密かに自負しており、J-ジャズのプレーヤー&シンガーでは、サダオさん(渡辺貞夫/特番はあり)とひろみ(上原ひろみ)を除く殆んどの人が一度は顔を出してくれているはず、と言うのが売りの一つになっている。それらのゲストは皆この地球人。それが今回初めて他の惑星、正確にはミラー星からゲストを迎えることになった。

 実力派の若手サックス奏者でもある彼女の名前はユッコ・ミラー。日本名も持っておりそちらは大西由希子。「ユッコは元々日本名で活動していたんだけども、ある時ミラー星の人から貴方をミラー星の広報担当に任命すると言われ、今の名前にしたの...」とあっけらかんとその芸名の由来を披露する。どうやらミラー星とはあのユウコりん(小倉優子)のコリン星に似たような惑星らしい。
 まだ20代初めとも思える彼女、出身は三重県伊勢市。高校時代に吹奏楽部でサックスを始め魅了され、プロになることを決意。最近の若手はジャズでプロになろうと思えば、国立音大や洗足学園のジャズ科などジャズジャンルを持つ音大に進むか、ダイレクトにアメリカのバークレー音大やジュリアード音大のジャズコースへ進むものだが、彼女は独学でサックスを学び、師匠は公称チックコリアバンドで知られるエリック・マリエンサル。それも彼のプレーを気に入った彼女が様々な障害を乗り越え直談判で弟子入り、彼が日本に来た時に教えてもらうといった一風変わった師弟関係。このエピソードからも分かるように、彼女はさすがミラー星人だけに抜群の行動力の持ち主。女流フュージョンサックスの第一人者、キャンディー・ダルファーにもその実力を認められているが、なんと彼女のサイン会に自身の楽器を持って駆け付け、彼女にサインをしてもらった時、

持参したサックスを吹いてみるように言われ、その演奏で実力を買われ、なんとブルーノート東京で共演も果たしてしまったとも言う。その上ミラー星広報として活躍しなければ...と言うことで、あのTVの力自慢番組「サスケ」にも出場、競技は全く駄目だったが終わってからサックスを吹きまくったと言う向こう見ず。もうこうなるとそのバイタリティーに乾杯と言った感じすらある。

 そんな彼女だが実力の割には、なかなかアルバムデビューがかなわず、所属プロダクションでは色々な策を考え、その一つが色々な人から資金を募め(クラウドファンティング方式)アルバムを作ろうと言うもの。そしてその広報相手先に選んだのがラジオNIKKEIだった。そこで社長から「小西さん、今面白い女の子がジャズアルバムを作りたいと言って来てるので協力してくださいよ...」と頼まれ、さてどうしようかと思っていたのだが、結局急きょキングレコードからデビューリリースが決定、計画はとん挫してしまったのだが、その主人公がこのユッコ・ミラーちゃんだったと言う訳。

 それからはTVのワイドショーなどにもしばしば登場、その存在が知られるようになり実力も評価され、サックス教則本を出版するなど順風満帆。今や若手テナー奏者の代表格の一人とまで言われるようになっている。アジア各国や欧州などにも演奏旅行を敢行、よりグローバルな舞台でも活動を広げようと図っている。

 その彼女のデビュー作はそのものズバリの『ユッコ・ミラー』。サックスを抱え小悪魔風でいささか能天気なポートレイトが、アイドル好きには堪らないのだろうが...、中身はそれに反し実にしっかりしたもの。2曲のオリジナルを含め全10曲。ジミー・ヘンドリックの「リトル・ウイング」やブレッカー・ブラザースの「スポンジ」等のおなじみのナンバーのカバーなどで構成。本家NYに単身渡っての録音でプロデュース役は売れっ子ベーシストのロニー・プラキシコ。ギターにマーヴィン・スエル、ドラムにダレル・グリーンなどNYの一流ミュージシャンが参加、このジャズシンデレラのデビューを祝しており、それに応えて彼女も初のNY修行にも関わらず、少しも臆することなく彼らと堂々と対峙し、実力を十二分に発揮している。

 番組収録でも実にのびのびと思ったままを語り、聞く者を愉しませてくれる。天性のエンターテイナーの資格を備えた、異色アイドルサックス少女とも言えそうだ。彼女は先輩のシンガー五十嵐はるみがリーダーとなった女性だけのユニット「ジャズ・レディー・プロジェクト」の一員でもあり、そちらのアルバムも来年初めにリリースされると言う。天衣無縫さとしっかりしたテクニックや歌心で、ジャズファン以外の若い聞き手のハートも掴みつつある彼女、これからの活躍がますます目が離せないですね。
【今週の番組ゲスト:サックスプレイヤーのユッコ・ミラーさん】
M1Pick Up the Pieces
M2Miller Crew
M3Lagrimas
M4Uptown Funk

