12月15日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.12/14 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.440~大野えり】

 早稲田大ラグビー部の100周年パーティーに招待されかなり舞い上がってしまい、本来ならば先週に入れなければならないコラム原稿、今週分になってしまい申し訳ないです。
 
先週当番組に登場したのは写真付きで紹介されているシンガーの大野えり。今やJ-ジャズボーカルの世界で間違いなくトップに君臨する存在。人気という点ではイマイチな所もあるが、歌手としての実力は間違いなく抜群。
 
名古屋で有名な旅館の娘である彼女は、同志社大学のジャズ研出身。大学を出て直ぐにデビューアルバムを発表、当時フュージョン全盛時代だったので、その色合いの強いアルバムをメインに7枚ほど発表、若手の実力派として高い人気を誇っていたが、それに甘んじることなくもっと力量をつけねばと言うことで研鑚を積み、90年代にはアルバムを出すことがほとんど無かった。その彼女が久々にリーダー作を世に問うたのは06年、NYで有名ミュージシャンと共演したもので、そこにはこれまでの彼女とは別人とも言える、存在感に溢れた個性豊かな歌い手としての彼女がいた。以降の彼女はまさにJ-ボーカルを象徴する様な個性的な歌唱で、聴くものを魅了し続けている。最近の多くの日本の女性ボーカリスト達と全く異なり、ただ単に歌の形をなぞるのでは無く、唄の芯・肝を抉り出すような素晴らしい歌い手で、最近の彼女のあるアルバムでぼくはその凛とした佇まいを「巫女」と表現した覚えがあるが、まさに最高の唄者としての歌がそこにはあった。

 その彼女が歌手生活40年を記念して、久々にライブアルバムを出すと言う。そのライブコンサートが新宿の「ピット・イン」で行われ、彼女から是非聴きに来て欲しいと連絡も受けたのだが、その夜は仕事の関係でNG、そこでライブアルバムが出たらスタジオに来て欲しいと彼女との約束を交わした。

 その記念ライブアルバムがこの11月初めに完成、発表されかなりな評判を集めているとのこと。そこですぐに彼女と連絡を取り、スタジオに遊びに来てもらうことにした。アルバムタイトルは『ライブ・アット・ピット・イン』、サブタイトルが「ロータス・ブロッサム」デューク・エリントンの片腕だったビリー・ストレーホーンの銘曲であり、それに自身で詞を付けた自信作。ライブアルバムと同時にライブDVDも同時発売されており、こちらは若干収録曲も異なっているが、殆どはエリントン関連ナンバーで、「唄者」大野えりの真価が聴かれるJ-ボーカルきっての傑作とぼくは思う。石田衛、米木康志、原大力と言ったレギュラートリオにサックスの川島哲郎、トランペットの類家心平と言った最高のゲスト陣も加わり、この上ない布陣で彼女のボーカルを盛り上げる。

 彼女は今の充実した心境をアンコールの「フィーリン・グッド」の歌詞に託し「イッツ・ア・ニュー・ドーン イッツ・ア・ニュー・デイ イッツ・ア・ニューライフ エンド・アイム・フィーリン・グッド」とし、わたしは再びやっとスタート・ラインに立てた、と語っているが、真の唄者の誕生を率直に喜びたいと思う。その心境などはいま再放送で聴けます。是非大野えりの生の声を聴いてみてください。

【今週の番組ゲスト:シンガーソングライターの酒井尚子さん、ギタリストの三好"三吉"功郎さん】
酒井さんのデビューアルバム「The Light」から
M1Unseal
M2The Light
M3「エイト」
M4Wrong

12月8日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.12/07 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.439~周年記念パーティー】

 11月後半の3連休前後に2つの周年記念パーティーに招かれ出席した。一つはジャズ関連で我らがジャズの拠り所、新宿の老舗ジャズスポット「J」の40周年記念パーティー。そしてもう一つはこれも我らが...になるのだが、早稲田ラグビー部100周年記念パーティーである。実はこの2つの周年パーティーの直前、もう一つ重要なパーティーにも招かれており、こちらは山と渓谷社の雑誌「山と渓谷」1000号記念パーティー。これも周年記念の大切なパーティーだったのだが、当方の記載ミスで開催日を一日間違え、気が付けば終了してしまっていたと言うトホホな顛末。大切な山関連の知り合い(クライマー、写真家、編集者など)に会うことも出来ず、大変に残念な思いをしてしまった。

 そんなドジ話はさておいて、「J」周年は今月30日に1時間のジャズ特番としてオンエアー=「テイスト・オブ・ジャズ・スペシャル~新宿「J」物語」とする予定で、これにはタモリや鈴木「チン」良雄、赤塚不二夫さんの娘で、現在赤塚プロの社長をしているりえ子さんなど、多くの方達の応援メッセージも挟み込んだジャズ特番になる予定。周年パーティーは、早稲田大脇のリーガロイヤルホテル大会場で、300人を超える出席者。驚いたことには席も決まっている着席パーティーで何か結婚式にでも参加している感じ。会場で特番関連のインタビューを...などと考えていたのだが、およそそんなことは出来ない雰囲気。パーティーの司会は同じ早稲田出身の露木茂アナ。ヴィデオでは何と山下さん(洋輔)も登場、ジャズ研の現役や早稲田ハイソサイエティ―オーケストラなども演奏を披露、会を盛り上げたが、ハイライトはやはりタモリと誠一ちゃんの掛け合いブルース演奏&歌唱。この2人の巧みな面白ブルース掛け合い芸を見ていると、あの半世紀ほど前の幻の「ジャックと豆の木」や名物ミーコママの「ホワイト」等での、2人のお遊び掛け合い芸(これに坂田明藻加わる)が思い出され、あの良きハチャメチャ時代が本当に懐かしく感じられた。それにしてもマスターのバードマン幸田(稔)くん、彼はぼくのクラブ仲間ですが、一流会社員を無計画に止めてしまい脱サラでジャズスポットのマスターとして40年間よく頑張りました。余り力にもなれませんでしたが、貴方の努力にはいつも感服させられていました。昔はジャズ生中継などもさせてもらい色々お世話にもなりましたが、そのお返しとして1時間のジャズ特番を作らせて頂きます。と言うことで「J」と幸田君については、皆様12月30日の年末ジャズ特番を期待してください。


