12月3日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.12/02 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.334~ボーカルデュオ】

 このジャズ(音楽)不況下の日本にあって、幾らかでも元気がありそうに見えるのがボーカルの世界。アルバムもそれなりに出されており、新人も入れ替わりに登場したりもしている。ただこれも名刺代わりにアルバムを出す新人女性ボーカルに限ったことで、男性ボーカルでは新しい人などはとんと見られず、ましてやジャズボーカルユニットなどまず存在し得ない。

 
そんな中にあって一人気を吐いているのがギラ・ジルカと矢幅歩の実力派コンビ。彼らがデュオチームを結成して早10年、その成果を今回初めて一枚のアルバムとして結実させた。そのデュオチームの名称は「SOLO-DUO(ソロ-デュオ)」。名前だけ見るといかにも安易に思えるが、日頃は一人ひとりでソロ活動、気が向いたときにこのチームで活動すると言った無理のないスタンス。それだけに10年間もチームとして維持できたのだろうが、その10年分の中身が詰まった初アルバム『Morning Light』は、この二人のセンスの素晴しさが良く出たソフィスティケイトされた都会的でお洒落な佳品で、ジャズファン以外にもかなりアピール出来る心地良いもの。

 
ところでこうしたボーカルデュオチームは本場でも数少なく、ジャズの世界でレギュラーチームとして有名なのは「ジャッキー&ロイ」の夫婦デュオ位なもの。御大トニー・ベネットが何人かの大物ゲスト達とデュオを行ったアルバムで話題を呼んだ(レディー・ガガとのデュオは大評判だった)のは記憶に新しいところだが、ソウルの世界では「ダイアナ・ロス&マービン・ゲイ」とか「ロバータ・フラック&ダニー・ハサウエイ」などと言った大物シンガー同士がデュオを組み、アルバムを発表、かなり売れたりもしたがこれはあくまで例外的なもの。そういう意味からもこのギラ&矢幅チームは世界的にも貴重なものだし何よりその中身が素晴しい。と言うことでお二人にスタジオに遊びに来てもらうことにした。

 
ギラは今まで何回かゲスト登場してもらっているのだが、矢幅くんの方は初めての登場。元々彼は親がジャズ関係の仕事をしており、それもあり自身もこの世界に入ったのだと言う。ただジャズだけに固執すると言ったこともないようだ。2人の出会いは鎌倉にある有名なジャズスポットの「ダフネ」。そこでのギグでお互いの実力を認め合った2人は、時々それぞれのライブにゲスト出演、それがデュオチームへと発展していった。この初アルバムでは、これまで2人で唄ってきたものの中から13曲ほどを選び、レコーディングしたと言うが、2人のオリジナル「Tomorrow」や「ユキノヒトヒラ」なども数曲収められており、その他にカーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」、ブラスロック立役者、BS&Tの「スピニングホイール」など2人の好きなポップスヒット曲、そしてユーミンや井上陽水など日本の有名ナンバーなど、2人ならではの小洒落たボーカルハーモニーで美しく歌い上げられ、実に心地良い気持ちにさせてくれる。この時期だけにクリスマスソングも1曲収められており、番組ではそれをクロージングナンバーにしたが、実にぴったりな雰囲気でスタジオはクリスマス色に染まった。

 個人でもそれぞれに好アルバムを発表している2人が、いつまでこのデュオチームを継続させ続けるのか...、その行く末は分からないがこんな素晴しいデュオボーカル、世界でも皆無だけにいつまでも頑張って欲しいと願うのは、果たしてぼくだけなのだろうか...。2人のポートレイト写真も洒脱なアルバム『Morning Light』。是非皆さんにもお勧めしたい珠玉の1枚です。
【今週の番組ゲスト:SOLO-DUOのギラ・ジルカさんと矢幅歩さん】
 
M1LOVE
M2
「ユキノヒトヒラ」
M3
Baby, It's Cold Outside
M4
The Christmas Song



11月26日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.11/25 番組スタッフ 記事URL
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.333~ノラ・ジョーンズ】

  ノラ・ジョーンズの新作『デイ・ブレイクス』が大ヒット中である。日本でも当然そうだがむしろ台湾・韓国などと言ったアジア各国での人気に火が付いたようで、iTunesアルバムチャートのトップに輝いているのは、全世界でなんと38ヵ国だとも聞く。CDも売れており、このCD不況時代には考えられないような凄いことで、この新作を携えて来年春には来日公演も予定されているとも言う(日本公演の後にはアジア各国巡演するのだろう...)。
 この新作はグラミー賞8部門獲得という快挙を成し遂げ、世界中に衝撃を与えたあのデビュー作『カム・アウエイ・ウイズ・ミー』(邦題「ノラ・ジョーンズ」2002年)~特にそのメイン曲「ドント・ノー・ホワイ」は21世紀を代表する名曲にもなっている~から15年、久々にピアノの弾き語りを披露、ジャズ歌手としての本領を発揮したアルバムとしてアメリカでは彼女の最高傑作などと評する音楽関係誌(紙)も少なく無いようだ。確かにこのアルバムにはウエイン・ショーターをはじめブライアン・ブレイド、ジョン・パティトゥッチなどと言った有名ジャズメンがバックに参加、何より驚かされるのはジャズ&ソウルオルガンのレジェンド、ドクター・ロニー・スミスまでもが顔を連ねていること。それだけにアルバムの帯にも「彼女がまたジャズに帰ってくる」などと言ったフレーズも記されているが、その歌声は決してジャズ然したものではなく、懐かしくも新しいノラ・ジョーンズの姿がそこにはあって、やはり彼女は彼女なのだという単純な事実を再確認させてくれる。

 
彼女の父親はデビュー時には謎だったが、それがあのビートルズにも大きな影響を与えたインド音楽の巨匠~シタールの世界的名手、ラビ・シャンカールだと判明した時には、かなりな話題を呼んだものだったが、幼少期に両親は離婚、母親の故郷テキサス州ダラスで育った彼女は、母親の好きだったジャズとともに、アメリカ音楽の一つの中心とも言えるカントリー&ウエスタン(あのトランプを押し上げた音楽でもある)も聴き、この2つの相反する(?)音楽をバックに育ったとも言われる。
 
