6月28日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020/06/26(金) 20:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は6月まで日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00と金曜18:30~19:00で再放送中(7月からは木曜22:30~23:00が本放送となります)。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.519~元気が出るジャズ】
  
 今週から4週に渡って「コロナ禍を吹き飛ばせ~元気の出るジャズ」をシリーズでお送りする。ジャズは元々元気のある音楽で、人々を力づける意味合いも強い。そこでジャズを通してコロナ禍の閉塞状況を乗り越えようではないか...と言う趣旨。

 まず今週は評論家青木和富氏の「ジャズ・トーク」をこのテーマでお送りする~青木流元気の出るジャズを実現することに...。掛けるのはチャールス・ミンガスの「フォーバス知事の寓話」。人種差別に果敢に立ち向かっていったベースの巨人チャールス・ミンガス・バンドの荒々しいコレスポンデンスは、けだし聞き物。またチャーリー・ヘイドン・オーケストラの「ウイ―・シャル・オーバーカム」は全員が平和の願いを込めたその想いも熱い。プロテストする思いの詰まった力感一杯の演奏が選ばれている。
 
 そして7月の最初はトロピカルフルートの第一人者赤木りえさんが登場して、NYラテンの大物達との共演した新作を紹介してくれる。彼女はプエルトリコの親善大使を務めるほどこの国と関係も深く、多くの国民から愛されているのだが、今回はNYラテン~サルサの本場NYに進出、同地の大物ラリー・ハーローと共演、新境地を開いた所を意気込み充分に示してくれる。ラリーも赤木さんにメロメロと言った有様で、その模様も良く分かる熱く爽やかな演奏が聞き物となっている。
 
 第3回目はラテンジャズと言ったらこのバンドと言うことで、我が国のトロピカルジャズの極めつけ「熱帯JAZZ楽団」のリーダー、カルロス菅野氏が久々にスタジオに遊びに来てくれる。今までのビクターを離れ、今流行りの「クラウドファンディング」方式で資金を集め、周年記念アルバムを作ったと言う意欲作。熱いホーン陣の咆哮、リズム隊の切れの良さなど、流石老舗バンドならではの素晴らしさ一杯の素敵な仕上がり具合。カルロスは同時にヴィデオも出してこのレコーディングの模様を伝えてくれるが、このアルバムに賭けた彼の意気込みを番組では吐露してくれている
 
 そして最後は「コテコテジャズ」の愛称で知られるジャズライターの原田和典氏が、黒人臭ムンムンの泥臭くも熱いまさに「コテコテジャズ」の名盤を紹介してくれる。純生ジャズ~楽園系ラテンジャズ、そしてコテコテの黒人=ソウル。ジャズ迄。この4回シリーズはコロナでいささか元気の出ない音楽ファンの血を熱く燃え上がらせてくれるに違いないと思います。是非ご期待の程...

【今週はジャズトーク】

音楽評論家の青木和富先生と人種差別問題をジャズミュージシャンがどう表現してきたか考えます。

M1
We Shall Overcom(勝利を我等に) / Liberation Music Orchestra
M2
Strange Fruit(奇妙な果実)/ Billie Holiday
M3
Freedom Suite(自由組曲)/ Sonny Rollins
M4
Fables of FaubusOriginal/ Charles Mingus
M5
Hymn To Freedom(自由への賛歌)/ Oscar Peterson


6月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020/06/19(金) 20:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は6月まで日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00と金曜18:30~19:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.518~栗林すみれ】

 
  ジャズファンの中では、もう長い間楽器としてピアノが最も高い人気を誇っており、実際のところジャズアルバムで売れるのも、ピアニストのもの、それもピアノトリオのアルバムと相場が決まっている。そのジャズピアニストの世界、わが国では男性陣よりもむしろ女性陣の方が勢いがある...と言うか、上原ひろみ、山中千尋、大西順子等々、注目すべき人材を数多く輩出しているようにも思える...。そうしたこともあり番組では、女流ピアニストを...と言うことで、先週と今週2週にわたって新旧を代表する女性ピアニストに、TEL登場(コロナ禍での措置)してもらうことにした。先週は日本を代表する人気ピアニストの一人、国府弘子。実に6年振りの番組登場で、自身も数々の大病を乗り越え今に至っている訳だが、そんなことを少しも感じさせずに、このコロナ渦の中でも溌溂とした所を示してくれた。安心しました。


