9月24日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.09/23 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.324~ひろみのことなど】

 先日TVを見ていたら音楽番組に「ひろみ」が出ていた。ジャズの世界で「ひろみ」と言えば当然上原ひろみのこと。なんと彼女の最新作は、あのビルボードのヒットチャート(CD不況のあおりを受け、今やかつてほどそのチャートの重要性は薄れつつあるが...)ジャズ部門でついにトップに立ったと言う。NYに拠点を置き、年に200日以上のコンサートをこなしている彼女、ついにアルバム売上でも世界No1を記録、今や向かうところ敵なしと言った圧倒的な存在で、貞夫さんや日野ちゃん、渡辺香津美などの大名跡を押しのけ、名実共にJ-ジャズを代表するジャズピアニストになっている。
 
先日の東京ジャズでもコンサートの大ラスに登場、手数王=ミッシェル・カミロと丁々発止の見所充分なデュオセッションを繰り広げ、聴衆を興奮の渦に巻き込み、その女王振りを強烈に印象付けてくれた。しかし彼女の良さは、実力派でもある某嬢のような女王然とした立ち振る舞いではなく、あくまでも可愛らしい女性だと言う点。ステージでのダイナミズム表現とその可憐で魅力的な表情。その対照振りもまた素晴らしいもので彼女の大きな魅力にもなっている。

 我が「テイスト・オブ・ジャズ」は、このコラムでも再三記しているように50年ほどの歴史を誇るギネス的ジャズ番組。サダオさんを除く(特番での出演はあるが...)J-ジャズのほとんどのミュージシャンに一度はご登場願っているのが一つの売りなのだが、そのサダオさんをしのぐ世界的大スター「ひろみ」にもまだ登場してもらっていないのだ。と言うよりも彼女の登場はもうほとんど不可能にも思えるのだが...。ただ残念なことには、彼女の登場機会がまったく無い訳ではなかった。それは彼女のデビュー直前、デビューアルバム『アナザーマインド』が控えていた時、当時のユニバーサルのジャズ部門のトップだったⅠ氏から、アメリカ在住の凄い有望な女性ピアニストが今度アルバムデビューするから、日本に帰国した時一度番組に呼んで欲しいと頼まれたのだった。ひろみの評判はおぼろげながら聞いていたので興味はあったのだが、当時番組スケジュールは満杯、それと彼女の里帰りタイミング(浜松市出身)もうまく合わず、この出演話は残念ながらお流れ。その後はあれよあれよと言った具合にスター街道をまっしぐら。番組には関係ない存在になってしまったのだった。ああ残念、無念。
 まあそんな残念話は置いておくとして冒頭にも記したように日曜日の朝、何気なくTVを見ていると、ひろみが出ているではないか...。「題名のない音楽会」という長年続いているクラシックをメインとした音楽番組である。彼女はそこで2曲ほどソロを聴かせ、番組パーソナリティーの若いヴァイオリン奏者と掛け合いも披露したが、華麗にして可憐、流石「ひろみ」と言った感じの堂々としたプレーを魅せた。先日の東京ジャズのステージでも感じたのだが、今の彼女の音楽はジャズと言うよりも、ジャズをコアに様々な要素を含んだ「ひろみ」そのものと言ったもの。即ちその存在自身が、一つのジャンルに昇華されている感じも強い。だからこそあの"フジロック"の大観衆を飲み込んだステージでも、多くの若いロックファンを熱狂させることが可能だったのだろうと思える。どんなに激烈なプレーの中にも、常に音楽を愉しむことを忘れない。その姿勢が全ての音楽ファンの心を捉えるのだろう...。凄い女性にして魅力たっぷりな人でもある。一度は番組に...とも思うが、果たしてその夢叶うかどうか...。

【今週の番組ゲスト:ジャズのお勉強、先生は音楽評論家の青木和富さん】
M1LUYAH! THE GLORIOUS STEP / CECIL TAYLOR QUARTET
M2LONELY WOMAN / ORNETTE COLEMAN
M3LYDIOT / GEORGE RUSSELL SEXTET
M4FONTESSA / THE MODERN JAZZ QUARTET


9月17日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.09/16 番組スタッフ 記事URL

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.323~台湾取材2016】

  15年以上続いている恒例の台湾特番(「21世紀の台湾と日本」/9月22日放送)取材のため台湾に行ってきた。スタッフは番組パーソナリティーの山本直也アナ、コーディネイター(実質のプロデューサー)ミス・エミリーこと翠英美子、そしてぼく。毎度おなじみの3名で、いつもだと取材を台北で行い次の都市に移動と言うことが多いのだが、今回は台北だけでホテルも移らず。オールドボーイのぼくには嬉しい日程で、そんなに堪えることも無かった。
 何より良かったのは台湾観光協会が久々にホテルを用意してくれた今流行の小洒落たデザインホテル。若い女性が好みそうなシンプルでいてセンスの良いホテルで、内装や調度品など珍しく全員が気に入った◎ものだった。この台湾取材でのホテル事情はまさにピンキリで、過去には全く窓が開か無い新宿・歌舞伎町のような繁華街裏手にある安価ホテル(隣のビルに締め切られる)にも宿泊、その数年前に焼死者を出したと言うような所で、流石にここは厳しかった。しかし一方では圓山ホテルやアンバサダーホテル等という高級ホテルも経験、行ってみて天国か地獄か...が分かると言った際どさだが、今回は天国の部類に入るもの。こうしたホテルから取材の手配など全てを司るのが、ゴッド姉ちゃん(小母はん)ミス・エミリーことミス笑み子。ぼくらにとって台湾新総統の蔡英文女史にも匹敵する、ソフトな物腰ながらもハードネゴシエーターで、台北に知己も多い正に女傑。この彼女の存在無くしては何も決まらないと言った塩梅で、ぼくなどは彼女の指示通りに東奔西走する次第。まあこんな状態で15年以上続いて来た訳だが、考えてみれば良く続いているものである。


