5月24日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2020/05/22(金) 20:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.514~リッチー・コールのこと】

 この言葉もう使いたくないのだが、やはりそうも行かない。「コロナパンデミック~コロナ禍」。日本国民への「ステイホーム」のお願いと非常事態宣言は今月末まで延長され、安倍政権のどうしようもない無策振りばかりがどんどん露わになりつつある。流石に安倍一派のフリーク筋もこの事態には眉を顰めている様だが、まあ本当に音楽・演劇などに関わるパフォーミング・アーティスト達は、もうお先真っ暗で行き場もない様子。ジャズの世界でも今は世界中で「セーブジャズ」と言ったキャンペーンも始まりつつある。本場NYの老舗クラブや東京のライブハウス、それらの窮状を救おうと言った活動も活発化しつつあり、これらは実に心強い動きだしぼくも何かを...と言った気持ちが強くなる。残念なことにぼくも深い関りを持つ、新宿の老舗クラブ「J」、ここは先月一杯で閉めてしまったが、老舗中の老舗で「和ジャズ」の殿堂とも言える「ピット・イン」は、実情は分からないがまだどうにか健在の様でホッとしている。
 それに反し死者の数もうなぎのぼりの本場NY、ここではジャズクラブの代名詞とも言えそうな「ヴィレッジ・ヴァンガード」。ジャズ好きでなくともこのジャズシティーを訪れた旅行者も、一度は訪れるに違いない文化名所。そう言えばこのジャズコラム担当のO局長も、一昔前のラジオたんぱNY支局長(今は当然消滅)だった筈で、当然この老舗店を覗いていると思うのだが...。このジャズクラブが閉鎖の危機にあるとも聞く。
名物オーナーのゴードン夫妻(夫妻とも物故)に会うのが、NY訪問の楽しみの一つだっただけに、この店が元気ないのは何より残念なことこの上ない。

 
さてそんな淋しい話ばかりが続く今日この頃、また一人ミュージシャンの訃報が飛び込んで来た。「アルト・マッドネス」の愛称で一時は日本でも絶大な人気を誇った、サックス奏者(ボーカリストでもある)のリッチー・コール。コロナ禍にやられたのかと思いきや、自宅で寝たまま逝ってしまった姿を娘さんが発見した自然死だと聞く。まあそれが唯一の救いか...。年令はぼくより3才ほど下だがほぼ同世代。彼が有名になったのは70年代の終わり頃、当時全盛だった森田一義君=タモリのお昼のTV帯番組「笑っていいとも」(か、その前身の「笑ってる場合ですよ」のどちらか)に数回ゲスト出演、その明瞭なアルトプレーや、それ以上に人気を集めたのが、司会のタモリとの掛け合いバップ歌唱。本当に大受けでそのコメディアンまがいの明るすぎるキャラクターも話題を集め、日本制作のアルバムも次々と出され、コンサートも満員と言う超人気振りだった。しかし好事魔多しで、その人気もそう長くは続かず、80年代に入ると人気も一気にダウン、「リッチー?へー、なにそれ...」と言った感じで、話題になることも無く一気に忘れ去られてしまった。実にファンは冷たいものだが、日本のジャズ史の中でも特異にして稀有な存在だった。ぼくにはどうにも忘れ難い一人でもあった。

 彼のアルバムは当時キングレコードから出されており、その担当者が我がジャズ番組に連れて来たのだと思うが、ホーボーと言うかバカボンド(ともにフウテンの意)そのままに、サックスを片手にふらりとスタジオに現れ。下手な日本語交じりのブロークンイングリッシュを駆使、唄入りのアルトソロ演奏も1曲披露、当時の担当女性アナを大笑いさせつつ、またふらりと帰って行った。ぼくが大学のジャズクラブで、タモリの1年先輩だと言うと急に親しみも増したのか、アルバムにサインをしてくれ、リスナープレゼントもサイン付きで数枚用意してくれると言ったサービス振り。こんなに陽気で気の良いミュージシャンもそうは居ない。すっかりファンになってしまったが、それ以降に出されたアルバムは、どれもモノトーンで変化なし。これはいささか...と危惧していたら、あっという間に凋落の一途。面白い男でサックスの力量も素晴らしいだけに、いささか残念ではあった。

 
 そして今回の訃報。この所長い間縁も無かったので、ユーチューブで最近の彼の姿を眺めてみると、まああの頃とあまり変わらないプレーとフーテン振りで、自慢の面白歌唱も披露していた。アルバムも自身のレーベルから数年前に数作発表しており、最新作は嬉しいことに、彼の陽気な気質にぴったりのラテンジャズもの。人気の頂点に駆け上がり一気に消え去ってしまった、まさに「ワン・アンド・オンリー」な才人にして奇人。「アルト・マッドネス」と言った仇名そのものの、愉快でけったいな実力派(初期のアルバムはバッププレーの粋が聴かれる優れものが多い)の彼、全盛時に東京で吹き込んだ『トウキョウ・マッドネス』でも聞きながら、その冥福を祈りたい。グッド・バイ リッチー!

【今週はノーゲスト回】

 「戦前のジャズ特集」
M1
「月光値千金 / 榎本健一」
M2
「雨に唄えば / 榎本健一」
M3
「アラビアの唄 / 二村定一」
M4
「私の青空 / 川畑文子」
M5
「バイバイブルース / 川畑文子」
M6
「ダイナ / ディック ミネ」
M7
「ラッパと娘 / 笠置シヅ子」
M8
「上海 / 美空ひばり」
M9
「恋人よ我に帰れ / 美空ひばり」