10月28日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021/10/28(木) 19:00

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.598~横尾忠則展~】

 余り年令の事は言いたくないのだが、やはりその話になってしまう。どうも最近コロナ禍も影響しているかも知れないが、出不精になっているようだ。案内が来ても展覧会や試写会、更にはコンサートなどへ顔を出すことも少なくなってしまった。中でも美術展、以前は関心があるものは余程混んでいない限り、行くようにしていたのだが、どうも駄目である。

 そんな折NHKのEテレ美術番組で特集も組まれ、是非とも行かねば...と思っていたのが、東京都現代美術館(MO+)で開催中の横尾忠則展。だが気持ちはあっても行動が伴わないのだが、期日を見ると10月半ばにはもう終了とある。まあこれでは仕方ない...と諦めかけていた所、山本嬢がこの展覧会を見に行き感激、是非行くべき...とTEL予約までしてくれた。こうなれば国立の自宅から隅田川を超え、はるばる下町の美術館迄行かざるを得ない。と言うことで先日、終了ギリギリで行ってきました横尾展。一口に言って想像以上に凄かった。まあ掛かっている絵画・ポスター一体いくつあるか分からない程に膨大、その数量、そして作品の馬鹿でかさ=雄大さ。本当に圧倒されました。老体には珍しくその前夜、番組収録と編集作業で仕事終わりがなんと夜の11時過ぎで、帰宅はタクシーを使い深夜1時過ぎ。横尾展当日は眠たくて々仕方なかったが、入館時間が予約で決まっており間に合うように急いだ。現代美術館に着くともうかなりぐったりだったが、そんな眠気・疲れなど会場に入ると一瞬にして吹き飛んでしまう程、圧巻のエナジーが各作品から放射されている。

 ぼくらの世代、言うなれば大学時代に大学闘争を経験した60~70代の連中で、文芸・音楽・演劇・絵画などの芸術活動に関心をを抱いた面々、特にぼくのようにジャズに最大の関心があった者にとって、間違いなく絵師&ポスター師の横尾忠則は、時代のアイコン(象徴・アイドル)だった。あの時代を彩った2つのアングラ劇団、唐十郎の状況劇団、寺山修司の天井桟敷。ぼくは唐派だったが、あの激動の時代を担った2つの意欲的芝居小屋、その蠱惑力・動員力をさらに高めたのが、横尾忠則が描く芝居ポスターだったのは間違いない。「腰巻お仙」「ジョン・シルバ―」等々、テント小屋芝居での横尾絵師の描くポスターは「書を捨て、街へ...」では無いが「日常を捨て、テント小屋へ...」と、若いぼくらを強烈にアジっているものであった。余談だが膨大な数の機動隊に囲まれながら見た、早稲田大近くの戸山公園にあった野外劇場跡での、唐さんの「ジョン・シルバ―」忘れられません。

 あのポスター師からポップアーティストとしての80年代初め頃迄の横尾の仕事、強烈にインスパイアされるものは多かったのだが、以降「絵描き宣言」をしてポップ芸術の世界を抜け出して以降、その彼の仕事振りにはなぜか興味がわかなかった。と言うよりもその頃は確か小説なども書いており、それが余りに霊的な要素の濃いものだったことなども影響して、あちらの存在としての横尾には興味を失ってしまい、何を描いているのかも時々知る程度だった。そんな折にEテレでの特集、かなりショックを受けたのだが、その作品の持つスケール感まで分からなかった。それが今回それらに対峙して、本当に仰天したと言う感じなのである。

 展覧会のサブ・タイトルは「原郷から幻境へ、そして現況は?」と言うもので、今回の展覧会のコンセプトを見事に浮き彫りにしている。それにしても「滝」と「二又路~Y字路」、更に自死した作家、三島由紀夫。この3つの重大要素への横尾の拘りは凄い。中でも「滝」を描くために彼が集めた世界中の滝の絵葉書。その数なんと13000枚余り、その殆んど全てがびしっと部屋中に展示され、それだけでクラクラと眩暈がしてしまう程。
 まあこの驚天の展覧会に、今回間に合っただけでもぼくは幸せ者だとつくづく思う。その余りに並外れた才能と想像力、創造力そして好奇心、横尾のこれら全てに乾杯!