12月3日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.12/02 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.334~ボーカルデュオ】

 このジャズ(音楽)不況下の日本にあって、幾らかでも元気がありそうに見えるのがボーカルの世界。アルバムもそれなりに出されており、新人も入れ替わりに登場したりもしている。ただこれも名刺代わりにアルバムを出す新人女性ボーカルに限ったことで、男性ボーカルでは新しい人などはとんと見られず、ましてやジャズボーカルユニットなどまず存在し得ない。

 
そんな中にあって一人気を吐いているのがギラ・ジルカと矢幅歩の実力派コンビ。彼らがデュオチームを結成して早10年、その成果を今回初めて一枚のアルバムとして結実させた。そのデュオチームの名称は「SOLO-DUO(ソロ-デュオ)」。名前だけ見るといかにも安易に思えるが、日頃は一人ひとりでソロ活動、気が向いたときにこのチームで活動すると言った無理のないスタンス。それだけに10年間もチームとして維持できたのだろうが、その10年分の中身が詰まった初アルバム『Morning Light』は、この二人のセンスの素晴しさが良く出たソフィスティケイトされた都会的でお洒落な佳品で、ジャズファン以外にもかなりアピール出来る心地良いもの。

 
ところでこうしたボーカルデュオチームは本場でも数少なく、ジャズの世界でレギュラーチームとして有名なのは「ジャッキー&ロイ」の夫婦デュオ位なもの。御大トニー・ベネットが何人かの大物ゲスト達とデュオを行ったアルバムで話題を呼んだ(レディー・ガガとのデュオは大評判だった)のは記憶に新しいところだが、ソウルの世界では「ダイアナ・ロス&マービン・ゲイ」とか「ロバータ・フラック&ダニー・ハサウエイ」などと言った大物シンガー同士がデュオを組み、アルバムを発表、かなり売れたりもしたがこれはあくまで例外的なもの。そういう意味からもこのギラ&矢幅チームは世界的にも貴重なものだし何よりその中身が素晴しい。と言うことでお二人にスタジオに遊びに来てもらうことにした。

 
ギラは今まで何回かゲスト登場してもらっているのだが、矢幅くんの方は初めての登場。元々彼は親がジャズ関係の仕事をしており、それもあり自身もこの世界に入ったのだと言う。ただジャズだけに固執すると言ったこともないようだ。2人の出会いは鎌倉にある有名なジャズスポットの「ダフネ」。そこでのギグでお互いの実力を認め合った2人は、時々それぞれのライブにゲスト出演、それがデュオチームへと発展していった。この初アルバムでは、これまで2人で唄ってきたものの中から13曲ほどを選び、レコーディングしたと言うが、2人のオリジナル「Tomorrow」や「ユキノヒトヒラ」なども数曲収められており、その他にカーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」、ブラスロック立役者、BS&Tの「スピニングホイール」など2人の好きなポップスヒット曲、そしてユーミンや井上陽水など日本の有名ナンバーなど、2人ならではの小洒落たボーカルハーモニーで美しく歌い上げられ、実に心地良い気持ちにさせてくれる。この時期だけにクリスマスソングも1曲収められており、番組ではそれをクロージングナンバーにしたが、実にぴったりな雰囲気でスタジオはクリスマス色に染まった。

 個人でもそれぞれに好アルバムを発表している2人が、いつまでこのデュオチームを継続させ続けるのか...、その行く末は分からないがこんな素晴しいデュオボーカル、世界でも皆無だけにいつまでも頑張って欲しいと願うのは、果たしてぼくだけなのだろうか...。2人のポートレイト写真も洒脱なアルバム『Morning Light』。是非皆さんにもお勧めしたい珠玉の1枚です。
【今週の番組ゲスト:SOLO-DUOのギラ・ジルカさんと矢幅歩さん】
 
M1LOVE
M2
「ユキノヒトヒラ」
M3
Baby, It's Cold Outside
M4
The Christmas Song



11月26日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.11/25 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.333~ノラ・ジョーンズ】