 そしてもう一つのパーティー、早稲田ラグビー部100周年記念パーティの方は、後楽園にあるドームホテルの大宴会場。こちらはなんと1300人を超す大々的パーティーで、ラグビー番組に関係していることと国立の稲門会にラグビー部の元監督K氏がいることもあって、まさかの予想外に招待されたのだが、これは率直に嬉しかった。ラグビー番組担当のH嬢を伴って会場に行ったが、現役部員だけで150名近く、100周年だけにOBだけでも2000名を超す大所帯。ドホテルの会場「天空」は招待客で溢れかえっていたが、番組パーソナリティーの藤島大氏にも会うことが出来(会場では彼の早稲田ラグビー部小説本販売コーナーもあった)、その他にも何人かのラグビー関連の知り合いにも挨拶が出来、担当のH嬢も大満足。伝統ライバル校の慶応大、明治大、東大などのOB会会長も顔をそろえ、また早稲田ラグビー部100年の歴史をまとめたフィルムの上映なども行われ、豪華な料理にも舌鼓を打つなど、嬉しくも愉しい思い一杯の至福の3時間弱。お終いは現役部員たちの中をレッドカーペットよろしく帰路に就くと言った粋な計らい。ぼくも現役の顔見知り部員に早明戦勝利への声掛けなどもして会はお開き。実に素適なパーティーだった。お土産がラグビー部の記念ネクタイと言うのも最高。パーティーお終いの現役部員による部歌「北風」の斉唱では思わず涙してしまったほど。早稲田のラグビーは永遠...と謳われる部歌、実に良きものですね。

 「J」そして早稲田ラグビー、ぼくがこよなく愛するこの2つの周年パーティーに顔を出せたこと、この上ない歓びでもありました。長生きはするものです...。

【今週の番組ゲスト:ジャズシンガーの大野えりさん】
『ライブ・アット・ピットイン Vol.1 / ロータス・ブロッサム』から
M1「Jelly Fish Blues」
M2「Confirmation」
M3「Lotus Blossom」
M4「The Best Is Yet To Come」

















12月1日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.11/30 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.438~ドキュメント映画「ピアソラ」】

 皆さんは「MPB」と言う言葉ご存じだろうか...。「ムジカ・ポピュレイラ・ブラジレイラ」と言うポルトガル語の略語で、このコラムで取り上げるのだからどうやら音楽に関する用語だとはお分かりだろうが、その通りでブラジルのポピュラー音楽全般を意味する言葉。唄の国ブラジルを象徴するアントニオ・カルロス・ジョビンからイバン・リンス、カエターノ・ベローゾなど、多くのブラジリアンシンガー&ミュージシャンがこの言葉には含まれている。そんなMPBはジャズを含む世界中のポピュラー音楽に大きな影響を与えている訳だが、ぼく自身にとってMPBとは、自身の音楽観の根幹をなす重要な3人の音楽家達を指しており、本来のこの言葉の意味合いとは大きく異なっている。
 
 
そのぼくのMPBとは、まずMはマイルス・デイビス。モダンジャズの歴史を体現化した余りにも有名な巨星。そしてPはモダンタンゴの創始者にして革命児とも言われた鬼才アストル・ピアソラ。そして最後のB、これは言うまでも無く楽聖J・S・バッハのこと。この3人こそぼくの音楽原点を形作った存在とも言えるし、実際に彼らに関したアルバム(CD&アナログ盤)だけで優に150枚を越した数を所持していると思うのだが、それだけ重要な音楽家達なのである。その中のPことタンゴ界の偉才、作曲家にして世界最高のバンドネオン奏者でもあるピアソラに関するドキュメンタリーフィルムが公開されると音楽関係者から教えられ、早速配給会社などを調べ、その試写会に出かけることにした。
 ドキュメントフィルムの邦タイトルは「ピアソラ~永遠のリベルタンゴ」、12月初頭から渋谷の「ル・シネマ」等で公開予定とのことで、彼の銘曲「リベル・タンゴ」をサブタイトルに織り込む辺りは、日本人受けするように...と言った配給会社の配慮が見え隠れするが、原題は「ザ・イヤー・オブ・シャーク=鮫の日々」と言ういささか物騒なもの。これは彼が鮫釣り(!)が大好きだったこと(映画にも鮫釣り場面が出て来る)、また時に世の偏見に対し鮫のように獰猛になる彼の性格を象徴しているものとも思われる。