 
ところで今回の全体テーマは「変わったもの、変わらないもの」としたが、これは言うまでもなく新政権が誕生し女性総統の誕生と言う新しい事態を受けてのもの。台北と言う大都市で僅か数日の滞在、そこら辺の変化を感じ取るのはなかなかに難しいことだが、日経台北支局長など取材先の様々な人達にもその質問をぶつけてみた。当然ながら答えは千差万別。ただ一つはっきりしているのは台湾の人達の、台湾人意識がかなり強くなりつつあると言うこと。この流れは今後もう変えられないものと思われるので。そこと中国との関係、この難しくも大きなテーマを才媛=蔡英文氏がどう調整していくのか...期待と不安一杯である。

 
そして今回もまた多くの人達に会った。帰国の日に台湾美術の総帥とも言える、我らの良き友人、版画家の寥修平(リョウ・シユウ・ピン)先生の大回顧展が国立歴史博物館で開催されており、その会場で先生に会えたことが一番の喜びだった。今年の秋はまた東京で展覧会も開催するとのことで、その時には何らかの協力をしたいと先生にお約束したのだが果たして...。最後の日の夜は台北101ビル(アジア有数な高さを誇るビル)が綺麗に見えると言う裏山の象山登山。急階段を150メートルほど登ったそこからの台北の夜景見事の一言。台北のデートスポットとも言われるのが良く分かる景観。エミリーの友達シェリーさんに連れられ、息も絶え絶え見晴台到着、エンディングレポートを取り終えた山本アナ。よく頑張ってくれました。いいエンディングが録れました。全員に謝意!

 
そしてもう一つ台北に行くと何時も必ず訪れる本屋~誠品書店。世界でも有数なセンスある24時間営業のこの本屋の地下2階、そこが音楽コーナーで、取材を終え夜中に訪れてみると、一時は余り元気なかったこのコーナー、今回行って驚いたのがアナログ盤の多さ。CD棚は今のCD不況を受けあまり変化はなかった(特にジャズ部門)が、床に置いてある所謂エサ箱の多さ。そこに「BÑ」「CBS」、マイルス、ビル・エバンスなど高音質のジャズアナログ盤がぎっしり詰まっており、クラシックなども多かった。IT大国の台湾でまさかアナログ文化復活などとは、夢にも思わなかったので、本当に驚かされた。時間が余り無かったのと疲れもあって、一枚々を確かめることはできなかったが、驚きと同時に喜びでもあった。流石台湾、流石誠品書店と言った感じ。これが来年はどうなっているのか...。また一つ台湾探訪の楽しみが増えた感じがしましたね...。台湾特番は9月22日の休日です。

【今週の番組ゲスト:横浜ジャズプロムナード プロデューサーの柴田浩一さん、ハモンドオルガンプレイヤーの土田晴信さん】

M1Sweet Lorraine / 関根彰良」

M2I'll Drink to That / 土田晴信」

M3Theme for Joe / 遠藤定」

M4Freedom Jazz Dance / 小川恵理紗」

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9月10日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.09/09 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.322~東京ジャズ15周年】

 9月初めの金土日は恒例の「東京ジャズフェスティバル」が開催された。今年は15周年の記念フェスと言うことで、フェスの総合プロデューサー役の八島敦子女史が、8月に番組に登場しその概要を紹介してくれたが、このジャズフェスの立役者、ハービー・ハンコックを始め、パット・メセニーなど顔触れもかなり豪華、トリは言わずと知れた日本が世界に誇る才媛、ヒロミこと上原ひろみ...と、久々に食指が起きる(?)華麗なラインアップだった。
 
最近はあまり全公演参加はしなかったのだが、今回は無理してでも両日の昼夜公演全てに付き合うことを決めた。ただ土曜日は今月半ばにオンエアーする台湾特番の取材、一青妙さんのインタビューが自由が丘で朝8時半からあり、家を出るのが朝7時と大分厳しい日程。オールドボーイにはかなり応えるものだが、そこは老いの一徹で頑張るしかない。

 
朝イチの取材を無事終えて会場である有楽町の東京フォーラムに到着。すると外の会場ではもうライブが始まっており、ジャズ屋台なども立ち並び、東京ジャズらしいお祭り気分が一杯で嬉しくなる。
 ジャズフェス最初のステージは小曽根真がプロデュースした、音大ジャズ科の生徒達のピックアップメンバーによるオールスター学生フルバンド。これにジュリアード音大のメンバーも加わり、日米ジャズ交流が実現と言う周年らしい企画。国立音大の教授でもある小曽根ならではのもので、彼の熱心な指導でかなりな成果を発現していた。このステージを皮切りに昼夜4公演、ステージ数にして12公演がスタート(外の広場では世界各国のミュージシャン達による無料ライブが行われており、ここでは早稲田ジャズ研のステージも組まれ、聴きに来るようにとOB会長から再三の要請があったが、疲れ気味だったのでこちらはパスさせてもらったが...)、全部見るのはかなりなハードワークではあったがまた愉しいものでもあった。

 
その愉しさの背景には今年のプログラム、結構ぼくの好きな楽園系とも言える中南米系ミュージック(ジャズ)が多かったことで、それらは実際にもかなり楽しく充実した内容だったためだ。そのトップが今年の目玉と睨んでいた、キューバン・ジャズを代表する若手ピアニスト、アロルド・ロペス・ヌッサのトリオ。ベースはアフリカのセネガル出身、ドラムはハロルドの実弟で凄腕。キューバンジャズ・プラス・アフリカと言った感じのこのトリオ、日本ではほとんど知られていないこのユニットを、よくブッキングしたものとも思われるが、実際始まってみるとその驚愕テクニック、圧倒的なスピード感等に観客は魅了させ尽くした様子で、ステージ終了後CD売り場に走るファンも多かった。用意されていたアルバムは即完売。残念がっていた人も多かった。
 
