5月26日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022/05/26(木) 19:00

「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.628~21世紀のECM~】

 我等がジャズ番組「テイスト・オブ・ジャズ」、このコラムでも良く書いている通り、もう58年と言う恐らく世界でも屈指の長い歴史を誇る番組で、ぼく自身が担当してもう50年弱とほぼ半世紀も経過しているのだ。まあよく続いているものだし、昨年初め辺りからラジコの聴取者ランキングでも上位を続けると言う...、予想外の好調さでもある。

 ところでこの番組をぼくが担当するようになったのとほぼ同時期、まあ実際は少し前ではあるが、その時に誕生し現在もなお世界で最も個性的な素晴らしいレーベルとして、ジャズ関係者などから高い評価を受けているのが、ドイツのミュンヘンを拠点にしている「ECM」である。このECMが誕生したのは1969年のこと。クラシックのコントラバス奏者でフリージャズも演奏していたと言うマンフレッド・アイヒャ―が、その独特な美意識に基づく抒情&耽美なジャズサウンドを求めて起こしたジャズレーベルなのである。記念すべき第1作は、日本でも絶大な人気を誇っていたピアニスト、故マル・ウオルドロンの『フリー・アット・ラスト』。このアルバムは確か日本ビクターから出されており、初代の木全信プロデューサーのアシスタントをやっていた時に、番組でも取り上げた覚えがあるので、我がジャズ番組とアイヒャーのECMは、切っても切れない縁が有るように思えてならない。そしてそのすぐ後にぼくが正式にジャズ番組の担当プロデューサーとなり、半世紀に渡る関りがスタートすることになる。先方はそんなことはこれっぽっちも意識していないだろうが...。

 誕生後このECMは、アイヒャーと言う強烈な個性の持ち主に導かれ、順調な道を歩みミュージシャン達からの信頼も厚く、一躍欧州を代表するジャズレーベルへと成長してゆく。特にこのレーベルは、ジャズ界を代表するピアニスト、キース・ジャレットとの専属契約によって発展を遂げ、彼のソロアルバムやスタンダードトリオなどの諸作が大ヒットしたことにより、世界の中でもその個性が際立つレーベルとしてジャズ界を代表するものとして、多くの関係者からも強く認識されることにもなる。キースの諸作の大ヒットはアイヒャーの自信を深め、元々クラシック奏者だった彼は、ジャズだけでなくクラシック関連のアルバムも発表するようになり(「ニュー・シリーズ」)、ギドン・クレーメルやアンドリュー・シフと言った大家の作品も手掛け、クラシックレーベルとしてもその存在感を見せつけることになる。

 今や押しも押されもせぬジャズ&クラシックの世界的レーベルになったECMだが、21世紀に入りジャズの世界でも新たな才能の発掘を加速させ、様々な資質を世に送り出している。サックスのクリス・ポッターとマーク・ターナーと言う、現代のシーンのメインに位置する白人・黒人の代表的奏者の作品がそのなかでも最も印象深いが、その他にも今注目のイスラエルジャズのプレーヤー、シャイ・マエストロ(P)、アビシャイ・コーエン(tp)等々、又東欧のアルメニア出身のティグラン・ハマシアン(p)、ぼくの大好きな国キューバ出身の気鋭ピアニスト、ダビ・ビレージャスなど、様々な国の若手にも目を向けており、その細やかな目配りは流石と言った感じだ。
 このECMについてはぼくも関係しているジャズブログ「ジャズ・トウキョウ」を主宰する稲岡邦也氏(以前にこのレーベルの担当責任者でもあった)が最も詳しく、関連のジャズ本も何冊か出しているだけに、このECMの新たな動きについて、番組でも彼に色々と解説してもらおうと思っている。数カ月前に音楽誌「ステレオ」がこのレーベル特集号を組んだところ、音楽誌では珍しくすぐに完売してしまったとも聞く。それだけに人気の高いECM特集、そのレーベルの歴史と主に歩んできたと言う、細やかな自負を持つ我がジャズ番組でも、かなりなジャズ愛好聴取者を獲得出来ればとも今考えているのですが...。