 
昨年2017年は彼の没後25周年。それを記念して大々的な回顧展なども故郷のアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催されたようだが、同時にその25周年を記念して息子のダニエルが、監督に彼のドキュメンタリーフィルムの制作を依頼、そこでダニエルの父親アストル・ピアソラへの回想を中心に描かれたのがこのフィルムと言う訳。監督はピアソラの後継者とも目されるバンドネオン奏者ディノ・サルシのドキュメントフィルムも作っており、それを見た息子が彼に委嘱したようだ。「情熱と哀愁の音の魔術師、ピアソラの素顔とは...」と映画の惹句にあるが、これは息子のダニエルの目を通したピアソラ像。彼はダニエルの母親とは離婚しその後出会う女性歌手や2番目の奥方との関係も大変に重要なのだが、そこら辺がスルーされている辺りいささか残念ではあるが、昔の8ミリフィルムなども挿入されかなり多角的にこの鬼才の全貌が伺え興味深いものだった。なにより実際の彼の演奏フィルムがかなり沢山挿入されている辺りも嬉しい限り。フィギュアスケートのバックミュージックなどでも数多く使われ、かなりポピュラーになった「リベルタンゴ」を始め、父親の死を悼んだ「アディオスノニーノ」、彼の名前を一躍有名にした「ロコへのバラード」など、代表曲の数々が画面に登場、それだけでもファンとしては堪えられない。彼は伝統的タンゴの破壊者として見られ、アルゼンチン本国では不当に低い評価に甘んじなければならなかったが、世界的チェリストのロストロポーヴィッチやヨー・ヨー・マ、またジャズバリトン奏者のジェリー・マリガンなど、多くの有名音楽家達が積極的に彼を擁護、彼とアルバムを作る(マリガンとの共演作でぼくは彼の存在を知った)などして、その功績を高く評価したため、本国でも評価は一変したと言う曰く付きの革新的音楽家。映画の中でも息子のダニエルが、強烈に印象に残っている父親の言葉として「過去を振り返るな、昨日成したことはゴミだ..」を上げているが、言葉は少し違うがまさにマイルス・デイビスも同じ内容の言葉を語っている。天才の天才たる所以でもあるし、音楽上の革命者はまさにそうでそうなければならないのである。

 
かれはその晩年~80年台の末に数回程来日を果たしているが、幸いなことにぼくはその内の2回ほどを聴きに行っている。まさに感涙ものの素晴らしいコンサートで、間違いなくぼくのライブ体験のベスト5に入るものだったが、漢(男)としても実に魅力的な人だった。改めてピアソラの偉大さを確認するには、この映画は格好のドキュメンタリー映画だと思うし、この偉才の業績を再度多くの人が見つめ直して欲しいものでもある。

【今週の番組ゲスト:ラテンピアニストの仲田美穂さん】
4年ぶりのリーダーアルバム『Vontade』から4
M1Melancia
M2Amar a Maria
M3Take Five
M4Capllichosos De La Havana



















11月24日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.11/23 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.437~2人のミュージシャンの死】

 本来今回のコラムは、来月公開予定の音楽ドキュメンタリー映画「ピアソラ」について載せる筈だった。だがその記事を書き終わった時に知人から連絡があり、今日(11月14日)ピアニストの佐山雅弘が亡くなったと言う。いつか来るとは思っていたが、新作『ブリッジ』を今年の2月に吹き込み、そのアルバムも夏に発売になったばかり、また久しぶりにスタジオに遊びに来てもらいたい...、などと考えていた矢先だけに吃驚した。前日にはサックスの片山広明が亡くなったばかり。2日連続で知り合いのジャズメンが亡くなってしまった訳で、これは彼らの追悼を...と言うことで、急遽原稿を書き直すことにして、『ピアソラ』は次週に廻すことにした。

 
佐山は享年64才、片山の方は67才。2人と知り合ってからもう30年を優に超すが、片山とはほんの知り合いと言った付き合い。あの西荻窪の産んだ天才&鬼才ピアニスト、アケタこと明田川荘之を通しての付き合いで、西荻の飲み屋で3人で一度飲んだぐらいなもので、番組に来てもらうと言う約束になってはいたが、残念なことに結局実現せずに終わってしまった。一方佐山の方は、新譜が出れば顔を出してもらうと言った具合で、3~4年に1回はスタジオに遊びに来てくれたのだと思う。最後に顔を出してくれたのは、2年ほど前に発表した、ベースの藤原清登との好デュオによる前作を携えてのことだった。この時は癌の手術後で久しぶりに酒も飲めそうだ...と言うことで、収録後は山本嬢と同行していたキングレコードのMディレクターも交え、虎ノ門の升本に向かいかなり痛飲した覚えがある。その時には冗談で「山本嬢のヌード写真集でも出せばベストセラーになるな―」などと言う話になり、大阪尼崎出身の佐山氏も軽いノリで冗談めかし、「その時にはぼくも音楽で是非参加させてもらうよ...」等と悪酔いしていたが、今考えれば本当に楽しいひと時だった。 

 今回山本嬢から彼の最後のメッセージと言うものを見せてもらったが、「この手紙をお届けする時には、もうぼくはこの世におりません...」と綴られた、涙無しには読めない感涙もののメッセージ。関西人らしく何時も飄々と軽やか、洒脱でもあった才人佐山氏らしさがよく出た秀逸なもの。佐山も片山も大の酒好きだったが、佐山氏の方は最後はもう一滴も飲めない状態、一方片山氏の方は酒が遠因で死を迎えた...とも言われる。才人と野人、人間としても対照的だったし、その志向した音楽もいい意味で対照的だった。佐山氏の方は川崎ミューザと言う大ホールの音楽監督や、川崎市にある2つの音楽大学ジャズ科でも主任として才を揮っていた。一方片山は生涯一プレーヤーとして、ライブ現場にこだわっていたように思う。それも酔っ払いの達人サックス奏者として...。佐山氏の死は新聞などでもかなり大きく報道されたが、一昔前のジャズ人を体現化した様な片山氏の方は、そんなことは無かった。だがヤフーなどではいろいろと記事も出て、その隠れた人気の高さにいささか吃驚だったが、それもそのはずで彼はあの忌野清志郎~RCサクセション、そして一部で熱狂的ファンを有する渋さ知らずのメンバーでもあったのだ。ヤフーの追悼欄では」「あの酔っ払いのサックスおじさん、本当に格好良かったし、凄かったね...」と言った若い人達の追悼・賛辞の声が多く見受けられた。ぼくが彼の一番好きなナンバーは、大分以前に解散してしまったツインサックスチーム「デガショー」のデビュー作に収められていた「サンライト・ツイスト」、イタリアのヒットポップスのジャズバージョンだが、J-ジャズ至高の1曲でもある。