そしてもう一つがパブロ・シーグレル&寺井尚子のジャズタンゴ・プロジェクト。シーグレルはあのアストラ・ピアソラ・バンドのピアニスト。その彼のバンドに寺井が共演と言う形で、レパートリーもピアソラナンバーにシーグレルのオリジナル。こうした他流試合になると女王・寺井はその本領を如何ん無く発揮、凄まじいばかりの集中力と指導力を発揮、他流セッションでその存在感を堂々と現出していた。
 あとは
ギターの第一人者、渡辺香津美とフラメンコギターの俊才、沖仁とのデュオセッション、これは香津美の45周年記念コンサートなどでも実現されているもので、このデュオにパーカッションのミノ・シネルとヤヒロトモヒロが加わった4人だけのジャズフラメンコ・セッションなのだが、これも聴き応え充分な内容。4人が4人とも実力者だけにその内容は保証済みだが、特に今や世界一とも言えるミノ・シネルの熱演、参りました。ギターと言えば王者、パット・メセニーとクリスチャン・マクブライトとのデュオも聴き応え充分なものだった。

 
そしてフェスティバルのトリを務めるヒロミ。今回は自身のトリオはメンバーが来れずに実現しなかったが、代わりにミッシェル・カミロとのデュオセッション。恐らく現役最高のテクニシャンでもある、パナマ出身の楽園系ピアニスト、カミロを相手に堂々と渡り合うヒロミ。以前にも顔合わせをしている2人だけに、気心も知れ合い、その技の応酬も実にツボを心得たもので、盛り上げも巧く、ファンはやんやの喝采。この東京ジャズの最大スターは、ハービーでもパット・メセニーでもなく、彼女だと言うことを如実に示すステージだった。彼女自身もこの東京ジャズで徐々に実力を蓄えて言った感もあり、両者は実にいい関係でもある。

 そして今年のもう一つの注目点。それはJ-ジャズの大御所たちが顔を並べたこと。香津美以外にもサダオさん(渡辺貞夫)、日野皓正。小曽根真などが登場、洋輔さん(山下洋輔)だけいなかったが、その点でも特筆に値するものだった。なお東京国際フォーラムでの東京ジャズは今年で最後、来年からは新装なった渋谷・NHKホールに移り新たなスタートが切られると言うこと。どんなフェスになるのか、大いに楽しみである。
【今週の番組ゲスト:ピアニストの秋田慎治さん】
「time-10」から
M1
「Slipped
M2「Line D」
M3「One Note samba」
M4「until you say」

9月3日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.09/02 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.321~ジャズ・ハーモニカの巨匠】

 2回続いた「追分山荘通信」でも記したように、この8月は東京を離れておりTVも新聞とも無縁な信州の追分山荘暮らし。世間での出来事などは殆んど関心外と言うよりも分からなかった。そして月末に自宅へ戻ると、あるジャズ媒体の編集長から「トゥーツ・シールマンスが亡くなったので、追悼文を頼みたい...」と言う依頼メールがあった。ジャズ・ハーモニカと言う分野を確立したこのベルギー出身の偉大なジャズミュージシャンは、新聞をめくると確かに8月22日に生地ベルギーのブリュッセルで亡くなっている。記事では大往生とあり、享年94才、合掌!
 
と言うことでその追悼文はどうにかまとめ上げたのだが、それを基に今回のこのコラムも仕上げている所。

 さてそのトゥーツだが、その本名はジャン・パティスト・フレデリック・イシドール「トゥーツ」シールマンスと言う異様に長いもの。愛称のトゥーツは、トゥーツ・カマラータと言う欧州で人気だったトランぺッター&バンドリーダーが彼のアイドルだったことに由来する様だ。彼はその音楽的功績により、2001年にバロン=男爵の爵位を授けられており、ジャズ界では稀有な高貴的存在になったが、日本で言えば大正生まれで考えられない御年。その死亡ニュースでは、「ハーモニカの世界的巨匠」と言う形容句が使われていたが、中には「伝説のハーモニカ名手...」とか「音楽界の人間国宝」等ともあった。ぼくならば「ジャズ・ハーモニカ(=トゥーツ)を世界に認識させた真のイノベーター」とでも書きたい所。

 
彼は最小楽器(ハーモニカ)を自在に扱い心行くまで唄わせ、多くの人の心を捉えてしまう、最大の成果を引き出した音楽の達人であり、ジャズだけでなくポップスやロックなど、世界中の様々な分野のミュージシャンやシンガー達からこよなく愛され(あのジョン・レノンも影響を受けたとされる)、自身のアルバムのゲストに迎えようと図った垂涎の人でもあり、いま注目のグレゴリー・マレットを始め、ヘンドリック・ミュールケンス、続木力等々、内外のジャズ・ハーモニカ奏者のほぼ全員が、その薫陶を受けているとも言える偉大な存在でもあった。一方ジャズを愉しむ余裕のあるファンならば、ほぼ例外なくこのハーモニカ親父(爺さん)の愛称を持つ名匠(口笛の名手でもある)の音楽が好きで、ぼくの周辺で彼を嫌いだなと言う輩には、まだお目にかかったことが無い。そういった意味でもジャズ界で珍しい誰からも愛される存在でもあった。