【今週の番組ゲスト:ジャズボーカリストの西村知恵さん フレットレスベーシストの織原良次さん】
お2人のユニット「VIRTUAL SILENCE」の新譜『VIRTUAL SILENCE』から
M1 「矛盾の街 (Vain Pursuit) 」
M2「Beyond The Flames 」
M3「人間が住んでる (The Past Decade) 」
M4「汚れた群青 (Grief Runs Deep) 」



5月19日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022/05/19(木) 19:00

「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.627~追分通信22春その2~】

 GWに入る2日ほど前から信濃追分の山荘に来たのだが、今回は腰痛療養がメインで温泉通いの毎日。来た当初は人も見かけず静かな毎日。久方振りに御影用水脇の「オーバルジュ・グルマン」に立ち寄り、娘さんが作る軽井沢地域で随一とも言えそうなガレットでのランチを愉しみ、マスターの平井さんともしばし歓談。今は店の改造も無く(お店と隣接住居は彼のセルフビルド。外資系広告代理店の社長までやった彼は、セルフビルドの達人でカーペンター平井とぼくは呼んでいる...)、もっぱらお山(浅間山)やその近辺の山登りに励んでいるとのこと。余り悩みも無い様子で、腰痛に悩まされ続けるぼくなどにとって、全く羨ましい限りのご身分である。

 さてGW前は連日肌寒く、朝などは5度以下と言った真冬並みの寒さ、その為に人出も少ないのか...と思っていたが、GW初日、4月29日のみどりの日以降は流石にどの別荘・山荘にも車を見掛け、次々に人が訪れるようになり、ようやくGWの追分春景色と言った感じになって来た。このGWに合わせてか新築の別荘なども次々に完成、新しい住人を迎えている。現在軽井沢地域はもう土地や住宅が満杯状態で売り物がほとんど無い状況。お隣の御代田町は土地価格が3割がた安いせいもあり、どんどんと流入人口が増え長野県でも最高の人口増加率だと言う。確かにかつては湿地や荒れ地だった所が綺麗に整地されている...と思うと、直ぐに住居の建設が始まり次々と新しい建物が誕生、そのどれもが新建築などと言った建築雑誌のモデルになりそうなモダンで華やかな外見のものばかりで驚かされてしまうことが多い。この前も御影用水のウオーキングの途中、道を少し変えて歩いてみると、集落の端で寂しく荒れた林に千曲バスの廃車が長い間打ち捨てられていたり、余り人の立ち寄らない寂しい一帯も一面に林が切り開かれ、モダンでかなり大きめな別荘が4件並んで立っていた。それぞれがその威容を競う感じの洒落た土地になっており、これにもビックリさせられたものだった。世間では余り景気も良くない...とも聞いていたのに、この豪勢さはどうしたものか...と少しばかり考えさせられてしまう。在る所には有るものなのだろう。

 ところでぼくの知り合いにも、軽井沢と御代田に移住(Iターンと言うのか...)してきたのが、ここ1年ほどで3人もいる。一人は局の後輩だった女性で、1年前に子供の小学校入学に合わせ軽井沢の中ほどに一家で移り住み、もう一人はジャズ本の翻訳や来日ジャズメンの通訳などでも知られるK嬢が、一人で御代田の西端に移り住んだとの連絡あり。更に国分寺市の知り合い一家が、我が山荘から歩いて10数分の所に移り住み、洋菓子とカフェの住居兼店舗をGW直前に始めることになった。まあある意味驚くべきことだが、こんな事態になっているのである。
 信濃追分はかつて堀辰雄が「美しい村」と称し旅籠屋の「油や」に長逗留、詩人で建築家の立原道造が美しいソネットを、この村に捧げて書いた静かな保養地だったが、ここ数年で様変わりしモダンな建物が立ち並ぶ地になった。そしてこうした移り住む人たちのなかには、喫茶店などを開く。大概奥さんが愉しみで店をやるのだろうが、週の後半の3日程オープンなどと言うカフェが次々に誕生、時ならぬカフェブームとなっている。国分寺の知り合いもその一人なのだが、こうした奥方達は誰もが料理上手でお茶上手、店も実にセンスが良く美味しい。信濃追分から御代田の軽井沢よりの東端は、こうした新たなカフェスポットとして、これからTVや雑誌で注目を集める可能性がありそうだ。それが良きことかは何とも言えないが...、時の流れであることは間違いない。