 「マサちゃんズ」はじめ様々な人気ユニットで大活躍、川崎市の音楽監督やバッハのインベンション・アルバムまで吹き込んだ、多彩な才人にして趣味人、佐山雅弘の逝去ニュースには、多くの有名人・文化人、音楽関係者などが追悼の言葉を捧げており、ぼくも早速彼の家族宛てに追悼電報を送ったが、葬儀は家族葬で行い後日偲ぶ会を開くと言う。その偲ぶ会には是非出席しないと...。 再度佐山、片山、両氏の霊に黙祷!

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富先生】
今週はジャズトーク
M1「Pegasus / Wayne Shorter」
M2「New Year / Joshua Redman」
M3「星めぐりの歌 / 福盛進也」
M4「Where The River Goes  / Wolfgang Muthspiel」
M5「Hats Off To Rebay  / Joey Calderazzo」
image1.jpeg
11月17日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.11/16 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.436~地獄の台湾取材旅行】

  今月23日放送の1時間の台湾特番「21世紀の台湾と日本」はなんと開始以来17年目を迎えており、局の若いディレクターに寅さんシリーズ並みですね...などと、慰労とも揶揄とも取れる微妙な言葉をかけられる有様。まあこれも何かのご縁と割り切って仕事を続けているのだが、制作者のチャンジー度(爺さん度)が増すにつれ、予算が無いせいで取材は過酷度を極めており、今回の台中花博メインの取材旅行はなんと格安航空(LCC)を使用した1泊3日の行程と言う、70才を過ぎた高齢プロデューサーには地獄とも言えそうな、なんとも体に堪える過酷そのものの取材旅行だった。友人などはどうしてそんな...などと忠告してくれるが、まあこれも成り行きで致し方なし。
 LCCでのフライトは早朝の5時過ぎ。息子の車で送ってもらい途中スタッフもピックアップし、羽田空港に3時過ぎに到着。前回もこの便だったのでまあこれは我慢できるが、帰りもぎりぎりまで取材して帰国便と言うことで、台北桃園空港を夜の12時過ぎ出発で羽田到着は早朝3時半過ぎ。無人の空港に寂しく到着と言う笑えない現実。行きは日本の観光客が大部分だったが、帰りは台湾系列のLCC便だけに台湾の若者ばかり。まあ行きも帰りもおそらく最年長がこのわたし目だった筈だが、さすがに帰りはぐったり。帰国後2日ほどは疲れで何も手に着かない状態で、我ながら体力の衰えを実感させられた。

 さて肝心の台中國際花博取材だが、これがまた今までにないほど厳しいもの。習近平になってからの中国の台湾包囲網の進展によって、国際的には友好国が極端に減少しつつある台湾においてこうした国際的イベントは大きな意味を持つもの。それだけに取材も重要な意味を持ち心して臨んでいるが、花博全体が単一の会場では無く3会場に分散(正確には4会場)、それを全部廻り切るだけで一苦労。本来は2日間ぐらいかけてゆっくり取材すべきなのだが、予算の関係でそんな悠長なことは言っておられず、朝から晩まで駆けずり回って取材を敢行、終わればスタッフ全員がっくり状態。取材で歩いた歩数はなんと2万歩超えで、歩数計を見て我ながら驚いてしまった。それも無理からぬことで一つの会場がかなり広く、さらに3会場は東京でいえば、新宿がメイン会場とすると、もう一つは吉祥寺そしてもう一つが自由が丘と言った感じで、全場を回るだけでも一苦労。それもほとんどが台中郊外で、それぞれは無人のシャトルバス(これが売り物の一つ)が結ぶと言うことになっているのだが、どのバスも満員でとても乗っている暇などは無く、結局はタクシーをチャーターしての会場巡り、当初予算も軽くオーバーしてまたまた私目の持ち出し。こんな苦労をして何を...などとブツブツ文句をたれながらも取材を敢行、どうにか番組としての体裁は整えたつもりだが...。

 
それにしてもこうした国際的なイベントに対する台湾の人達の関心は、中国の嫌がらせを乗り越えなければならないだけにことさら高いものがあり、11月初めに台中市で開かれたオープニングセレモニーには5万人を超す人が参加。林台中市長や蔡総統なども出席、熱気ほとばしる大々的な盛り上がりだったと言われる。その模様は特番の中でも一部紹介しているが、ただこの花博、一般にイメージされている様な花で溢れたと言うよりも、自然との調和や環境保護、台湾農業の未来像などと言った幾つかのテーマが確定しており、それに沿ったテーマ館やゾーン設定で、花一杯の会場を参加者が軽やかに散策すると言った従来の花博イメージとはいささか異なったもの、それだけに全貌を紹介するには中々に大変なのだが...。
 
花に関して言えばそれはもっぱらあの華麗な蘭。台中市は世界有数の蘭の生産地&出荷地で、日本にも多くの蘭がこの都市から届けられているのだが、日本人は余りその実態を知らない。メイン会場の蘭パビリオンは正に世界の蘭オンパレードの様相で、スタッフ全員が余り蘭に関心も無いだけに、残念ながらその価値も余り分からなかったが、日本の著名園芸家などは感激し切りで、その栽培技術の高さを褒めちぎっていた。