【今週の番組ゲスト:ヴォーカリストの おいたえりこ さん】
Starry Night』から
M1I wish you love
M2Wild is the wind
M3「愛しき人よ(Love me tender)
M4Vincent


10月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021/10/21(木) 19:00

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.597~チューバ・ジャズ~】

  貴方はチューバと言う楽器ご存じだろうか...。吹奏楽などでよく見かける大きな低音楽器で、高校などの吹奏楽部で女子学生などが担当していると、演奏だけで無くその持ち運びどうするのか...等といらぬ心配までしてしまう、ある意味厄介なそして困難な楽器でもある。
 ジャズの世界ではかつてのニューオーリンズジャズでは(今でも健在で再注目の存在ではあるが...)、かなり重要な役割を担っていたこの重厚な低音楽器も、モダンジャズ時代になるとその余りの重厚さ故に、ほとんど見向きされなくなってしまった。しかしどっこいこの楽器はしぶとくしたたかに、その困難な時代を生き抜いて来て、21世紀に入ると息を吹き返しつつある。その困難な時代にこの楽器で頑張って来た立役者の一人がハワード・ジョンソン。彼は今年の1月に79才で亡くなってしまったが、その功績は大変に大きいものがある。『グラビティ―』等のリーダー作を発表し、この難しい楽器で見事なソロワークを披露していたが、彼はまたあのジョン・レノン&オノ・ヨーコの『ダブル・ファンタジー』にも参加、この楽器の再認識にも寄与していた。さらに彼の元からはボブ・スチュアートなど次代を担うプレーヤーも巣立っている。このジョンソンと並ぶ需要人物として、もう一人レイ・ドレーパーの名前も忘れられない。ジョン・コルトレーンなどとの共演アルバムによって知られる彼も、ジャズにおけるこの楽器の意味合いを認識させた貢献者の一人でもある。

 まあこうしたミュージシャン達の努力によって、このチューバと言うある種の異端にして興味深い低音楽器は、ジャズの世界を生き抜いてきたのだが、21世紀に入るとその存在がそれなりの注目を集め出したのは興味深いことだと言える。それには今のニューオリーンズ・ブラス・バンドが新たの注目を集め出したことも大きく関わっているかも知れない。若いロックやヒップホップに関心を持つファンが、そこに登場するこの楽器の面白さ・異様さに目を付けつつあるので、また新たな展開が開けるかも知れない。

 ぼくがこの楽器に注目するようになったのは、今最も熱く激しいジャズを展開している(らしい)ロンドンのジャズシーン。その中心に位置するサックス奏者、ぼくのお勧めNo1プレーヤーでもあるシャバカ・ハッチングスのバンド「サンズ・オブ・ケメット」からだった。このバンドがこのチューバをその楽器編成に起用しており、そのプレーヤーがまた仲々に強力で魅力的だったのである。彼の名前はテオン・クロス。
 そのデビュー作「ファイア」のキャッチフレーズには、「アフロ・ビートを軸として、ヒップホップからクラブサウンド迄を展開するチューバ・ジャズ」とあるが、正にその通りの新しくもありながら伝統にも則った不思議な魅力を秘めた、ファイア(炎)の様に燃え上がるジャズを展開しているのである。チューバでアドリブを展開するのは中々の荒業ではあるが、それをクロスは現代感覚で巧くこなしている。その魅力の程は皆さまが実際に耳にして欲しいものである。チューバと言う楽器が21世紀のジャズの展開に新たな彩りを添えることが出来るか...。テオン・クロスの活躍ぶりに注目である。

【今週の番組ゲスト:ピアニストの山本剛(つよし)さん ベーシストの香川裕史(ひろし)さん】
Misty for Direct Cutting』から
M1Misty
M
2Midnight Sugar
M
3Yesterday
M
4The In Crowd



【特番のお知らせ】

「テイスト・オブ・ジャズ」は、放送開始から57年。そして現在進行の山本郁さんが担当するようになってこの秋20周年を迎えました!

11月23日(祝)朝9時30分から1時間特番『テイスト・オブ・ジャズ・スペシャル 私とジャズ~なんだかんだで57年、そして20年~』を放送する予定です。

特番では、みなさんのジャズに関するメッセージやリクエスト曲を募集します。

初めて聞いたジャズ、ジャズとの思い出......など、何でも構いません。

メッセージ・リクエストの他、郵便番号・住所・氏名・電話番号を明記して、

ラジオNIKKEI・番組サイトのメールフォームからお送りください。

締め切りは11月10日です。

メールを採用した方には、JAZZ関連の書籍やCDなど素敵なプレゼントを差し上げます。数に限りがございますのでご了承ください。どうぞお楽しみに!

