7月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020.07/09 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は7月より、木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.521~追分2020 初夏】

  コロナ禍による各種の自粛令も解かれ、都府県を跨いでの往来も解禁となったことで、6月末の数日、追分の山荘に行ってきた。前回は自粛令の真っただ中のGW期間中の滞在で、水道管の工事立ち合いの為致し方ない越境だったが、今回は堂々と埼玉・群馬県を跨いでの信濃追分入り。前回は上越・長野道も車がほとんどいなくてすいすいと走れ、軽井沢に入るともう閑散どころでは無く、人や車を全く見かけない状態。軽井沢の駅前に立ち寄ってみたがここも人っ子一人いないで、新幹線からの乗降客もほぼ皆無。こんな悲惨な状況、と言うよりもこれが本来の姿かも知れないが...、こんな状態はぼくが知る限り今まで無かったし、明治末期に保養地として軽井沢が開かれた当時を彷彿させるものなものかも知れない。全く驚かされたものだった。
 駅前のプリンス・アウトレットも全面閉鎖なので、もし何かで立ち寄ったとしても、行き場が無いと言うのが実情なのだろう。軽井沢の馴染みのレストランに顔を出すと「小西さん何時こっち来たの...、10日以上こちらにいない人は入店お断りなの...」とつれなく拒否。まあこれも致し方ないと直ぐに諦めたのだが、あれから1か月半、今回はぞろぞろと駅前を人々が歩いており、アウトレットもかなりな賑わい。いつもほどでは無いだろうが、ほぼ人の流れは復活した感じで、街もそれなりの活気に溢れており、実のところホッとした。

 それにしてもやはり追分の山荘に来ると気分が落ち着く。森に包まれての日常は、何とも気持ち良いし癒される。御影用水沿いの散歩道を早朝散歩していると、鴨の群れが10数羽、それも二つのグループがいて全部で20羽以上、無心に水遊びに興じており、それを眺める犬連れの散歩客もまた結構いる。用水沿いの森では、カッコウやホトトギス、ウグイスが鳴き交わし、小鳥達の早朝コーラスと言った感じで何とも爽やかだし、1時間以上の散歩も実にスムースに運ぶ。

 今回の山荘滞在は、ジャズのライブ鑑賞も一つの要因。前からぼくの軽井沢最大のお勧めスポット、カーペンター(?)平井氏が自身で作り上げたお店「オーベルジュ・グルマン」(コロナ禍の中でもどうにか頑張っています)、ここで「ジャズライブ」をやると言うのでお誘いを受けており、折角なので鑑賞させてもらうと言うもの。昨年の11月にもお店は初ライブを敢行、その時にも誘われたのだが都合がつかず断念。次回は是非...ということで、今回のライブ鑑賞と相なったのだった。演奏者は前回と同じくサックス奏者の田中邦和、彼のソロ演奏である。

 ライブスタートは夕方の6時半。用水沿いの小道を歩いて30分ほど、久々のグルマン来訪。5月はコロナ禍の影響で大部分お休みを取っていたらしいが、6月から再スタートし厳しい状況の中、シェフの娘さん(今や店の主役)中心に頑張っている。密を避けるためにテーブルも間隔を取り、全部で10数席。主役の田中氏とは未だ面識ないのだが、洋輔さん(山下洋輔)のフルバンドに参加していたり、サックスだけのカルテットを編成したりと、硬軟実に多彩な活動を展開している人とは聞いている。それだけに楽しみだったが、実際のソロ演奏も硬軟取り入れたアトラクティブなもの。お客さんはお店の常連中心で、余りジャズに関心は無さそうだが、そうした人も巻き込むほど充分に愉しませつつ演奏を進めて行く。地元にゆかりの深い武満徹の「翼」、エディーハリスの「フリーダム・ジャズ・ダンス」など、自身のチャントも織り込みかなり熱気の籠ったソロを展開し、2ステージ2時間ほどのライブは締めくくられた。 

 終わって平井さんに紹介され色々と話をすると、山下さんは勿論後輩のW君(ソニーのジャズディレクター)やサックス奏者の川嶋哲郎くん等々、共通の知り合いも多く話も弾んだ。折角の縁で知り合ったので...と言うことで、9月辺りオンエアー予定で番組に遊びに来てもらうことにした。中々の好漢でプレーも溢れた優れもの。皆様も彼の登場、是非愉しみに待っていてください。

【今週の番組ゲスト:熱帯JAZZ楽団リーダーのカルロス菅野さん ツインミュージック代表の生明恒一郎さん】

熱帯JAZZ楽団25周年の記念アルバム
『熱帯JAZZ楽団 ⅩⅤⅢ25th Anniversary』から
M1THE LADY IS A TRAMP
M2.!ESO ES !
M3LA VERDAD
M4CARAVAN feat. CHAKA


7月2日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020.07/02 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は7月より、木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.520~赤木りえ】

 我等がジャズ番組「テイスト・オブ・ジャズ」は、今月から放送曜日が変更になり毎週日曜日から木曜日の夜に移動(再放送は金曜日夜)、新たな心持でパーソナリティーの山本郁嬢共々、頑張るつもりですので色々よろしく...。

