9月28日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019/09/27(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.481~ラグビーワールドカップ開幕】

 「日本・ロシア、両国選手の入場です...」調布の東京スタジアム。場内アナウンスが興奮気味に告げ、5万人近い観衆が雄叫びを挙げて沸き立つ、客席では随所でウエーブも巻き起こる。これぞ「ラグビーワールドカップ」、今までには無い光景、興奮。「3・2・1」とカウントダウンが続き、「0」の大合唱と同時に、レフリー、ナイジェル・オーエンスが開始の笛を高らかに鳴り響かせる。ロシアのキック・フ、高く蹴り上がったボールを、ジャパンのキャプテン、リーチがファンブル、日頃には見られないミス、異様な迄の緊張なのか...。

 「4年に一度では無い、一生に一度だ」と言う刺激的なキャッチフレーズは正にそのもの、現前の風景が夢の中での出来事のようにすら思える。そのオープニングセレモニーからオープニングゲーム迄、それをメディアの一員として、本当の端っこのメディア席ながら見届けることが出来るとは、ラグビーフリーク、ラジオ制作マンとしても、なんと言う倖せ・喜びで、言葉にはならないほど...。

 
我が後輩で日本を代表するシンガー(日大芸術部講師でもある)、丸山繁雄くんが作った世界でも唯一(?)のラグビージャズ組曲「ラグビー・フットボール組曲」、その第一章「キックオフ」のメロディーが一瞬頭をよぎる。もしこのセレモニーの中であの曲が流れるならば...、丸山も感激この上ないだろうが...、まあそんな仮定の話はしても詮無い。

 ジャパンの極度のプレッシャーを受けた試合運びで、初端にミスからロシアにリードを許すが、これが反って幸いしたのか後は立ち直り自在な試合運び、ぼくの一押しプレーヤーの一人、松島幸太郎のハットトリックなども見られ順当に勝利する。終了後の記者会見でも監督のジェーミー、キャプテンのリーチ共々緊張感を強調していたが、実に和やかで楽しそうに語ってくれる。
会見後のミックスゾーン(記者取材場)は、世界中の記者で何時も以上に混乱の極み。恐らくこの場にいる中では、関係役員を除きぼくが最高年齢の筈。恥ずかしながら老兵ここはひとつ頑張らないと...。肝心の松島は無理だったが、一念発起し群がる記者達を掻き分け、ご贔屓No1のルーク・トンプソン、我が早稲田ラグビー部OB唯一の出場、山中亮平選手、チームの柱堀江選手などのコメントをどうにか確保、最低限の働きは終え我がラグビースタッフのチーフ、H女史の面目もどうにか立てられた。
 以降東京スタジアム、横浜国際スタジアムと試合取材観戦したが、どの試合も素晴らしいもので、感激の連続。そのうえ家に帰れば「J-スポーツ」のワールドカップオンデマンド観戦等々。これが続くとチャンジー(爺さん)のぼくなどは本当に体が持たない感もあるが、そこは紛れもなく「一生に一度」。ここはひとつ踏ん張るしか無いのです。

 
そんなラグビー漬けのある日、一つの記事に目が留まった。我がラグビー番組のパーソナリティー藤島大さんの「阿修羅・原を知っているか...」という一文。いかにも藤島氏らしい格調高い文章で、この稀代のラガーマン、原に「オード」を捧げている。阿修羅・原こと原進はプロレスラーとしてはかなり有名な存在で、プロレスを知らないぼくなど以上に彼を知る人は多い筈。
 ただ廃業し故郷の諫早に隠居してからの彼は余り知られていないが、かなり寂しい暮らしだったようである。そんな彼の土台を作ったラグビー。当時は破格の体格を誇った彼、ジャパンの一員に選ばれるとその体を買われ2週間ほどで花形の8から地味できつい最前列のプロップに転向。これがいかに凄まじいことかは知る人ぞ知る...等だが、わずか2週間で転向しプロップとして当時全盛だったイングランドチームを迎え打ち、大接戦を演じる立役者になる。このイングランドとの試合、秩父宮の観客席では満員の観衆を処理できなくなり、グランドでも観戦させたと言う、前代未聞の曰く付き。幸運にもこの会場に入局直後のぼくもいた訳で、この歴史的試合を生で観戦したと言うのがぼくの大いなるラグビー自慢。その中でも原の活躍は地味ながら目立っていた。当時は強豪だった近鉄の中心で、今のぼくのご贔屓、ルーク・トンプソンの大先輩にあたるのだが、様々な事情でプロレスに転向(グレート草津など結構転向者はいて、最近大人気レスラーもラガーマンだったと聞くが...)、以降はその世界で大活躍し、人柄を映した実直なスタイルを貫き引退してしまった。
 反面破天荒な人でもあったのだが、郷里に引っ込んでしまった彼を藤島氏は訪ね、色々と話を聞きだしている。藤島流の優しさ溢れた表現でこの愛すべき無頼ラガーマン(母校でコーチも務めていた)&プロレスラーを綴っている。彼が寂しく故郷でその生を閉じてもう4年。今生きていてワールドカップを見ていたら、どんな感想を抱いたのか...。記事を読みながらそんな思いを強く抱いたものだった。破天荒ながら常に誠実。流石ラガーマンである。ジャパンラグビーに大いに貢献した愛すべき好人物である。合掌!

