9月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2019/09/13(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.479~音楽本あれこれ】

 ちょっと前のこのコラムで、追分の山荘で今年読んだ興味深い音楽本について触れたが、このコラムの読者の方から、それをもう少し詳しく紹介して欲しいとの要望があり、ぼく自身もそれについて触れるつもりだったので良い機会なので今回はその音楽(ジャズ)本について記してみたいと思う。ただし取り上げた2冊は共に軽井沢の図書館から借りだした本なので、ぼくの手元には無く詳細は少し不明だが、記憶にある限りでこれらについて記してみるのでお許しあれ。


 まず最初の紹介本だが、これは珍しいジャズ絵本の『リズムが見える』。ジャズを素材とした絵本は大変に珍しいものだが、ただこれもジャズと限定した絵本では無く、アメリカ黒人の音楽史を絵本にしたものと言える。作家はアフロアメリカンの女流画家、ミッシェル・ウッドで、アフリカの始原の音楽から黒人奴隷としてアメリカに連れて来られてからのワークソングやゴスペル、そしてアメリカ音楽~黒人音楽としての中心とも言えるジャズ、更にジャズから派生するR&B、ラップ迄が、14枚の素晴らしい絵でこれらがコンパクトに紹介されており、何よりその力強い絵に強く惹かれる。プリミティブでいながら極めてモダンなその画風、見開きには黒人音楽の原点とも言うべき、30年代から50年代にかけて一世を風靡した有名ライブシアター、サボイ・ボールルーム、コットン・クラブ、アポロ・シアターの3つの社交場が並んで描かれており、この見事さだけでしびれてしまう。彼女はもっと知られていい素敵な画家だと思うし、この絵本もその存在が殆ど紹介されていない(ジャズジャーナリズムでも無し)のは、大変に残念なことである。


 そしてもう一冊が『パノニカ』。ジャズ史上最も有名な男爵夫人、ニカ男爵夫人を描いドキュメント作品で、これを書いたのが彼女の親戚筋に当たる、女性ドキュメンタリー作家にして今やロスチャイルド家の財産管理も任されているらしいハナ・ロスチャイルド。これはジャズと彼女との関わりだけを描いた音楽本では無く、ヨーロッパ全体の金蔓でもあり、欧州の明暗を握っていたユダヤ民族の星、ロスチャイルド家の歴史やその中での異端な存在だった女性ニカについても、色々興味深いことが分かる本でもある。またその作者が当のロスチャイルド家の一員だという所も大変に興味深いところ。財産家の娘として何不自由なく育てられたニカは、若い頃から反抗心が強く自立を求めイギリスを飛び出し、パリで遊び歩いている時に没落貴族の夫と知り合い結婚、男爵夫人となり第2次大戦ではレジスタンスの一員として飛行機乗りとしてアフリカ戦線で活躍、戦後偶然耳にした鬼才セロニアス・モンクのジャズに強く惹かれ(戦前からジャズは好きで、テディー・ウイルソンなどとも親交があったとされる)、夫を捨て単身NYに渡りモンクと親交を結ぶと共に、NYのジャズ界のパトロン夫人として様々な黒人ミュージシャンの援助などもした、ジャズ界では余りにも有名な存在。
 本のタイトルになっている「パノニカ」、また「ニカ」「ニカズ・ドリーム」「ニカズ・テンポ」など彼女の名前を冠した曲も10数曲作られており、いかに彼女がジャズメン達から愛され頼りにされた存在だったかが良く窺える。なかでもあのバードことチャーリー・パーカーが亡くなったのが、NYにある彼女の高級アパートの一室だったのも、よく知られたジャズ界のある種のゴシップだが、実際は体の調子悪く(麻薬の為)転がり込んできたパーカーを
彼女が寝ずに看病したとのこと。こうした彼女とモンク、パーカー、テディー・ウイルソンなどとの交友関係も興味深いものだが、今回初めて知ったのは一人娘のジェンカは、一時期黒人ドラマーのクリフォード・ジャービスと結婚していたと言うこと。破天荒な行動派女性で、欧米中に広がるロスチャイルド家では鼻つまみ者だったが、その型破りな行動力には目を見張らされる。またユダヤ人だけに、叔母などが強制収容所で死亡なども数多くこうしたヨーロッパの裏歴史も窺え、単なる音楽本を超えた異端のユダヤ人史としても読める面白本として推薦。

 
更にもう一冊お勧めしたいのは、脳科学者として今TVなどで受けに入っている、美形脳科学者、中野信子の「メタル脳」。モーツアルトよりメタリカを聴け...等と宣うこの美人脳科学者は、中学時代から孤独な隠れヘビメタルファンで、自身のヘビメタ経験やヘビメタの社会的効用などを書いているのだが、面白かったのは彼女が結構貧しい少女時代を過ごし、祖父母に育てられながら誰に知られることなく、孤独にヘビメタを聴いて育ったという事実。日頃はヘビメタなどはまずお呼びでは無いのだが、彼女がそう言うならば一つ聞いてみようか...などといういやらしい気持ちにさせてしまう所、美女は得である。それにしても彼女、中学・高校は当然学年トップの成績。凄いのは教科書を見ただけでその全部を覚えてしまい、勉強はする必要も無かったのだと言うエピソード。いやー天才とは恐ろしいものでもあります。

【今週の番組ゲスト:ジャズサックスプレイヤーのユッコ・ミラーさん】
3rdアルバム『Kind of Pink』から
M1Blue Stilton
M2'Round Midnight
M3「「名探偵コナン」メイン・テーマ」
M4
「海の見える街」