 さて今回は先週のこのコラムでも紹介したように「コロナ禍をぶっ飛ばせ~元気の出るジャズを...」と言うテーマの2回目で、今週は元気ジャズと言えばやはりラテンジャズ=サルサと言うことで、カリビアン(トロピカル)ジャズフルートの第一人者、赤木りえさんに登場してもらうことにした。ジャズフルートの大家にして、美形ジャズプレーヤーとしても知られる彼女、今回がなんとこの番組初登場なのである。自身のアルバムだけでこれまで15枚も発表しており、共通の知り合いも多くデビュー直後からアプローチをかけていたのだが、スケジュールなどが合わなかったり、彼女自身が第2の故郷とも言えるプエルトリコに居たりと、NGの連続と言うまさにレアケースがこれ迄だった。それが今度の新作ではライブもコロナの為に中止、家庭の事情もあってここ数年は日本在住などの条件も揃い、ようやくスタジオに遊びに来てくれることになったのだ。感謝・感激である。

 実際の彼女、熱さが売り物のトロピカルジャズプレーヤーにしては実に上品でシックなジャズレディー、想像以上に心惹かれる存在だった。東京芸大のフルート科卒業と言う本格派だが、どういう訳かこの道に迷い込んでしまい、今やカリビアン(トロピカル)フルートの女王とも言える存在として、日本以上にラテンの本場、カリブ海の島国プエルトリコでの人気が高く、この国の親善大使も務めており、ある種プエルトリコの人達のアイドル的存在だとも聞く。そんな彼女だけにこれまでのアルバムは、この国と密接な関りを持ったものが多いのだが、今作はラテンジャズの本場NYに進出して録音したもの。なんとラテン&サルサ界の超大物ラリー・ハーロウが全面協力しており、バックのミュージシャンも彼のつてでNYラテンの腕利きがずらりと顔を揃えると言った豪華さ。ラリー自身も彼女を直ぐに気に入り、何でも協力してくれたと言う。
  アルバムのタイトルは『魔法の国の魔法のフルート』と言うことでウイッグを付けた彼女は日頃とは一変した、妖艶な姿でフルートを手にしており、そのプレーだけでなく姿・形もかなり刺激的で、一寸バンプ風な張っちゃけた趣きもあり興味深い。

 番組ではNYでの録音の模様や、ロックの銘品のラテン化など、色々と新たな取り組みで苦心した所なども語ってくれており、実際にスタジオではフルートを手に、ラテン風、和風、クラシック風などと、それぞれ短く吹き分けてくれており、そのサービス精神にも感謝の一言。素敵な女っ振りで益々ファン度を高めてしまった。
 嬉しいことに彼女は、スタジオ収録後すぐに自身のフェイスブックに番組出演の話を挙げてくれ、その添付した写真には、我が「テイスト・オブ・ジャズ」がラジコのタイムフリーランキング4月分で、同時間帯ラジコ参加番組中全国で第3位と言う好成績を収めた掲示迄、アップしてくれている。まあ手前味噌になるので余りこの快挙(?)には触れないようにしていたのだが、この掲示がアップされているならば大手を振ってその好成績をリスナー&ジャズファンの皆様にお伝えしたいとも思う。「たかがジャズ、されどジャズ」~やはり歴史ある「テイスト・オブ・ジャズである。赤木りえさん、この素敵なフルートの化身には、是非また御登場を...と強く願った次第です。

【今週の番組ゲスト:フルーティストの赤木りえさん】
新譜『魔法の国の魔法のフルート』をご紹介頂きました。

M1
El Paso de Encarnacion(小麦色のお嬢さん)」
M2
The Smoke Rings & Wine
M3
Misirlou
M4
White Bird(Vocal version)



6月28日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020.06/26 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は6月まで日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00と金曜18:30~19:00で再放送中(7月からは木曜22:30~23:00が本放送となります)。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.519~元気が出るジャズ】
  
 今週から4週に渡って「コロナ禍を吹き飛ばせ~元気の出るジャズ」をシリーズでお送りする。ジャズは元々元気のある音楽で、人々を力づける意味合いも強い。そこでジャズを通してコロナ禍の閉塞状況を乗り越えようではないか...と言う趣旨。

 まず今週は評論家青木和富氏の「ジャズ・トーク」をこのテーマでお送りする~青木流元気の出るジャズを実現することに...。掛けるのはチャールス・ミンガスの「フォーバス知事の寓話」。人種差別に果敢に立ち向かっていったベースの巨人チャールス・ミンガス・バンドの荒々しいコレスポンデンスは、けだし聞き物。またチャーリー・ヘイドン・オーケストラの「ウイ―・シャル・オーバーカム」は全員が平和の願いを込めたその想いも熱い。プロテストする思いの詰まった力感一杯の演奏が選ばれている。
 
 そして7月の最初はトロピカルフルートの第一人者赤木りえさんが登場して、NYラテンの大物達との共演した新作を紹介してくれる。彼女はプエルトリコの親善大使を務めるほどこの国と関係も深く、多くの国民から愛されているのだが、今回はNYラテン~サルサの本場NYに進出、同地の大物ラリー・ハーローと共演、新境地を開いた所を意気込み充分に示してくれる。ラリーも赤木さんにメロメロと言った有様で、その模様も良く分かる熱く爽やかな演奏が聞き物となっている。
 
 第3回目はラテンジャズと言ったらこのバンドと言うことで、我が国のトロピカルジャズの極めつけ「熱帯JAZZ楽団」のリーダー、カルロス菅野氏が久々にスタジオに遊びに来てくれる。今までのビクターを離れ、今流行りの「クラウドファンディング」方式で資金を集め、周年記念アルバムを作ったと言う意欲作。熱いホーン陣の咆哮、リズム隊の切れの良さなど、流石老舗バンドならではの素晴らしさ一杯の素敵な仕上がり具合。カルロスは同時にヴィデオも出してこのレコーディングの模様を伝えてくれるが、このアルバムに賭けた彼の意気込みを番組では吐露してくれている
 
 そして最後は「コテコテジャズ」の愛称で知られるジャズライターの原田和典氏が、黒人臭ムンムンの泥臭くも熱いまさに「コテコテジャズ」の名盤を紹介してくれる。純生ジャズ~楽園系ラテンジャズ、そしてコテコテの黒人=ソウル。ジャズ迄。この4回シリーズはコロナでいささか元気の出ない音楽ファンの血を熱く燃え上がらせてくれるに違いないと思います。是非ご期待の程...

