7月28日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022/07/28(木) 19:00

「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.637~渋やん、真文氏など~】

 この7月の我がジャズ番組は今回がベテランのピアニスト渋やんこと澁谷毅、そして来週がサックス奏者の山口真文氏、両者ともに久方振りの登場である。山口氏が久々のリーダー作『トリニティー』を発表したと言う話を知り、これは何を置いてもスタジオに来てもらわないと...と思い、彼に連絡を取り、喜んで...と快諾を得て、スタジオに遊びに来てくれた次第。トリニティーとは「3位一体」という意味合いで、このタイトルからもサックストリオによるアルバムであることがそれとなく分かる。胸のすくテナーサックスの快演が、全編聴かれる素晴らしいアルバムで、スタジオの副調室のモニターを聴いていても心躍る思いだった。そんな素敵な演奏を展開しながらも、肝心の真文氏は至って恬淡...と言うか、謙遜の極みみたいな受け答えで、そのシャイな性格を知っていても、もう少しアピールすれば...といささか気になってしまう程。しかしこれこそが彼の良さで、超一流のジャズメンである証座とも言える。「星影のステラ」から「夜は千の目を持つ」迄全8曲、どれもスタンダードソングばかりで構成されており、自身のオリジナルをメインにしてきた彼にしては珍しいアルバムだが、これが実に味わい深く、グッドなのだ。語り手としてはもう少し自身をアピールすれば...とも思うが、そうなると真文氏の個性が無くなってしまうかも...。かなり長い付き合いだが、素敵な人柄のジャズミュージシャンである。

 そんな真文氏だが、実は我がジャズ番組この彼を掉尾に、日本のジャズを牽引して来た超ベテランを並べた、豪華ラインアップを組んでいた。ベースの巨星、吉野弘志、そして今回はプーさんこと故菊池雅章と並ぶピアノの鬼才、渋やんこと渋谷毅、そして真文氏と言うラインアップである。このトリニティ~3者の繋がりは、担当者のぼくが言うのもなんだが凄い。我が「テイスト・オブ・ジャズ」位しか実現出来ない、実現しようとしない...とも言えそうなものと秘かに自負している。ただこれも吉野氏、渋やん、そして真文氏と言う、日本のジャズシーンの屋台骨を背負って来た真の実力派の3人が、本当に偶然に新作をこぞって発表したことが大きく関わっている。

 吉野氏のアルバムは全編ベースソロによるアルバム、そして今回の渋やんのアルバムもソロピアノ集。ソロによる作品が並んでいるが、これも様々な理由によるもの。吉野氏の作品は自身のレーベルからの始めての意欲的ソロ作品だし、渋やんのソロ作品は異端の女流ピアニスト&作・編曲家、カーラ・ブレイの作品を取り上げた異色作で、タイトルも「カーラ・ブレイが好き...」である。そして真文氏の全編スタンダード集。そのどれも出色の作品ばかりである。その上珍しいことには吉野氏と渋やんは、ジャズミュージシャンにしては数少ない東京芸大で学んだ人達で、但し渋やんの方は中退の筈。また真文氏も慶応大の音楽サークル出身者。世界でも独自の個性を誇る日本のジャズ・シーンの中でも、その個性を際立たせて来たこの素晴らしい3名を、連続してスタジオに招き、その音楽を紹介することが出来たのは、長年ジャズ番組を担当して来た者としても、望外の喜びとも言える。これだからラジオのジャズ番組プロデュース役、何時までも止められないんですよね...。

【今週の番組ゲスト:ピアニスト渋谷毅(たけし)さん】
15年ぶりのソロアルバム『I  LOVE CARLA BLEY』から
M1「Lawns」
M2「Little ABI」
M3「Soon I Will Be Done With The Troubles Of This World」
M4「通り過ぎた時間」