ジャズとカントリー、この2つの音楽をバックに自身の音楽を形成していった彼女、デビュー作でがぜん大注目を集めた訳だが、ジャズテイストのシンガーソングライターと言う意識はあっても、自身では決してジャズ歌手だとも思っていなかったはず。ただ世間の評価はジャズのど偉い新星登場といったもので、それだけにそうしたレッテル付けにいささか嫌気がさしたか、以降はその志向の一つでもあるカントリー&ウエスタン(Ⅽ&W)やフォーキーなテイストのアルバムを発表し続けていたのだが、ジャズボーカルの世界ではやはり別格的な扱い。ジャズボーカルのニューウエイブ旗手としてジャズボーカルの世界を、彼女を軸にノラ以前と以降などと言った分類をする識者も少なく無かった。確かに彼女のジャージーポップとも呼べそうなテイストをコアにしたポップソング~シンガーソング系フォーキーソングは、新しい息吹を感じさせるものでメロディー・ガルドーなど多くのフォロワーも誕生、ジャズボーカルの新たな地平を切り開いたのは間違いない事実でもある。それだけに今回ウエインやブライアンなどのジャズメンを起用(2人とコンサートで共演、やはりこういう音楽(ジャズ)をもっとやりたいと感じたという)、更に自身のオリジナル以外にデューク・エリントンの「アフリカの花」やファンキージャズの大御所ホレス・シルバーの「ピース」と言ったジャズナンバーも取り上げているなど、久々にジャズに本腰を...と言う姿勢は、最近元気のないジャズシーンにとっては大ニュースだったはずで、それなりにいい感じのジャズ色はある。しかし実際は様々なアメリカンミュージックを混在化させた素敵なアルバムとして聴いた方がいいだろう。
 
この新作に収められている彼女のオリジナルナンバーは、どれも心和む心地良いもの揃いだが、ベストはシングルカットされているキャッチーな「トラジェティ(悲哀)」で、タイトル曲の「デイブレイクス(夜明け)」も印象的。アルバム全体で彼女の新たな旅立ちを意味しているのかもしれない。また彼女の名前を不朽のものにした名曲「ドント・ノウ・ホワイ」もボーナストラックとして16年のライブバージョンが収められているのも嬉しい所ですね。

【今週の番組ゲスト:「ジャズのお勉強」音楽評論家の青木和富さん】

M1BITCHES BREW / MILES DAVIS

M2MILKY WAY / WEATHER REPORT

M3BOOGIE WOOGIE WALTZ /  WEATHER REPORT

M4LA FIESTA / CHICK COREA

M5CHAMELEON / HERBIE HANCOCK
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11月19日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.11/18 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.332~米国で大変な事態が】

 米国と言う世界をリードし続けてきた超大国。この国では本当に訳が分からないことが起こる。先の大統領選挙などはその好例で、まさかの大逆転であの「悪役」トランプが大統領になってしまった。選挙スタート時は単なる泡沫候補に過ぎなかった彼が、一握りのエスタブリッシュメント層が支配するアメリカ政治からの脱却を強烈に訴え、彼らを口汚くこき下ろす小気味良さも大うけで、政治の世界に於けるアメリカンドリーム=シンデレラ現象を、あれよあれよと言う間に実現してしまった。

 
実際の選挙戦では、かなり強烈な共和党びいきとも言われるFBI長官のクリントンメール問題再調査のニュースが、選挙の流れを一変させたことは間違いないだろうが、米国の多くの白人層、中にはクリントン支持が多いとされる知的階級層の中にも、多くの隠れトランプ支持者がいたのは間違いない。彼らは表立ってはトランプ支持を語れなかったが、投票所では躊躇なくトランプに一票を投じたことは、ある意味想像に難くない。日本人の殆どはヒラリー・クリントンが、史上始めての女性大統領として登場すると思っていたはずだし、まさかトランプが...などと思っていた人は皆無だったはずである。そしてそれは世界中の誰もがそう思っていただろうし、そう願っていたはずだが、事態は大きく動いてしまい、来年以降の世界情勢は本当に混沌として分からないものになって来た。世界を暗雲が覆うと言った図式だが、奇妙なことに米国の株式市場がトランプ登場を好感し値を上げると、翌日の日本市場も、極端な保護主義者であるトランプが登場すれば日本経済への好影響など皆無だと分かっていながらも、闇雲に値を上げ今年一番の上げ幅を記録と言った、馬鹿げたとも言えそうな現象さえ起きている。

 
一方トランプはある意味成功した実業家だけに、大統領に就任したならば強烈なネゴシエーターにこそなれ、かなり現実的な政策を...などと期待する向きもあるし、彼の勝利宣言やその後の各国首脳との電話会談などを見ると、そんな風に思えないこともないが、今回力を得たアメリカ保守層は決してやわではない。彼が選挙中に約束したメキシコとの国境に壁を...、日本には防衛費の増大を...などと言ったバカげた公約は、実現不可能と分かっていてもそれを押し進めなければならないだろう。となるとこれまでの友好国などとの摩擦は必定で、世界情勢地図も大きく書き換えられるに違いない。まあ来年からの世界情勢は予断を許さないし、一瞬たりとも目が離せない。ただぼくの嫌いなあの安倍ちゃんも、この事態にすぐに動き、彼と会談を行うというのはヒットだった。強烈なネゴシエーターの彼とどこまで話せるのかはわからないが、その行動は大切なものである。

