5月26日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022.05/26 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.628~21世紀のECM~】

 我等がジャズ番組「テイスト・オブ・ジャズ」、このコラムでも良く書いている通り、もう58年と言う恐らく世界でも屈指の長い歴史を誇る番組で、ぼく自身が担当してもう50年弱とほぼ半世紀も経過しているのだ。まあよく続いているものだし、昨年初め辺りからラジコの聴取者ランキングでも上位を続けると言う...、予想外の好調さでもある。

 ところでこの番組をぼくが担当するようになったのとほぼ同時期、まあ実際は少し前ではあるが、その時に誕生し現在もなお世界で最も個性的な素晴らしいレーベルとして、ジャズ関係者などから高い評価を受けているのが、ドイツのミュンヘンを拠点にしている「ECM」である。このECMが誕生したのは1969年のこと。クラシックのコントラバス奏者でフリージャズも演奏していたと言うマンフレッド・アイヒャ―が、その独特な美意識に基づく抒情&耽美なジャズサウンドを求めて起こしたジャズレーベルなのである。記念すべき第1作は、日本でも絶大な人気を誇っていたピアニスト、故マル・ウオルドロンの『フリー・アット・ラスト』。このアルバムは確か日本ビクターから出されており、初代の木全信プロデューサーのアシスタントをやっていた時に、番組でも取り上げた覚えがあるので、我がジャズ番組とアイヒャーのECMは、切っても切れない縁が有るように思えてならない。そしてそのすぐ後にぼくが正式にジャズ番組の担当プロデューサーとなり、半世紀に渡る関りがスタートすることになる。先方はそんなことはこれっぽっちも意識していないだろうが...。

 誕生後このECMは、アイヒャーと言う強烈な個性の持ち主に導かれ、順調な道を歩みミュージシャン達からの信頼も厚く、一躍欧州を代表するジャズレーベルへと成長してゆく。特にこのレーベルは、ジャズ界を代表するピアニスト、キース・ジャレットとの専属契約によって発展を遂げ、彼のソロアルバムやスタンダードトリオなどの諸作が大ヒットしたことにより、世界の中でもその個性が際立つレーベルとしてジャズ界を代表するものとして、多くの関係者からも強く認識されることにもなる。キースの諸作の大ヒットはアイヒャーの自信を深め、元々クラシック奏者だった彼は、ジャズだけでなくクラシック関連のアルバムも発表するようになり(「ニュー・シリーズ」)、ギドン・クレーメルやアンドリュー・シフと言った大家の作品も手掛け、クラシックレーベルとしてもその存在感を見せつけることになる。

 今や押しも押されもせぬジャズ&クラシックの世界的レーベルになったECMだが、21世紀に入りジャズの世界でも新たな才能の発掘を加速させ、様々な資質を世に送り出している。サックスのクリス・ポッターとマーク・ターナーと言う、現代のシーンのメインに位置する白人・黒人の代表的奏者の作品がそのなかでも最も印象深いが、その他にも今注目のイスラエルジャズのプレーヤー、シャイ・マエストロ(P)、アビシャイ・コーエン(tp)等々、又東欧のアルメニア出身のティグラン・ハマシアン(p)、ぼくの大好きな国キューバ出身の気鋭ピアニスト、ダビ・ビレージャスなど、様々な国の若手にも目を向けており、その細やかな目配りは流石と言った感じだ。
 このECMについてはぼくも関係しているジャズブログ「ジャズ・トウキョウ」を主宰する稲岡邦也氏(以前にこのレーベルの担当責任者でもあった)が最も詳しく、関連のジャズ本も何冊か出しているだけに、このECMの新たな動きについて、番組でも彼に色々と解説してもらおうと思っている。数カ月前に音楽誌「ステレオ」がこのレーベル特集号を組んだところ、音楽誌では珍しくすぐに完売してしまったとも聞く。それだけに人気の高いECM特集、そのレーベルの歴史と主に歩んできたと言う、細やかな自負を持つ我がジャズ番組でも、かなりなジャズ愛好聴取者を獲得出来ればとも今考えているのですが...。

【今週の番組ゲスト:ジャズボーカリストの西村知恵さん フレットレスベーシストの織原良次さん】
お2人のユニット「VIRTUAL SILENCE」の新譜『VIRTUAL SILENCE』から
M1 「矛盾の街 (Vain Pursuit) 」
M2「Beyond The Flames 」
M3「人間が住んでる (The Past Decade) 」
M4「汚れた群青 (Grief Runs Deep) 」



5月19日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022.05/19 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.627~追分通信22春その2~】