 そして今週の登場は、ぼくの一押しの若手ピアニスト、栗林すみれ。もう何回か遊びに来ているが、久しぶりにスタジオで会いたかった。だがコロナ禍でそれも叶わずTEL収録。彼女が初リーダー作『トイズ』を発表したのは2014年で、6年程前のこと。そのアルバムを引っ提げて来てくれたが、以降コンスタントにアルバムを発表し、今回の新作『ネームレス・ピアノ』で5作目。


 デビュー作からロマンチシズム溢れたピアノプレーを聴かせてくれ、すぐに彼女のピアノに魅了されたのだが、その才能に最も感心したのは3作目の『ピーセズ・オブ・カラー~光彩』。これは大編成のユニットもので、その作・編曲、特にユニット全体を生き々と動かすアレンジ力には目を見張らされるものも多く、伸びしろ具合でピアニスト&作・編曲家として、遂に第一線に躍り出た感も強かった。
 そして今回の最新作だが、これは初のソロアルバム。それも自宅で自身のピアノでほぼ1年間かけて、じっくりと収録した(宅録)ものがメインで、残りの数曲は北海道のスタジオでの収録となっている。自身の愛着多いピアノでじっくりと自身で作り上げた作品。それだけに想いも深いアルバムになっているようで、彼女も嬉しそうに音取りの苦労話などを語ってくれている。


 タイトル曲の「ネイムレス・ピアノ」とは自身のピアノのことを指していて、番組でもまずこのオリジナル曲を取り上げている。その他自身の敬愛するピアニストのオリジナルや、ぼくも大好きなノスタルジックなスタンダードソング「アイル・ビー・シーイング・ユー」などの銘曲と、アルバムは彼女の趣向が満開された多彩さ。番組ではタイトル曲のほか2曲の即興ナンバーを紹介しているが、「カラード・ウッズ」と題された1曲は、日本画家の大家、東山魁夷の作品にインスパイアされて綴った心に染みわたる抒情的小品。ジャケットも知り合いの針金作家の作品という凝り様。明るく可愛らしく性格も抜群。今最も注目のピアニストの優しくも深い心根が、良く分かる好番組になっています。是非聴いてみて下さいね。


【今週の番組ゲスト:ピアニストの栗林すみれさん】
初のソロアルバムNameless Piano』をご紹介しました。
M1
nameless piano

M2 improvisation colored woods カラードウッズ」

M3 improvisation piangere ピアンジェレ」

M4 A lovely way to spend an evening

6月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020/06/12(金) 20:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は6月まで日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00と金曜18:30~19:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.517~小説の中のジャズ】

  井上荒野(あれの)と言う作家ご存じだろうか...。もう10年以上前に「切羽へ」と言う作品で直木賞を取り、その他織田作之助賞・柴田錬三郎賞など数多くの文芸賞を獲得、女流作家の第一線に位置する人で、最近も雑誌などでよく見かけるので、少し本好きの方ならばご存じだろう。その彼女が自身の父親で作家の井上光晴、その美しい妻=荒野の母親、そして瀬戸内寂聴(晴美)、この3者の不可思議な関係(光晴と寂聴の長年の不倫関係がベース)を描いた作品「あちらにいる鬼」(朝日新聞出版)を、このコロナ禍の蟄居中に読んだ。前々から読みたいと思っていた作品で、鬼とは父親光晴を指しているのだが、想像していた通りに修羅を描いた凄味のある所謂「問題作」だが、透徹した彼女の視線も光る大変に面白い作品だった。残念なことに肝心の主役鬼=井上光晴自身が、今や埋もれてしまった忘却の存在だけに、思ったほどの話題を集めなかったのは残念な事(92年没、享年66才)。