 さてこの所の米国大統領達は概ねジャズ好きのようで、現在のオバマ氏も毎年夏に発表するプレイリスト(夏の休暇中にどんな音楽を聴いたのかリスト)にマイルスやニーナ・シモンの名前が上がっており、奥さんも同様に彼もジャズに愛着があることを裏物語っている。しかし「大統領とジャズ」と言って忘れられないのは、南部出身のジミー・カーター。彼は在任中ホワイトハウスの中庭でジャズコンサートを開催、その場にレジェンドともいえる有名ジャズメンなども招待したが、その中にあの怒れる巨人チャールス・ミンガス(ベーシスト&作曲家&バンドリーダー)の姿もあった。体を壊して車いす生活のミンガスに、カーター大統領が労りの言葉を贈ると、感激して涙に暮れている彼の姿がTVニュースで取り上げられ、多くのジャズファンに少なからぬショックを与えたものだった。あの米国の白人社会に強烈なノーを突き付け続けたジャズ闘士のミンガス。その彼が体を壊していたとは言え、感涙に浸る、全く考えられない出来事だったが、今彼に近い年齢になってみると少しはあの涙も理解できそうな気もしてくる(これは決して好い事ではないが...)。

 果たして次期大統領のトランプが、ジャズ好きかはどうかはしかとはしないがNYを本拠地にしている敏腕ビジネスマンだけに「BN」などの有名ジャズクラブをその社交の場にしていたことは間違いないだろう。果たしてホワイトハウスでジャズパーティーが開かれるのか...ここら辺はジャズファンとして少しは気になるところでもある。
 と言った所で今日の1枚は、あのシンガーソングライターの大御所、ジョニー・ミッチェルがミンガスに捧げたアルバム『ミンガス』(79年/W・B)を推薦したい。ジャコ・パストリアル、ウエイン・ショーター等々、多くの素晴らしいジャズミュージシャンが参加したこのアルバムは、ジャズ、ロックなどのジャンルを超えた、不朽のアメリカンミュージックの傑作。一家に一枚の必須アルバムだとぼくは感じています。
今週の番組ゲスト:INPARTMAINTの西野孝さん】
M1Free Your Dreams feat. Snarky Puppy  / Chantae Cann
M2
  Shake Loose / DONNY McCASLIN
M3
Twin / Christian Scott
M4
oakland feat. Lalah Hathaway /  Terrace Martin


11月12日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.11/11 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.331~信濃追分秋景色】

 この11月初旬、4日程信濃追分の山荘にいた。恒例の山荘閉めの準備の為である。早い人はもう11月に入ると山荘を閉めてしまうのだが、さすがに早すぎる感もありぼくは例年大体11月末、23日の祝日前後に閉めることにしている。高冷地にある山荘や別荘にとって最大の問題点は水の扱い。秋終わりには水道管を閉めないと、一度寒気に襲われると水道管破裂などと言う悲惨な羽目になってしまい、まったく立ち行かなくなる。そこで周囲の気温にはまず第一に敏感にならないといけないのだが、局員時代はそんなことも言っておれず、水道管破裂の悲惨な目にも数回ほどあった。しかし基本は悠々自適なリタイア身分の今は、まずそんなことはない。ただこの水閉めの作業なかなか大変なもので、ぼくのような生来の不器用人にはかなりな重荷。それだけに段階的にいろいろと整理しておく為に、この11月初めには一度は山荘を訪れることにしている。

 
この初秋の時期は、追分(軽井沢)のベストシーズンとも言えるもので、カラマツ林の黄葉は全く見事で、あの白秋の詩の一節「カラマツの林を過ぎて、カラマツの林をしみじみと見ゆ。カラマツは寂しかりけり、旅行くは寂しかりけり...」が自ずと浮かんでくる程。今年はこの黄葉の見事さを味わいたいと少し遠出をしてみた。北信の戸隠高原である。戸隠神社を中心としたこの高原一帯は、今が紅葉~黄葉真っ盛り、中社、奥社と続く戸隠神社周辺も赤・青・黄色とまるで歌そのものの様に見事だった。追分からは信濃高速道を使ってゆっくり2時間ほど。長野市から山道を上がると戸隠・飯縄高原が拡がり、まったくの別天地。戸隠神社は神殿は中社が最も大きいが、荘厳さでは荒々しい岩山の戸隠連山をバックに従えた奥社が一番。今までに数回訪れているがいつ来ても見事だ。今回は今まで訪れる機会のなかった鏡池~戸隠連山の眺めが最も美しいとされる~から戸隠の荒らしい岩峰群をじっくりと堪能させてもらった。朝日のあたる岩峰、周辺の木々の黄葉、そしてそれを映し出す鏡池の静かな湖面。この3つの見事なコントラスト。それらを堪能していると、突如黒雲(雪雲)が湧き出し小雪が舞いだす。そのダイナミックな変幻もまた良しなのである。

 
戸隠を後にすると当然温泉探索と言うことになるが、今回は長野市の郊外、松代にある松代温泉に行くことにした。と言っても正式名称は松代ではなく加賀井温泉一陽館。茶褐色の泥湯のような実に不思議な温泉でいかにも効用のありそうな炭酸を含んだお湯で、露天風呂は混浴。大正時代から続く名門旅館だったが、現在の当主が旅館を辞め日帰り専門にしたもので、そのご主人が案内をしてくれることでも知られた温泉マニア絶賛の施設。露天にはご婦人は入っていなかったが前に来た時には数人の婦人と言うよりもおばさんと一緒になり、こちらのほうが気圧された感もあった。
 
ところで秋の軽井沢だが、旧軽銀座なども閑散としており、実に落ち着いてものさびしい雰囲気。ただ話題の軽井沢アウトレットだけは平日でもかなりな混雑、日本人の購買意欲も捨てたものではなく、まだまだ活力ありということを実感させられる。まあでも秋の軽井沢やはり一番のお勧めです。

 
といった所で今週の1曲だが秋に因んだものを...。秋で最も有名なジャズソングは言わずと知れた「枯葉」だが、ここでは軽井沢とは縁もゆかりもないNYの秋を唄った「オータムインNY」。この歌詞にはNYの秋はどうしてこんなに人を引き付けるのか...などと言った一節があるが、それと同様に軽井沢の秋はどうしてこう人を引き付ける魅力に溢れているのか...と返したくなる気持ちを含めこの名曲を選んでみた。極め付けは大都会の秋の情景を切々と描き出した大御所フランク・シナトラのボーカルものだが、ぼくのお勧めはテナーの隠れたる名手ジョージ・コールマンが切々と歌い上げるこのナンバー(AlfaJazz)。雄々しさと切なさのない混ざった秀逸なオータムバラードプレーです。
今週の番組ゲスト:トランペッターの島裕介さん】
M1Sweet Esquiva  / 小山豊 島裕介」
M2So What / 小山豊 島裕介」
M3Contact / 吉岡大輔&the Express
M4Run into the B / Yusuke Shima
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11月5日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.11/04 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.330~海野&吉田】