【今週はジャズトーク】

音楽評論家の青木和富先生と人種差別問題をジャズミュージシャンがどう表現してきたか考えます。

M1
We Shall Overcom(勝利を我等に) / Liberation Music Orchestra
M2
Strange Fruit(奇妙な果実)/ Billie Holiday
M3
Freedom Suite(自由組曲)/ Sonny Rollins
M4
Fables of FaubusOriginal/ Charles Mingus
M5
Hymn To Freedom(自由への賛歌)/ Oscar Peterson


6月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020.06/19 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は6月まで日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00と金曜18:30~19:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.518~栗林すみれ】

 
  ジャズファンの中では、もう長い間楽器としてピアノが最も高い人気を誇っており、実際のところジャズアルバムで売れるのも、ピアニストのもの、それもピアノトリオのアルバムと相場が決まっている。そのジャズピアニストの世界、わが国では男性陣よりもむしろ女性陣の方が勢いがある...と言うか、上原ひろみ、山中千尋、大西順子等々、注目すべき人材を数多く輩出しているようにも思える...。そうしたこともあり番組では、女流ピアニストを...と言うことで、先週と今週2週にわたって新旧を代表する女性ピアニストに、TEL登場(コロナ禍での措置)してもらうことにした。先週は日本を代表する人気ピアニストの一人、国府弘子。実に6年振りの番組登場で、自身も数々の大病を乗り越え今に至っている訳だが、そんなことを少しも感じさせずに、このコロナ渦の中でも溌溂とした所を示してくれた。安心しました。


 そして今週の登場は、ぼくの一押しの若手ピアニスト、栗林すみれ。もう何回か遊びに来ているが、久しぶりにスタジオで会いたかった。だがコロナ禍でそれも叶わずTEL収録。彼女が初リーダー作『トイズ』を発表したのは2014年で、6年程前のこと。そのアルバムを引っ提げて来てくれたが、以降コンスタントにアルバムを発表し、今回の新作『ネームレス・ピアノ』で5作目。


 デビュー作からロマンチシズム溢れたピアノプレーを聴かせてくれ、すぐに彼女のピアノに魅了されたのだが、その才能に最も感心したのは3作目の『ピーセズ・オブ・カラー~光彩』。これは大編成のユニットもので、その作・編曲、特にユニット全体を生き々と動かすアレンジ力には目を見張らされるものも多く、伸びしろ具合でピアニスト&作・編曲家として、遂に第一線に躍り出た感も強かった。
 そして今回の最新作だが、これは初のソロアルバム。それも自宅で自身のピアノでほぼ1年間かけて、じっくりと収録した(宅録)ものがメインで、残りの数曲は北海道のスタジオでの収録となっている。自身の愛着多いピアノでじっくりと自身で作り上げた作品。それだけに想いも深いアルバムになっているようで、彼女も嬉しそうに音取りの苦労話などを語ってくれている。


 タイトル曲の「ネイムレス・ピアノ」とは自身のピアノのことを指していて、番組でもまずこのオリジナル曲を取り上げている。その他自身の敬愛するピアニストのオリジナルや、ぼくも大好きなノスタルジックなスタンダードソング「アイル・ビー・シーイング・ユー」などの銘曲と、アルバムは彼女の趣向が満開された多彩さ。番組ではタイトル曲のほか2曲の即興ナンバーを紹介しているが、「カラード・ウッズ」と題された1曲は、日本画家の大家、東山魁夷の作品にインスパイアされて綴った心に染みわたる抒情的小品。ジャケットも知り合いの針金作家の作品という凝り様。明るく可愛らしく性格も抜群。今最も注目のピアニストの優しくも深い心根が、良く分かる好番組になっています。是非聴いてみて下さいね。


【今週の番組ゲスト:ピアニストの栗林すみれさん】
初のソロアルバムNameless Piano』をご紹介しました。
M1
nameless piano

M2 improvisation colored woods カラードウッズ」

M3 improvisation piangere ピアンジェレ」

M4 A lovely way to spend an evening

6月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020.06/12 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は6月まで日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00と金曜18:30~19:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.517~小説の中のジャズ】

  井上荒野(あれの)と言う作家ご存じだろうか...。もう10年以上前に「切羽へ」と言う作品で直木賞を取り、その他織田作之助賞・柴田錬三郎賞など数多くの文芸賞を獲得、女流作家の第一線に位置する人で、最近も雑誌などでよく見かけるので、少し本好きの方ならばご存じだろう。その彼女が自身の父親で作家の井上光晴、その美しい妻=荒野の母親、そして瀬戸内寂聴(晴美)、この3者の不可思議な関係(光晴と寂聴の長年の不倫関係がベース)を描いた作品「あちらにいる鬼」(朝日新聞出版)を、このコロナ禍の蟄居中に読んだ。前々から読みたいと思っていた作品で、鬼とは父親光晴を指しているのだが、想像していた通りに修羅を描いた凄味のある所謂「問題作」だが、透徹した彼女の視線も光る大変に面白い作品だった。残念なことに肝心の主役鬼=井上光晴自身が、今や埋もれてしまった忘却の存在だけに、思ったほどの話題を集めなかったのは残念な事(92年没、享年66才)。