  ノラ・ジョーンズの新作『デイ・ブレイクス』が大ヒット中である。日本でも当然そうだがむしろ台湾・韓国などと言ったアジア各国での人気に火が付いたようで、iTunesアルバムチャートのトップに輝いているのは、全世界でなんと38ヵ国だとも聞く。CDも売れており、このCD不況時代には考えられないような凄いことで、この新作を携えて来年春には来日公演も予定されているとも言う(日本公演の後にはアジア各国巡演するのだろう...)。
 この新作はグラミー賞8部門獲得という快挙を成し遂げ、世界中に衝撃を与えたあのデビュー作『カム・アウエイ・ウイズ・ミー』(邦題「ノラ・ジョーンズ」2002年)~特にそのメイン曲「ドント・ノー・ホワイ」は21世紀を代表する名曲にもなっている~から15年、久々にピアノの弾き語りを披露、ジャズ歌手としての本領を発揮したアルバムとしてアメリカでは彼女の最高傑作などと評する音楽関係誌(紙)も少なく無いようだ。確かにこのアルバムにはウエイン・ショーターをはじめブライアン・ブレイド、ジョン・パティトゥッチなどと言った有名ジャズメンがバックに参加、何より驚かされるのはジャズ&ソウルオルガンのレジェンド、ドクター・ロニー・スミスまでもが顔を連ねていること。それだけにアルバムの帯にも「彼女がまたジャズに帰ってくる」などと言ったフレーズも記されているが、その歌声は決してジャズ然したものではなく、懐かしくも新しいノラ・ジョーンズの姿がそこにはあって、やはり彼女は彼女なのだという単純な事実を再確認させてくれる。

 
彼女の父親はデビュー時には謎だったが、それがあのビートルズにも大きな影響を与えたインド音楽の巨匠~シタールの世界的名手、ラビ・シャンカールだと判明した時には、かなりな話題を呼んだものだったが、幼少期に両親は離婚、母親の故郷テキサス州ダラスで育った彼女は、母親の好きだったジャズとともに、アメリカ音楽の一つの中心とも言えるカントリー&ウエスタン(あのトランプを押し上げた音楽でもある)も聴き、この2つの相反する(?)音楽をバックに育ったとも言われる。
 
ジャズとカントリー、この2つの音楽をバックに自身の音楽を形成していった彼女、デビュー作でがぜん大注目を集めた訳だが、ジャズテイストのシンガーソングライターと言う意識はあっても、自身では決してジャズ歌手だとも思っていなかったはず。ただ世間の評価はジャズのど偉い新星登場といったもので、それだけにそうしたレッテル付けにいささか嫌気がさしたか、以降はその志向の一つでもあるカントリー&ウエスタン(Ⅽ&W)やフォーキーなテイストのアルバムを発表し続けていたのだが、ジャズボーカルの世界ではやはり別格的な扱い。ジャズボーカルのニューウエイブ旗手としてジャズボーカルの世界を、彼女を軸にノラ以前と以降などと言った分類をする識者も少なく無かった。確かに彼女のジャージーポップとも呼べそうなテイストをコアにしたポップソング~シンガーソング系フォーキーソングは、新しい息吹を感じさせるものでメロディー・ガルドーなど多くのフォロワーも誕生、ジャズボーカルの新たな地平を切り開いたのは間違いない事実でもある。それだけに今回ウエインやブライアンなどのジャズメンを起用(2人とコンサートで共演、やはりこういう音楽(ジャズ)をもっとやりたいと感じたという)、更に自身のオリジナル以外にデューク・エリントンの「アフリカの花」やファンキージャズの大御所ホレス・シルバーの「ピース」と言ったジャズナンバーも取り上げているなど、久々にジャズに本腰を...と言う姿勢は、最近元気のないジャズシーンにとっては大ニュースだったはずで、それなりにいい感じのジャズ色はある。しかし実際は様々なアメリカンミュージックを混在化させた素敵なアルバムとして聴いた方がいいだろう。
 
この新作に収められている彼女のオリジナルナンバーは、どれも心和む心地良いもの揃いだが、ベストはシングルカットされているキャッチーな「トラジェティ(悲哀)」で、タイトル曲の「デイブレイクス(夜明け)」も印象的。アルバム全体で彼女の新たな旅立ちを意味しているのかもしれない。また彼女の名前を不朽のものにした名曲「ドント・ノウ・ホワイ」もボーナストラックとして16年のライブバージョンが収められているのも嬉しい所ですね。

【今週の番組ゲスト:「ジャズのお勉強」音楽評論家の青木和富さん】

M1BITCHES BREW / MILES DAVIS

M2MILKY WAY / WEATHER REPORT

M3BOOGIE WOOGIE WALTZ /  WEATHER REPORT

M4LA FIESTA / CHICK COREA

M5CHAMELEON / HERBIE HANCOCK
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11月19日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.11/18 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.332~米国で大変な事態が】

 米国と言う世界をリードし続けてきた超大国。この国では本当に訳が分からないことが起こる。先の大統領選挙などはその好例で、まさかの大逆転であの「悪役」トランプが大統領になってしまった。選挙スタート時は単なる泡沫候補に過ぎなかった彼が、一握りのエスタブリッシュメント層が支配するアメリカ政治からの脱却を強烈に訴え、彼らを口汚くこき下ろす小気味良さも大うけで、政治の世界に於けるアメリカンドリーム=シンデレラ現象を、あれよあれよと言う間に実現してしまった。