 GWに入る2日ほど前から信濃追分の山荘に来たのだが、今回は腰痛療養がメインで温泉通いの毎日。来た当初は人も見かけず静かな毎日。久方振りに御影用水脇の「オーバルジュ・グルマン」に立ち寄り、娘さんが作る軽井沢地域で随一とも言えそうなガレットでのランチを愉しみ、マスターの平井さんともしばし歓談。今は店の改造も無く(お店と隣接住居は彼のセルフビルド。外資系広告代理店の社長までやった彼は、セルフビルドの達人でカーペンター平井とぼくは呼んでいる...)、もっぱらお山(浅間山)やその近辺の山登りに励んでいるとのこと。余り悩みも無い様子で、腰痛に悩まされ続けるぼくなどにとって、全く羨ましい限りのご身分である。

 さてGW前は連日肌寒く、朝などは5度以下と言った真冬並みの寒さ、その為に人出も少ないのか...と思っていたが、GW初日、4月29日のみどりの日以降は流石にどの別荘・山荘にも車を見掛け、次々に人が訪れるようになり、ようやくGWの追分春景色と言った感じになって来た。このGWに合わせてか新築の別荘なども次々に完成、新しい住人を迎えている。現在軽井沢地域はもう土地や住宅が満杯状態で売り物がほとんど無い状況。お隣の御代田町は土地価格が3割がた安いせいもあり、どんどんと流入人口が増え長野県でも最高の人口増加率だと言う。確かにかつては湿地や荒れ地だった所が綺麗に整地されている...と思うと、直ぐに住居の建設が始まり次々と新しい建物が誕生、そのどれもが新建築などと言った建築雑誌のモデルになりそうなモダンで華やかな外見のものばかりで驚かされてしまうことが多い。この前も御影用水のウオーキングの途中、道を少し変えて歩いてみると、集落の端で寂しく荒れた林に千曲バスの廃車が長い間打ち捨てられていたり、余り人の立ち寄らない寂しい一帯も一面に林が切り開かれ、モダンでかなり大きめな別荘が4件並んで立っていた。それぞれがその威容を競う感じの洒落た土地になっており、これにもビックリさせられたものだった。世間では余り景気も良くない...とも聞いていたのに、この豪勢さはどうしたものか...と少しばかり考えさせられてしまう。在る所には有るものなのだろう。

 ところでぼくの知り合いにも、軽井沢と御代田に移住(Iターンと言うのか...)してきたのが、ここ1年ほどで3人もいる。一人は局の後輩だった女性で、1年前に子供の小学校入学に合わせ軽井沢の中ほどに一家で移り住み、もう一人はジャズ本の翻訳や来日ジャズメンの通訳などでも知られるK嬢が、一人で御代田の西端に移り住んだとの連絡あり。更に国分寺市の知り合い一家が、我が山荘から歩いて10数分の所に移り住み、洋菓子とカフェの住居兼店舗をGW直前に始めることになった。まあある意味驚くべきことだが、こんな事態になっているのである。
 信濃追分はかつて堀辰雄が「美しい村」と称し旅籠屋の「油や」に長逗留、詩人で建築家の立原道造が美しいソネットを、この村に捧げて書いた静かな保養地だったが、ここ数年で様変わりしモダンな建物が立ち並ぶ地になった。そしてこうした移り住む人たちのなかには、喫茶店などを開く。大概奥さんが愉しみで店をやるのだろうが、週の後半の3日程オープンなどと言うカフェが次々に誕生、時ならぬカフェブームとなっている。国分寺の知り合いもその一人なのだが、こうした奥方達は誰もが料理上手でお茶上手、店も実にセンスが良く美味しい。信濃追分から御代田の軽井沢よりの東端は、こうした新たなカフェスポットとして、これからTVや雑誌で注目を集める可能性がありそうだ。それが良きことかは何とも言えないが...、時の流れであることは間違いない。

 最後にこのGWに読んだ本で感銘を受けたのは、台湾の代表的人気作家、呉明益の「歩道橋の魔術師」と上橋菜穂子の「鹿の王」の2冊。両方とも読みたかったものだが、感銘度高し。前者は台湾版マジック・リアリズムとも言えそうな小品集。仕事関連で読んだが現在の台湾の充実振りを表し、中々のものだった。そして「鹿の王」。上下2冊の長編ファンタジーで世評の高い作品だが、流石の上橋ファンタジーワールド。戦士ヴァンと血の繋がらない娘ナナとの、親子成長の物語り...かと思ったがさにあらず、冒険ファンタジーながらもコロナ禍の今を予言していた様なパンデミック小説~医療ノーベルの要素も含む重厚な作品だった。これはトールキン(指輪物語)やル・グイン(ゲド戦記)等に匹敵する、世界のファンタジー史にも挙げられる傑品とぼくは読んだが、果たしてどんなものだろうか...。両本とも是非皆様にお薦めしたい。