ジャズで本場と言えばやはりNYのこと。
世界中からジャズミュージシャンやシンガーを目指す若者達、そして彼らだけでなく中堅・ベテラン陣迄もが集まってくるこの大都市。アップルコアなどとも呼ばれるこの街は、ミュージシャン達の生き残り競争が激しいことでも知られ、その競争は時にラットレース(=ネズミの競争)などとも揶揄される程だが、そこで生き延びれたプレーヤー&シンガーは本当の実力者と言えるだろう。その代表格が世界を股にかけ大活躍している上原ひろみ、そしてボストンのバークレー音楽大を卒業、この街で活躍し始めた山中千尋と言った所で、その他にも数々いる。そんな中で頑張っている一人がピアニストの海野雅威。

 
日本国内の多くのバンドに参加、その才を高く評価されていた彼は一念発起、単身本場NYに渡ることを決意、同地で地道な活動を展開、先輩や同輩からの厚い信頼を勝ち得、自身のバンドの他様々なユニットにも参加、今やこの街で独自の地歩を固めつつある。そんな彼を象徴するのが、先日NY郊外のスタジオで行われたあるレコーディング。セッションリーダーはあの帝王マイルスのバンドでの活躍で知られ、今やジャズドラマーのレジェンドとも言える存在のジミー・コブ。
 
そのトリオのピアニストで参加した彼は、それを担当した生きる伝説ともいわれる世界的録音エンジニアー、ルディーヴァン・ゲルダーからそのプレーを絶賛された。ジャズの名盤を数多く手がけた彼は、この録音が終了すると彼をハグしに来て、アシスタントが驚く程に嬉しそうだったと言う。そしてこの2か月ほど後の今年の8月末に彼は亡くなってしまい、海野くんの参加したジミー・コブトリオの録音が彼の最後のレコーディングになってしまったのだと言う。

 
その彼は毎年一度は里帰り凱旋ツアーを行っているが、最近敬愛するベーシストとのデュオアルバムを発表、そのアルバムとデュオ相手のベーシストを伴い、スタジオに遊びに来てくれた。相棒のベーシストは中堅として様々なシーンで活動している吉田豊で、海野の数年ほど先輩。その2人のアルバムタイトルはなんと「DANRO」。あの暖炉のことで彼らの温かな結びつきを象徴し、そのデュオサウンドにまさにぴったりなタイトル。彼らが演奏旅行で訪れたある養護学校の校長さんが、子供たちの彼らの演奏に接する様子がまるで暖炉にあたっている様だと語ってくれたことから、このタイトルを付けたのだと言う。ベースの吉田は大学卒業後、一時小学校の教師をやっておりそれを辞めてプロの世界に飛び込んだという少し変わった経歴の持ち主。その彼にほれ込んで共演を申し込んだ海野はまだ大学生だったと聞く。以来15年余り2人の交友は続いている。

 
デュオアルバムは埼玉県の川口市の小さなライブハウスで録音されており、海野くんの気の向くままにスタンダードの銘品を弾き綴り、その中にそれぞれのオリジナルを1曲ずつ織り込んだ構成になっている。「ワルツ・フォー・デビー」「スター・アイズ」など6曲のスタンダードは嫋やかで円やかな世界を描き出し、何より2人のオリジナル「オールド・ボーイ(吉田)」「ザ・パスチュール(海野)」が素晴らしい。2人とも30代でジャズの世界ではまだまだ若手の方だが、それでも彼らより下の世代が育ってきており、「既にオールドボーイになってしまいましたよ...」と2人は番組収録後に語ってくれたが、いやいやそんなことはありませんよ。

 海野くんは番組に遊びに来る時には、決まって奥さんを同伴、ツアーも一緒に廻っている様だが実に仲がいいご夫婦。NYでの厳しいラットレース、ご夫婦で乗り越えてくださいね...とかげながら応援したくなってしまう。海野&吉田コンビの『DANRO』、これからの寒くなる季節にはぴったりな、ほっこりと温まるアルバムとして、皆様に推薦します。
【今週の番組ゲスト:ピアニストの海野雅威さん(右)と、ベーシストの吉田豊さん(左)】
9
21日リリース『DANRO』より
M1
Waltz for Debby
M2
Old Boy
M3
The Pasture
M4
Falling Love with Love



10月29日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.10/28 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.329~関西交友旅行】

 
先週のこのコラム、ぼくの勘違いで送稿遅れになってしまい、担当のO部長からイエローカードを出されてしまった。「Oよ、メンゴ、メンゴ(ジャズ用語でごめん)」。しかし今週は仲間との関西旅行。困ってしまったが今日逗留中の大学時代の友人宅(早稲田大時代はワンゲル部所属の猛者)のパソコンを借りて原稿を仕上げている所。

 
今回の旅行、40年ほど前から綿々と続いているクラブ仲間(早稲田ジャズ研)との年に一度の交友ツアー。ぼくの代をメインに前後3代ぐらいまで、毎回10数人によるもの。

 
電通映画社(現電通プロックス)の敏腕プロデューサーで日本の水族館企画の権威(本も出している)でもある先輩を筆頭に、遥かLAの地からこの旅行の為だけに来日する律儀な後輩まで、気の置けない仲間10数名での関西・湖東の近江八幡・彦根を訪ねる楽しい旅。この旅行最初のころは、子供連れの家族旅行だったが、彼ら彼女らが小学校を卒業する頃には親の行くところなどには付いてこなくなり、必然的に仲間だけの旅行となってしまった。それからは山中湖のブルーノートジャズフェスや斑尾ジャズフェスなど夏のジャズフェス巡りとなった。ジャズフェスが廃れてしまってからはもっぱら慰安旅行になってしまったが、韓国遠征(ぼくはあるパプニングで参加できず)や苗場山登山など、それぞれの年の幹事2名が様々な趣向で企画を考え実行する。かつては韓国や北海道道東ツアーなど大掛かりなものだったが、皆がロートル化してしまった昨今は近場でほぼ1泊旅行となってしまった。それが久々の関西ツアー、京都在住の仲間の為に関西に出向こうと言うことになり、今回の旅行が実現したという次第。

