8月6日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2020/08/06(木) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は7月より、木曜22:30~23:00(本放送)と金曜18:30~19:00(再放送)で放送中。番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.525~映画音楽の大家...】

 まず初めに先週のファッション業界の話の続きをひとつ。あの原稿をものしたあと、濱崎あゆみも愛したと言うギャルファッションの大手「セシル・マクビー」も、ほぼ全店で店じまいと言うニュースが流れた。そんなギャル系などどうでも...と思う人も多いだろうが、これがなんとジャズに関係してくるのだ。この会社名聞いて詳しいジャズファンならば、誰でも知っているであろうベーシストを思い出すはず。屈指の実力派の一人で、この数十年近く山下洋輔トリオの一員としても活躍する、あのセシル・リロイ・マクビーである。彼も来日するたびにこの会社名を聞き、なんか不思議に思っていたようだが、どうやら社長がジャズ好きでこの名前を付けたらしい...と聞き、山下さんなどに相談したとのこと。そこで商標登録問題となり民事で争った...と言うのが関係者では有名な話。結局は証拠を充分に提出できなかったようで、確か和解か敗訴だったと思うが、それにしてもあの寡黙でいかついマグビーが、ギャルファッションの代名詞だとは、かなり笑える話ではある。

 さて今回の本題、7月初めに欧米の大物映画音楽作曲家が相次いでこの世を去ってしまった。一人はイタリアを代表する作曲家エンニオ・モリコーニ、そしてもう一人はハリウッドの代表的作曲家のジョニー・マンデルで、今流行りのコロナとは直接の関係は無さそうである。享年モリコーニ91才、マンデル94才。モリコーニの方が年上とばかり思っていたが実際はその逆、ただし知名度からするとやはりモリコーニの方が、かなり上の感は否めない。
 モリコーニの主舞台は映画の分野だったが、元々クラシック畑出身でイタリアの現代作曲家と言う側面もあり、一方のマンデルはもともとジャズメンで、フランク・シナトラやナタリー・コールなどのポップス部門での活躍でも知られていた。モリコーニが名前を挙げたのは、欧州原産でクリント・イーストウッドの出世作でもある「荒野の用心棒」など、一世を風靡した一連のマカロニウエスタンの音楽。その後「シネマ・パラダイス」「アンタッチャブル」などの映画を手掛け、その数は膨大とも言われる欧州を代表する作曲家。一方のマンデルは、元々トランペット&トロンボーン奏者で、フルバンド畑で活躍し西海岸のジャズメンが大量に出演した、名画「私は死にたくない」の音楽を担当、一躍その存在を知られる様になった。その後は「マッシュ」や「動く標的」など、ハードボイルドからコメディー、恋愛ものまで幅広い分野の映画音楽を担当、最後は映画の殿堂入りも果たしているハリウッドの名士。

 どちらもぼくの大好きな作曲家で、特にモリコーネの作品集はチェロの名手ヨー・ヨー・マをフューチャーし、彼自らが編曲とオーケストラの指揮も担当したアルバム『ヨー・ヨー・マ・プレイズ・モリコーニ』。これは寝起きに良くターンテイブルに乗せるお気に入りの1枚でもある。またマンデルの方はその代表作、映画「いそしぎ」の主題歌「シャドウ・オブ・ユア・スマイル」(アカデミー賞受賞曲)を含む映画サントラ盤が、これも寝起きの大好物の1枚。エリザベス・テイラー主演の映画自体は全く面白くなかったが、舞台となった西海岸随一とも言われる、保養地カーメルのオープニングの空映シーン。そのバックに流れるトランペット(ジャック・シェルドンか...)の素晴らしさ、この冒頭数分だけでぼくには忘れられない映画となっている。
 そしてモリコーニの方だが、もしおまえの一番の映画を挙げろ...と言われれば、躊躇なく推すだろうロバート・デニーロ主演のアイリッシュギャングの物語「ワンス・アポンナ・タイム・イン・アメリカ」(セルジオ・レオーネ監督)、この音楽担当が彼なのである。この映画での「デボラのテーマ」等々、もう言うこと無しの素晴らしさで、まさに映画音楽の第一人者のお仕事である。

 マンデルの方は元々ジャズメンで、あの名門カウント・ベイシー楽団にも在籍していたと言うのだから筋金入りだが、モリコーネの方もかなりジャージな映画音楽も書いている様で、何より彼のマカロニウエスタンやギャングもの作品の挿入曲をメインに、あのNY前衛派の闘士ジョン・ゾーンが、モリコーネ集を捧げている辺りからも、その偉大さはうかがい知れるだろう。マンデル作品集としては平賀マリカが数年前に『マンデルシーニ』と言う、彼ともう一人の映画音楽の大家、ヘンリー・マンシーニ、この2人の作品集を出しているが、ベストはぼくの大好きなシンガー、スー・レイニーのマンデル集に止めを刺す。この2人は交友関係にあっただけに、レイニーも実に丁寧かつ愛おしげに彼の曲を歌い綴っており、マンデル集としてはベストの出来栄えだと思います。廃盤かも知れないが是非探してみること、お勧めします。

【今週の番組ゲスト:シンガーで『AMBIVALENCE』レーベル代表のMAYAさん、ドラマーの松尾明さん】
レーベル第一弾『and alone』から
M1Sonora
M2St.James Infirmary
M3Rim Stone
M4Marcellina