【今週の番組ゲスト:トロンボーンプレイヤーの駒野逸美さん】
ご自身初のリーダーカルテットアルバム『Nearest and dearest』から
M1「Kayu Raja」
M2「Lemon Balm」
M3「In the Mind」
M4「Chikuzenni Dilemma」

5月12日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022.05/12 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.626~追分通信22春~】

 このジャズコラムの「追分通信」も毎年3~4回ほど取り上げているので、「ジャズ日和」とその前身である「ジャズ徒然草」、双方合わせるともう20数年、それだけにこの通信だけでなんと80回弱と言う数になるはずである。まあどうしても追分周辺の自然やその散策が中心になり、追分地域でも最も美しい御影用水周辺の風物がその主なものになっているのだが、今回もGW直前の初春の時期にこちらに数日間滞在することにした。
 この時期はまず山荘の水出し作業、いよいよ生活が始まる儀式である、そして何と言っても木々の芽吹き、桜や芝桜等々の開花と言った、生命力あふれる実にいい時期なのである。但し今回のぼくの目的はプチ療養。前にも書いたと思うが2月半ばから絶不調、内視鏡など様々な検査はどうにかクリアしたのだが、その絶不調の最中に重い温泉水を運んだせい(?)なのか、突然激しい腰の痛みに襲われそれが1か月近く続いている。近くの大病院や整形外科医、このコラムにも登場したジャズライターにして整形外科医でもある、小川隆夫氏にもアドバイスを求めたが、術無しの感じで、国立の鍼灸整体院に通うぐらい。整形外科の方達はただ老化の一種だから...でかたずけられてしまい、こちらの痛さなど関係なく無策に近い。と言うことで一念発起し、追分山荘近くの東信地域の腰痛に効く温泉巡りを敢行しようと思った次第。

 長野県の東部地域(東信)、上田や佐久、そして軽井沢などがあるこの地域で、最も効くのは別所温泉近くの国民保養湯の鹿教湯、そして上田市のお隣の大温泉街、戸倉上玉田温泉と言うことになるが、両方とも結構車でも遠く、往復でなんやかんや2時間近くも掛かってしまう。と言うことで近隣の日帰り温泉施設で効能のありそうな場所に向かうのだが、こうした温泉効能はそこに来ている常連の爺さん連中に聞くのがベスト。まあ若ぶっていてもお前もチャンジー(爺さん)じゃないかと言われればそれまでだが。こうした温泉常連のチャンジーたちは実に詳しい。「あんた腰痛、それならばやはり鹿教湯の斎藤旅館だよね、それか上山田の日帰りの鶴の湯、あそこは杖入らずだもん...」とか。ぼくの聞きたいのはこの近くで圧倒的な効能を...等なのだが、どうやらそれは難しいみたいである。ぼく自身で調べてみるとやはりこの近く...と言うよりも、日本有数の万病に効くのは草津の湯...と言うことだが、これはお山(浅間山)超えでかなり道遠しなのである。まあ仕方ないので今年は善光寺の御開帳の周年蔡、その見物も兼ねて戸倉上山田温泉の日帰り湯にでも寄ろうか...とも今考えているのだが。

 腰をかばう所為か、いつもならば1時間かけて越す御影用水周辺散歩も30分程度でギブアップ、それもアップダウンがあるとかなり苦しくゼイゼイとなる始末。やはり老化は恐ろしいものである。まあこれを乗り越えて...と思っているのだが、果たしてチャンジーの努力はどこまで...。ただ嬉しいのは今年も御影用水に鴨が4羽ほど定着していること。よく見ると3羽は一家で、一羽はどうやらはぐれの小鴨らしく、他から結構つらく当たられている様子。何かこの鴨達を見ていると色々考えさせられ、和む感じもあるが、「イタイケ小鴨、頑張れチャンジーここにあり」...って一茶をもじると、こんな感じかも...。

【今週の番組ゲスト:トランペッターでピアニストの曽根真央さん】
2ndアルバム『Brightness of the Lives』から
M1「Luminous」
M2「Drum Hero」
M3「Lives」
M4「Gathering At Park Drive」


5月5日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022.05/05 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.625~ジャズフェス復活~】

 ロシアによるウクライナ侵攻は、ずるずると決着を見ないまま続いており、ひょっとすると世界大戦など...と言う恐ろしい観測まで飛び出し落ち着かない毎日だが、一方コロナ禍の方も変異株登場などと...、こちらも予断を許さない状況。何とも恐ろしい事態が続いているが、何も出来ないのが寂しい限り。