 
1970年代以降の彼は、ジャズ・ハーモニカの巨匠として世界中から認めら、クロマティック・ハーモニカと言う極小な器の中で、恬淡としながらも最大限の情感表現を描き出すことに腐心、ハートウオーミングにしてそこはかとないサウダージを漂わせた、独特で唯一無二なハーモニカ・ワールドを確立したのだった。数年前91才の折、現役引退を宣言、多くのファンを悲しませた彼だが、その生涯に30枚を超すリーダーアルバムを発表、ゲスト参加した作品は数知れず...、当然そこには駄作とされる様なものは一切無い。中でもぼくが好きなのは、イヴァン・リンス、ミルトン・ナシメント等、ブラジルのMPBのスター達と共演した2枚の『ブラジル・プロジェクト①&②』(92・93年/RCA)。彼のハーモニカとブラジル音楽、この絶妙なマッチング、まさに応えられないもの。その他のアルバムもどれも珠玉と言った表現がぴったりな素敵なものばかりで、是非皆様も一度はお聞き頂きたい。いずれにせよジャズシーンは、また一人惜しい好人物&名職人を永遠に失ってしまった。再度、合掌! 
【今週はテイスト・オブ・ジャズプロデューサーの小西啓一氏による木全信氏追悼特集でお送りしました】
M1
「Killer Joe/Benny Golson
M2「巴里 北駅 印象Kenny Drew」
M3「My Funny Valentine/European Jazz Trio
M4「アルハンブラの想い出/Charlie Mariano 

8月27日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.08/26 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.320~追分山荘通信16その2】

 追分の山荘にはTVも無いし、新聞もとっていないので、情報収集はもっぱらインターネット。それだけに肝心のリオオリンピックなどはどうなっているのか、ほとんど分からずじまい。かろうじて7人制ラグビーだけはネットで試合視聴が可能で、ジャパンセブンズの面々の健闘に感激出来た。ただこのヤフーのネット情報、政治や外交問題などのニュース元が産経新聞と読売新聞と言ったいわく付きのものに偏っている感があり、その見解に相当イラついてしまう。若い人達の意見もこのネット情報がメインのようなだけに、現在の安倍政権のごり押し体質にも呼応し、これからの日本の進路、ここら辺りからもかなりやばい方向に向かいつあるなとネット情報だけで暮らしてみると感じとれる。

 まあそれはさておき、この8月だが信濃追分~軽井沢地域は概ね天候は良好だったが周りの山々の視界が全く良くない。お山(浅間山)も頂上まで見えたことはわずか数日ほど。また例年だとはるか南方に連なる八ヶ岳連峰から蓼科・美ヶ原へと続く長い稜線も、全部が晴れて見渡せたのは一日も無く、これは異変とも言える出来事だ。ラグビーの聖地、菅平には毎年2回ほど上がり、早稲田ラグビー部の仕上がり具合を点検するのが恒例だが、今年は何と3日も高原に上がり早稲田Aチームの練習試合を全て見てしまった。暇な男である。成績は今イチだったが若い面々の多い、伸びしろ豊かなチームだけに、この秋の対抗戦も大いに愉しみで、またまた秩父宮ラグビーに通わないとならない羽目になりそうだ。

 ところでこちらに来ると、読書と音楽鑑賞(と言うよりは原稿書き)がメインになるが、軽井沢と御代田の町立図書館を最大限活用し、様々な本を漁った。中でも仕事に直結する台湾関連では、台湾初めての女性総統・蔡英文の自叙伝と、直木賞を獲得した東山彰良『流(りゅう)』の2冊が圧倒的に面白かったし、色々参考にもなった。祭氏は女性ながら確固とした信念の持ち主で、少数民族や社会的弱者への心配りなど、政治家としても素晴らしい資質を有した才媛。どこぞの自信過多な首相も、少しはその生き方・考え方を学んで欲しいと切望するほどの素敵な英知で、その自伝も読んで久しぶりに感激した。是非一度は台湾特番で登場して欲しいものである。

 一方の作家、東山彰良は両親が台湾人で、小学校の初めごろ日本に移住・成長したという経歴の持ち主。デビュー作の『逃亡作法』を読み、凄い資質のハードボイルド作家の出現とぼくなりに目を付け、ほとんどの作品は読んでいたのだが、両親が台湾人とは全く気付かなかった。それだけにそのペンネームも、祖父が大陸の山東省出身(『流』はその祖父を主人公にした台湾関連ミステリー作と読める)なので、それを逆さにしたものと言うのも恥ずかしながら最近知ったばかり。台湾特番ファミリーの一員でもあるエッセイストで女優、歯科医の一青妙(一青窈の姉)さんとの対談企画が、とある会場で行われ、その彼女から紹介されたのだが、残念ながらこの9月にオンエアー予定の台湾特番には登場頂けないが、次回には是非彼の魅力あるお話しを皆様にもお届けしたいと思っている。