 
場所はぼくが偶然見つけたパンフレットとTV番組から、どうせなら湖東の古都、近江八幡がいいのではと提案、幹事も了承したもの。旅行が終わってからは山好きの数人と共に近くの山行を行うのがこのクラブ旅行の常で、今回は近江の名峰伊吹山に登りその後は琵琶湖に浮かぶ名島、竹生島を訪ねるというもの。それから仲間と別れぼくは加古川住まいのワンゲル部の猛者の家に2日ほど転がり込んでいるという次第。近江八幡は想像通りの落ち着いたいい街で近江商人発祥の地でもある。平日にも拘らず街は若い女性客などが散策、関東では無名でも関西では圧倒的人気を誇っているようだった。伊吹山は野球のプロデューサー時代、毎週のように甲子園や広島球場に向かう新幹線の中から眺めており、いつかは登りたいと思っていた憧れの山だっただけに感激ひとしお。なんとほぼ上まで車で行けて、周回登山路ではじいさん、ばあさん(お前もそうだろうと言われそうだが...)とすれ違うのはいささかがっくりだった。その後の竹生島、日本3大弁天様が祭られているというこの信仰の島。国宝、重要文化財が数多くあるこの弁天神社参り、噂通り仲々に感慨深いものがあった。

 
米原駅で仲間と別れてからは一人で加古川に向う。加古川の友人はワンゲルの猛者だが、電動のアシスト車いすを日本で初めて作り上げた偉い人でもある。彼とは大学時代から時々山行をした仲間、なんと数回も結婚・離婚を繰り返した人生の猛者でもあり、今のかみさんは16歳も年下。一時はミスコン出場の台湾系美女とも一緒にいたが、中国系の女は剛という典型な例で、結局は数年で破綻してしまった。それぞれの別れろ切れろの顛末は詳細に知っているだけに、彼もぼくには頭が上がらずかなりな無理も聞いてくれるという訳で、それに甘えて関西に来るといつも逗留させてもらっている。

 
まあ大学時代の仲間とは良きものだとつくずく思う。といった所で今回の1曲は北欧の名シンガー、カーリン・クローグが歌うミッシェル・ルグラン・ナンバーの「これからの人生(ザ・レスト・オブ・ユア・ライフ)」。フランスを代表する大作曲家でジャズピアニストとしても才能を発揮するミッシェル・ルグラン。フィル・ウッズなどと一緒のジャズアルバムなど数多くのジャズアルバムも出している彼。稀代の名ソング・ライターで珠玉のメロディーも数多いその作品集は、多くのジャズメンやシンガーが出しており、少なくとも30枚近くはあるはずだが、その中でもベストの1枚がカーリン・クローグのルグラン集。「思い出の夏」「シェルブールの雨傘」等々、名ルグラン・ナンバーが数多く収録されているこのアルバムの中で「これからの人生」が秀逸。老夫婦の人生をしみじみと歌い上げたものだが、身につまされるような絶唱。古くからの仲間と主にまあいろいろと人生について語り合ったこの旅行...と言ってもまだ続行中でしたね。

今週の番組ゲスト:本日はジャスのお勉強。先生は音楽評論家の青木和富さん】
M1SEVEN STEPS TO HEAVEN /    MILES  DAVIS
M2MILESTONES / MILES  DAVIS
M3SUPER NOVA / WAYNE SHORTER」
M4TOYS / HERBIE HANCOCK

10月22日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.10/21 番組スタッフ 記事URL
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【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.328~ミスターラグビー&ミセスクライミング&モア】

  
ジャズ以外でぼくの好きなもの、ハードボイルド小説、温泉探訪等々いくつかあるが、ラグビー観戦と山登り、この2つは欠かせないもの。大学時代はジャズ研以外にもう一つ山登りの愛好会にも所属、山歩きの番組も3年ほどヤマケイ(山と渓谷社)の協賛でオンエアーしていた。一方のラグビーはご存知の通り、藤島大というラグビージャーナリストをパーソナリティーに迎えての番組(「楕円球に見る夢」)でもお手伝いさせてもらっており、さしずめこの2つは趣味と実益を兼ねたものといった感じでもある。
 その両分野で我が国のミスターラグビーとミセスクライミング(まあこんな言い方は一般的ではないが...)と言える人物が、このところ相次いで亡くなってしまった。ラグビーの方は平尾誠二、山女の方は田部井淳子。そしてもう一人、こちらはミスター声優と迄は行かないが知る人ぞ知る名声優、肝付兼太である。このお三方の霊に黙祷!