 11月23日、休日の昼間にオンエアーの台湾特番。この台中花博紹介がメインになりますが、その他にあの福原愛ちゃん(旦那は台湾の卓球選手で、2人は台湾在住)や今話題の直木賞作家、東山彰良氏(台湾生まれ)なども登場、台湾の素晴らしさや魅力、台中花博の見所などを紹介してくれています。他局には無いこの歴史ある台日友好特番、ご期待に添える内容と...密かに自負しています。是非ご期待下さい。

【今週の番組ゲスト:ピアニストの八木隆幸さん】
10枚目のリーダーアルバム「New Departure」から4曲
M1Kyoto Tower
M2Music On The Second Floor
M3View From Newark
M4Beyond The New Horizons

11月10日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.11/09 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.435~ラグビーウィーク】

 まず初めに今月のジャズニュースは、11月2日(金)、山下洋輔NYトリオの結成30周年コンサートが上野の東京文化会館小ホールであり、それを聴きに行ったこと。このNYトリオ結成30年とは全く凄いことで、コンサートタイトルも「30光年の浮遊」。最年長のベーシスト、セシル・マクビーは今年なんと83才のはずで、次が山下氏で70後半(チラシにも彼の生年月日が出ていない)、一番若いフェローン・アクラフでも、既に60代半ば、全員合わせて200才は優に超えると言うウルトラチャンジー(爺さん)トリオだが、その意気込みは仲々のもの。セシルだけは自身のフューチャーナンバー以外は御年だけにいささかよれ気味だったが、山下&フェローンの迫力は満点。特にフェローンのドラムは凄みを増した感じで、彼が一人でこのトリオを引っ張っている感もあった。曲は30周年記念アルバムからのナンバーが殆ど
で「ドバラダ2018」とか「ブルー・キャッツ」と言った山下オリジナルは、ある意味どれも同じに聞こえる所もあるのだが、それはそれでまた楽しい所。
 客席も最も若い所で50才台と言う感じで、これもまた現代の縮図の様相だが、そのファンが山下の肘打ちプレーなどに狂喜乱舞するのだから、いささか見苦しい所はあるが、確かにハイライトとして仲々にスリリングではある。興味深かったのは唱歌の「早春賦」(中田章)を取り上げたことで、山下さんらしくなくかなりストレートにメロディーを歌い上げ、いささか拍子抜けの反面、そのシンプルで美しいピアノ技に魅せられたのも事実だった。大いなるマンネリの面はあるが、それなりに愉しめた30周年記念でした。周りはジャズ関係者ばかりでいささか型苦しくはあったが、旧交を温めるのにはいい機会でもありました。


 しかしこうしたジャズイベント以上に10月最終週から11月初週は、紛れもなくラグビーウイーク。ここでラグビー関連を書かなくて何になる...と言うことで、ジャパンがニュージーランドのオールブラックスと対戦したり、オールブラックスとワラビーズ(オーストラリア代表)が国同士の覇権を掛けて横浜で戦ったり、それ以上に我が早稲田ラグビー部が創部100年の記念年に、憎き帝京大と戦う...など好試合話題の試合が目白押し。山下トリオの翌日からは2連戦で、我がジャパンと早稲田大の試合を観戦、どちらも良く似た経過でひいきチームは惨殺されてしまい、言葉も無しの状態。ジャパンの方は相手が1軍半と言う若いメンバー、それだけにかなりいい試合が出来ると...踏んでたが、これが全く甘い観測。キャップ(公式戦に出場)数は殆どない若いメンバーでも、流石にオールブラックス。がたいも凄ければスピードも抜群、更に基本に忠実と...、伊達に黒衣軍に選出されたのではない実力を万余のラグビーファンに見せつけてくれました。流石本場のニュージーランド軍です。参りました。

 そして翌日の我が早稲田軍。前日のジャパンの試合を見ていて何か悪い予感がしたのですが、まさにその通りの結果でこちらも惨殺されてしまいました。夏の菅平の練習試合では完勝、目の前の好結果に思わず涙してしまいまっただけに、今回こそは本試合でと期待大で秩父宮に向かったのですが、そこは帝京大。ここ一番と言う時には圧倒的な力を発揮します。肝心のFW(フォワード)が菅平の時とは別人の働きをする帝京大に対し、殆ど為す術もない感じで、試合前半で24対0と一方的な展開。もうここで完全に試合は決定、興味も尽きてしまいました。後半俊足バックス陣の活躍で4トライは取りましたが、それはあくまでも付けたりで、やはり惨敗の印象は免れません。こうなるともう何も手が付けられない喪失状態。いつもだと試合後の記者会見にも出席、質問の一つもぶちかます所ですがそんな気は少しも起こらない呆然状態。あとはひたすらラグビー大学選手権で準決勝迄勝ち残る(正月越えを果たす)ことだけを願うばかり。全く寂しい秋の夕暮れです。こうなるとジャズどころではありません!

【今週の番組ゲスト:ジャズベーシストの吉木稔さん】
デビューアルバムの『ONE+(プラス)』と
The Beatlesの曲を演奏するユニット「RHIZOME」でリリースした『PLAYS THE BEATLES』から4曲ご紹介しました。

M1「Norwegian Wood / RHIZOME」
M2「Bésame mucho / 吉木稔」
M3「I Am the Walrus / RHIZOME」
M4「Across the Universe /  RHIZOME」





11月3日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.11/02 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.434~ブラジルからのギタリスト】