7月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022/07/22(金) 11:00

「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.636~伝説の大隈ライブ~】

 今月12日の夜、早稲田大の大隈講堂で伝説にして因縁のライブが53年振りに再演された。山下洋輔トリオ「乱入ライブ」である。山下トリオの面々は、最初期の山下、中村誠一(sax)森山威夫(ds)。53年前のライブ、今月のライブ、ともにぼくはその場に居ることが出来なかった。先日は間近に迫った台湾特番の収録・編集の為であり、53年前も確か入局2年目で、走り使いのアシスタント仕事だった筈である。残念と言うかこれがぼくの運命と言った所なんだろうが...。もしも台湾特番収録さえなければ、ライバル局の一つであるTOKYOFM主催のライブイベント(村上ラジオのスペシャルイベント)、おっとり刀で駆けつけた所なのだが...。まあ運命などと大げさな表現をしたが、53年前のこの山下トリオ乱入ライブ、実はその前日に早稲田大のジャズ研の2年後輩で、後にジャズ雑誌の編集長を務め50代の若さで病の為殉職したⅯ君から、早稲田に来て是非参加するように誘いを受けていたのだった。
 「小西さん、明日午后に是非大学に来なよ。面白いイベントと言うか、騒ぎがあるから...。山下さんのトリオをメインに、色々と騒ぐんだよ」と...。実態は不明ながらもそのTELには強く引き付けられたが、なにせこちらも入局2年目。偉丈夫のスポーツディレクターS氏の手伝いをしないとならない。それで無くてもどこかに良く消える若いディレクター...と、評判さんざんだっただけに重要な番組のアシスタント役をほっぽり出して、早稲田大に向かう訳には行かない。泣く泣く諦めたのだが、それが伝説とも言える乱入ライブだった...とは、後で聞いて大変に悔しい思いをしたものだった。

 大隈講堂のピアノを無断で持ち出し大学校舎(バリケード封鎖されていたか...)で演奏会を開くと言う、この無謀な試みを仕掛けたのは、当時12チャンネル(現テレビ東京)の俊英ディレクターだつた田原総一朗氏。岩波映画出身の彼は、自身がメインディレクターになりドキュメンタリーのシリーズ物を制作、その一環として「荒れる学生運動とジャズ」と言ったテーマで、山下トリオに目を付け山下トリオや周囲の学生を挑発し、大学バリケードの中でのジャズライブを実施、それを映像化したのだった。Ⅿ自身は大隈講堂からピアノを運び出す役割は担えなかったのだが、7,8名の運搬役の中には後に作家として名前を成す故立松和平氏もいたとのことで、これは後年ぼくが担当した山下氏の番組で彼をゲストに呼んだ時にも、その時の話を興味深く語ってくれたものだった。全て小綺麗になってしまった、今の早稲田大からは想像出来ないまあ凄い時代だったものだが、この伝説乱入ライブは運んだピアノに火を点けそれを山下洋輔が弾いた...等と言う...尾ひれが付いて伝わってもいたのだった。

 あれから50数年、当時文学部の1年生だったのが作家の村上春樹で、彼自身は直接このライブには関わってはいないのだが、自身のラジオ番組「村上ラジオ」の記念ライブとして、この伝説ライブを同じメンバーで再現してみたら...と考え山下氏に持ち掛け、実現したという訳。山下洋輔と村上春樹。日頃は余り結びつかないこの2人が、この伝説の乱入ライブで接点を持ち、それを実際のライブと番組で再現する。大胆不敵にして良き番組・イベント企画である。
 このライブ実際に耳にしていないので、その成果は何とも言えないが、再演ライブとそれに伴うシンポジウムは盛況で、大隈講堂には老若男女満杯のファンが集まったと聞く。こんな面白い試み、実際に手掛けられたならば、ラジオ屋として望外の喜びだろう...。羨ましい限りである。

【今週の番組ゲスト:ピアニスト渋谷毅(たけし)さん】※渋谷毅さんご出演の番組は7月28日に放送いたします。ご了承ください。
15年ぶりのソロアルバム『I  LOVE CARLA BLEY』から
M1「Lawns」
M2「Little ABI」
M3「Soon I Will Be Done With The Troubles Of This World」
M4「通り過ぎた時間」