 そして音楽のお話しだが、これがジャズではなくクラシック関連。ぼくの誕生日は終戦記念日の8月15日なのだが、なんとその日に軽井沢大賀ホール(ソニー社長だった大賀氏が軽井沢の町に寄付したモダンなホール。軽井沢ジャズフェスもここで開催)で、チェロ奏者の堤剛氏がバッハの無伴奏チェロ・ソナタ全曲の演奏会を行うと言う。ぼくの最も愛するバッハの無伴奏ソロ組曲(チェロとヴァイオリン双方の無伴奏曲が最高の音楽だとぼくは信じる)を、一日で全曲を演奏するとはめったに聴けないものだし、やる方も相当な力技。このニュースを大分前に耳にし、珍しくも大賀ホールに予約電話を入れて、誕生日当日は勇んで会場に向かった。
 堤氏は現在はサントリーホール館長で、それ以前は桐朋学園大学長も務めたクラシック音楽界の超名士。しかしチェロ奏者としてはあの鬼才、ヤーノシュ・シュタルケルの直弟子で、師匠譲りの峻厳なバッハ無伴奏全曲アルバムを以前に聞き、かなり感銘を受けた覚えもあるので期待大のコンサートだったのだ。全曲で4時間弱、相当に力が入るコンサートで、聴く方もかなり大変だがやる方は当然ながら更に大変な試みで体力もいる。ただ功成り名を遂げた堤氏だけに、かつてのような研ぎ澄まされたひりひりと粘り付く鋭利さは影を潜め、悠々迫らざる大人の風格豊かなものに変わっており、宮廷音楽の舞曲を集めたこの無伴奏チェロ曲としては、聴き易く疲れない演奏だった。全体としてはそれなりに楽しめはしたが、冷徹で深淵な「シュタルケル・バッハ」の信奉者でもあるぼくにとっては、いささか物足りない感じがしたのもまた事実。まあ色々な感慨を抱きながら誕生日の夜、山荘への帰り道を急いだものでした。
今週の番組ゲスト:「ジャズのお勉強」音楽評論家の青木和富さん】
M1「Love Is A Many Splendored Thing/Brown-Roach Quintet
M2「Round Midnight/Miles Davis」
M3「If I Were A Bell/Miles Davis」
M4So What/Miles Davis

8月20日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.08/19 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.319~追分山荘通信16夏】

 今年もまた信州・追分の山荘にいる。7月の後半には山荘に来るつもりだったのだが、台湾関連特番の編集作業、その途中で知らされた木全先輩の死亡の知らせ等々、これら諸々で7月中にこちらに来ることは叶わず、コンサート評などを頼まれていた"軽井沢ジャズ・フェス"も、パスせざるを得なくなってしまい、関係者にも迷惑をかけてしまった。木全氏の通夜・本葬に参加した後、こちらに着いたのが8月1日の夜で、翌日にはお気に入りの「カフェ・グルマン」に顔を出してみた。御影用水脇の遊歩道を歩くこと20分ほど。以前だとバカ犬のピーちゃんを連れて散策した際にはなんてこともなかった距離だが、お供無き一人での散策となると、オールドボーイのぼくにはこれが結構応える。今年初めのバカ犬のあっけない死、今更ながらに寂しく悲しくつらいことに思われる。

 
ただ夕方の御影用水、お山(浅間山)こそ雲隠れしていたが、鴨が十羽程群れ集っており微笑ましい光景。「グルマン」も8月始めの月曜夕方とあって客の姿も無い。いつものようにビールを頼み手酌で飲んでいると、主の「カーペンター平井氏(元外資系広告マンで、お店は全て彼の手作りだけに、ぼくは秘かにカーペンターと呼んでいる)」がおもむろに登場。久々の再会を懐かしみつつ「用水の下流近くの空き地に建築中だったホテル、七月に完成し結構繁盛しているみたいですね...」などと四方山話を交わす。このホテル、中山道と用水の境界地に建てられており、ペット連れ可の高級ホテルで、一泊2万円を超す値段とのこと。亡きバカ犬ピーちゃんにはおよそ無縁なホテルだが、どんなお犬様が滞在しているのか興味は尽きない。「今年は8月末までこちらに滞在するつもりですから、また寄りますよ...」と挨拶して、用水畔の件のペットホテルを覗きに行くと、確かに高級感漂う二階建てホテルで、一階はテラスから用水脇の通歩道に直接降りられる趣向。お泊りのお犬様達も血筋のよい高級犬ばかりだった。この辺りもまたまた様相が変わるのか...といささか寂しくもあったが、物事はなるようにしかならないものなのだ。

 
御影用水に関しては一つ嬉しい心温まるニュースを平井氏から教えてもらった。この追分通信にも以前よく登場していた、三羽のはぐれ鴨~彼らは用水の改修工事と共に姿を消し、野犬に食べられてしまったのでは...とのことだったが、その中の一羽が戻ってきているみたいだ...と平井氏は言う。三羽の行く末は大変気になっていたので、ドッグホテル探索のあと用水脇を注意して歩いてみると、確かに他の飛来鴨と違って、一段と大きな貫禄鴨が用水脇に孤独に佇んでいる。あ、あれは間違いなくはぐれトリオの中の一羽だと確信、嬉しくも大いに安心もしたものだった。その後少し遠回りして山荘に戻る途中、林間の草原の中をなんと雉が八羽ほど横切るではないか。すぐ脇は犬の散歩道になっておりどうなるか心配だったが、飼い主も雉の存在に注意して散歩させており、何事も起こらずホッとした。こんなに多くの雉の群れを見たのは初めてのことで、今年の夏は何かいいことが...と思っていたら、その数日後オリンピックの男子セブンスラグビーで、我がジャパンは強豪オールブラックスセブンスを破り、ケニアにも快勝。更にはフランスまで破りベスト4進出と言う信じられない快挙ニュースが飛び込んできた。残念ながら山荘にはTVが無いので、その圧巻の映像を見ることは叶わなかったが、まさに素晴らしい出来事で、昨年のワールドカップでスプリングボックス(南アフリカ)を破った時と同様の心弾むセンセーショナルな快挙。現地に視察に行っている「ラグビーマガジン」田村一博編集長も大喜びのはず。そのレポートは藤島大氏のラグビー番組でも紹介されるに違いないが、ラジオ日経のラグビー番組もまた一段と箔がつくだろうし、早速お祝いのメールを追分の山荘から、担当のH嬢にお送りしておきました。良かったね、ジャパンセブンス、そしてH嬢! 
【今週の番組ゲスト:ピア二ストでヴォーカリストの橋本一子さんとボサノヴァ アーティストの中村善郎さん

M1So Nice-Samba de Verão

M2My Cherie Amour

M3Eu Quero Um Samba

M4Sonho de Vento〜風の夢」

8月13日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.08/12 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.318~木全信さん追悼】