 作者の井上荒野はハードボイルド作家を除くと、そのほとんどの作品を読了している数少ない作家の一人(あとはこれも女流の桜庭一樹くらい)で、恐らく現在の日本の小説家の中でもその情緒表現の巧みさでは群を抜いた存在だと思う。その上彼女の小説は中・短編が多いので読み易く、ぼくの大のお気に入り。その彼女の作品で最初に読んだのが「潤一」(2003年)。潤一と言う若い男性を巡る、その周りにいる女性達を順番に主人公として描く、所謂「輪舞」形式の作品でこの小説形式はぼくのお好みの上に、その描写の旨さ・確かさには感嘆した。その上主役の潤一はどの章にも一切登場しない、影の存在という設定も秀逸で、直ぐに荒野と言う存在に惹かれてしまい、その上父親が作家の光晴だと知って驚かされた。


 父の光晴は戦後文学を代表する一人で、今は無き新日本文学などを拠点に活躍した左翼系文学者で、ぼくの学生時代には、多くの若いファンがいた。被爆者や部落民等を扱った社会派の重厚な作品も多く、その鋭く社会を告発する作品トーンは、当時の問題意識を持った学生達に、訴えかける所も多かった。しかしその私生活は女性にモテると同時に、手当たり次第に漁り捲ると言った、曰く付きの無頼派だった様で、浮気を重ね続けその極点が当時の流行作家、瀬戸内晴美だったと言う訳。そして晴美が今の寂聴へと名前を変え、出家する動機になったのが、光晴との長い不倫関係の清算だったと言う辺りも驚く。そこら辺を赤裸々に描き出したこの作品、モデル問題で肝心の寂聴が激怒か...と思いきや、彼女はこの作品の帯に「モデルに書かれた私が読み、傑作だと感動した...」と言う推薦文を書いているのである。ここら辺もまた凄い所(光晴の葬儀の弔辞も寂聴が読んだとも言う)で、皆様も是非お読みいただきたい一冊だ。


 いささか長い前置きになってしまったが、本題「小説の中のジャズ」と言うことで...。この小説を読んでいたら(1966年~2014年までが舞台)、チャプター6:1978年~88年の冒頭に「午前0時を過ぎ篤郎(光晴モデル)とわたし(妻、荒野の母親がモデル)は、ダイニングテーブルに向かい合い、ウイスキーを飲んでいる。さっきまでキース・ジャレットのレコードを掛けていたが、針が留まったがそのままになっている...」と出て来る。この作品の中で唯一の音楽登場場面がこれで、それもキース・ジャレットとあるから、どうやらソロアルバム...ではと想像が働く。ライブものかスタジオものか...、一体彼女は何を掛けていたのか...。興味深々なのだがとかくハードボイルドの私立探偵ものでは、ジャズがかなり重要な役割を担うことも多く、それもぼくがハードボイルド探偵作品(ロバート・パーカー作品等々)を好む一つの理由でもあるのだが、こうした半私小説でそれも余りジャズなど関係ない登場人物、全体の展開の中で、突然にジャズが登場となるとちょっとびっくりだし嬉しくもなる。光晴の妻で荒野の母親は、美人で有名だったと言われるが、実際に写真で見てもかなりな美形であることが窺われる。そんな人がジャズアルバムを夜中に一人で掛けている...。何やら象徴的な場面だし、その音楽がキースだとは...。ここはクラシックでもポップスでも無く、やはりジャズそれもキースなのである。


 今キース・ジャレットは、病の床にあるとも言われ、もう長い間アルバムも出さずライブもやっていない。そんな彼だけに余計この井上荒野の小説での登場は嬉しくなってしまった...、と言う個人的なお話でした。


【今週の番組ゲスト:ピアニストの国府弘子さん】
24枚目のアルバム『ピアノパーティ』から4曲ご紹介します。

M1
Reborn
M2「ジャズ婆ちゃん」
M3「アディオス・ノニーノ」
M4「コズミック・ランデブー」


6月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020.06/05 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.516~YouTube】

  非常事態宣言は解除されたが以前蟄居生活は続く...こうなるとやはり生活に変化も求めたくなってくるが、こんなオールドボーイはそう遠出が出来るものでもない。まあGWには水道管修理の立ち合いの為、追分の山荘に数日いたのだが...。それ以外は完全蟄居生活で室内生活。と言うことで読書やアルバム鑑賞・整理と、特に目新しくもない趣味生活となってしまうのだが、このところメールやフェイスブックなどで連絡が絶えないのが、ミュージシャンやシンガーによる無観客ライブのお知らせ。大部分は休業中のライブハウスからの中継と言う形だが、中には自宅からの中継ライブと言う形もある。ミュージシャンにとってもライブハウスにとってもここは死活問題で、無観客ライブながらも追い銭方式で観客(参加者)からフィー(対価)を募ると言った形式も多いようだ。

