9月10日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2020/09/10(木) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は、毎週木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.530~奄美大島のシンガーソングライター】

  先週のこのコラムでは、東京で書評家・ライターなど書籍関連の仕事をしていた女性(河田桟)が、突然日本の西の端の与那国島で馬飼いになってしまった話を紹介したが、今回も南の島に移り住んだ女性の話である。但し今回はその女性が、我が「テイスト・オブ・ジャズ」のゲスト(TEL収録)なのである。

  ミヤタトモコ(宮田朋子)、奄美大島在住の彼女は、知る人ぞ知る素敵なジャズ系シンガーソングライターである。歌の勉強のために本場NYに渡った彼女は、生活の糧を得るためにウオールストリートの証券会社に勤め、バリバリのキャリア女性として大いなる実績も上げ、証券ウーマンとしてもかなりなものだったらしい。一方本職のシンガーとしてはNYのクラブで歌ってもいた。そんな彼女の才能を見出したのが、NYのブラジリアンミュージックの最高峰、ギタリストのホメロ・ルバンボ(当然ブラジル人)だった。その彼の推薦もあり、彼女はブラジリアンテイストの素敵なアルバムを2枚、ホメロやホメロ人脈の凄い面々と共に吹き込む。その中ではホメロとのデュオも披露、番組でもホメロ作曲のその曲も紹介することにしている。

  その後仕事の忙しさなどもあり、体に変調をきたしてしまった彼女は、帰国を余儀なくさせられる。傷心のなか全国各地を旅して偶然出くわしたのが南の島、奄美大島だったという訳。そこの南の端の方の街に住みだして既に数年、奄美の伸びやかな自然の中での生活から生まれた作品を集め、3枚目のアルバムを作り上げることになった。『大きな海の中を行く私たち』。

  ぼく自身は彼女のこと、これまで全く知らなかったのだが、アルバムがなかなかに良いからとジャズ関係者から勧められ聴いてみると、これがそのとおりでかなりグッドなのである。そしてバックを日本を代表するブラジリアン系ギタリスト、藤本一馬が務めているのも大いに気に入った点。ほとんどのナンバーが彼のギターだけをバックにしたシンプルな作りなのである。録音は現地の中心都市、名瀬市の有名な楽器店「セントラル楽器」で行われている。
 そして何よりもぼくがこのアルバムに惹かれたのは、彼女が拠点を奄美大島に定めていること。この島にはぼくはまだ2度ほどしか訪れておらず、もう10数回訪れている沖縄本島程には良く知らないのだが、ここからは島尾敏雄・ミホという素晴らしい作家夫妻が登場しており、更にあの元ちとせもここの島唄の代表的歌い手...と言う、ぼくが愛するこの2組がこの島に深く関わっているのだ。以前この島を訪れた時は、車を駆って元ちとせの生まれ故郷、深い山に囲まれた海辺の僻地集落にようやく辿り着いたりもした。またそのまま島の最南端の街(宮田さんが今住んでいる町の筈)に行き、対岸の加計呂島に船で渡り、「出発はついに訪れず」等彼の戦記物に描かれた、島尾夫妻の余りにも哀惜で美しい出会いの場所(島尾敏雄は人間魚雷の艦長、ミホは加計呂島の族長の娘)を訪れ、一人感慨にふけったりと、ある種の奄美大島フリークなのでもあります。

 それだけに彼女が奄美大島在住と言うのに惹かれ、これは是非番組に...と交渉、ようやく今回TEL出演と相成った次第。電話回線の状況が今一つなので編集作業も大変だったが、ミヤタトモコと言う素敵な女性シンガーの魅力は、それなりに出せたろうと自負する。アルバムには奄美の歌者、前山慎吾とのデュオ「よいすら節」も収められており、もう1曲民謡の「こきりこ節」も聴かれる。
 「今を生きる全ての人に向けられた静かなエール」と惹句にあるがその通りで、アルバムは彼女の心境を映した様な個人的な手紙とも言え、ラストナンバーは「すべてはおなじこと」。静かな良い終わり方だ。

【今週の番組ゲスト:奄美大島在住のシンガー ミヤタトモコさん】
3rdアルバム
『大きな海のなかをゆく私たち』
1stアルバム
Secret of Life』から

M1
Let Me...
M2Rio Dos Deuses
M3「あなたの笑顔」
M4「よいすら節」