 梅雨が明けた7月終わりのある夜中、3件ほどの携帯Telがあった。こちらはなにも無い時には11時前には就眠してしまうので、翌朝早くこれに気付いた。何か良くないことが...などとつらつら考えてみると、1件思い当る件があった。2週間ほど前にtelしたある先輩の存在。その時はかなり元気が無かったのでもしやと思い確かめると、やはりその悪い予感通りで、先輩が逝ってしまったと言う。木全信さん。朝日・毎日・読売と言う3大新聞の死亡欄にそれが掲載されていたので御存じの方もおられるかも知れないが、日本を代表するジャズプロデューサーである。しかしそれ以上に彼は、かつての日本短波放送(現ラジオ日経)のぼくの先輩ディレクターであり、今から55年程前に我が「テイスト・オブ・ジャズ」を立ち上げた、その当人なのである。享年78。

 
このコラム担当のO部長から「最近また訃報関連が増えましたね」と嫌味を言われたが、木全氏死去とあればまず何を置いても書かなければならない。お許しあれ。彼は今年の初めに癌が見つかり、通院して薬物療法を受けていた最中の訃報だった。3月に銀座で一緒に食事をした時は、銀座の山野楽器で丁度彼が出したジャズ本「ジャズは気ままな稼業」に因み、彼のプロデュース作品を何作か掲示しており、それを見た後に数人で昼食を取ったのだった。その時病気になった事を彼から告げられたが、至って元気な様子だったが、その後状態は悪化していったのだろう。
 
彼は洒落者揃いのレコード会社の中でもとびきりにダンディな好漢で、絵に描いた様な慶応ボーイのもて男でもあった。ぼくのような東京育ちのかっぺに対し、木全氏は岐阜と言う地方都市出身ながらも都会的な洒落者。好対照な存在だったが、ぼくの大好きな先輩であり、頼りになる相談相手でもあった。

 
木全氏とぼくとは短波放送の制作部で2年程一緒で、彼はその頃からジャズの原稿を書くジャズライターでもあった。ぼくもジャズ番組の手伝いなどもさせてもらっていたが、彼は直ぐに営業部に移動、そして1年ほどでレコード会社に転職、制作や宣伝の仕事を手掛け、アルファレコードのお偉いさんにまで上り詰めたが、最後は自身のプロダクションを立ち上げ、そこで数多くのアルバムをプロデュースしたのだった。ある時誰かが彼に入れ知恵をし、世界最多のジャズ作品をプロデュースした人として、ギネスブックに申請してみたら...と持ち掛け、彼も満更でもなくやる気になり、そのおかげで彼のプロデュース作品を集める手伝いなどもやらされたが(結構大変な作業だった)、結局この話はお流れとなってしまった。でもそんな話を持ち掛けられる程、数多くのジャズアルバムを制作した人でもあり、恐らく300枚を超えるジャズ作品を発表したはずである。

 
彼が世に送り出した第一の存在、それがピアニストのケニー・ドリューだった。それまでは故国を離れ、欧州で地味な活動を続ける実力派だった彼に、一般受けするポピュラーナンバーのジャズバージョンを演奏させ、その心地良さがが女性ファンをメインに大ヒットを記録、当のドリュー自身もその人気の過熱振りに吃驚したほどだった。こうした選曲の妙、それが木全マジックと称されるものだが、反面ポピュラーな人気を狙った下世話な企画などと言う評価もあり、かなり毀誉褒貶の激しい人ではあった。だがきっぷのいい好漢だったことは間違いない。

 
もともとこの「テイスト・オブ・ジャズ」には前身の番組があり、それが「大学対抗バンド合戦」。これは音楽分野における大学インターハイのようなもので、このラジオ音楽フェスに出場、賞を獲得することが、多くのポップス系大学音楽サークルの夢でもあり、早稲田のジャズ研もこれに賭けていた。この企画を立案・実施したのが彼だったが、大手の広告代理店に入った東大ジャズ研のある男が、ラジオ東京(今のTBS)にこの企画をそのまま持ち込み、短波放送ではわずか数年で終了、その後ラジオ東京の人気番組になってしまったのだ。ひどい話だが局の力と言うか、どうしようもない。そこで木全氏がジャズ番組でもひとつ...と言うことで生まれたのが、今や民放ラジオ最長寿のジャズ番組となった、我が「テイスト・オブ・ジャズ」なのであり、かれが営業部に異動し、「お前が後を継げ」と彼からバトンを渡され早や50数年。局員達の様々な迫害を乗り越え、どうにか今に至っているという次第。木全氏すら「お前あの番組まだ続けているの...」と言うほどなのだが、そこはコケの一念。やれる所までやり続けますよ...。と言うことで9月の第1週の「ジャズ」は、ぼくが番組に登場、木全氏プロデュースの代表作を掛けながら、山本嬢と共に先輩の偉業(?)を回顧するつもりにしています。乞う、ご期待と言った所ですかね。

【今週の番組ゲスト:東京ジャズ プロデューサーの八島敦子さん】
今年、15回の記念の年を迎えた東京ジャズ。 92日(金)~4日(日)の日程で開催されます。

M1Last Train Home  /  Pat Metheny

M2Come Today / 渡辺貞夫」

M3「地中海の舞踏 / 渡辺香津美」

M4「疾走する閃光 / fox capture plan

M5Wonderland / 上原ひろみ」image1.JPG


8月6日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.08/05 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.317~サラバ「レーベルとピエール・バルー」】