 ミスターラグビー平尾氏とは、たった一度だけインタビューをした(番組は何かスポーツ関連の特番だったと思うが...)仲なのだが、そのインタビューのことは今でも鮮明に覚えている。と言うのもそのインタビュー場所が神戸の浜川(だと思う)にある高速道路傍の神戸製鋼グランドとクラブハウス。時はあの神戸大震災から一か月半ほど後のこと。ラグビー神戸製鋼チームは栄光の日本選手権7連覇を遂げた直後にあの大震災に遭遇、彼らのグランドやクラブハウスも震災の為に滅茶苦茶。そんな中でのインタビューだったが会社の広報を通じでOKしてくれた彼は、インタビュー場所を震災で使えない状態のクラブハウスに指定、そちらに出向いて話を聞くことになった。会うと直ぐに「グランドに出てみましょうよ...」と誘われ液状化現象の激しいグランドを案内され「今は使い物になりませんがきっと直しますからね」と無念さをにじませながらの力強い言葉。グランドでは若い神鋼の選手達がグランド整備に励んでいた(確か元木選手や増保選手などもいたはず)。クラブハウスでのインタビューは7連覇よりもこれからの神鋼チームの行く末がメインになったと思うが、実に端正なマスクと話しっぷりで、ラグビーよりもむしろ役者にでもなれば...と思わせるようなダンディーな色男。その話に聞きほれてしまった覚えがある。松尾雄二と並ぶ天才プレーヤーだった彼は、ラグビー選手にしては珍しく交友関係の幅広い人で、あの思索家・出版プロデューサーの松岡正剛などとも対談集を出すなど、ラグビーという枠に留まらない思考の持ち主だった。惜しい人材を失ってしまった。

 そしてミセス山女、田部井さんとはヤマケイのパーティーなど山関連の集まりで何度かご一緒をさせてもらい、「一度是非番組にも...」と彼女に言われながらも遂にその機会のないまま終わってしまった。パーティーなどで一緒に話す時の彼女は、実に気さくな小柄なおばさんで、この人が女性で初めてあの世界最高峰のエベレストに登頂したとは到底思えないほどの人。話も実にウイットに富んでおり、魅力的な女性だった。有名なクライマーの還暦祝い(?)のパーティーで彼女が祝辞を述べた折、その人を知っているということで息子さんも連れてきていたのだが、その高校生の息子は反抗期真っ盛りでテレもあり終始ふてくされた様子、世界の田部井も彼には手が付けられない(海外遠征などで家を空けることも多かったろうから、かなり甘やかしていたに違いない)有様で、母親とはかくも大変なものかと...見ていて仲々に興味深く面白くもあった。

 そしてもう一人肝付兼太。享年80才。スネ夫やイヤミの声でおなじみのこの声優は、ラジオたんぱの一時代を築き上げた功労者で、人気パーソナリティーでもあった。一般にはラジオたんぱがその存在を世に知られることになったのは、大橋照子というスターアナウンサーの出現以降と言うことになっているが、その彼女の登場を誘導したのが肝さんこと肝付兼太だった。今からもう40年ほど前、三菱電機が新しいラジオ(世界中の短波放送が聞ける...を売りにしたラジオ)=ジーガムを発売、その宣伝番組(「ハロー・ジーガム」)として我がラジオたんぱに指名の声が掛かり、15分の帯番組を設定。これが世界中のラジオ局カード(ベリカード)を集める大ブームを巻き起こし、全国の小・中学生たちもこぞってこのカード集めに熱中、番組も大ヒットとなり、肝さんも一躍時の人になったのだった。このヒットが当時の局の上層部の関心を呼び、自局でもスターを...となり大橋アナの登場となる訳。この「ハロー・ジーガム」帯番組だけに3人のディレクターで担当したのだが、ぼくはその中で一番のペイペイ。小・中学生のベリカード収集サークル取材で肝さんと一緒に全国の市町村を飛び回った、きつくとも楽しい思い出がある。番組終了以降は殆ど会っていないが、声優と同時に自身の劇団も持ち、人気劇作家の北村想の芝居を専門に上演しており、演劇好きということで招待され、何度か観劇にも行ったりもした。鹿児島の有名な武将の子孫で(鹿児島県にはその名前を取った、肝付郡があり帰郷すると大歓迎だった)外見に似ず気骨ある人だった。  

 平尾氏はまだ50代初め、田部井さんはぼくより5歳ほど上、そして肝さんは80才。3人の死を悼むナンバーとしてぼくが推薦するのは、名ベーシストのチャーリー・ヘイデンとキューバ出身の天才ピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバの哀切なデュオプレー「ノクターン(ver)」、是非聴いてみて下さい。
今週の番組ゲスト:ドラマー、コンポーザー、プロデューサーの平井景さん】
M1Running Man
M2Old Clock Tower
M3When I Left Home
M4「展覧会と少年」

 
10月15日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.10/14 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.327~ノーベル文学賞】

 
このところの音楽界の話題は、非クラシックいやクラシック関連者も含めてかも知れないが、"ボブ・ディランがノーベル文学賞受賞したというニュースに尽きるだろう。またまた受賞を逃した我が村上春樹師(彼がかつてジャズ喫茶を開いていた、千駄ヶ谷界隈は受賞に向け大盛り上がりだったようだが...)も、あのボブ・ディランが受賞となれば、本音はどうあれこのニュース歓迎と言わざるを得ないだろう。音楽界でのノーベル賞受賞は当然初めてのことで、それもディランが受賞となっただけに、長い間彼を認めなかったアメリカのエスタブリッシュメント層もこれには脱帽なはずである。ノーベル賞受賞ニュースの翌日、用事があり新宿に出てタワー・レコードとディスク・ユニオンの新宿店を覗いてみると、彼のアルバムが平台に山積みになっており、店内で流れる音楽もディラン一色で、かなりのアルバム数がはけており、店にとってはこのCD不況時代に、時ならぬ救いの神の到来といった感じでもあった。

 まあ街はかなりなディラン・ブームといった感じもある訳だが、ではお前はどうなのか...と聞かれれば実のところ長い間彼の音楽とはほとんど無関係に過ごしてきた(「風に吹かれて」など初期の頃の作品は結構聞いたものだが...)だけに、喜ばしいことではあってもそう拍手喝采という訳でもない。そういえばこのディラン、わが局のラジオ日経でも、10数年程前のラジオたんぱ時代に、「ボブ・ディラン・クラブ」という確か30分の音楽番組が2年程続いており、パーソナリティーはディラン通の音楽評論家の鈴木カツさん、ディレクターは今は定年退職してしまったディラン好きのT君で(早稲田大の学生時代はブルーグラスバンドを組んでいた)、ディラン好きの間では結構評判になった番組だった。確か番組終了後には、鈴木氏が著者で番組を基にした同タイトルのディラン本も出たはずである。 