 作者の井上荒野はハードボイルド作家を除くと、そのほとんどの作品を読了している数少ない作家の一人(あとはこれも女流の桜庭一樹くらい)で、恐らく現在の日本の小説家の中でもその情緒表現の巧みさでは群を抜いた存在だと思う。その上彼女の小説は中・短編が多いので読み易く、ぼくの大のお気に入り。その彼女の作品で最初に読んだのが「潤一」(2003年)。潤一と言う若い男性を巡る、その周りにいる女性達を順番に主人公として描く、所謂「輪舞」形式の作品でこの小説形式はぼくのお好みの上に、その描写の旨さ・確かさには感嘆した。その上主役の潤一はどの章にも一切登場しない、影の存在という設定も秀逸で、直ぐに荒野と言う存在に惹かれてしまい、その上父親が作家の光晴だと知って驚かされた。


 父の光晴は戦後文学を代表する一人で、今は無き新日本文学などを拠点に活躍した左翼系文学者で、ぼくの学生時代には、多くの若いファンがいた。被爆者や部落民等を扱った社会派の重厚な作品も多く、その鋭く社会を告発する作品トーンは、当時の問題意識を持った学生達に、訴えかける所も多かった。しかしその私生活は女性にモテると同時に、手当たり次第に漁り捲ると言った、曰く付きの無頼派だった様で、浮気を重ね続けその極点が当時の流行作家、瀬戸内晴美だったと言う訳。そして晴美が今の寂聴へと名前を変え、出家する動機になったのが、光晴との長い不倫関係の清算だったと言う辺りも驚く。そこら辺を赤裸々に描き出したこの作品、モデル問題で肝心の寂聴が激怒か...と思いきや、彼女はこの作品の帯に「モデルに書かれた私が読み、傑作だと感動した...」と言う推薦文を書いているのである。ここら辺もまた凄い所(光晴の葬儀の弔辞も寂聴が読んだとも言う)で、皆様も是非お読みいただきたい一冊だ。


 いささか長い前置きになってしまったが、本題「小説の中のジャズ」と言うことで...。この小説を読んでいたら(1966年~2014年までが舞台)、チャプター6:1978年~88年の冒頭に「午前0時を過ぎ篤郎(光晴モデル)とわたし(妻、荒野の母親がモデル)は、ダイニングテーブルに向かい合い、ウイスキーを飲んでいる。さっきまでキース・ジャレットのレコードを掛けていたが、針が留まったがそのままになっている...」と出て来る。この作品の中で唯一の音楽登場場面がこれで、それもキース・ジャレットとあるから、どうやらソロアルバム...ではと想像が働く。ライブものかスタジオものか...、一体彼女は何を掛けていたのか...。興味深々なのだがとかくハードボイルドの私立探偵ものでは、ジャズがかなり重要な役割を担うことも多く、それもぼくがハードボイルド探偵作品(ロバート・パーカー作品等々)を好む一つの理由でもあるのだが、こうした半私小説でそれも余りジャズなど関係ない登場人物、全体の展開の中で、突然にジャズが登場となるとちょっとびっくりだし嬉しくもなる。光晴の妻で荒野の母親は、美人で有名だったと言われるが、実際に写真で見てもかなりな美形であることが窺われる。そんな人がジャズアルバムを夜中に一人で掛けている...。何やら象徴的な場面だし、その音楽がキースだとは...。ここはクラシックでもポップスでも無く、やはりジャズそれもキースなのである。


 今キース・ジャレットは、病の床にあるとも言われ、もう長い間アルバムも出さずライブもやっていない。そんな彼だけに余計この井上荒野の小説での登場は嬉しくなってしまった...、と言う個人的なお話でした。


【今週の番組ゲスト:ピアニストの国府弘子さん】
24枚目のアルバム『ピアノパーティ』から4曲ご紹介します。

M1
Reborn
M2「ジャズ婆ちゃん」
M3「アディオス・ノニーノ」
M4「コズミック・ランデブー」


6月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2020/06/05(金) 20:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.516~YouTube】