 

【特番のお知らせ】
2021/10/20(水) 19:14

「テイスト・オブ・ジャズ」は、放送開始から57年。そして現在進行の山本郁さんが担当するようになってこの秋20周年を迎えました!

11月23日(祝)朝9時30分から1時間特番『テイスト・オブ・ジャズ・スペシャル 私とジャズ~なんだかんだで57年、そして20年~』を放送する予定です。

特番では、みなさんのジャズに関するメッセージやリクエスト曲を募集します。

初めて聞いたジャズ、ジャズとの思い出......など、何でも構いません。

メッセージ・リクエストの他、郵便番号・住所・氏名・電話番号を明記して、

ラジオNIKKEI・番組サイトのメールフォームからお送りください。

締め切りは11月10日です。

メールを採用した方には、JAZZ関連の書籍やCDなど素敵なプレゼントを差し上げます。数に限りがございますのでご了承ください。どうぞお楽しみに!

 

10月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021/10/14(木) 19:00

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.596~ジャズ・ロフト~】

 今まだロードショウの最中だと思う話題の映画に、ジョニー・デップが制作・主演した「MINAMATA」がある。これは報道写真家ユージン・スミスが、あの悲惨を極めた水俣病の患者さん達を追って撮り続けたその晩年の姿を描き出した劇映画。制作陣は水俣市の協力を得られずに苦労した...と言ったエピソード等も伝わっている作品だが、ジョニー・デップと言う人気俳優の社会性やその気概、正義感等が良く伝わってくるものと、中々に評価が高いフィルムだ。その主人公のユージン・スミス、彼は元々アメリカの人気写真誌「ライフ」のカメラマンとして売り出し、全米を代表するドキュメンタリー写真家として知名度を上げたが、ある日突然家族を捨てNYのど真ん中にある小汚いロフトの一室に居を移し、そこで写真とジャズ三昧の生活を送る。そのドキュメンタリーフィルムがもうすぐ公開される。

 タイトルは「ジャズ・ロフト」。宣伝のキャッチに「写真家ユージン・スミス×気鋭のジャズアーティスト達」とある。このドキュメンタリー映画のDVDが配給会社から送られて来たので、直ぐに見ることにした。ユージン・スミスとジャズの関係。それを知ったのは10年ほど前に、恵比寿にある写真美術館で行われた彼の大規模回顧展だった。代表作の「MINAMATA」や第2次大戦の報道写真、フィラデルフィアの労働者達のポートレート等と並んで、セロニアス・モンクやレスター・ヤング等の大物達の写真や、一連の私的なジャムセッションの模様などを写し取ったものもあり、その時始めて彼がジャズ好きで、ジャズ関連の素晴らし写真も撮っていることを知り、ちょっとしたショックだったし、それをこのジャズコラムでも書いた筈なである。

 そのジャズ漬けだった60年代のユージン・スミスの姿を、友人やミュージシャンの証言などで紹介したのがこの作品であり、インタビューに登場するのはカーラ・ブレイ、フィル・ウッズ、チャック・イスラエルなど錚々たる面々。映画のハイライトを形作る今は亡きモンクやズート・シムズ、ホール・オーバートンも写真と声のみの登場だが、この3人は重要な役割を占める。モンクの歴史的な演奏会になった10人編成のビッグバンドによるタウンホールコンサート、彼のロフトで行われたそのリハーサルの模様なども、音声と写真で生々しく収められており、ジャズファンならば間違いなく心躍るもの。このコンサートの編曲者が現代音楽家でジャズ演奏家でもあるホール・オーバートンで、彼はユージン・スミスの隣人にして友人。この2人の関係も大変に興味深いものだし、挿入される写真群も素晴らしいものばかり。異色のジャズフィルムだが、ジャズファンには是非お勧めの1作です。

【今週の番組ゲスト:ギタリストの中鉢洋夫さん、ドラマー/プロデューサーの平井景さん】
Volvox』から
M1「雲の河」
M2Dali's Car
M3Volvox
M4Midnight Old Tree