 先日東京駅そばのジャズクラブ「コットンクラブ」に行ってきた。ブラジル出身の知る人ぞ知る名ギタリスト、ホメロ・ルバンボの来日公演があると聞き、これは聞き逃せないと思って駆け付けた次第。ホメロは現在はNY在住のはずで、ブラジルからのギタリストとはならないのだが、ダイアナ・クラールを始め多くの一流シンガーが、ボサノバなどのブラジル関連ナンバーを歌おうと思った時に、まず最初に思いつくのが彼の名前で、実際多くのシンガーとステージやアルバムなどでも共演、引く手数多のギタリストである。来日公演も数多い筈なのだが、残念ながらこれまで一度もそのステージに接したことが無い。時々ディスクユニオン等で中古アルバムを探る時に、ホメロの名前がクレジットされていると自ずと手が伸びてしまうと言う、外れアルバムの無い人でもある。 
 
 
ところでこのコラムをお読みになって頂いている方はお分かりと思うが、ぼくはまず第一義的にラテンジャズ愛好者なのだが、同じ楽園系中南米音楽として、ブラジルものもかなりな愛好家。その第一人者が来日とあるので、これは行かねばと思うのも必定。時々ラテン音楽とひとくくりにされてしまう関係からか、キューバやNYサルサ等のラテン系音楽とブラジリアンミュージックを、同じ一つのものに考えている向きも結構いるのだが、これは大間違い。中南米系にはこの他タンゴやレゲエも、それぞれアルゼンチンとジャマイカの音楽と言うことで混同されるのだが、これらとラテン&ブラジルものが違うのは分かっていても、ラテンとブラジルを同じジャンルと考えてしまう向きも決して少なくない様だ。しかしこの2つの音楽はまず言語そして根本のリズムなど全くの別物なのである。

 
そんな話はさて置いて、肝心のホメロなのだが、今回の来日ステージはピアノの俊才ピーター・マーチンとのデュオ共演。セントルイス出身のマーチンの方は、ジャズの登竜門「モンク・コンペティション」で準優勝した実力の持ち主で、ジョシア・レッドマンのバンドに加わったり、多くのシンガーの伴奏を務めるなど多方面で活躍しており、7年ほど前にはホワイトハウスに招かれ、あのオバマ大統領に自身の演奏を披露したと言う経歴の持ち主。この真の実力者同士のデュオだけに、内容はもう保証済みといった感じもあるのだが、如何せん2人とも地味過ぎる感も強い。それだけに観客の数がいささか心配と...「コットンクラブ」に出かけてみたら、案の定心配通りに客席はかなり空きが目立ったが、2人を愛するコアなファンも多い様だ。

 
ステージはブラジリアンミュージックの佳品を皮切りに、ピーターの生地、セントルイス出身の偉人、チャーリー・パーカーのバップ・チューン、ファンク・ナンバー、それに2人のオリジナルなど、実に守備範囲の広いレパートリーで、味わい豊かな滋味深い演奏が繰り広げられ愉しめた。特にホメロがエレキギターでファンクを演奏するのには少なからず驚かされたが、やはり何でもこなせる達人なのである。ピーターの方は確かニューオーリーンズでも活動していた筈で、日本デビュー作は「ニューオリーズーンズの新星登場」等と言う謳い文句だったと記憶しているが、「ニューオリーンズ―ハバナ」と言う彼のオリジナルは、この2都市即ちジャズとラテンジャズの融合に加え、更にホメロのブラジル要素も加わり、見事な中南米トライアングルミュージックが現出されていた。
 もう少し客席が埋まっていれば...などと余計な心配までしてしまったが、心に沁みる本当に良いコンサートでした。同行の女性はホメロのギターにいたく感激、彼の最新アルバム『サンパ』を買い求め、サインまでしてもらうことになり、更に感激の面持ち。いずれにせよ実に心地良い一晩でした。

【今週の番組ゲスト:四谷ジャズ喫茶イーグルの店主・後藤雅洋さんと、小学館「隔週刊CDつきマガジン」シリーズの編集長 小林慎一郎さん】

番組をお聴きの皆様の中から抽選で5名の方に、102日発売の「JAZZ絶対名曲コレクション」創刊号をプレゼントいたします。ご希望の方は、本ホームページ右側のお問い合わせフォームからご応募下さい! (お問い合わせ内容に「プレゼント希望」とお書きください)締め切りは1130日です。


シリーズ第4弾の「JAZZ 絶対名曲コレクション」の創刊号「JAZZ絶対名曲VERY BEST of BEST」第2号「ビートルズ ジャズ」から
M1Close to You / Ella Fitzgerald
M2My Favorite Things / Kenny Burrell
M3Come Together / akiko
M4Yesterday / Sarah Vaughan



10月27日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.10/26 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.433~失った貴重盤が...】

 以前にもこのコラムで触れたと思うのだが、今ぼくは自宅と追分の山荘を合わせるとおよそ8000枚強のアルバム(CD+アナログ盤)を抱え込んでいる筈で、その4分の1ほどが追分で残りは自宅と言った配分。まあこれは少しも自慢できる話などでは無く、今時そんな無駄なものを...と言われそうだし、整理整頓が苦手でずぼらなだけにCDは積読(聴き)状態、部屋にCDが山積で家人からはいつでも捨てるからね...などと脅され続けている始末。実際のところ整理が良くないために、放送音源や書き物資料など音源資料が必要な時に限って見つからず、その都度CDショップに出かけ買い求めるなどと言う...、実に馬鹿げたことをしょっちゅうやっているのだ。それだけに自分の本当にお気に入りの50数枚は、別箱に保管する様にしているのだが、これも知り合いが訪ねて来た時などに軽い気持ちでその中から持ち出してしまい、そうすると殆ど手元に戻ってこない状態のアルバムも少なくない。
 そんな中の大事な1枚が、ソプラノサックスの創始者とも言えるシドニー・べシェの『ホエン・ソプラノ・ミーツ・ア・ピアノ』というアルバムで、べシェが1957年にパリで吹き込んだもの。タイトルのとおりフランスを代表するジャズピアニスト、マーシャル・ソラールと共演したもので、フランスの代表的レーベル「ヴォーグ」に収録されており、ぼくが持っていたのはその貴重なオリジナル盤。