 そんな中音楽イベント業界では、ウイズコロナ禍...と言った感じもあってか、大型ライブイベントやライブハウスなどでの活動等も、GW明け位からそろそろ始動...と嬉しい状態を迎えつつある。その先陣を切って...とも言えるのが、先週我がジャズ番組でも取り上げた、5月14&15両日に秩父郊外のミューズパーク、野外公園シアターで開催される大型ジャズイベント「ラブ・シュープリーム・コンサート」だろう。このイベント、コロナ禍もあって2年間も中断を余儀なくされたが、今年どうやら開催と言う運びになった。2013年にイギリス発祥のライブジャズイベントで、現地では多くの有名ミュージシャンが登場し、かなりな人気を誇るジャズイベントだが、ぼくは全くその存在を知らなかった。今回のライブジャズイベント、いささか落ち着きを見せているらしいとは言え、流石に外国からのミュージシャンは多くなく、今ジャズ界の中心に要るピアニスト&キーボード奏者のロバート・グラスパーのバンド,それに日本で人気の高いセルジオ・メンデスのブラジリアンバンド位のもの。国内の若手バンドや注目バンド中心のラインアップだが、目玉は2つの外国バンドと並びドリ・カムこと「ドリームズ・カム・トゥルー」が我等が上原ひろみと共演するステージ。ドリカムと上原の共演は10数年振りと聞くが、果たしてジャズかどうかは別として...、大変に興味深いステージであることは間違いない。秩父ミューズパークとは秩父駅から離れた山の中。数回その前を通ったことがあるが、良くこんな所に...と思うほど立派な野外ホール。もう既にいす席は完売で後ろの芝生席のみの販売...と言うことだが、大型ジャズイベントの復活を望んでいたファンが多かったことを如実に物語っている。ぼく自身は健康の問題などあって参加は敬遠する予定だが、是非の成功を祈っている。

 一方都内のホールコンサートで興味深いのは、今最もクリエイティブな活動を展開しているピアニスト、ブラッド・メルドーのライブだろう。7月の半ばに4回ほど行われる予定になっているが、これは何としても行きたいもの。アルバムを出すごとに様々な顔を覗かせ、そのダイナミックな変化も興味深い、才人のメルドー。アッと言わせる大胆なプレーを聴かせてくれる筈である。今から大いに楽しみでもある。
 ようやく巣籠もりから街へ...。ウクライナ侵攻を除くと、状況は徐々に変化しつつある。鬱を吹き飛ばし陽気に愉しく。何といっても春です、春なんですから。

【今週の番組ゲスト:ラテンシンガーの 岸のりこさん】
M1「My Foolish Heart(Mi tonto amor)
M2「Contigo aprendi」
M3「Obsesion」
M4「Caravan」

4月28日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022.04/28 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.624~野田知祐死す~】

 日本のカヌーイストの草分けにして第一人者、野田知祐が亡くなったと聞く。一時ぼくの愛読誌だったアウトドア誌、「ビーパル」最初の号からカヌー紀行を連載、それをまとめた単行本「日本の川を下る」は、確かノンフィクション賞も獲得した筈で、実に愉しく示唆に富むアウトドア本だったし、何よりその自由闊達な生き方に強く惹かれたものだった。彼は早稲田大の漕艇部出身の本格派らしいが、ぼくはカヌーなどはやったことも無い門外漢。だが強烈にカヌーで旅したい...等と思わせる魅力に富んだもので、ぼくも物書きのはしくれとして、そんな感慨を人に与えたい...ものだとも思わせてくれた。それだけにその他の彼が書いたカヌーエッセイも、結構読んだものだった。

 野田と言えばかなり昔のことになるが、山と渓谷社のスポンサード番組で、中高年向けのアウトドア番組を担当していたことがあって、その番組に是非彼をゲストに呼びたいと思って交渉したことがあった。だが世界中の川下りを実践している彼を捕まえることは至難の業、仕方なく諦めたものだが是非会って話を聞いてみたい人だった。それも遂に叶わず残念至極。もう一つ野田に関しては、その御供の犬と言うか、川下り仲間としてのカヌー犬=ガクの存在が余りにも有名だろう。ガクは野田と一緒に日本中の清流を下り、アラスカ、カナダ、メキシコ等々世界中の有名な川も下った、カヌー犬と言うまさに世界でも珍しい愛称を持った日本犬(?)だった。ガクが死んだのはもう30年以上前のことだが、野田にとっては大ショックだった筈で、犬齢は14才ぐらいだったと思う。

 そう言えばジャズの世界でも、壮大な川下りジャズアルバムがある。ポール・ウインターと言うグラミー賞も受賞しているサックス吹き、彼は自然との融合をテーマに数多くの好アルバムを作っているが、その一つであの世界最大の渓谷グランドキャニオンを、数日間掛けて実際に筏で漕ぎ下りながら、その停泊地で渓谷の音や野生動物や鳥の声などをバックに、サックスを吹いた壮大なジャズ組曲「グランド・キャニオン組曲」を発表している。まあこんなジャズ冒険をしたのは彼位なもので、凄い企画だと言えるし発表当時はかなり評判になった(グラミー賞も獲得か...)ものだったが、ジャズ史にも残る貴重なものかもしれない。まあ野田とガクの川下りは終始のんびりとした自由気ままなもので、このグランドキャニオン下りとは大違いだが、いずれにせよ野田氏&ガクの魂に 合掌!

