1月26日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2020/01/24(金) 20:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は2020年1月より毎週日曜18:30-19:00(本放送)ほか、木曜22:30~23:00で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.497~片岡義男とドーナツ盤】 

 正月休みと言うよりも、年中が休日の様なオールドボーイのぼくにとって、わざわざ正月休みなどと言うことも無いのだが、その正月に読んだ本や漫画本の中で、音楽関係は1冊のみ。それも純粋な音楽本では無く音楽を絡めた...と言う内容。本の題名は「コーヒーにドーナツ盤 黒いニットのタイ」と言ったちょっと長めの洒脱なタイトル。そこから判る方は判るはずなのだが、バブル時代に一世を風靡した作家、片岡義男のエッセイ風短編集。サブに1960~73とあり、60年から73年までの自伝風短編を年ごとに書き連ねたたもの。


 1960年早稲田大の学生時代にコラムやエッセイを雑誌に書き始め、74年に順風満帆に小説へと手を染め始めた頃までの話が、全部で40数編収録されている中々に面白いもの。始まりの1960年は一編のみで、タイトルは「ディーン・マーチンもリッキー・ネルソンンも、今のうちから...」。そして最後の73年は2編で、そのオーラス小編のタイトルは、「その歌を最も淡白に唄った彼女が傘を僕に差し出した」。いかにも片岡流ディレッタンチズム溢れたタイトルで内容もそれを映し出したもの。各篇の最後にはその中身の主軸になるドーナツ盤やアルバムジャケットがカラーで紹介されている、ある種の音楽小説とも言えそうな短編集。最初の60年の一編には、ディーン・マーチンの「ライフルと愛馬」(映画"リオ・ブラボー"の主題歌)、そしてベルト・ケンプヘルド楽団の"真夜中のブルース"(映画"朝な夕な"の主題曲)と言った当時大ヒットしたドーナツ盤、最後の73年には八代亜紀のヒット曲「なみだ恋」(同年の大ヒット曲)のドーナツ盤と言った具合で、それぞれドーナツ盤が紹介されている。片岡はこの本の後書きでこう記している。「60年から73年まで、ぼくがフリーランスのもの書きだった時代の日々は、いちいち思い出すまでもなく、その時代の音楽が必ず聞こえていた」と...。


 片岡の耳に聞こえていた音楽はポップスや流行歌が多かった様だが、この時代は当然ジャズ全盛時代でもある。63年の「あのペンネーム(コラム書きの時代はテディ―片岡というペンネーム)はどこから」のスリーブ(掲載ジャケット)は、オリバー・ネルソンの名盤『ブルースの真実』、67年のタイトルもずばりの「赤提灯の先にはビル・エバンス」では、彼の代表作でぼくがベストアルバムと信じている『エクスプロレーションズ』と言った具合で、ジャズアルバムも5枚ほど取り上げられている。あの時代を映せばもう少しジャズも...ともジャズ関係者のぼくなどは思ってしまうが、そこが片岡流、どこまでも片岡ダンディズム全開なのである。

 バブル全盛期には時代を映し最も人気の高い流行作家だった彼だが、アメリカ中西部の男達、時代に取り残された20世紀のカウボーイ像を見事に描き上げた「ローンサム・カウボーイ」などは本当に絶品。アメリカの小説家でもここまで見事に西部を描き切れないといった傑作で、感嘆しながら読んだ覚えがある。 


 ところで40年ほど前に、彼は当時のFM東海(現FM東京)で「気まぐれ飛行船」と言う深夜の人気トーク番組を、曲者ジャズシンガーの安田南を相手に担当しており、FM東海のスタジオは当時ラジオタンパのすぐ近く。同じ頃ぼくも高平哲郎氏の文芸番組を担当、収録時間も似ていたので収録終わりに良く高平氏に会いに南がスタジオに遊びに来て、片岡氏は嘘ばかりでもう番組アシスタントを止めたい々...などと、ツッパリらしからぬ愚痴を言い募っていたこと、今となっては懐かしい。」でも南ちゃん、片岡氏は嘘も交えながら作品に仕上げる小説家なんだから、一寸ぐらい嘘が入ったってしょうがないんじゃない」と軽く諭す高平氏の言い分も、何やら懐かしく想い出される。皆まだ若く、覇気のある時代だったのですね。ジャズも元気そのものだったですし...。

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
今週はジャズトーク。昨年注目した日本人ミュージシャンについてお話しいただきました。

M1You're My Heaven, You're My Hell / 小曽根真 featuring No Name Horses
M2
Kaleidoscope / 上原ひろみ」
M3
BADIATHREE VIEWS OF A SECRET / クリヤマコト  アコースティック ウェザーリポート」
M4
SKYLARK / 上杉亜希子 佐藤允彦」
M5
THE KITE / 鈴木良雄」