  ぼくが最初にこのライブに気が付いたのは、NYの自宅からソロ演奏の模様を送ってきたピアニストのフレッド・ハーシュだった。今やジャズピアニストの頂点に立つ一人でもある彼は、長い間難病(エイズ)のせいで入院生活を余儀なくされていたのだが、ようやく復帰すると今度はコロナ渦。ただその旺盛な表現意欲に促され、自宅でのソロを世界中のファンに...と思ったのだろう。病のため頬も扱け全体に生気は乏しいがその演奏は実に美しいもので、10分強の短いものだが充分に心打たれるものだった。その後も何回か彼は発信を続けてくれたが、その初回は確か2月の初め頃で、まだ日本ではライブ中継はそうなかったと思う。それが東京をはじめ全国に非常事態宣言が出され、首都圏のライブハウスも休止、ライブスケジュールも取りやめか延期となると、次々と演奏家や歌手達がライブハウスから無観客のライブを敢行、「今夜の8時からですからチェック宜しく...」といったお知らせが届くようになり、2つ3つ重なることもざらで、どれを見ればなどと悩むこともある。だが出来る範囲でなるべくお付き合いをしている。「セイブ・ザ・ジャズ」「セイブ・ザ・ライブハウス」の精神である。 
 
 ベースの井上陽介、オルガンの土田晴信、ピアノの小曽根真、岩崎良子、サックスの竹内直等々、それぞれに画質や音質、更に映像処理の問題など課題も多いのだが、それぞれが工夫をしてそれなりに雰囲気を出している。特に土田君はオルガンも自身で修理してしまう程メカにも強いだけに、見事な画面・音声処理で愉しませてくれる。まあこうした音楽家達の努力が早く実を結び、コロナ禍以前の日常に戻る日が来ることを切望している。
 

  こうした無観客ライブと並んで今関心があると言うか...、ある意味嵌っているのが、ユーチューブでのジャズ関連ライブ鑑賞。あるミュージシャンの資料を調べる為にユーチューブを見ると、それの関連映像が次々と出てきて止まらなくなってしまった。ユーチューブの出初めの頃にも、一時そんなマイブームがあったが、それがこのコロナ禍の蟄居生活でぶり返してしまったのである。どうしてもファニア・オールスターズやエディ・パルミエリなどのラテンジャズ関連が多いが、今シーンのメインを担うロバート・グラスパーの「ビレッジ・バンガード」でのトリオライブ(1時間半以上の長尺もの)などニューチャプターもの、それに我らがヒロイン、上原ひろみのトリオライブ等々、見始めるとやめられないし、画像があるのはやはり一段と興味をそそられる。そんな中で興味深かったのは、あのスティングの歌うスタンダード集。これは編集ものの様だがスティングがジャズスタンダードを歌った幾つかのライブ映像をまとめたもので1時間近い内容。そしてそのスティングの十八番「フラジャイル」を、パット・メセニー、マイケル・ブレッカー、ジョン・パティトッチなどオールスターメンバーで取り上げている、ジャズフェスライブの映像も素晴らしいものだった。マイケルがまだ健在なので10年以上前の映像だと思われるが、メセニーやマイケルの演奏がなんとも凄い。スティングを見ていて偶然見つけたものだが、これは儲けものだった。こんな思いがけない楽しみがあるからユーチューブ漁り、止められないんですね。


【今週の番組ゲスト:フルーティストの佐々木優花さん】
5枚めのリーダー作『Humanbeans』をご紹介
M1Humanbeans
M2Reflection in water
M3「さくらさくら」
M4Someday my prince will come

5月31日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020.05/29 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.515~ジャズボーカルの注目株】

 ぼく自身は余りジャズボーカル好きというのではないが、どういう訳か担当しているジャズ専門誌のディスクレビュー(アルバム評)などではボーカル作品が回ってくることが多い。これには全般にCD不況とも言われる折、新人ボーカリスト達が名刺代わりにアルバムを作ることが多く、一見ボーカルシーンが賑わいを見せている...と言う事情も作用しているようだ。但し困ってしまうのはこんな力量の人がアルバムを...、と思うようなのが結構あること。そうなると正当な評価などは出来にくいのだが、その彼女達(多くは女性シンガー)も、かなり張り切り無理をしてでも一枚のアルバムを作り上げた...という、その熱意や事情も良く分かるだけに、余り厳しい評価も...と言うことになる。まあここら辺りがレビュアーのきつい所なのだが...。

 さてそんな日本のボーカル事情はさておき、本場に目を移してみると流石にこれは...と思わされる実力派も次々登場、充分に愉しませてくれる。そんな中今ぼくが注目しているのが、キャンディス・スプリングス。ボーカルの世界に新登場した新星だが、ジャズボーカルの世界はカントリーミュージックタッチのシンガーソングライター、ノラ・ジョーンズの出現で、シーンは大きく変化した感もある。ある意味ノラ以前と以降と言った感じなのだが、更に黒人の代表格カサンドラ・ウイルソンもノラとは異なった側面から、ボーカルの新しい波を起こしており、この2人を中心に動きつつあるとも言える。まあこうした新しい波と同時に、エラ・フィッツジェラルド、カーメン・マクレー等と言った、今は亡き大御所達が築き上げたオーセンティックなジャズボーカル世界も、今なお厳然として存在している訳なのだが...。そうした新旧(?)のジャズボーカルシーンをうまくミックスして自身の世界を構築している一人が、このキャンディス・スプリングスだとも言える。彼女はカントリーミュージックの本場、テネシー州ナッシュビルの生まれ育ちで、現在もこの地を拠点に活躍していると言う異色の存在。カントリーの本場育ちと言うと、白人シンガーの様にも思えるが黒人の歌い手で、父親はこの地でよく知られたソウル系シンガー。その父親の影響も大きいのだが、その彼女の新作『私を作る歌』は3枚目のアルバムで、デビュー作はソウル色の濃いアルバムだったが、2作目ぐらいからジャズ色も加わって来ており、この新作で一挙にジャズシンガーとしての地歩を固めた感も強い。