  非常事態宣言は解除されたが以前蟄居生活は続く...こうなるとやはり生活に変化も求めたくなってくるが、こんなオールドボーイはそう遠出が出来るものでもない。まあGWには水道管修理の立ち合いの為、追分の山荘に数日いたのだが...。それ以外は完全蟄居生活で室内生活。と言うことで読書やアルバム鑑賞・整理と、特に目新しくもない趣味生活となってしまうのだが、このところメールやフェイスブックなどで連絡が絶えないのが、ミュージシャンやシンガーによる無観客ライブのお知らせ。大部分は休業中のライブハウスからの中継と言う形だが、中には自宅からの中継ライブと言う形もある。ミュージシャンにとってもライブハウスにとってもここは死活問題で、無観客ライブながらも追い銭方式で観客(参加者)からフィー(対価)を募ると言った形式も多いようだ。

  ぼくが最初にこのライブに気が付いたのは、NYの自宅からソロ演奏の模様を送ってきたピアニストのフレッド・ハーシュだった。今やジャズピアニストの頂点に立つ一人でもある彼は、長い間難病(エイズ)のせいで入院生活を余儀なくされていたのだが、ようやく復帰すると今度はコロナ渦。ただその旺盛な表現意欲に促され、自宅でのソロを世界中のファンに...と思ったのだろう。病のため頬も扱け全体に生気は乏しいがその演奏は実に美しいもので、10分強の短いものだが充分に心打たれるものだった。その後も何回か彼は発信を続けてくれたが、その初回は確か2月の初め頃で、まだ日本ではライブ中継はそうなかったと思う。それが東京をはじめ全国に非常事態宣言が出され、首都圏のライブハウスも休止、ライブスケジュールも取りやめか延期となると、次々と演奏家や歌手達がライブハウスから無観客のライブを敢行、「今夜の8時からですからチェック宜しく...」といったお知らせが届くようになり、2つ3つ重なることもざらで、どれを見ればなどと悩むこともある。だが出来る範囲でなるべくお付き合いをしている。「セイブ・ザ・ジャズ」「セイブ・ザ・ライブハウス」の精神である。 
 
 ベースの井上陽介、オルガンの土田晴信、ピアノの小曽根真、岩崎良子、サックスの竹内直等々、それぞれに画質や音質、更に映像処理の問題など課題も多いのだが、それぞれが工夫をしてそれなりに雰囲気を出している。特に土田君はオルガンも自身で修理してしまう程メカにも強いだけに、見事な画面・音声処理で愉しませてくれる。まあこうした音楽家達の努力が早く実を結び、コロナ禍以前の日常に戻る日が来ることを切望している。
 

  こうした無観客ライブと並んで今関心があると言うか...、ある意味嵌っているのが、ユーチューブでのジャズ関連ライブ鑑賞。あるミュージシャンの資料を調べる為にユーチューブを見ると、それの関連映像が次々と出てきて止まらなくなってしまった。ユーチューブの出初めの頃にも、一時そんなマイブームがあったが、それがこのコロナ禍の蟄居生活でぶり返してしまったのである。どうしてもファニア・オールスターズやエディ・パルミエリなどのラテンジャズ関連が多いが、今シーンのメインを担うロバート・グラスパーの「ビレッジ・バンガード」でのトリオライブ(1時間半以上の長尺もの)などニューチャプターもの、それに我らがヒロイン、上原ひろみのトリオライブ等々、見始めるとやめられないし、画像があるのはやはり一段と興味をそそられる。そんな中で興味深かったのは、あのスティングの歌うスタンダード集。これは編集ものの様だがスティングがジャズスタンダードを歌った幾つかのライブ映像をまとめたもので1時間近い内容。そしてそのスティングの十八番「フラジャイル」を、パット・メセニー、マイケル・ブレッカー、ジョン・パティトッチなどオールスターメンバーで取り上げている、ジャズフェスライブの映像も素晴らしいものだった。マイケルがまだ健在なので10年以上前の映像だと思われるが、メセニーやマイケルの演奏がなんとも凄い。スティングを見ていて偶然見つけたものだが、これは儲けものだった。こんな思いがけない楽しみがあるからユーチューブ漁り、止められないんですね。


【今週の番組ゲスト:フルーティストの佐々木優花さん】
5枚めのリーダー作『Humanbeans』をご紹介
M1Humanbeans
M2Reflection in water
M3「さくらさくら」
M4Someday my prince will come