7月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022/07/14(木) 19:00

「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.635~台湾特番~】

 今年も特番「21世紀の台湾と日本~台湾ロスを癒そう、台湾満喫ラジオ」を放送することになった。この2年間はセミレギュラー企画で放送していたが、今年は年3回、1時間半の長尺特番と言うことになり、その1回目の放送は7月18日・海の日の午前中、9時からの放送と決まった。この台湾特番は今年で22年目、実に長い間良く続いているものである。流石に20数年という長期番組だけに、番組企画もかなり厳しいうえにこちらもチャンジー・プロデューサーで余り無理もきかない等々...、悪い条件が重なりどうしようかな...と思案していた矢先に、長年協力してくれている台湾経済文化代表処(台湾の大使館相当)の広報のトップ=局長さんが今年の初めに、番組スタート時の広報部係長で大変お世話になった、昵懇のO女史に変わった。そうなればその栄転を祝し、今回も是非特番を...と言うことになったのだった。

 1時間半の特番、それも現地の台湾には行けず日本国内だけで内容を作り上げる...と言うことで、特に3回分のメインテーマ(30分強)の設定には頭を悩ましたが、色々な台湾通の識者などのアドバイスも入れて、初回は「日本と台湾の友好関係を巡って~これ迄とこれから」と言うことに決め、2回目はいま世界中で話題になっているSDGSを特集、「台湾とSDGS~その成果と課題」と言うことにした。台湾とSDGSなどあまりピンとこない...とおっしゃる方もいるかも知れないが、台湾は東アジア随一とも言える程SDGSに積極的に取り組んでいるのである。そこをクローズアップしようと言うもので、ラジオ・テレビ業界では恐らく初めての試みかも知れない。まあこの2回分は良かったのだが、3回目のメインテーマには悩まされた。色々な台湾通の方達とも話してみると、台湾で今一番興味あるものとして異口同音に語ってくれたのが、創=リノベーションというテーマ。これは温故知新とも言いかえることが出来るかも知れないが、古き良きもの・ことを現代に旨く生かす...と言う精神。その代表例が日本統治時代のたばこ工場やビール工場などを、現代的な文化スポットへとリノベーションする~これらは「文創園区」と呼ばれ、台北市にも今次々に立ち上がっており、まさに伝統建築とモダンな内装が旨く融合され、温故知新の精神を実現しているのである。その精神や実際を紹介する...という興味深いテーマに3回目は決定、上手いことにそれに深く関わっている日本人の方も見つかり、目出度し目出度しと言うことになった。

 この特番の取材で、今各地で数年振りに開かれている台湾フェアーにも行ったが、どこも満員の盛況で来ている人たちも、口々に台湾ロスの言葉を発していた。多くの人達が色々な意味で台湾を味わいたいのである。初回7月18日の放送では、日経新聞の台湾支局長に台湾情勢をTEL取材したり、ジャニーズの人気ユニット「ジャニーズ・ウエスト」のメンバーで、台湾にルーツを持つ中間淳太君も登場、「ぼくと台湾」を語ってくれる。ぼく個人も古くからの知り合いでもあるジュディー・オングさん(台湾ルーツ)も、日台友好メッセージをくれたり、東京の台湾を探るレポートなどもあり、台湾ロスを癒すには格好の内容になっている。
 その上リスナープレゼントも、台湾観光協会など多方面からかなり沢山集まっており、期待できると思います。7月18日の台湾特番、台湾に関心のある方は是非聴いてみて下さい。

【今週の番組ゲスト:ベーシスト吉野弘志さん】
『無伴奏ベース組曲〜Prelude to Isfahan』より
M1「牧歌 」
M2「All The Things You Are」
M3「半分の月 la mitad de la luna」
M4「Rumeli Karsilama」

7月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022/07/07(木) 19:00

「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.634~ウルグアイチーム来日~】

 先日のこのコラムで、久々にジャズコンサートに足を運んだことを記したが、今度はまた久方ぶりに、ラグビーの国際試合が観戦出来た。ジャパンの予備軍とウルグアイのナショナルチームとのテストマッチで、場所はラグビー聖地の秩父宮ラグビー場。
 ウルグアイはお隣のパラグアイと並び、ブラジルとアルゼンチンと言う南米の大国に挟まれた小国だが、19年の日本で開催されたワールドカップにも参加しており、釜石の新設スタジアムで試合を行ったのも印象深い。国際ランクこそジャパンよりも下だが、ラグビー強国のお隣アルゼンチンとは国際試合も頻繁に行っており、南米ではかなりなラグビー強国でもある。但しアルゼンチン程には選手名や実力も全く知られておらず、ジャパン予備軍が戦うには格好の相手。何より久方振りのラグビー国際試合だけに、やはり胸躍るのは間違いない。当日はジャパンの登場もあって、赤白模様の公式応援ジャジーを纏ったファンも数多く、地下鉄の駅から会場までは長蛇の列、活況に溢れた青山・秩父宮周辺だった。