 アルバムはそのタイトル通り、自身の歌手としての大切な要素を作り上げてくれた、偉大な先輩シンガー達にリスペクトを捧げたもので、彼女達の持ち歌を自分なりのテイストで仕上げており、憧れのノラ・ジョーンズなどは一緒に共演したりもしている。ここでは女性ジャズボーカルの大本とも言える、レディー・デイ=ビリー・ホリディ(曲は「奇妙な果実」)から、エラ(「エンジェル・アイズ」)カーメン(「ソリチュード」)と言った大御所、更にアイドルでもあるノラ・ジョーンズやロバータ・フラッグ、ローリン・ヒルと言ったコンテンポラリーシンガーたちの持ち歌を取り上げ、ジャズをコアにソウル~ロックと言った幅広いフィールド迄も網羅し、自身のジャズワールドに作り上げている。仲々に見事だし聴き応えも充分。ご愛嬌なのはあのキャロル・キングの銘品「ユーブ・ガッタ・ア・フレンド~君の友達」を、日本の山崎まさよしとデュエットで聴かせてくれるところ。山崎の唄声もなかなかジャージで魅力たっぷりだ。

 これからのジャズボーカルの世界を担う有力な資質として、キャンディ・スプリングの存在、是非注目して欲しいものです。

【今週の番組は昨年4月に放送したものの再放送】

音楽評論家の青木和富先生に「平成のジャズ」というテーマでお話し頂きました。
M1The Doo-Bop Song / Miles Davis
M2Bye Bye Blackbird / Keith Jarrett
M3Spiral / Hiromi Uehara
M4Lifeline / Vijay Iyer & Craig Taborn
M5Don't Know Why / Norah Jones
M6Some Enchanted Evening / Sonny Rollins

5月24日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020.05/22 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.514~リッチー・コールのこと】

 この言葉もう使いたくないのだが、やはりそうも行かない。「コロナパンデミック~コロナ禍」。日本国民への「ステイホーム」のお願いと非常事態宣言は今月末まで延長され、安倍政権のどうしようもない無策振りばかりがどんどん露わになりつつある。流石に安倍一派のフリーク筋もこの事態には眉を顰めている様だが、まあ本当に音楽・演劇などに関わるパフォーミング・アーティスト達は、もうお先真っ暗で行き場もない様子。ジャズの世界でも今は世界中で「セーブジャズ」と言ったキャンペーンも始まりつつある。本場NYの老舗クラブや東京のライブハウス、それらの窮状を救おうと言った活動も活発化しつつあり、これらは実に心強い動きだしぼくも何かを...と言った気持ちが強くなる。残念なことにぼくも深い関りを持つ、新宿の老舗クラブ「J」、ここは先月一杯で閉めてしまったが、老舗中の老舗で「和ジャズ」の殿堂とも言える「ピット・イン」は、実情は分からないがまだどうにか健在の様でホッとしている。
 それに反し死者の数もうなぎのぼりの本場NY、ここではジャズクラブの代名詞とも言えそうな「ヴィレッジ・ヴァンガード」。ジャズ好きでなくともこのジャズシティーを訪れた旅行者も、一度は訪れるに違いない文化名所。そう言えばこのジャズコラム担当のO局長も、一昔前のラジオたんぱNY支局長(今は当然消滅)だった筈で、当然この老舗店を覗いていると思うのだが...。このジャズクラブが閉鎖の危機にあるとも聞く。
名物オーナーのゴードン夫妻(夫妻とも物故)に会うのが、NY訪問の楽しみの一つだっただけに、この店が元気ないのは何より残念なことこの上ない。

 
さてそんな淋しい話ばかりが続く今日この頃、また一人ミュージシャンの訃報が飛び込んで来た。「アルト・マッドネス」の愛称で一時は日本でも絶大な人気を誇った、サックス奏者(ボーカリストでもある)のリッチー・コール。コロナ禍にやられたのかと思いきや、自宅で寝たまま逝ってしまった姿を娘さんが発見した自然死だと聞く。まあそれが唯一の救いか...。年令はぼくより3才ほど下だがほぼ同世代。彼が有名になったのは70年代の終わり頃、当時全盛だった森田一義君=タモリのお昼のTV帯番組「笑っていいとも」(か、その前身の「笑ってる場合ですよ」のどちらか)に数回ゲスト出演、その明瞭なアルトプレーや、それ以上に人気を集めたのが、司会のタモリとの掛け合いバップ歌唱。本当に大受けでそのコメディアンまがいの明るすぎるキャラクターも話題を集め、日本制作のアルバムも次々と出され、コンサートも満員と言う超人気振りだった。しかし好事魔多しで、その人気もそう長くは続かず、80年代に入ると人気も一気にダウン、「リッチー?へー、なにそれ...」と言った感じで、話題になることも無く一気に忘れ去られてしまった。実にファンは冷たいものだが、日本のジャズ史の中でも特異にして稀有な存在だった。ぼくにはどうにも忘れ難い一人でもあった。