 最後にこのGWに読んだ本で感銘を受けたのは、台湾の代表的人気作家、呉明益の「歩道橋の魔術師」と上橋菜穂子の「鹿の王」の2冊。両方とも読みたかったものだが、感銘度高し。前者は台湾版マジック・リアリズムとも言えそうな小品集。仕事関連で読んだが現在の台湾の充実振りを表し、中々のものだった。そして「鹿の王」。上下2冊の長編ファンタジーで世評の高い作品だが、流石の上橋ファンタジーワールド。戦士ヴァンと血の繋がらない娘ナナとの、親子成長の物語り...かと思ったがさにあらず、冒険ファンタジーながらもコロナ禍の今を予言していた様なパンデミック小説~医療ノーベルの要素も含む重厚な作品だった。これはトールキン(指輪物語)やル・グイン(ゲド戦記)等に匹敵する、世界のファンタジー史にも挙げられる傑品とぼくは読んだが、果たしてどんなものだろうか...。両本とも是非皆様にお薦めしたい。

【今週の番組ゲスト:トロンボーンプレイヤーの駒野逸美さん】
ご自身初のリーダーカルテットアルバム『Nearest and dearest』から
M1「Kayu Raja」
M2「Lemon Balm」
M3「In the Mind」
M4「Chikuzenni Dilemma」

5月12日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022/05/12(木) 19:00

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.626~追分通信22春~】

 このジャズコラムの「追分通信」も毎年3~4回ほど取り上げているので、「ジャズ日和」とその前身である「ジャズ徒然草」、双方合わせるともう20数年、それだけにこの通信だけでなんと80回弱と言う数になるはずである。まあどうしても追分周辺の自然やその散策が中心になり、追分地域でも最も美しい御影用水周辺の風物がその主なものになっているのだが、今回もGW直前の初春の時期にこちらに数日間滞在することにした。
 この時期はまず山荘の水出し作業、いよいよ生活が始まる儀式である、そして何と言っても木々の芽吹き、桜や芝桜等々の開花と言った、生命力あふれる実にいい時期なのである。但し今回のぼくの目的はプチ療養。前にも書いたと思うが2月半ばから絶不調、内視鏡など様々な検査はどうにかクリアしたのだが、その絶不調の最中に重い温泉水を運んだせい(?)なのか、突然激しい腰の痛みに襲われそれが1か月近く続いている。近くの大病院や整形外科医、このコラムにも登場したジャズライターにして整形外科医でもある、小川隆夫氏にもアドバイスを求めたが、術無しの感じで、国立の鍼灸整体院に通うぐらい。整形外科の方達はただ老化の一種だから...でかたずけられてしまい、こちらの痛さなど関係なく無策に近い。と言うことで一念発起し、追分山荘近くの東信地域の腰痛に効く温泉巡りを敢行しようと思った次第。

 長野県の東部地域(東信)、上田や佐久、そして軽井沢などがあるこの地域で、最も効くのは別所温泉近くの国民保養湯の鹿教湯、そして上田市のお隣の大温泉街、戸倉上玉田温泉と言うことになるが、両方とも結構車でも遠く、往復でなんやかんや2時間近くも掛かってしまう。と言うことで近隣の日帰り温泉施設で効能のありそうな場所に向かうのだが、こうした温泉効能はそこに来ている常連の爺さん連中に聞くのがベスト。まあ若ぶっていてもお前もチャンジー(爺さん)じゃないかと言われればそれまでだが。こうした温泉常連のチャンジーたちは実に詳しい。「あんた腰痛、それならばやはり鹿教湯の斎藤旅館だよね、それか上山田の日帰りの鶴の湯、あそこは杖入らずだもん...」とか。ぼくの聞きたいのはこの近くで圧倒的な効能を...等なのだが、どうやらそれは難しいみたいである。ぼく自身で調べてみるとやはりこの近く...と言うよりも、日本有数の万病に効くのは草津の湯...と言うことだが、これはお山(浅間山)超えでかなり道遠しなのである。まあ仕方ないので今年は善光寺の御開帳の周年蔡、その見物も兼ねて戸倉上山田温泉の日帰り湯にでも寄ろうか...とも今考えているのだが。