【今週の番組ゲスト:サックスプレイヤーの松丸契(けい)さん】
デビューアルバムの「THINKKAISM」から

M1THINKKAISM」
M2Ichiro
M3Parsley Sparsely
M4Dad Milkman



9月21日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019/09/20(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.480~リアクションあれこれ】

 「4年に一度ではない、一生に一度だ...」と言う、刺激的な触れこみが巷に溢れる「ラグビーワールドカップ」が開幕した。若いファン達にはこのキャッチ、どう映るかは分からないが我々チャンジー(爺さん)ラグビーファンにとっては、もう2度と巡って来ない世紀の機会だと言うのははっきりしている。そんなワールドカップをメディアの一員として参加できる...、正に望外の喜び。30年ほど前ラグビー人気絶頂だった頃、ラグビー番組実現を目指しかなり可能性も高くなった折、当時の局長の「俺は何も聞いていない...」の一言で、企画が頓挫してしまったあの時の悔しさ・無念さ...。それが当時では考えられなかった世界のトップと競い合うラグビージャパンの雄姿、その進化・深化。それにわずかでも関与している我がラジオNIKKEIのラグビースタッフによって喜び以外の何物でも無い形で迎える。栄えあるワールドップ初戦は、このコラム掲載の今夜、ぼくも取材陣の隅っこに入っている筈で、それについてはまたレポートをしたい。


 ところでこのワールドカップに並行し、もう一つのラグビーワールドカップ(?)
が実施されていることを知る人は少ない。こちらは世界の大学ラグビー7校が参加、互いの友好と親善を深める目的での対抗試合で、今年で2回目。4年前のワールドカップがイギリスで開催時に、オックスフォード大が世界の有力大学に呼びかけ始まったもので、2回目の今回は我が早稲田ラグビー部が主催して開催、全部で8大学が集った。その初戦早稲田対オックスフォードの試合を、小雨降り続く中だったが早稲田上井草グランドに見物に行って来た。拮抗した試合で内容的には早稲田が勝っていたが、オックスフォードがペナルティーキックを決め、3-0と言う珍しい低スコアでオックスフォードの勝利。親善試合だけに試合後は記念写真と中々に微笑ましい国際交流風景だった。

 ラグビー話題はもう少しワールドカップが佳境に入ってから...と言うことで、今回はこのジャズコラムについての読者からのリアクションについて一言...。前身のジャズコラムからするともう10数年。全部で500回以上、全く無償のボランティア作業としては実に良く続いているもので、我ながら驚いているが、これも担当してくれているO局長のおかげも大きく、彼には心から感謝・感謝である。どこ迄も自己勝手なコラムだけに、読者からの叱咤・激励・感謝など数多いが、どんなものでもリアクションしてくれるだけで嬉しく感謝の念に堪えない。そんな中でぼくの印象に残ったものを紹介してみたい。