 彼のアルバムは当時キングレコードから出されており、その担当者が我がジャズ番組に連れて来たのだと思うが、ホーボーと言うかバカボンド(ともにフウテンの意)そのままに、サックスを片手にふらりとスタジオに現れ。下手な日本語交じりのブロークンイングリッシュを駆使、唄入りのアルトソロ演奏も1曲披露、当時の担当女性アナを大笑いさせつつ、またふらりと帰って行った。ぼくが大学のジャズクラブで、タモリの1年先輩だと言うと急に親しみも増したのか、アルバムにサインをしてくれ、リスナープレゼントもサイン付きで数枚用意してくれると言ったサービス振り。こんなに陽気で気の良いミュージシャンもそうは居ない。すっかりファンになってしまったが、それ以降に出されたアルバムは、どれもモノトーンで変化なし。これはいささか...と危惧していたら、あっという間に凋落の一途。面白い男でサックスの力量も素晴らしいだけに、いささか残念ではあった。

 
 そして今回の訃報。この所長い間縁も無かったので、ユーチューブで最近の彼の姿を眺めてみると、まああの頃とあまり変わらないプレーとフーテン振りで、自慢の面白歌唱も披露していた。アルバムも自身のレーベルから数年前に数作発表しており、最新作は嬉しいことに、彼の陽気な気質にぴったりのラテンジャズもの。人気の頂点に駆け上がり一気に消え去ってしまった、まさに「ワン・アンド・オンリー」な才人にして奇人。「アルト・マッドネス」と言った仇名そのものの、愉快でけったいな実力派(初期のアルバムはバッププレーの粋が聴かれる優れものが多い)の彼、全盛時に東京で吹き込んだ『トウキョウ・マッドネス』でも聞きながら、その冥福を祈りたい。グッド・バイ リッチー!

【今週はノーゲスト回】

 「戦前のジャズ特集」
M1
「月光値千金 / 榎本健一」
M2
「雨に唄えば / 榎本健一」
M3
「アラビアの唄 / 二村定一」
M4
「私の青空 / 川畑文子」
M5
「バイバイブルース / 川畑文子」
M6
「ダイナ / ディック ミネ」
M7
「ラッパと娘 / 笠置シヅ子」
M8
「上海 / 美空ひばり」
M9
「恋人よ我に帰れ / 美空ひばり」



5月17日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020.05/15 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.513~戦前にもジャズはあった】

  55年以上と言う長い歴史を誇り、恐らく世界中のジャズ番組の中でも最長寿とも言えるこの「テイスト・オブ・ジャズ」。ぼくが関わってからもなんやかんやで既に45年以上、亡くなった局の先輩でジャズアルバムのプロデュース数、日本でも屈指の数を誇る木全信氏(局を辞めRCAレコードプロデューサーに転身)の担当が、番組スタートから8年ほど...。まあ本当によく続いているものだが、そんな長い歴史の中でも、今まで殆ど取り上げなかったテーマが一つある。それが「戦前のジャズ」と言うか日本のジャズの原点~「和ジャズ」揺籃期のアルバム紹介である。
 
 どうもジャズと言うと、ぼくなどは直ぐにモダンジャズ=ジャズと言うことになってしまい、デキシージャズやスイングジャズと言った、かつての黄金期のスタイルを無視しがちだが、こうしたジャズスタイルを今でも守っている方達もおられる。その代表格がディキシーの山喜雄さん、そしてスイングクラリネットの北村英治さんと言った大御所達。このお二方やそのほかのプレーヤーの方も時々スタジオにゲスト登場、それぞれスイングやディキシーの演奏などを紹介してくれる訳だが、その原点ともなる戦前のジャズ、これについて触れることは殆どない。と言うよりもジャズ関係者でも、その辺を語れる~興味を持つ人も殆どいない、大先輩の故油井正一、故野口久光と言った方達を除き、誰もいないのが実情なのである。
 
 ぼくも当然その一人だが、ある時偶然に戦前人気を博したジャズ歌手、川田文子の伝記を読むことがあり、それ以来戦前のジャズ=日本ジャズ揺籃期に興味を持つようになった。川田文子はアメリカ移住民の子供でカリフォルニア育ち。ブロードウエイのステージにも立ち将来を嘱望されたシンガーだったが、母親と共に日本に観光旅行に来て、横浜の波止場でレコード会社のお偉方の出迎えを受け、そのままレコードスタジオに拉致(?)されてしまったと言う経歴の持ち主。この川畑文子など戦前のジャズを知るとかなり面白い。
 このコラムでも時々紹介しているが、6年程前から始まった中野区の地域センター(公民館)でのジャズ講座。その第1回目にこのテーマ「戦前にもジャズはあった」を取り上げ、40名ほどのおばちゃん中心の聴講者達にもかなりな好評を博し、この成功(?)でジャズ講座、今もまだ続いている訳なのだが...。

 ところが最近あるジャズ雑誌が、このジャズ揺籃期を2号続けて特集、その一回では「宮沢賢治は日本最初のジャズ文学者...」と言った特集を組み、ちょっとした話題にもなった。宮沢賢治とジャズの関連性については、もう30年ほど前から赤塚不二夫の面白グループの一員だった評論家の奥成達氏が良く語っており、確かその関連本も出ている筈。
 今はコロナ禍でゲストも登場しにくい状態もあるので、山本アナの語りと言う形で「戦前にもジャズはあった」と言うテーマで、この川畑文子や日本最初のジャズ歌手、二村貞一など、ジャズ唄~戦前のポピュラーソングを特集してみることにした。ぼく自身は日本が誇るオリジナリティーを備えた最初のジャズ歌手(?)は、日本の喜劇王エノケンこと榎本健一だと信じているが、そのエノケンの「青空」など数曲も番組では紹介する。特に有名なミュージカルナンバー「雨で歌えば」は、肝心のNYの街中での雨降りから、江戸時代の旅籠屋での雨に変貌する、この辺りまったく見事としか言いよう無し。
 そして日本最初の本格的ジャズシンガー、あの「ブギの女王」の異名で戦後直ぐの日本で、圧倒的な人気を誇った笠置シズ子。彼女が太平洋戦争突入直前、いわゆる敵性音楽=ジャズの強い規制がかかる時代に吹き込んだ、歴史的名唱「ラッパと娘」なども紹介する予定。そしてトリに登場するのは、笠置のコピー歌手としてデビューを果たし、以降日本の歌謡界を背負うことになる「女王」美空ひばり。戦前と戦後を結ぶこの女王の定評あるジャズボーカルナンバーは、確かに上手いし愉しく聴かせるこの企画は今週か来週の放送予定ですので、乞うご期待。