 そしてもう一つショックなニュースが...。あの「ダイハード」などのアクション映画で人気の高かったブルース・ウイルスが、なんと失語症の為俳優稼業を引退すると言うではないか。失語症とは詳しくは分からないが認知症の一種で、俳優としてはまずセリフが覚えられなく成ってしまうものである。自身も辛い決断だったと思うが、あのハードアクション全開の役者が、呂律が回らなくなってしまうとは...。寂しいことであり時代の推移を強く感じもしたものだった。それにしても1月を超えるウクライナ侵略&危機。少しでも早く解決の糸口でも...と願うが、それもやはり空しいことなのか...。世界はどうなってしまうのだろうか...。

【今週の番組ゲスト:ユニバーサルミュージックの斉藤嘉久さん】

5月14日・15日に開催される『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2022』をご紹介頂きました

M1「Migratory Bird / WONK」
M2「Vox Humana (Ovall Remix)/ Ovall」
M3「Zasu / aTak」
M4「Why We Speak feat. Q-Tip & Esperanza Spalding / Robert Glasper」
M5「涙の万華鏡 / 吉田美和」

4月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022.04/21 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.623~五味太郎~】

 貴方は絵本を読んだり見たりすることありますか...。こう聞かれればほとんどの成人男性は、子供の頃は別としてまず関心も無いだろうし、見たりも読んだりもしていないと答える筈である。まあ若い女性ならば、それなりの数の絵本ファンはいるかも知れないが、大人の絵本ファンはそう多くは無いと思われる。ではジャズファンはどうだろうか...とも思うが、まあこれもおおむね興味を持たないのではないだろうか...。しかしかく記すチャンジー(爺さん)のジャズプロデューサー&ライターでもあるぼくは、かなりな絵本好きだと自負している。近くの古本屋や神保町などの古書店などで、安い絵本が出ていると結構食いついてしまい、結果本棚で最も数が多いのが絵本となっている。評論家の柳田邦夫は絵本紹介の本を出しているが、かつて「もう少し大人が絵本を読むようにでもなれば、日本と言う国ももっと良くなるはずなのに...」とどこかで記していたが、その通りだと思う。 

 ぼく自身は外国作家では、レオ・レオニ、モーリス・センダック等々、日本でも上野紀子、荒井良二、佐野洋子など好きな作家も数多い。そのうちの一人に五味太郎がいる。彼は絵本を300冊近く発表している筈だが、同時にイラストレーターとしても素敵な才能を発揮している。そんな彼の書いた絵本、まあこれを単純な絵本と呼んで良いのかは別だが、ジャズソングを題材とした素敵な絵本&イラストレーション本がある。もう大分前に出たもので楽譜付きの上下2冊、かなりな値段の本だったが、ぼくも持っており大好きなものだった。
 その絵本が今回楽譜を抜いた1冊の本としてオークラ出版という出版社から、かなり妥当な値段で再登場することになった。タイトルは「ジャズ・ソング・ブック」で、サブタイトルに「ジャズの歌、歌のジャズ」とある。4月放送の「テイスト・オブ・ジャズ」はジャズ入門編を謳って居るので、五味さんに出演依頼をして彼のジャズ観や絵本感、それを語ってもらうのも面白いのでは...と思い、出版社経由で頼んでみると直ぐにOKの返事。久しぶりにジャズプレーヤーや関係者以外のゲスト登場となった。それも日本が世界に誇る~彼は海外の賞も受賞している~絵本作家の登場である。

 山本アナも絵本好きで、五味さんファンでもあり大喜び。愉しい収録となった。元々話好きな気さくなおっさんと聞いていたが、会って聞くとなんとぼくの1学年下で当然世代も一緒、同じ頃吉祥寺の街やジャズ喫茶に屯していたと言うでは無いか...。その上吉祥寺のジャズボスの一人、今は亡き野口伊織氏と親友だったと言う。まあそれやこれやで内輪話も面白かったが、ジャズ談義も秀逸。かなり長い尺で話し込んでしまい、取り上げた曲もビリー・ホリディの「サマータイム」等、いつもより少ない3曲のみ。編集も大変だったが愉しい一時でした。
 五味太郎の古き良き時代のジャズソングに対する、熱い想いが良く伝わる内容の濃い30分間。皆様も是非彼のジャズ話お楽しみ下さい。