 ところでそのディランだが、皆様ご承知の通りフォークの神様ともいえる存在で、ジャズとは余り関係なし。しいて言えばあのキース・ジャレットが彼の代表曲の一つ「マイ・バック・ページ」を取り上げ(『サムホエア・ビフォー』Atl/68年)、これが名演としてかなりな評判を呼び日本でも人気になったこと位か...。そのジャズとは殆ど関係のなかったディランも、このところ年を取ったせいもあってかアメリカのスタンダードソングを歌うようになり、そのアルバムも日本でも出され結構評判を呼んでいる。まあジャズ業界関係者としては、やはりこの評判アルバム聞かざるを得ない...ということで、今年初め久々にディランの渋いしわがれ声と向き合うこととなった。そのスタンダードアルバムとは15年に発売された『シャドウズ・イン・ザ・ナイト』、そして今年出された『フォーリング・エンジェル』の2枚。このうちぼくが聞いたのは今年出た後者のほうだが、両者ともほぼ同じ様な内容で、独特な魅力あるだみ声でスタンダードソングを淡々と歌っているというもの。『シャドウズ...』の方は「アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー」から「ザット・ラッキー・オールド・サン」まで全10曲。「枯葉」や「魅惑の宵」など有名ナンバー揃いで、アルバムタイトルはポピュラーシンガーの大御所、フランク・シナトラの名作『ストレンジャー・イン・ザ・ナイト』を意識した感がありあり。一方ぼくの聞いた『フォーリン・エンジェル』の方も、「スカイラーク」「ヤング・アット・ハート」「カム・レイン・オア・カム・サンシャイン」などこちらもおなじみの名曲が12曲で、スティールギターも含めたいささかカントリータッチの内容で、淡々としかも味わい深く名品を歌い上げている。
 
 ディラン自身は、「スタンダードソングを取り上げたこれらのアルバムを作ることは、本当に名誉なことだった。こうしたものをずっと前からやりたいと思っていたんだ...」と語り、「私の作業はこれ迄カバーされ過ぎて埋もれてしまっている、こうしたスタンダードソングの覆いを外し、埋められた墓場から掘り起こし、もう一度それらに光を与えることなんだ...」とディランならではの言い廻わしでその創作動機を明かしているが、決して肩に力が入った意欲的な姿勢ではなく、淡々と飄々と枯淡にしてしかも力強く歌い上げながら、これらのスタンダードソングを目一杯愛しんでいる、その様子がなんとも心地よくまた格好良くもあるのだ。  カントリーミュージックの第一人者、ウイリー・ネルソンやロック・スターのロッド・スチュワート等々、ポップスター達も齢を重ねるとスタンダードソングに回帰する傾向が見え、ディランもその例に漏れないのかも知れないが、そこはノーベル賞歌手ディランのこと、全き自身の世界を構築している所は流石だと言えるだろう。ディランの過去のアルバムはどれも文学賞という大追い風に乗って、わが国でもかなりな再ヒットを記録しているようだが、最近の2枚のスタンダードソングアルバムもそれに便乗して売れ行きを伸ばしてくれればと思う。そしてスタンダードソングからジャズへとアルバムを購入した方達が、その音楽の道筋を伸ばしてくれれば...ジャズ関係者の一員としても、望外の喜びでもあるのだ。 
【今週の番組ゲスト:ティートックレコーズ代表、シンガーソングライターの金野貴明さんと琴奏者の渡邊香澄さん】
M1CHA-LA HEAD-CHA-LA / 金野貴明」
M2
「未来への扉 / 金野貴明」
M3
LIBERTANGO / 渡邊香澄」
M4
REMEXENDO /熊本尚美ショーロクインテット」



10月8日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.10/07 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.326~インターナショナル】

 「立て飢えたるものよ、今ぞ日は近し。
醒めよ我が同胞 暁は来ぬ。(中略)いざ戦わんいざ、奮い立ていざ、ああインターナショナール 我らがもの...」。通称・インター、正式名「インターナショナル」の歌詞(訳詞)である。先週「オフノート」レコードの代表神谷一義さんが番組に登場、オフノートの歴史について話してくれた時に掛けた1曲に、この「インター」があった。沖縄民謡の代表的歌手の一人、大工哲弘さんがジンタの調べに乗せて歌った異色ナンバーで、収録アルバムは90年代後半に出された『ジンタ・インターナショナル』。このジンタとはチンドン屋音楽(今また見直されつつある)の前身のようなもので、明治半ばから大正にかけて街の商店やサーカスの呼び込みを行う楽隊音楽のこと。そのジンタは何とも懐かしい哀愁の調べを持っているが、そこで歌われるのがインターだと言う所がミソなのだ。

 
この「インタ―」、ぼくらやそのすぐ下の団塊世代ではよほどの政治音痴以外は、一度は耳にしたことがある歌で、19世紀に作られ以後綿々と歌い継がれてきた労働歌~労働運動歌である。かつては大学構内やデモ行進などでも良く聞かれたもので、世界中で歌い継がれて来た筈だが、山本郁アナは全くその存在を知らず、あの高速道路のインターと勘違いする有様。もう大きく時代が変わってしまったもので、今巷でもでもデモ行進などを見かけることも無くなってしまったのだから、彼女がインターナショナルなどと言った歌の存在も知らないのも至極当然なのかも知れない。この余りの世代差いささか不思議に思い局の若い連中にも聞いてみたが、50代以下でこの歌の存在を知っていたのは一人もいなかった。