【今回はノーゲスト回】
「元気が出るラテンジャズ特集」
M1
Babarabatiri  / Tito Puente
M2Se akabo rabia  / Azucar Negra
M3La Nueva Cubana / Gonzalo Rubalcaba
M4El comeron / あびる竜太Latin jazzグループ」
M5West / 川嶋哲郎」

5月10日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020.05/08 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.512~コロナ禍は続く】

 
 最近は殆どの人達が、コロナのことしか考えられないコロナ恐慌状態。ぼくのようなオールドボーイになると、恥ずかしい話坂道や階段の上り降りで直ぐに息切れしてしまうこともあり、そんな折に発熱でもあったらそれコロナ...と疑ってしまうだろう。先日も持病の定期診療で病院に行ったのだが、驚いたことにいつも屯している老人連中が殆ど見当たらず、実にスムーズに定期診療の運びとなった。いつもは薬をもらうためだけに病院通いだった連中も、コロナ怖さに足が遠のいたようなのだが、事程左様にこの恐ろしい病渦は様々なことの実態を暴き出している。その最も顕著な例が日本の政治と言うか、安倍政府の余りにもお粗末な狼狽振りと失態振りだろう。あの内田樹先生も嘆いていたように、次
々と失態を重ね続ける安倍一派に、未だ40%を超す支持があり続けるという嘆かわしい事態。本当にどうにかして欲しいものである。

 まあそんな日本人の、どうしようも救いの無い性向~政治志向を嘆いていても仕方ないが、それにしても華やぎのGWも全く形無しである。一寸は元気に...とも思うのだが、まずは暗いニュースから。以前このコラムで、コロナ禍で亡くなったジャズミュージシャンを何人か紹介したが、その後ある知り合いから大物が亡くなったと言うニュースを教えられた。白人サックス奏者の大立物、リー・コニッツである。彼ももう80代半ばの筈で、まさにジャズレジェンドの一人だが、つい最近まで現役バリバリで活躍していただけに大変残念である。特に彼には想い出があるだけに寂しさもひとしおなのだ。もう数十年も前のこと、初めて局から派遣されアメリカ民放ツアー(15日間ほど)に参加したのだが、その最終地のNYの街で偶然出会った、知り合いのジャズカメラマンが彼のマンション(NYのセントラルパークの脇にある高級マンション)で写真撮影をする...と言う。これ幸いと乗っかり彼のマンションを訪れ、交友を持ったと言う今は懐かしい想い出があるのだ。クール派の巨星とされるが、それに反し実に温かみを持った素敵なお人柄のジャズマンだった。それだけに本当に寂しい。

 そしてこのコロナ禍、多くの人が日頃は余りしないおうち読書などもしているようだが、その中でも売れているのが、あのノーベル賞作家カミユの「ペスト」だと聞く。アルジェリア生まれの作家でもあるカミユの「異邦人」に続く2作目になるこの作品、もう大分以前に読んだので詳細はしかとは覚えていないが、アルジェリアのある街で発症し全市に広がるペストとの戦いを描いたもので、今のコロナ渦にはぴったりの内容だけに、改めて読もうと思った人も多かったのだろう。確かその中である宗教家が「この疫病が皆を高め、その生きる道を示してくれる...」と言うようなことを語っていたはずだが、それはこの今の悲惨な状況にも通じる言葉だと思う。

 そしてもう一冊、こちらはアルゼンティンのノーベル賞作家ガルシア・マルケス(焼酎「百年の孤独」のもとにもなった作品などを著わす)、「マジック・レアリズム」という魅惑的な手法を編み出した彼の描いた「コレラの時代の愛」。80年と言う長い時代を超える熱狂的な愛の軌跡を描いた、この実に興味深く面白い長大小説も、コロナ禍の時代には読まれてしかるべきものだと信じる。

 まあこんななんとなく重苦しい日々が続く今は、少しでも心の余裕を得るため音楽でも聴きながら過ごすしか...。そう思いながらCD棚から選び出したのはやはりバッハ。中でも「無伴奏チェロ組曲」が最適だ。ぼくの思う至高の音楽とも言えるこの組曲、人気のヨーヨーマかこの名曲を復活させた定番のカザルスか...とも思った。しかし今回はその峻厳さで、ぼくらに進むべき道を教え示してくれる鬼才シュタルケルのものにした。それにしてもどの曲も素晴らしいし名演揃いだ。

【今週はノーゲスト回】
 「ポップスや演歌の歌手が歌うジャズ」というテーマでお送りします

M1「Smile / 松田聖子」
M2「You'd Be Nice to Come Home To / 八代亜紀」
M3「Seven Steps to Heaven / 森山良子」
M4「Moon River / 勝 新太郎」
M5「Falling In Love With Love 恋に恋して / 伊藤君子」
M6「花は咲く / Roberto Menescal, Wanda Sá 他」

 

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