【今週の番組ゲスト:絵本作家の五味太郎さん】
五味さんの著書『JAZZ SONG BOOK』をご紹介頂きました。

M1Summertime  / Billie Holiday
M2Come On A My House / Ella Fitzgerald
M3Sentimental Journey / Frank Sinatra
M4Summertime  / Billie Holiday



 

4月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022.04/14 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.622~富士山写真展~】

 この2月ぐらいから体調優れず、ジャズの収録も何人かの人に収録を伸ばしてもらったりして迷惑をかけているのだが、腰の痛みが引かずかなり辛い。そんな中打合せの間をぬって、本当に久しぶりに六本木の街に出た。六本木など何か月いや1年振り位だろうか...、危うく都会の迷子になりそうな感じもあったが、お目当てのフジフィルムの写真ギャラリーに到着した。ここで1週間余り富士山の写真展が行われており、その主役がラジオNIKKEIの後輩で営業部のトップをしていたS君。「天地 異形」と大書された案内に導かれ、30点余りの富士山写真が飾られており、中々に迫力ありの好写真展である。

 主役のSくんは元々早稲田大応援部の副団長...と言う肩書で、当時のラジオたんぱに入局。営業畑一筋で数十年勤めて退社、一人で広告代理店業をやっている好漢だが、如何にも営業向きの漢。その彼が退局後突如写真に目覚め、それも富士山をメインに撮るセミプロのカメラマンと言う、2足の草鞋を履くことになった。2年ほど前にデビュー写真展を開き、今度は華の六本木で写真展と言うことで、そのお祝も兼ねて寄ってみた。このコラムでも書いているようにぼくも大学時代は、ジャズ研と山岳の同好会の2足の草鞋を履いており、局時代にもトレッキングの番組などもヤマケイ(山と渓谷社)と一緒に制作しており、山岳写真家との付き合いも少なくない。それだけに彼が突然に南アルプスや八が岳などの高峰から狙った、富士山写真を撮るようになり驚きの連続だった。50歳を超えての挑戦だったがまめに山にも通いつめ、良い写真を物している、その彼からは八が岳の主峰赤岳から撮った、黎明の富士山の大きなパネル写真なども貰ったりしたものだった。

 そのS君が今や富士山写真家としてそれなりに名前も知られることになり、六本木のギャラリーで写真展をやれるまでになるとは...、本当に凄いことだと思う。さほど広くない会場だったが、結構人も入っており盛況の様子。何よりである。人も一念発起すれば何事かを成さんとす...。我らが富士山の様々な異相を鋭く切り取った写真の数々。中でも残雪期のわずかな間しか見られない、大沢崩れ下流に出現する滝のモノクロ写真、そこに彼の気魄を見た思いがした。体調今イチでしたが、かなり愉快な気分になれた写真展鑑賞でした。

【今週の番組ゲスト:整形外科医で音楽ジャーナリストの小川隆夫さん】
マイルス デイヴィスを題材としたジャズ入門をお話し頂きました。

小川さんの最新著書『マイルス デイヴィス 大事典』
M1「My Funny Valentine」『Cookin'』より
M2「ESP」『ESP』より
M3「Brown Hornet」『Filles De Kilimanjaro』より
M4「Honky Tonk」『Get Up With It』より



4月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022.04/07 番組スタッフ 記事URL

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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.621~帝王マイルス~】
 
 今月の「テイスト・オブ・ジャズ」はジャズ入門編として、評論家にして現役の整形外科医でもある小川隆夫氏をゲストに招き、彼が昨年の暮れに出した分厚いジャズ辞典「マイルス大辞典」を取り上げ、彼にマイルスの魅力、
ジャズ初心者にとってのマイルスの意味合い...等、色々と帝王マイルスについて語ってもらうことになっている。彼は初心者には有名プレスティッジセッションの1枚『クッキン』から極め付けの「マイ・ファニー・バレンタイン」、そして中級者向けに『ESP』等のアルバムから選曲...と、過不足ない感じでお勧めの4曲を選んで、それぞれのアルバムの面白さ等も語ってくれている。だが何より興味深いのは、彼個人とマイルスとの交友録、彼との繋がりの話だろう。彼自身は晩年の5~6年間に、マイルスと20回近く会っていると言うが、正式なインタビューは数回程度。NYにいるはずのマイルスが西海岸に旅行で移ってしまい、そこまで追いかけてインタビューした話とか、足を悪くした際、整形外科医として個人的に診察、今後のアドバイスをしたことで2人の仲が縮まった話など、マイルスとのエピソード話が今回のハイライトとも言えそうだ。彼も言っているが、ある意味マイルスを追いかけていればジャズのことがほとんど分かる...と言うのは真実である。小川氏のマイルス話は番組で是非聴いてみて欲しい。