 
実際の選挙戦では、かなり強烈な共和党びいきとも言われるFBI長官のクリントンメール問題再調査のニュースが、選挙の流れを一変させたことは間違いないだろうが、米国の多くの白人層、中にはクリントン支持が多いとされる知的階級層の中にも、多くの隠れトランプ支持者がいたのは間違いない。彼らは表立ってはトランプ支持を語れなかったが、投票所では躊躇なくトランプに一票を投じたことは、ある意味想像に難くない。日本人の殆どはヒラリー・クリントンが、史上始めての女性大統領として登場すると思っていたはずだし、まさかトランプが...などと思っていた人は皆無だったはずである。そしてそれは世界中の誰もがそう思っていただろうし、そう願っていたはずだが、事態は大きく動いてしまい、来年以降の世界情勢は本当に混沌として分からないものになって来た。世界を暗雲が覆うと言った図式だが、奇妙なことに米国の株式市場がトランプ登場を好感し値を上げると、翌日の日本市場も、極端な保護主義者であるトランプが登場すれば日本経済への好影響など皆無だと分かっていながらも、闇雲に値を上げ今年一番の上げ幅を記録と言った、馬鹿げたとも言えそうな現象さえ起きている。

 
一方トランプはある意味成功した実業家だけに、大統領に就任したならば強烈なネゴシエーターにこそなれ、かなり現実的な政策を...などと期待する向きもあるし、彼の勝利宣言やその後の各国首脳との電話会談などを見ると、そんな風に思えないこともないが、今回力を得たアメリカ保守層は決してやわではない。彼が選挙中に約束したメキシコとの国境に壁を...、日本には防衛費の増大を...などと言ったバカげた公約は、実現不可能と分かっていてもそれを押し進めなければならないだろう。となるとこれまでの友好国などとの摩擦は必定で、世界情勢地図も大きく書き換えられるに違いない。まあ来年からの世界情勢は予断を許さないし、一瞬たりとも目が離せない。ただぼくの嫌いなあの安倍ちゃんも、この事態にすぐに動き、彼と会談を行うというのはヒットだった。強烈なネゴシエーターの彼とどこまで話せるのかはわからないが、その行動は大切なものである。

 さてこの所の米国大統領達は概ねジャズ好きのようで、現在のオバマ氏も毎年夏に発表するプレイリスト(夏の休暇中にどんな音楽を聴いたのかリスト)にマイルスやニーナ・シモンの名前が上がっており、奥さんも同様に彼もジャズに愛着があることを裏物語っている。しかし「大統領とジャズ」と言って忘れられないのは、南部出身のジミー・カーター。彼は在任中ホワイトハウスの中庭でジャズコンサートを開催、その場にレジェンドともいえる有名ジャズメンなども招待したが、その中にあの怒れる巨人チャールス・ミンガス(ベーシスト&作曲家&バンドリーダー)の姿もあった。体を壊して車いす生活のミンガスに、カーター大統領が労りの言葉を贈ると、感激して涙に暮れている彼の姿がTVニュースで取り上げられ、多くのジャズファンに少なからぬショックを与えたものだった。あの米国の白人社会に強烈なノーを突き付け続けたジャズ闘士のミンガス。その彼が体を壊していたとは言え、感涙に浸る、全く考えられない出来事だったが、今彼に近い年齢になってみると少しはあの涙も理解できそうな気もしてくる(これは決して好い事ではないが...)。

 果たして次期大統領のトランプが、ジャズ好きかはどうかはしかとはしないがNYを本拠地にしている敏腕ビジネスマンだけに「BN」などの有名ジャズクラブをその社交の場にしていたことは間違いないだろう。果たしてホワイトハウスでジャズパーティーが開かれるのか...ここら辺はジャズファンとして少しは気になるところでもある。
 と言った所で今日の1枚は、あのシンガーソングライターの大御所、ジョニー・ミッチェルがミンガスに捧げたアルバム『ミンガス』(79年/W・B)を推薦したい。ジャコ・パストリアル、ウエイン・ショーター等々、多くの素晴らしいジャズミュージシャンが参加したこのアルバムは、ジャズ、ロックなどのジャンルを超えた、不朽のアメリカンミュージックの傑作。一家に一枚の必須アルバムだとぼくは感じています。
今週の番組ゲスト:INPARTMAINTの西野孝さん】
M1Free Your Dreams feat. Snarky Puppy  / Chantae Cann
M2
  Shake Loose / DONNY McCASLIN
M3
Twin / Christian Scott
M4
oakland feat. Lalah Hathaway /  Terrace Martin


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