 その一つはぼくと同年代(少し年下だが同じチャンジー世代)の盛岡市在住の方。昨年岩手の地方紙「盛岡タイムス」に、岩手ジャズ界の中心人物ジョニーさんこと照井顕氏(開運橋のジョニー店主)が我が「テイスト・オブ・ジャズ」とこのジャズコラムのことを紹介、絶賛してくれた。それを読んだ盛岡市在住のオールドジャズファンOさんからメールが届き、ジョニーさんの記事を読み懐かしくぼくの名前を思い出したのだと言う。「小西さんはあの「ジャズランド」誌創刊号にも書いていた人ですよね。岩手大生時代に読ませてもらいましたが、懐かしく思い出しました...。今でもジャズ関連で頑張っているのですね..."と言った感じのもの。1975年(なんと古い)創刊のこのジャズ雑誌、後輩のジャズジャーナリスト、故村田文一君が編集長を務めていた(彼は後年「スイング・ジャーナル」誌の編集長でもあったが、50代半ばで夭逝してしまった。惜しい逸材)雑誌で、確か10号で永久休刊になってしまったが、当時の先鋭的な雰囲気を色濃く映した想い出深い好雑誌だった。ぼくはここで初めてジャズに関する原稿を書いた(ペンネームも「啓一」にした)のだが、それを盛岡の学生だったOさんが読んでくれており、特に雑誌の創刊号だったので印象に残っていたようだ。そこでは「ジャズプロデューサーというもの」と言う大上段に構えたテーマで、偉そうなことを書いていたようで、「確固とした信念に基づく気骨ある制作の必要性...」等と説いていたと言う。まあ今の自堕落なぼくとしては何ともお恥ずかしい次第だが、まだ入局数年目で、時代も熱く燃えていたあの頃は、本当にそう思っていた筈。全く忘れていたのだが、ジャズとそして時代にぼくなりに真摯に向き合っていたあの頃を思い起こさせてくれたOさん(彼も学生時代は色々な活動に関与していた様だが...)、実に印象深いリアクションメールで、感謝の一言。

 まあこうした励まし・感謝のリアクションもあるが、中には苦言も...。前にショウケン(萩原健一)が死んだ折いくらか彼について書かせてもらったのだが、これを読んだ60代の女性の方、恐らくジャズなどは聞かないかなり熱烈なショーケンファンの方からお叱りが...、と言うより「小西と言う男の狭量さ」についてお叱りのメールを受けたのだった。狭量さと言う表現は確かに当たっているのだが、ぼくはショーケンと言う人、羨ましいなーとは思ってもそれ以上のものでは無いと記したはずだし、確かに無頼派気取りと言った表現もして、ファンにはかなりな嫌味以上のものに聞こえたかもしれない。更に昨今のSNS全盛の時代ならば、その行動などは世間的にかなり批判を浴びる筈...とも記したのだが、それは彼やカツシンさんなどかつてのスターの奔放さが失われたことを、惜しむ気持ちで書いたつもりだったのだが、それは受け入れられ無かったようである。まあ書く・表現すると言うことは、中々に難しいものだとつくづく思う。この年令になってもきっと精進しかないのでしょうね...。


【今週の番組ゲスト:キング・インターナショナルの関口滋子さん】
話題のピアノ作品をご紹介頂きました。

M1Poinciana / Ahmad Jamal
M252nd Street Theme / Shahin Novrasli
M3「Memories / Shahin Novrasli
M4
Escalier / Yes! Trio (Ali Jackson - Aaron Goldberg - Omer Avital)
M5
Song For Abdullah / Kenny Barron


9月14日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019/09/13(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.479~音楽本あれこれ】

 ちょっと前のこのコラムで、追分の山荘で今年読んだ興味深い音楽本について触れたが、このコラムの読者の方から、それをもう少し詳しく紹介して欲しいとの要望があり、ぼく自身もそれについて触れるつもりだったので良い機会なので今回はその音楽(ジャズ)本について記してみたいと思う。ただし取り上げた2冊は共に軽井沢の図書館から借りだした本なので、ぼくの手元には無く詳細は少し不明だが、記憶にある限りでこれらについて記してみるのでお許しあれ。


 まず最初の紹介本だが、これは珍しいジャズ絵本の『リズムが見える』。ジャズを素材とした絵本は大変に珍しいものだが、ただこれもジャズと限定した絵本では無く、アメリカ黒人の音楽史を絵本にしたものと言える。作家はアフロアメリカンの女流画家、ミッシェル・ウッドで、アフリカの始原の音楽から黒人奴隷としてアメリカに連れて来られてからのワークソングやゴスペル、そしてアメリカ音楽~黒人音楽としての中心とも言えるジャズ、更にジャズから派生するR&B、ラップ迄が、14枚の素晴らしい絵でこれらがコンパクトに紹介されており、何よりその力強い絵に強く惹かれる。プリミティブでいながら極めてモダンなその画風、見開きには黒人音楽の原点とも言うべき、30年代から50年代にかけて一世を風靡した有名ライブシアター、サボイ・ボールルーム、コットン・クラブ、アポロ・シアターの3つの社交場が並んで描かれており、この見事さだけでしびれてしまう。彼女はもっと知られていい素敵な画家だと思うし、この絵本もその存在が殆ど紹介されていない(ジャズジャーナリズムでも無し)のは、大変に残念なことである。