 
これを手に入れたのは確か大学最後の年のはずで、知り合いの家でこのアルバムを聴かされ、当時はジョン・コルトレーンのソプラノサックスになじんでいたぼくとしては、時代を超越したその凄じいビブラートプレーに度肝を抜かれた思いがあり、知り合いに頼み込んで安く譲って貰った大事な1枚だった。しかし自慢げにこのアルバムを誰かに聴かせたのが運の尽き...、その誰かに貸し出しそのまま行方が分からなくなってしまったと言うトホホな事態。「ディスク・ユニオン」等の中古ショップに行く際は、結構べシェのこのアルバムを探してみるし、もしCD化されているならば...と探してみても当然見つからず、ぼくにとっての貴重な幻の1枚になってしまっていた。

 
それが全くひょんなことからこのアルバムのCDを見つけることが出来たのだ。ソプラノサックを吹くある新人のアルバム・ライナーノーツを頼まれべシェのことを調べていたら、なんとこのアルバムが今年の夏前に、モダンからクラシックジャズまでを網羅した20枚のIC(インナー・シティ)レーベル、「ジャズ・クラシック・シリーズ」の1枚として、日本でもひっそりと発売されていたのだった。これに気付くや欣喜雀躍状態で、一直線にCDショップに駆け込み珍しくも直ぐに正価で手に入れたのだった。家に持ち帰りアルバムジャケットを眺めると、ぼくの記憶とは大分異なりべシェとソラールの2人の顔を写した味気ないもの。まあこれも仕方ないだろうとアルバムをトレーに乗せてみると...。

 
といった所でべシェには関心ない...、というよりも彼の存在を知らないこのコラムの読者も多いはずなので、彼について簡単に紹介してみよう。ジャズの世界で初めてソプラノサックスを導入した巨匠であるのは当然で、ジャズ界ではあの天才サッチモ=ルイ・アームストロングと並ぶ、偉大なイノベーターにしてインプロバイザーとして高く評価される偉大な存在なのである。2人は同じジャズ都市、ニューオリーンズの出身で、年令はべシェの方が3才ほど年上。それがサッチモの方はジャズファン以外の誰でも知るようなビッグな存在なのに対し、べシェの方はジャズファンですら知らない...といった具合で、今では大きな差が付いてしまっている。これは全く残念なことなのだが、べシェもある時は日本でもかなりポピュラーな存在だったこともあるのだ。と言うのもJ-ポップスの元祖とも言われ、60年代には大人気を誇ったあの2人組デュオ姉妹、「ザ・ピーナツ」(なんだそれ...などと言われてしまうかも知れないが...)が唄って大ヒットした「小さな花~プティット・フルール」これの作曲者がシドニー・べシェで、この歌は世界的に大ヒットし一時はサッチモをも凌駕するほどだったのだ。彼は元々クラリネット奏者だったのだが、1920年代に欧州に楽団旅行に行った折ソプラノサックスと出会い、痛く気に入った彼はこれを主楽器にして大活躍。欧州好きでもあった彼は1950年にパリに移住、同地で「小さな花」の大ヒットをはじめ欧州中のジャズプレーヤーから敬愛を集め、その生涯を閉じることになった。享年62才。

 そんなジャズの歴史とともに歩いて来た巨匠でもある彼が、パリで、フランスのモダンジャズプレーヤーと共演したのがこのアルバム。そのモダンさに驚かされる1枚でもあるのだが、長いこと聴いていなかったのでぼくの勘違いも多く、てっきりこれはべシェとソラールとのデュオアルバムと思い込んでいたのだが、れっきとした彼とソラールトリオとの共演作。収録曲のうち丁度半分がソラール(p)ピエール・ミシュロ(b)、ケニー・クラーク(ds)といった、超一流のモダンジャズメンとの共演で、やはりかなりなモダンさ。しかし思っていたほどには迫力が無く、こんなものか...といささか気抜けしたのも事実。内容は素晴らしいのだがぼくの長年の想い入れが凄いだけに、いささか評価が下がってしまったのは当方の勝手な所。今はすぐに手に入る秀作アルバムなので、シドニー・べシェと言う大巨匠の豪快な技、是非堪能して欲しいものです。
 

【今週の番組ゲスト:ジャズ・トーク 音楽評論家の青木和富先生】
「ジャズオーケストラの歴史」についてお話し頂きました。
M1「The Mooche  /  Duke Ellington」
M2「Sing Sing Sing / Benny Goodman」
M3「The Champ / Dizzy Gillespie」
M4「Rat Race / Count Basie」
M5「Gonna Fly Now (Theme from Rocky) / Maynard Ferguson」
image1.jpeg
 
10月20日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2018.10/19 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.432~タモリのことなど】

  久々にタモリこと森田一義君と愉しく話を交わした。彼とは年に1~2度、業界関連のパーティや葬式などの場で顔を合わせる位で、その時で軽く挨拶はするが話をすることも殆ど無い。それが先日久し振りに彼にインタビューをする羽目になり、その後にも少しばかり話をしたのだった。そのインタビューは早稲田大時代のジャズ研OB会の開始前に行ったもの。場所は新橋にある有名ジャズクラブ「ベルズ・グリル&ジャズ(旧コットンクラブ)」の地下にある出演者控室。インタビューはこの暮れに放送される予定の1時間のジャズ特番「テイスト・オブ・ジャズ・スペシャル~新宿J物語」関連のもの。今年40周年を迎える我らが老舗ジャズクラブ「J」の周年記念の特番で、ぼくの同期(因みにタモリは1学年下)でもあるマスターの幸田「バードマン」稔くんと「J」について、お店に関係ある各界の有名人のインタビューや幸田君関連のジャズ音源などを挟み込み、幸田君のモノローグをメインにまとめてみる予定の1時間ジャズ特番である。そうなると店の宣伝部長(?)でもあるタモリは、必然的に登場してもらわないと番組は成立しない。ただ彼に番組出演依頼をするのは数年振り。と言うことでいつもはほとんど顔を出さないOB会にも開始前から顔を出し、会長などにも嫌味を言われつつこちらも久々のタモリインタビューでいささか緊張気味。

