11月4日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2021/11/04(木) 19:00

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.599~コルトレーン「至上の愛」~】

 このところジャズ界では発掘盤の話題が良く聞かれる。ジャズ史を飾った大物達、帝王マイルスを筆頭に、鬼才セロニアス・モンク、モダンピアノのイノベイターにして人気の高いビル・エバンス等々、ジャズ史を飾る巨星達の未発表アルバムが発掘され、話題を集めているのだ。ただしこれらほとんどがクラブやコンサートでのライブ盤で、スタジオ収録の未発表アルバムが見つかることはほとんど無い。スタジオでの正式録音は各レコード会社が厳重に管理、そうそう未発表ものなどは見つからないのが実情。もしあればその当時は発表できなかった諸事情もある訳で(演奏内容の問題が大きい)、たとえその当人が故人であろうとも発表は難しい場合が多い。一方ライブ盤は観客がひっそりと愉しむため、またプレーヤー個々人の記録の為等々、色々な理由で埋もれて残されているケースも多く、これからもライブ音源では結構貴重なものが見つかる場合も少なくないと思われる。

 そんなこの所の発掘盤ブームの中でも、最大の成果と言えるのは、テナー・タイタンことジョン・コルトレーンの11月発売『至上の愛~ライブ・イン・シアトル』だと思う。そのタイトルからも明らかなとおり、この発掘盤もライブ作品で(65年9月末)、トレーンカルテットの前座を務めていたシアトルのサックス奏者、ジョー・ブラジルが記録用として私的に収録していたもの。この「至上の愛」は、「承認」「決意」「追求」「賛美」という4部作からなる組曲で、全盛時のコルトレーンカルテットの最高傑作と言う呼び声の高い作品で、ライブ演奏はこれ迄残されていなかっただけにその価値は高い。その上このライブではカルテットでは無く、サックスがトレーンを含め3管、それに2べースと言った7人編成と言う大所帯によるもの。
 オリジナルアルバムは4部で40分弱の演奏だったが、ここではライブであること、また参加人数が増えていることなどもあり倍近い時間をかけての、エキサイティングな演奏が展開され、トレーンファンの多い日本のファンの興味が増すのも至極当然なこと。アルバムの惹句には「ジャズ史を揺るがす大発見!」とあるが、決して大げさでは無い。 

 ぼくにとってもコルトレーン、マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルビン・ジョーンズと言う不滅のコルトレーンカルテットは、学生時代は神とも言える畏敬の存在で、毎日新宿の暗いジャズ喫茶で聴き狂っていたものだった。だがこの『至上の愛』を起点としたトレーンの晩年の演奏は、余りにもスピリチュアル~霊的な要素も濃いだけに、聴きすぎるといささか重すぎて辟易としてしまい、局員となってからは敬遠気味、そしてそれが今に至っていると言う次第。しかしトレーンにファラオ・サンダース、カルロス・ワードと言う3人の卓抜なサックス奏者達による、劇烈とも言える競演、これはジャズに関わるものならば、絶対に聴き逃せない筈のもの。まあ久しぶりにじっくりと「至上の愛」を堪能したが、あの60年代から70年代初めの時代は、今思うとやはり過激にして激烈な毎日だったんですね。ただのんべんだらりと毎日を過ごす、今のチャンジーそのもののぼくにとっては、かなりしゃきっと身構えるしたたかな時間で、とてもいい刺激になりました。

【今週の番組ゲスト:ピアニスト 田窪寛之さん】
Waltz for Debby - A Tribute To Bill EvansTone Painting』から
M1How my heart sings
M2Amembow
M3Appassionata
M4Waltz for Debby