9月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2019/09/06(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.478~18回東京ジャスフェス】

 夏の終わりの東京でのジャズの話題となると、やはり「東京ジャズフェス」となる。8月31日(土)と9月1日
(日)の2日間、場所は昨年から渋谷のNHKホールに変わり、昼・夜の2公演で出演は毎回2バンド、合計8バンドが登場となる。今年はどういう風の吹き回しか、8月の半ばにはほとんどの公演がソールドアウト。担当のNHKエンタープライズのスタッフは、全ての公演売り切れを目指すと意気高らかだったので、いつもは8月初旬に手元に来るはずの招待状も10日前になっても無しの礫。今年はもう駄目か...とほぼ諦めていたところ、1週間前にようやく招待状が届きホッとする。

 考えてみればこのフェスも今年で18回目、ぼくは初回から一応毎年顔を出しており(1曜日だけの年もあったが...)皆勤賞もの。初回は調布にある味の素スタジアムで、グランドにマットを敷き詰めピッチを汚さない為に清涼飲料水禁止など、色々制約も多く問題山積みだったが、ハービー・ハンコックが全面的にプロデュースを担当、内容面は充実し刺激的なプログラムが並び、お祭りムードも満載と実に楽しく充実のフェス。なによりフェスに対するスタッフの意気込みが感じられたのが収穫だった。それが何回目からかホールコンサートとなり、ほぼライブアクトの積み重ねと言った感じで目新しさは皆無。屋外での無料ライブの方が内容的に...等と言う揶揄の声まで聞こえてくる始末。更に最近はNHKのおひざ元での開催となり、制約は増しジャズのお祭り的な要素も余り無くなってしまったのは大変に残念なこと。

 そんな前置きはさておき、今回18回目の今年、31日(土)の昼の部は歌うベーシスト、ミッシャル・ンデゲオチェロ、それと人気ポップシンガーMISIAとNY活躍中のトランぺッター、黒田卓也の共演と言った、歌姫中心のステージ。ンデゲオチャロの方はひたすら自身の道を突き進むと言った感じで、ロック色も強い地味目なコンサートだった。一方MISIAは流石の人気。ファンも多く声援がかかるなか堂々と自身のヒット曲をジャズ風に唄い上げ、聴き所多いステージだった。だが如何せん彼女のヒット曲を知らないし、その歌い口も独特だけに少しも歌詞が伝わってこない。歌唱力抜群な実力派と言うのは良く分かるが、持ち歌を知らないぼくなどには荷の重いステージではあった。


 夜の部はアビシャイ・コーエン・トリオとチック・コリアのアコースティック・バンドと言う、現代ピアノトリオを代表する好組み合わせ。チックはそのピアノテクニックの素晴らしさと客をのせるテクニックの素晴らしさ、芸術と芸能の粋を聴かせる流石のステージ振りだった。一方今注目のイスラエルジャズの総帥とも言えるベーシスト、アビシャイ・コーエン・バンドは、なんとドラムがぼくのお勧めマーク・ジュリアナで、ピアノには東欧のバクー出身の新鋭が加わると言う斬新なトリオ。期待通りの新鮮にして鮮烈なピアノジャズを展開、今回の随一とも言えるステージだった。それにしてもジュリアナのドラムは唯一無二のタイム感覚で強烈だった。

 
 日曜日の昼は新旧のサックスの大物、チャールス・ロイドとカマシ・ワシントンの2ステージ。ロイドの方はジュリアン・レイジ(g)など、素晴らしい面子が揃った新ユニットだったが、メンバー紹介が無く誰が加わっているかその時点では不明。ロイドのプレーには年令を感じてしまったが、他の面々はどれも素晴らしかった。メンバーが分かればもっと違った愉しみ方もあった筈だが...しかしロイドも今回の話題の中心、カマシ・ワシントンの登場に大分食われた感じありで、カマシの人気はかなりなものだった。ぼくの率直な感じではカマシはいささか持ち上げられすぎ...、そのテナーは良く鳴っており(ロイドよりも良かった?)それなりの迫力もあるのだが、全体のステージがスピリチュアルジャズのいかがわしさ(これが好いと言う人もいるが...)にポップな感じをプラスしたもので、かつて聴いたことがあり見たこともある...と言った既視感のあるステージのコラージュと言った趣きで、いささかこけおどしと言った感じをぼくは持ってしまった。しかしスター不在の昨今、彼の存在感はかなりなものだし、あのブルース・リーの「怒りの鉄拳」のテーマをジャズ化すると言ったアイデアは、今のアメリカの若い黒人達にも充分に受ける=フィットすることも、また理解は出来る。まあ全体にそれなりに興味深いステージであった。

 ラストの夜の部は、所用でチック・コリアのエレクトリック・バンドは聞けなかったが、カマシと人気を2分する異色の大編成バンド「スナーキーパピー」のステージは色々な意味で興味深いものだった。このバンド全部で参加する面子が30人余り、そのうち公演ごとに10人近くでユニットを組み、ツアーやライブなどに登場すると言った可変性ある独特なユニットで、グラミー賞も受賞の人気・実力派ラージユニット。名門ノーステキサス大出身者がメインの超インテリバンでもある。番組にも登場してくれたことのあるNY在住のドラマー、小川豪太くんもメンバーの一員だが、このツアーには参加しておらずその点は残念。ただジャズ、ロック、ブラジル、ラテンなど様々な要素が上手く絡み合い、独特のスナーキーサウンドとして昇華されており、愉しく聞くことが出来たし、ファンの興奮振りもかなりなものだった。

 
 第19回となる来年の東京フェスは、東京オリンピックの関係だろうと思うが5月開催になり、その告知もステージに大きく表示されていた。またまた来年もNHKホールに来てしまうのだろうなーなどと考えながら,賑わいのホールを後に一路渋谷の駅に向かった。疲れはしたが結構充実の2日間でした。

【今週の番組ゲスト:ユニバーサルミュージック 齋藤嘉久さん】
M1Spectrum / 上原ひろみ」
M2When I Say   / JAZZMEIA HORN
M3Blue World / JOHN COLTRANE
M4The Sidewinder / BLUE NOTE VOYAGE

 

96日(金)から、ブルーノート・レコード創立80周年を記念したドキュメンタリー映画『ブルーノート・レコード  ジャズを超えて』が公開されます。

https://www.universal-music.co.jp/cinema/bluenote/