10月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2021/10/07(木) 19:00

テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.595~春樹とモーズ・アリソン~】

  日本を代表する作家、村上春樹。彼は早稲田大文学部卒業で、かなりな母校愛の持ち主。自身の蔵書やレコードコレクションを母校に寄贈、そのコレクションを中心に収められた春樹記念館がこの度大学内に作られ、この10月には開館を迎えるとも聞く。まあこれは卒業生としては是非一度は行ってみないとならないし、そのコレクションもかなりなものだと聞くので、ジャズ関係者としても閲覧しなくては成らないだろう。ハルキとぼく...などと偉そうには言えないのだが、彼はジャズファンならばご存じだと思うが、作家デビュー前は「ピーター・キャット」と言うジャズ喫茶のマスターで、単なるジャズ好き、ジャズファンと言うよりも、ジャズ関係者と言った方が良いような存在で、ジャズ本も何冊も書いている。その「ピーター・キャット」、最初は国分寺駅北口にありその後千駄ヶ谷に移り、数年ほどで作家として彼が売れてしまったので店仕舞いになったのだが、ぼくは彼の知り合いに連れられ、何回か千駄ヶ谷の店に通ったものだった。それだけに当時は会えば会釈する位の仲だったが、単にマスターと客と言う関係。もう少し話をすれば...と、今となっては残念には思うが、その当時の彼はほぼ無口な若いジャズ喫茶マスターでしかなかった。

 そんな彼はかつてこんな風に語っていた。「ぼくは13才か14歳の頃からずっと熱心にジャズを聴いてきました。コードやメロディー、リズム、そしてブルースの感覚、そういうものはぼくが小説を書くにあたって、とても役に立っています...」。普通ジャズファンと言うとほぼモダンジャズのファンと言うことになるのだが、彼は水道橋駅の近くにかつてあった(半世紀ほど前の話だが)、「スイング」と言うトラッドジャズやスイングジャズだけを掛ける、ある種の偏屈ジャズ喫茶でバイトを1年間ほどしていたことがあり、そのトラッド分野に強いのも彼のジャズ趣向の特徴だと言える。

 彼が最近再開させたFMラジオ番組「村上ラジオ」では、ジャズはもちろんビートルズからビーチ・ボーイズ、クラシックナンバー迄、彼の好きな曲を自由気ままに紹介する云わば彼の道楽番組なのだが、その村上ラジオで最近「モーズ・アリソンを知っている...」と言うテーマで、「モーズ・アリソンのナンバーがいくつか紹介されたらしいよ...」と、ジャズ仲間から連絡があった。番組は聞き逃してしまったのだが、いかにも春樹らしいマニアックで凝った選択だなーと、いたく感心し嬉しくもあった。と言うのもこの渋い白人カントリーブルースシンガーは、ぼくが大学生時代、ジャズ研の部誌に最初に書いたシンガーの一人だっからなのだ。モーズ・アリソンと言う人は弾き語りを得意とするブルースシンガー兼ピアニストで、1927年にミシシッピー州で生まれ、この地だけに本物の黒人ブルースをたっぷり浴びて育った人。2016年に亡くなっており、90才近くまでほぼ現役で活躍した元気印だったが、その出世作が『バック・カントリー・スーツ』(pres)で、弾き語りによる白人ブルースの極致にある様な名品。彼はロックシンガーなどにも大きな影響を与えた人だが、ことジャズファンには余り感心を持たれていない。その名盤は1曲々はどれも短いものだが、白人カントリーミュージックと黒人のブルースが相乗された独特な味わいを持っており、未だ20才前のぼくが何故あの世界に惹かれたかは、今となってはしかとはしない。だが今聴いてもその独特な味わいは魅力たっぷりで、チャンジーになった今こそその魅力に浸れる感もあるだけに、春樹氏が今回わざわざモーズ・アリソン特集を組んだのも、大いに納得の一言。
 10月には完成と言う早大に出来る「春樹記念館」。年内にはぜひ訪れてみないと...。今から本当に楽しみです。

【今週の番組ゲスト:選曲家/Quiet Corner主催 山本勇樹さん】
Diana Panton for Quiet Cornerfairy sings love suite』から
M1It's A Most Unusual Day」
M2Tea For Two
M3And I Love You So
M4Moonlight Serenade