 ではお前自身のマイルス感は...等とも聞かれそうだが、やはりマイルスは「ジャズ界の帝王」と言う表現通りの人物で、彼を聴いていればジャズの大方は理解できるのでは...と言う本当のスーパースターだった、と至極当たり前の結論になってしまう。常に前を向き行動し、昨日迄の事は一切振り返らない。その強烈な前進力は、ぼくのような過去のことに捉われいつもうじうじしがちな男から見れば、本当に信じられない様な漢なのである。マイルスが出演した数少ないコマーシャルを、かつて演出・制作したのが大学の2年先輩で電通映画社のO氏。演出プランなどを持ち掛けてもあまり乗ってこず、かなり制作には苦労したらしいが、だみ声で終始不機嫌に語り掛けるその強烈なキャラクターは、彼が手掛けたどの俳優や政治家などよりも、強烈な印象だったと言う。
 と言うことでぼく自身が、ジャズ入門者にお薦めしたいマイルスの1曲は、その絶頂期1964年2月に行われたNYのホールでのコンサートでの録音『マイ・ファニー・バレンタイン』。その中のタイトル曲「マイ・ファニー・バレンタイン」である。小川氏がまずかけた50年代の「マイ・ファニー・バレンタイン」も、ロマンティシズム溢れる名演だが、このライブ盤での同曲はその表現の深みが圧倒的である。余りにも凄いので観客から大きな感嘆の念が発せられ、それがアルバムにも見事に収録されているが、それほど感動的であり、ジャズバラード表現の極致...と言っても、過言ではないほどの演奏が全編展開される。

 いずれにせよマイルスはマイルス。この「漢」無くしてジャズの発展は無かったし、彼の亡きあとその存在を超えられない所に、今の時代のジャズの混迷や悲劇もあるのだ...とも言えそうである。小川隆夫のマイルス講座、4月14日の放送予定です。是非お愉しみに...

【今週の番組ゲスト:音楽ライターの富澤えいちさん】
富澤さんの本『ジャズの聴き方を見つける本』をテキストに教えて頂きました。

M1「You Must Believe in Spring / MichelLegrand」『Les Demoiselles de Rochefort』よ
M2「You Must Believe in Spring / MichelLegrand Trio」『ALFA Years』より
M3「You Must Believe In Spring / Bill Evans」『You Must Believe In Spring』より
M4「You Must Believe In Spring / Tony Bennett & Bill Evans『Together Again』より
M5「You Must Believe in Spring / Richard Galliano」『French Touch』より


3月24日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022.03/24 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.619~ぼく自身のジャズ入門~】

 4月はこのコラムでも予告した通り、様々な形でジャズ入門編を進めていくつもりだが、ジャズが決して小難しい音楽では無く、かなり愉しいものであること...を少しでも理解してもらえれば我々の喜びでもある。まあ何回かのシリーズでお送りする訳だが、手前味噌ながら結構それぞれに特色ある企画になっていると思う。特に日本を代表する絵本作家、五味太郎さんの登場は、ぼく自身も大変に愉しみな所。スタンダードソングを五味さん流に心地良く愉し気なイラストに仕上げている絵本を、リスナーの方達に見せられないのは残念なことだが、五味さんの語りの魅力で補ってくれるはずである。

 この絵本「ジャズ・ソング・ブック」には、30近いスタンダードソングが歌詞付きで載せられているのだが、そのうちの1曲が実はぼくをジャズの世界へと誘ってくれた、記念すべき曲なのである。「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ」。邦題は「朝日のように爽やかに」。オスカー・ハマースタイン2世(詞)&シグモント・ロンバーク(曲)の名コンビが作ったスタンダードソングである。ハマースタイン2世の詞は、「恋ってやつは、陽気に優し気にやって来て...(中略)昇る太陽と共に燃え上がり、熱い口付で誓い合い、でも結局は裏切られる...」と恋の行方が語られるラブソング。だがこれもやはり失恋ソングの一種である。スタンダードにはこの手の失恋ソングも多いのだが、このメロディーを高校生の頃聞き大変に気に入ってしまい、最初に聞いたのはミュージカル風なボーカルものだったが、もっと他のバージョンは無いものかと...あちこち探した所、出会ったのがMJQと言う、ややヘンテコで少しクラシカルな要素も混じったグループのインスト(演奏)ものだった。モダンジャズカルテットのヴァイブラフォーンが入ったこの演奏、最初はなんとも取っ付きにくいものだったが、何回か聞いている内にピアノ(ジョン・ルイス)やヴァイブ奏者(ミルト・ジャクソン)の演奏に心惹かれるようになり、実はその魅力の元がアドリブと言い、これがモダンジャズそのものだと言うことを、知り合いのレコード店の若い店主から教えられ、以降ズブズブとジャズの道に引きずりこまれるようになってしまい、気が付けば今に至っていると次第。五味さんの絵本を眺めながら、懐かしくも当時の事を想い出している、ぼく自身がいるのでした。