 最近の若い人達の恋愛映画のベスト1が何なのかは分からないが、ぼくたち60年代に青春時代を過ごしたオールドボーイにとって、クロード・ルルーシュ監督、フランシス・レイ音楽のフランス映画「男と女」(カンヌ映画祭大賞受賞作)は、恋愛映画として常に3本の指に挙げられる傑品だと言える。この映画「シャバダバダ、シャバダバダ...」と言う洒脱なスキャット歌唱の主題歌が一世を風靡したもので、このテーマ音楽は今でも時々ラジオなどで聞かれるので、ご存知の方も居られるかも知れない。アヌーク・エーメとジャンルイ・トランティニアン。当時の人気スターが映画の進行係とプロレーサーと言うあの時代の憧れの職業人に扮し、悩み多き中にもいかにもフランスと言ったエスプリにも富んだ恋愛話を展開する(レーサーの方は彼の大事故でかみさんがショック死、進行係の方は自身の映画で旦那が事故死と言う、深刻な事情を抱える子持ちの寡どおしと言う設定)大人の恋物語で、大学生だったぼくや仲間連などはみんなこの恋物語に強い憧れを抱いたものだった。そのうえ映像も抜群で、この「男と女」そしてその対極にあったヌーベルバーグの鬼才、ジャン・リュック・ゴダールの「気狂いピエロ」。この2作が時代の恋愛事情を象徴していたとも言える。あれから50年、今またその「男と女」にスポットが当たりつつある。

 
ところでこの映画で主役のアヌーク・エーメの旦那、事故死する役者を演じたのがピエール・バルー。歌手の彼は映画の中でブラジリアンミュージックに影響された独自のセンス溢れた音楽(「サンバ・サラバ」等)を披露、強烈な印象を残したのだった。その彼が起こしたレーベル、それが「サラバ」で、今流行のインディーズレーベルのはしりとして世界中から注目を集めたものだった。あれから40年余り、「サラバ」は未だその命を長らえており、わずかだが独自の作品を発表し続けてもいる。このレーベルにはジャン・フィリップ・マスなどの知られざるフランスジャズピアニストの佳品なども数多くあり、ジャズ好きなバルーならではと言ったレーベルでもあった。日本でのこのレーベルの担当は「コアポート」の髙木洋司氏。レコード会社を辞めて自身のレーベルを立ち上げた彼は、大のバルー&サラバ・ファン。その彼が「サラバ」のコンピレーションアルバムを作ることを計画、その選者に選んだのが、今売出し中の女性ジャズDJの第一人者、大塚広子。盤回しからアルバム選曲など何でもこなす才媛の彼女、このコンピレーションでも独自の視点で愉しく厳しくバルーレーベルの全貌を味わわせてくれる。

 
そこでスタジオに彼女と髙木氏を招き、アルバム及び「サラバ」レーベルの沿革やその魅力について語ってもらうことにした。「男と女」は公開50周年ということで今また再注目を集めているようで、この秋にはプリントを新しくしての映画館上映も決まっているとのこと。それに伴いピエール・バルーのこれまでのアルバムも、レコード会社各社から再登場と言うことになり、時ならぬ「男と女」関連フェアーが実施されるとの話。またルルーシュ監督、フランシス・レイ音楽、この黄金コンビ久々の新作、インドを舞台にした中年男女の恋物語「アンナとアントワーヌ」もこの9月に公開決定している。この作品、試写会で鑑賞したが、出来は今一つもフランシス・レイの音楽はなかなかのものだった。 いずれにせよ傑作恋愛映画「男と女」、バルーが唄う自作の数々もセンス溢れた素敵なものばかりなので、この秋は彼と「サラバ」、に注目して下さい
 
【今週の番組ゲスト:DJ大塚広子さんとCORE PORT代表 髙木洋司さん】 
JAZZ EXTRACT of SARAVAH SELECTED BY HIROKO OTSUKA」から
M1「L'autre rive/Pierre Barouh」
M2「Bulerias Hermanos/Armadillo」
M3「Accordéon/Daniel Mille et Pierre Barouh」
M4「Les fous de Bassan/Daniel Mille」
M5「Maria Candida/Mas Trio」

7月30日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.07/29 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.316~巨泉さん逝く】

 我らがジャズ番組「テイスト・オブ・ジャズ」では、この4月から月終わりにジャズ評論家の青木和富氏に登場いただき(はるか富士山山麓から毎回足を運びご苦労さんです)、ジャズのお勉強と言うことでジャズの歴史を振り返りつつ再度ジャズを体系的におさらいしてみようと言う教養講座を開催しているが、今回のテーマはクール・ジャズ。盲目の鬼才ピアニスト、レニー・トリスターノを主軸に、その俊才白人門下生たちが集まったクール・スクール(=別名トリスターノ学派)でリー・コニッツやウオーン・マーシュ等々が指導を受けた、意欲的で実験的、冷徹な(クール)表情を持ったこのクール・ジャズ。特に師匠格のトリスターノの演奏は、ビル・エバンスを通し今のピアニスト達にもある種の影響を与えているとも言えるもので、今聞いても中々に新鮮な響きがあり、そこら辺を和富氏に解説頂く。

 
ところで7月初めの永六輔さんに続き、ガン闘病中だったタレント、巨泉さんの愛称でおなじみの大橋巨泉氏が亡くなってしまった。
 
早稲田大の学生時代からジャズ評論やジャズ・コンサートの司会を務め、ジャズ界きっての才人だったが、ジャズは金にならないと早々と見切りをつけ(当時のジャズ雑誌「スイング・ジャーナル」の原稿料は無きが如しと語ったのは知る人ぞ知る話)、放送作家、テレビ司会者とキャリアアップを図り、TV界を牛耳る最も有名な放送界のドンの一人となり、政治家にまで上り詰めた人だった。ぼくは巨泉さんとの番組でのお付き合いは2度ほど。一回は彼と同期の昭和9年会の特別番組。これは昭和9年生まれの有名人たち100数人の集まりで、藤村俊二、長門裕之などかなり多士済々の面々が集まっていた。この会の周年記念で何か特番を...と言うことになり、巨泉さんの音頭だと思うが2時間余りの特別番組を企画したことがあった。そしてもう一回はこれも今は亡きジャズ評論家、岩波洋三さんとのジャズ特別番組でゲストに来てもらったとき。当時最も高いギャラを取っていた巨泉さんに、お礼のギャラなど払えるわけもなかったが、当時彼が編集したジャズボーカルの本(岩浪氏と共著だったはず)に関係して、色々とボーカルのうんちくを披露してもらったと思う。