 
ただこのメロディーはかなり印象的なものなので、自由とか人権と言った事象・用語に強い関心を寄せるジャズミュージシャンは、時々このメロディーをジャズにアレンジして演奏したりもしており、それはほとんどが問題意識の高い欧州のミュージシャン達のようでもある。その代表格がイタリア出身でわが国でも人気の高いピアニスト、ジョバンニ・ミラバッシ。彼のアルバムにこうした労働歌や連帯歌ばかりを集め、それをジャズにアダプテーションした好アルバムがあり、ぼくも大好きな1枚だが、それ以外でもフランスなどのミュージシャンのアルバムでも時々聞かれることがある。大工哲弘のアルバムでは、バックに梅津和時や中尾勘二など尖がった音楽を演奏(彼らはあの「あまちゃん」の音楽で大ブレークしたあの大友良英と一緒にやっていたりもする面々だけに)、このジンタも懐かしのジンタながら、実にシャープでアバンギャルドかつモダンな響きを有しており、是非皆様にも聞いて欲しいものでもある。
 「
いざ戦わんいざ、奮い立ていざ、ああインターナショナル我らがもの...」埋もれてしまった自由への戦いの歌であり、屈指の名曲の一つだとぼくは思います。
【今週の番組ゲスト:ベーシストの安ヵ川大樹さん】
M1「Gentle Breeze
M2「My Bebop Tune
M3「Will」
M4「shinkirou

10月1日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2016.09/30 番組スタッフ 記事URL
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.325~秋といえば月】

 このところ秋の長雨の例え通り雨天や曇天続きで、肝心の仲秋の名月を味わうことも叶わない。この月=ムーンは珍しく欧米人も日本人(だけでなくアジア圏全体だろうが...)も共通の大きな愛する対象。と言うのも、もう一つの秋の風物詩、虫の音などは欧米系の連中にはほとんどが関心外とも言われ、人間の感性にもそれぞれのお国柄、民族柄が出るようなのだが、こと月に関しては共通の愛でごとで、欧米や日本でも多くの曲で月を歌い込んだものも多い。いわゆるジャズスタンダードでも最も多いタイトルの一つで「ムーン・リバー」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」等々、直ぐにタイトルが思い浮かぶものも少なくない。このタイトルだが、かつてはメロディーを聴けば大体直ぐにその曲名が出てきたものだが、いささかアルツ気味のオールドボーイ(ぼくのこと)ともなるとこれがそうはいかない。コンサート評などを頼まれると、良く聴くメロディーでぼく自身も好きなものでも、そのタイトルが思い出せないものも多く、それに注意が向いてしまい肝心の中身を聴き逃すこともしばしば...で、トホホな事態になってしまう。誠に困ったものである。
 
まあそうした老いの話はさておき、この季節にぴったりなムーンタイトルの曲について、今回は少し記してみようと思う。まあどうしてこんなことになったかと言うと、9月のある日新宿のディスク・ユニオン・ジャズ館でエサ箱を覗いていると、ジャッキー・キングと言う耳慣れないギタリストの『ムーン・マジック』と言うアルバムが気になり、購入してみるとこれがタイトルにも関係している通り、全編月をタイトルにしたナンバーばかりを集めた企画もの。彼のギターをメインにしたギタートリオアルバムなのだが、ジャッキー・キングなどといささか胡散臭い名前で当然初めて聞く人だったが、アルバムのライナーノーツを読むと、これがテキサスではかなり知られた人。ジャズだけでなくカントリー、ブルース、テックスメックス(テキサス風メキシコ音楽)など、テキサス流に何でもこなすバーサタイルなギタリストと言うことで、あのカントリーの第一人者、ウイリー・ネルソン(彼が唄うジャズスタンダードアルバムは大ヒットした)のバックバンドの中心メンバーで、ウイリーからの信頼も絶大な人だと知った。

 
その彼のムーンアルバムには、当然「ムーン・リバー」など上記の2曲も収められており、その他には「ブルー・ムーン」「ムーンライト・イン・バーモンド」「イースト・オブ・ザ・サン・ウエスト・オブ・ザ・ムーン」「ムーン・レイ」「ポルカ・ドッツ&ムーン・ビームス」など、全部で9曲のムーンソングが収められている。テキサスの名ギタリストと言うだけあって、ジャッキー・キングのギターテクも抜群で、何よりジャズ臭が薄く様々な音の色合いを保っている所が良い。モダンジャズの創成期=ビバップエイジに良く演奏された「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」ではビバップ風味な巧みな技を披露、ジャズギタリストとしても一流な所を聞かせてくれる。ムーンソングの代表曲が殆ど網羅されたこのアルバム、全9曲の中でぼくが知らなかったムーンソングは1曲だけ。「ワット・ア・リトル・ムーンライト・キャン・キャン・ドゥー」と言う曲。すこし資料を調べると、この邦題は「月光のいたずら」とあり、ハリー・ウッズと言う人が作詞・作曲したもので、残念ながら制作年度は不明。
  これを含めここでの9曲以外にも、ムーン・ソングは...と調べてみると、最も有名なのが人気スイングジャズバンド、グレン・ミラー楽団の「ムーライトセレナード」、そしてスイング王ベニー・グッドマンの十八番「ムーングロー(月光)」。そして「月の悪魔は君の瞳の奥にいる...」と歌われる「オールド・デビル・ムーン(アニタ・オデイの名称が印象的)」辺りか...。これに続くのが「ムーン・ワズ・イエロー」と「ムーン・イズ・イエロー」と言う色シリーズ。更に映画主題曲としても知られる「ムーン・オブ・マナクーラ(マナクーラの月)」と言った処。「ムーン・ワズ・イエロー」はその後に「アンド・ナイト・ウワズ・ヤング」と続くのが正タイトルとのことだが、ざっと上げてもムーンソングは15曲余りで、まだまだ山ほどある筈だが、今回はこの辺で...。

 果たして西洋にお月見の風習があるかはしかとしませんが、日本でも台湾でもフィリピンでも、やはり東アジア諸国では月を愛で色を愉しむ(どこも共通にお団子のようです)古来からの風習があるようですが、我らジャズ党はここらで月は見えねど月歌ジャズ=ムーンソングジャズを愉しむ...という、この時期ならではの風雅な志と余裕を持ちたいものですね...。

【今週の番組ゲスト:「off note」主宰の神谷一義さん】
M1Stravizauls / 生活向上委員会ニューヨーク支部」
M2「インターナショナル /大工哲弘」
M3Sedotta e abbandonata(誘惑されて棄てられて)/ 原田依幸」
M4「Vietnamese Gospel / 梅津和時」