 まあそういうこともあり、ぼくの数あるジャズ入門の一枚としては、この「朝日の様に...」を演奏していた、室内楽風ジャズの偉大な存在=MJQの代表曲でもある「ジャンゴ」、この曲を聴くことが出来る、ジャズ史に残る不朽の銘盤『ジャンゴ』(pres)と言うことなります。このアルバム、今聴いても少しも古さを感じさせませんし、バッハの銘品にも通じる気高さもあります。銘盤とは言わくそういうものなのです。ぼく自身の想い出のアルバムですし、これからジャズを...と言う人には、お勧めの最適な1枚と言えるでしょう。

【今週の番組ゲスト:トランペッターでウクレレ奏者の茅野嘉亮さん】
茅野さんの新しいユニット「360 Open Air Jam」の1stアルバム『Vantastic Jam』から
M1「Jumping mallet」
M2「Kanaloa」
M3「Kose」
M4「Chang's garden」
M5「Talk」

3月17日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022.03/17 番組スタッフ 記事URL

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.618~春なのに~】

  ようやく春らしくなって来たが、例年のようにはこの季節を愉しめそうもない。なにせウクライナの地では、今も戦火が続いておりその終わりも見通せない。一歩間違えば核戦争から世界破滅すらあるかも...、と言った緊迫する事態が続いており、暖かくなっても心は冷え冷えと言った心配事の連続。

 そんな中ジャズ界では、ベースの大ベテラン、オマスズさんこと鈴木勲氏が亡くなってしまった。80代後半だった。サダオさん(渡辺貞夫)のバンドなどで活躍した後、武者修行で単身渡米、当時のトップコンボであるアート・ブレーキ―&ジャズ・メッセンジャーズ(JM)に参加、国際的にも一躍名前を挙げ帰国、以降は自身のバンドや各セッションなどで活動する等、かなり活発な活動を続けていた。ものすごくジャズ的な...と言うか、ある意味破天荒でファンキーな人柄で、つい最近の写真でも、およそその年令に似つかわしくない派手な原色の格好で、ピースサインなどをしていた。またニックネームにも、色々あまり好ましくない様な意味合いもあるようでだが、色々面白いユニークなジャズメンだったことは間違いない。各新聞の死亡欄に、かなりなスペースでその死亡ニュースが載せるほどに、やはりJ-ジャズ史でもかなりな大物だったことは、皆が認めていたところだろう。

 我がジャズ番組には、この20年ほど余り新譜が出ていなかった関係もあり、顔を出していなかったが、昔はそれなりにちょくちょく遊びに来てくれていた。スケベ心一杯の昔のジャズメン気質溢れた人で、当時相手した女性アナなどを、からかったり飲みに誘ったりもしていたが、それが決して嫌味でない所がオマスズさんらしい所。相手が乗り気でないとさっと身を引く、結構なダンディさもあった。でもあれも今ならばセクハラとしてアウトになってしまうのかも知れない。難しい所である。
 オマスズさんは60才台以降もジャズ賞を獲得するほど良いアルバムを残しており、本場で鍛えられたそのテクニックは素晴らしいものだった。またその磊落な人柄もあって、若いミュージシャン達にも結構慕われており、晩年まで多くの若い人達ともセッションをやっていた。合掌!

 まあ「春よ春」、何かとパッと行きたいものだが、世界の緊迫した状況が、春なのにそうはさせてくれない。大変に寂しいことである。こうなればぼくの好きな春ソング、フランスを代表する映画音楽作曲家にしてジャズピアニスト、ミッシェル・ルグランの銘曲「ユー・マスト・ビリーブ・イン・スプリング」でも聴きながら、この何か落ち着かない今年の春を精一杯愉しむことにしましょうか...。この曲は今年4月のジャズ入門講座の第1回目に、ジャズライターの富沢えいち氏がいろいろなバリエーションで、この曲のジャズバージョンを紹介しジャズの愉しみ方を教えてくれるはず。皆様もそちらも是非聴いてみて下さいね。

【今週の番組ゲスト:サックスプレイヤーの岡崎正典さん ピアニストの片倉真由子さん】
岡崎さんの初のリーダーアルバム『The Neighbors』より
M1「Carolina Shout short 」
M2「Mary's Sliding Doors」
M3「Le Tombeau De Couperin I.Prelude」
M4「Riverside Nobody」
M5「Look To The Rainbow」


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