 腰をかばう所為か、いつもならば1時間かけて越す御影用水周辺散歩も30分程度でギブアップ、それもアップダウンがあるとかなり苦しくゼイゼイとなる始末。やはり老化は恐ろしいものである。まあこれを乗り越えて...と思っているのだが、果たしてチャンジーの努力はどこまで...。ただ嬉しいのは今年も御影用水に鴨が4羽ほど定着していること。よく見ると3羽は一家で、一羽はどうやらはぐれの小鴨らしく、他から結構つらく当たられている様子。何かこの鴨達を見ていると色々考えさせられ、和む感じもあるが、「イタイケ小鴨、頑張れチャンジーここにあり」...って一茶をもじると、こんな感じかも...。

【今週の番組ゲスト:トランペッターでピアニストの曽根真央さん】
2ndアルバム『Brightness of the Lives』から
M1「Luminous」
M2「Drum Hero」
M3「Lives」
M4「Gathering At Park Drive」


5月5日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2022/05/05(木) 19:00

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.625~ジャズフェス復活~】

 ロシアによるウクライナ侵攻は、ずるずると決着を見ないまま続いており、ひょっとすると世界大戦など...と言う恐ろしい観測まで飛び出し落ち着かない毎日だが、一方コロナ禍の方も変異株登場などと...、こちらも予断を許さない状況。何とも恐ろしい事態が続いているが、何も出来ないのが寂しい限り。

 そんな中音楽イベント業界では、ウイズコロナ禍...と言った感じもあってか、大型ライブイベントやライブハウスなどでの活動等も、GW明け位からそろそろ始動...と嬉しい状態を迎えつつある。その先陣を切って...とも言えるのが、先週我がジャズ番組でも取り上げた、5月14&15両日に秩父郊外のミューズパーク、野外公園シアターで開催される大型ジャズイベント「ラブ・シュープリーム・コンサート」だろう。このイベント、コロナ禍もあって2年間も中断を余儀なくされたが、今年どうやら開催と言う運びになった。2013年にイギリス発祥のライブジャズイベントで、現地では多くの有名ミュージシャンが登場し、かなりな人気を誇るジャズイベントだが、ぼくは全くその存在を知らなかった。今回のライブジャズイベント、いささか落ち着きを見せているらしいとは言え、流石に外国からのミュージシャンは多くなく、今ジャズ界の中心に要るピアニスト&キーボード奏者のロバート・グラスパーのバンド,それに日本で人気の高いセルジオ・メンデスのブラジリアンバンド位のもの。国内の若手バンドや注目バンド中心のラインアップだが、目玉は2つの外国バンドと並びドリ・カムこと「ドリームズ・カム・トゥルー」が我等が上原ひろみと共演するステージ。ドリカムと上原の共演は10数年振りと聞くが、果たしてジャズかどうかは別として...、大変に興味深いステージであることは間違いない。秩父ミューズパークとは秩父駅から離れた山の中。数回その前を通ったことがあるが、良くこんな所に...と思うほど立派な野外ホール。もう既にいす席は完売で後ろの芝生席のみの販売...と言うことだが、大型ジャズイベントの復活を望んでいたファンが多かったことを如実に物語っている。ぼく自身は健康の問題などあって参加は敬遠する予定だが、是非の成功を祈っている。

 一方都内のホールコンサートで興味深いのは、今最もクリエイティブな活動を展開しているピアニスト、ブラッド・メルドーのライブだろう。7月の半ばに4回ほど行われる予定になっているが、これは何としても行きたいもの。アルバムを出すごとに様々な顔を覗かせ、そのダイナミックな変化も興味深い、才人のメルドー。アッと言わせる大胆なプレーを聴かせてくれる筈である。今から大いに楽しみでもある。
 ようやく巣籠もりから街へ...。ウクライナ侵攻を除くと、状況は徐々に変化しつつある。鬱を吹き飛ばし陽気に愉しく。何といっても春です、春なんですから。

【今週の番組ゲスト:ラテンシンガーの 岸のりこさん】
M1「My Foolish Heart(Mi tonto amor)
M2「Contigo aprendi」
M3「Obsesion」
M4「Caravan」