 
これは余り知られていない事実だし、当のタモちゃん自身ももう忘れているかも知れないのだが、彼の放送初登場は我がラジオNIKKEI(当時はラジオたんぱ)の番組。当時人気・実力共にトップを誇っていたピアニスト、数年前に亡くなってしまった中村紘子さんのインタビュー役としての登場だった。あの頃ラジオたんぱはどういう訳かクラシックコンサートを毎年正月に実施、その中心人物が中村紘子さん。その彼女をヨイショするための番組だったが、先輩ディレクターから局アナウンサーではなく誰かいいインタビューアーは...と頼まれ、直ぐに思いついたのが、一部でその特異芸(5か国麻雀等々)が評判になりつつあり、かみさんと共に上京したての幻芸人こと森田一義君の存在だった。
 大学時代の彼は「泣きのトランぺッター」として知られていた(5人ほどいる同期トランペッターの実力最下位だったので、この名称が付いたとも言われる)が、子供の頃からピアノを習っていて結構な腕前とも聞いていたので、持ち前の図々しさで何となくこなしてしまうのでは...ということで推薦したのだが、これが全くのハズレ。当時の女王ピアニストの前では、借りてきた猫的存在で全く駄目。先輩からはどうしてあんなのを...と叱責されるし、タモリ自身からも「すいませんでした、なにも出来なくて...」と謝られる次第。まあこれも無理からぬところで、福岡(当時は大分ゴルフ支配人の筈だが...)から上京したばかりで、新宿の「ジャックと豆の木」と言う裏酒場で山下洋輔一派などに持て囃されても、大ピアニストの前では一お上りさん同然で完全に上がってしまうのも無理からぬ所。
 この数週間ほど後に、同輩の岡崎正道ディレクター担当の「オールナイトニッポン」にゲスト登場、ここでのアドリブ満載のしゃべりと闇芸で一躍人気沸騰、お笑いビッグ3に迄上り詰めることになるのである。「オールナイトニッポン」と言えば、タモリと同期の人気絶頂ギタリスト、増尾好秋くんがNYから戻ってきてタモリの番組にゲスト登場した時、夜中に突然telして寝起きを襲うという人気企画があり、これに同業者だから何をしても...という理由だけで駆り出されたのがかく言う小生。TELがあるという話だけで一向に着信が無く、うとうとしていると約束の30分ほど後にtelがなり、寝ぼけ声を作り相手がタモリと増尾だとは分からないふりをして、2人におちょくられるというトホホな役割を演じたこともあった。今となっては結構良き想い出ではあるのだが...。


 まあそんな話はさておき、この中村紘子のインタビューが縁となり、その後一躍有名人になったタモリに、松下電器提供の(世界の放送局を聴くという)当時の大ブーム=BCL番組のメインをお願い、これは7年ほど継続し大好評の番組だった。また正月特番としては3年連続で、赤塚不二夫、山下洋輔、研ナオコ、ツービート(北野武先生)など豪華共演陣が登場する、3時間になんなんとする阿鼻叫喚の狂い咲き面白番組を制作したりもしたものだった。
 
 
そんな結構関係の深いタモリ先生だが、その後は余り番組での付き合いも無くなってしまって久々の声掛け。TELでインタビューを頼むと「申し訳ないですが、それは事務所の方を通して...」と軽くいなされてしまう。ということでダメ元で怖い存在の田辺エージェンシーの担当のマネージャーにtelすると幸運なことに以前仕事をしたことのある人で、直ぐに便宜を図ってくれ今回のインタビューが成立したという次第。タモリのマネージャーと言えば一番親しかったのが、ドンの昭知社長からも信頼厚く最後は常務にもなった筈の故M君。4代目のジャーマネだった彼は大分前に心臓の病気で仕事中に突然死してしまったのだが、年下の彼はなぜか色々と良くしてくれて(田辺に入った時からの知り合い)制作費の無い局事情も良く知っており「小西さんからの頼みならば...」と持ち上げてくれる。それに甘えて色々と無理も頼んだものだが、それももう大分いにしえの話である。
 件のOB会では主役格のタモリは、久々にかくし芸を披露。でたらめ「イパネマの娘」は流石タモリと言う鬼気迫る圧巻の出来栄え。タケちゃんもさんまもそして当然今の売れ筋芸人の誰もが出来ない珠玉にして圧巻の芸。バックはこれも鬼才ピアニストの清水くるみ。前衛ピアノとタモリのでたらめながらも迫力充分なボサノバ・スキャット。いやー久々に愉しませて頂きました。会場はやんやの喝采で、ジャズには肥えた耳の皆さんもしばし唖然とする、芸人タモリの真骨頂披露の瞬間でした。このタモリの面白経験談が聴けるジャズ特番「新宿J物語」期待してください。放送日時は決定次第このコラムでお知らせします。

【今週の番組ゲスト:NY在住のボーカリストでコンポーザーの須田宏美さん】
4thアルバム「GIFT」、3rdアルバム「Nagi」
M1「GIFT」
M2「Hajimari」
M3「Nagi」
M4「Both Sides Now」