 
彼は早稲田の学生時代に当時最も売れっ子だったマーサ三宅さんと親しくなり、ちゃっかりと彼女と結婚。姉さん女房のマーサさんの紹介で、物書きや放送と仕事を拡げて行ったシンデレラボーイでもあった。ぼくはマーサさんとはアルバムプロデュースなどもやらしてもらい、親しくしてもらっているだけに彼女の肩を持ってしまうが、巨泉と言う男、中々に憎めない目端の利く若者だったようである。しかし売れてくると...と言うことで、マーサさんから一転若い美人女優(鈴木清順監督の名作「喧嘩エレジー」のヒロイン役)に乗り換えてしまい、以来成功の道まっしぐらと言った感じだった。マーサさんとの間には2人の娘さんがおり、2人ともジャズボーカリストとして活躍。数年前には巨泉さんとデュオアルバムなども出したりしていた。しかし病気が見つかってからは闘病生活が厳しかったようで、最後には週刊誌の連載エッセイも止めてしまった。悪しき時代に向かいつつある世相に、厳しい警鐘を鳴らす含蓄ある好エッセイだけに、大変に残念だった。

 
ジャズについて彼は、ボーカルの権威、白人の美人系ボーカリストがお好みで、独特な視点を持ったユニークなボーカル論を展開、その見解は今でもかなりな意味合いを持っている。ただやはりエンターテインメントの人、尖がった演奏物などは拒否といった頑なさもあったように思える。
 
いずれにせよ巨泉・六輔。この2人の偉大な反骨の人にして、偉大なマスコミ・ラジオTV文化人達の魂に合掌!
【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
M1「Progression/Lee Konitz」
M2「Line Up/Lennie Tristano」
M3「There Will Never Be Another You/Lee Konitz」
M4「Move/Miles Davis」
 

7月23日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.07/22 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.315~時代は】

 7月初め、軽井沢ジャズフェスなどの用事もあり追分の山荘に数日滞在、10日の参議院選挙投票を行うために帰京、何か悪い予感がしていたが、その夜の開票速報番組スタートと同時に、自公など改憲勢力が3分の2か...とテロップが出て、以降もその通りの動き。まあある程度予想はしていたがこんなに急速に時代が悪い方に向かいつつあるとは、流石にびっくりだった。世界に冠たる平和憲法とその根本にある平和主義を、時代を読まないある意味KYな考え方だとして排斥しようとする、悪しき傾向が広がりつつある。ぼくのようなオールドボーイが、そんな危険な傾向を嘆いてもどうしようもないのだが、考えてみれば今や若年層から子供たちまで、街にはゲームと言う形でウオー=戦争で溢れ返っており、無自覚に戦争を愉しんでいる傾向すらあるこの時代に、平和や個人の人権などの意味合いを説くのは大変なことだが、そこは何とか頑張らねばならないのだ。
 あのトレンディ俳優とされる石田純一が、突如として都知事候補として立候補...(結局はやめたのだが...)と言ったニュースはある意味驚かされもしたが、悪しき時代へ向かう流れへの精一杯の抵抗の現れだったとして、彼の少し先輩としてはその心情、良く分かる。
 そしてついにジャーナリストの鳥越俊太郎が立った。かつて何回かインタビューもさせてもらった鳥越氏。同世代の彼の不退の決意。かつてガンを患いながらも、その心配を乗り越え良く決意したものである。その心意気、高く評価したいし、最大限に協力したいが、結果はどうなるか神のみぞ知るや...である。

 
ちょうどこの大変な時にタレントの永六輔が亡くなったと言うのも、ある象徴的な事件だった。永さんとは番組などでのお付き合いは一切なかったが、全国各地の廃れ行く放浪芸を探し歩く特番を制作している時には、そうした演芸者の会での楽屋(浪速の浪曲師、広沢瓢右衛門や越後のごぜさんの生き残りなど)ではよく一緒になることもあり、確か瓢右衛門さんの大阪花園の実家では、一緒に酒を飲んだりもしたはずである。
 「大往生」等のヒット作も書かれた永さんは、異様なほど礼儀に厳しい人で、瓢右衛門さんに対する敬意がお前には無い、それでは制作者として駄目だ...などと叱られたこともあった。口うるさい人でありTBSのラジオ番組デは、晩年ほとんど口が廻らないところも多かったが、番組に賭ける情熱は凄いものがあり、それは同時に平和憲法を守ると言った戦後マスコミ知識人としての矜持でもあった。彼は廃れ行く芸能の理解者であると同時に、ジャズ愛好家でもありそうした議論は楽しいものでもあった。合掌!

 
ところでジャズも軽井沢ジャズフェスを始め、盛夏を迎え佳境に入りつつある。かつての大規模ジャズフェスこそ影を潜めてしまったが、9月初めの東京ジャズや横浜のブルーノートフェスなど、いくらかかつての隆盛を取り戻しつつはあるようだ。どれほどそれらに参加できるかわからないが、行けるものは行きたいと思っている。しかしこの時代の悪い流れ。それが気になって音楽にも没頭できないのもまた事実なのだが...。

【今週の番組ゲスト:ジャズサックス&フルート奏者の多田誠司さん】
M1「OLEO」
M2「残照」
M3「WARM WOODS」
M4「HACKER」

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