5月19日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2022/05/19(木) 19:00

「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.627~追分通信22春その2~】

 GWに入る2日ほど前から信濃追分の山荘に来たのだが、今回は腰痛療養がメインで温泉通いの毎日。来た当初は人も見かけず静かな毎日。久方振りに御影用水脇の「オーバルジュ・グルマン」に立ち寄り、娘さんが作る軽井沢地域で随一とも言えそうなガレットでのランチを愉しみ、マスターの平井さんともしばし歓談。今は店の改造も無く(お店と隣接住居は彼のセルフビルド。外資系広告代理店の社長までやった彼は、セルフビルドの達人でカーペンター平井とぼくは呼んでいる...)、もっぱらお山(浅間山)やその近辺の山登りに励んでいるとのこと。余り悩みも無い様子で、腰痛に悩まされ続けるぼくなどにとって、全く羨ましい限りのご身分である。

 さてGW前は連日肌寒く、朝などは5度以下と言った真冬並みの寒さ、その為に人出も少ないのか...と思っていたが、GW初日、4月29日のみどりの日以降は流石にどの別荘・山荘にも車を見掛け、次々に人が訪れるようになり、ようやくGWの追分春景色と言った感じになって来た。このGWに合わせてか新築の別荘なども次々に完成、新しい住人を迎えている。現在軽井沢地域はもう土地や住宅が満杯状態で売り物がほとんど無い状況。お隣の御代田町は土地価格が3割がた安いせいもあり、どんどんと流入人口が増え長野県でも最高の人口増加率だと言う。確かにかつては湿地や荒れ地だった所が綺麗に整地されている...と思うと、直ぐに住居の建設が始まり次々と新しい建物が誕生、そのどれもが新建築などと言った建築雑誌のモデルになりそうなモダンで華やかな外見のものばかりで驚かされてしまうことが多い。この前も御影用水のウオーキングの途中、道を少し変えて歩いてみると、集落の端で寂しく荒れた林に千曲バスの廃車が長い間打ち捨てられていたり、余り人の立ち寄らない寂しい一帯も一面に林が切り開かれ、モダンでかなり大きめな別荘が4件並んで立っていた。それぞれがその威容を競う感じの洒落た土地になっており、これにもビックリさせられたものだった。世間では余り景気も良くない...とも聞いていたのに、この豪勢さはどうしたものか...と少しばかり考えさせられてしまう。在る所には有るものなのだろう。

 ところでぼくの知り合いにも、軽井沢と御代田に移住(Iターンと言うのか...)してきたのが、ここ1年ほどで3人もいる。一人は局の後輩だった女性で、1年前に子供の小学校入学に合わせ軽井沢の中ほどに一家で移り住み、もう一人はジャズ本の翻訳や来日ジャズメンの通訳などでも知られるK嬢が、一人で御代田の西端に移り住んだとの連絡あり。更に国分寺市の知り合い一家が、我が山荘から歩いて10数分の所に移り住み、洋菓子とカフェの住居兼店舗をGW直前に始めることになった。まあある意味驚くべきことだが、こんな事態になっているのである。
 信濃追分はかつて堀辰雄が「美しい村」と称し旅籠屋の「油や」に長逗留、詩人で建築家の立原道造が美しいソネットを、この村に捧げて書いた静かな保養地だったが、ここ数年で様変わりしモダンな建物が立ち並ぶ地になった。そしてこうした移り住む人たちのなかには、喫茶店などを開く。大概奥さんが愉しみで店をやるのだろうが、週の後半の3日程オープンなどと言うカフェが次々に誕生、時ならぬカフェブームとなっている。国分寺の知り合いもその一人なのだが、こうした奥方達は誰もが料理上手でお茶上手、店も実にセンスが良く美味しい。信濃追分から御代田の軽井沢よりの東端は、こうした新たなカフェスポットとして、これからTVや雑誌で注目を集める可能性がありそうだ。それが良きことかは何とも言えないが...、時の流れであることは間違いない。

 最後にこのGWに読んだ本で感銘を受けたのは、台湾の代表的人気作家、呉明益の「歩道橋の魔術師」と上橋菜穂子の「鹿の王」の2冊。両方とも読みたかったものだが、感銘度高し。前者は台湾版マジック・リアリズムとも言えそうな小品集。仕事関連で読んだが現在の台湾の充実振りを表し、中々のものだった。そして「鹿の王」。上下2冊の長編ファンタジーで世評の高い作品だが、流石の上橋ファンタジーワールド。戦士ヴァンと血の繋がらない娘ナナとの、親子成長の物語り...かと思ったがさにあらず、冒険ファンタジーながらもコロナ禍の今を予言していた様なパンデミック小説~医療ノーベルの要素も含む重厚な作品だった。これはトールキン(指輪物語)やル・グイン(ゲド戦記)等に匹敵する、世界のファンタジー史にも挙げられる傑品とぼくは読んだが、果たしてどんなものだろうか...。両本とも是非皆様にお薦めしたい。

【今週の番組ゲスト:トロンボーンプレイヤーの駒野逸美さん】
ご自身初のリーダーカルテットアルバム『Nearest and dearest』から
M1「Kayu Raja」
M2「Lemon Balm」
M3「In the Mind」
M4「Chikuzenni Dilemma」