 試合はテストマッチとは言え日本は予備軍主体、初めてテストマッチのキャップを獲得する若いメンバーも多く、それだけに全員ジャパンに上がろうと必死の奮闘振り。この面子で大丈夫かと思ったが、若手主体ながらも実力は日本の方が上で、余裕の勝利だった。その上ウイングの根塚洸雅、ナンバーエイトのデビッド・タタフ等と言った、期待の若手も大活躍で、この試合でジャパンに上がる選手も何人か出て来るだろう。試合を見ていて日本もラグビーが本当に強くなった...、と思わせるだけの実力振りだった。そしてそれから1週間後、今度は北九州市で正規のジャパンがウルグアイと対戦、このテストマッチでは1トライを許すも、ほぼ完璧な形で勝利を飾り、世界ランキング10位と言う実力を強く印象付けた。格下のウルグアイには完勝だったが、その次に控えるのが北半球最強とも言われるフランスチーム。こことどんな試合を繰り広げられるかで来年パリで開かれるワールドカップでのジャパンの命運も決まりそうである。頑張れジャパン...と言った所か...。

 ところで今回遠征してきたウルグアイ。この国は地球規模で見ると日本のちょうど裏側、地球の中心を貫いて行けばこのウルグアイに飛び出すと言う、興味深い関係にもある国。またアルゼンチンとブラジルは音楽大国でもある、この両国に挟まれているため、音楽的にはアルゼンチンに近く、タンゴやミロンガと言ったアルゼンチンの音楽の影響が強い。ただしこの国が逆に、アルゼンチン音楽にも影響を与えているのは、カンドンべと言った独特の音楽があること。そしてこのカンドンべは、ジャズとの親和性も濃く、ウルグアイジャズ=カンドンベジャズとでも呼べそうな独特なジャズを確立しており、ワールドジャズとしても見過ごせない存在でもあるのだ。その中心にいるのがウーゴ・ファルトーゾ。南米屈指のキーボード奏者で度々来日も果たしているので、ご存じの方もいるかも知れない。彼はヤヒロ・トモヒロとユニットを組み、アルバムを出しコンサートも開いているが、そのデュオユニットの素晴らしさについては、2013年10月にこのジャズコラムでも紹介したことがある。そしてもう一人、この国のジャズ(音楽)シーンの重要人物が、ウーゴと同じキーボード奏者&シンガーのルベン・ラダ。ウーゴとは違って彼は未だ来日公演はないはずで、未だその存在も余り知られていないが、ウルグアイのジャズシーンを語るうえで最重要人物の一人、コンサートなどは満員になると言う大物。ぼくはブラジルやアルゼンチンと言った、南米音楽フリークなのだが、このウルグアイのミュージシャン達のアルバムは未だそう多くは持っていない。ディスク・ユニオンなどで見かけると、なるべく手に入れることにしているのだが、大物以外はどんなミュージシャンか皆目見当がつかない所が玉に瑕。だがやはり光るところ多しで、入手して損した気分になったことはない。まあ余り一般のジャズファンの方にはお勧めしかねるが、ウーゴとルベンこの2人のアルバムを見つけたらば、是非一度は手にしてみて欲しい。

 ラグビーのウルグアイは、予想よりいくらか実力不足気味だったが、ウルグアイジャズ=カンドンベジャズの方は、かなり手応えあること間違いない筈です。

【今週の番組ゲスト:ジャスピアニストの福井ともみさん】
初のソロアルバム『RAINBOW FOR TOMORROW』より
M1「RAINBOW FOR TOMORROW」
M2「I GOT IT BAD AND THAT AIN'T GOOD」
M3「LONGEVITY(長生き)」
M4「OVER THE RAINBOW」