 そしてもう一冊が『パノニカ』。ジャズ史上最も有名な男爵夫人、ニカ男爵夫人を描いドキュメント作品で、これを書いたのが彼女の親戚筋に当たる、女性ドキュメンタリー作家にして今やロスチャイルド家の財産管理も任されているらしいハナ・ロスチャイルド。これはジャズと彼女との関わりだけを描いた音楽本では無く、ヨーロッパ全体の金蔓でもあり、欧州の明暗を握っていたユダヤ民族の星、ロスチャイルド家の歴史やその中での異端な存在だった女性ニカについても、色々興味深いことが分かる本でもある。またその作者が当のロスチャイルド家の一員だという所も大変に興味深いところ。財産家の娘として何不自由なく育てられたニカは、若い頃から反抗心が強く自立を求めイギリスを飛び出し、パリで遊び歩いている時に没落貴族の夫と知り合い結婚、男爵夫人となり第2次大戦ではレジスタンスの一員として飛行機乗りとしてアフリカ戦線で活躍、戦後偶然耳にした鬼才セロニアス・モンクのジャズに強く惹かれ(戦前からジャズは好きで、テディー・ウイルソンなどとも親交があったとされる)、夫を捨て単身NYに渡りモンクと親交を結ぶと共に、NYのジャズ界のパトロン夫人として様々な黒人ミュージシャンの援助などもした、ジャズ界では余りにも有名な存在。
 本のタイトルになっている「パノニカ」、また「ニカ」「ニカズ・ドリーム」「ニカズ・テンポ」など彼女の名前を冠した曲も10数曲作られており、いかに彼女がジャズメン達から愛され頼りにされた存在だったかが良く窺える。なかでもあのバードことチャーリー・パーカーが亡くなったのが、NYにある彼女の高級アパートの一室だったのも、よく知られたジャズ界のある種のゴシップだが、実際は体の調子悪く(麻薬の為)転がり込んできたパーカーを
彼女が寝ずに看病したとのこと。こうした彼女とモンク、パーカー、テディー・ウイルソンなどとの交友関係も興味深いものだが、今回初めて知ったのは一人娘のジェンカは、一時期黒人ドラマーのクリフォード・ジャービスと結婚していたと言うこと。破天荒な行動派女性で、欧米中に広がるロスチャイルド家では鼻つまみ者だったが、その型破りな行動力には目を見張らされる。またユダヤ人だけに、叔母などが強制収容所で死亡なども数多くこうしたヨーロッパの裏歴史も窺え、単なる音楽本を超えた異端のユダヤ人史としても読める面白本として推薦。

 
更にもう一冊お勧めしたいのは、脳科学者として今TVなどで受けに入っている、美形脳科学者、中野信子の「メタル脳」。モーツアルトよりメタリカを聴け...等と宣うこの美人脳科学者は、中学時代から孤独な隠れヘビメタルファンで、自身のヘビメタ経験やヘビメタの社会的効用などを書いているのだが、面白かったのは彼女が結構貧しい少女時代を過ごし、祖父母に育てられながら誰に知られることなく、孤独にヘビメタを聴いて育ったという事実。日頃はヘビメタなどはまずお呼びでは無いのだが、彼女がそう言うならば一つ聞いてみようか...などといういやらしい気持ちにさせてしまう所、美女は得である。それにしても彼女、中学・高校は当然学年トップの成績。凄いのは教科書を見ただけでその全部を覚えてしまい、勉強はする必要も無かったのだと言うエピソード。いやー天才とは恐ろしいものでもあります。

【今週の番組ゲスト:ジャズサックスプレイヤーのユッコ・ミラーさん】
3rdアルバム『Kind of Pink』から
M1Blue Stilton
M2'Round Midnight
M3「「名探偵コナン」メイン・テーマ」
M4
「海の見える街」

9月7日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019/09/06(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.478~18回東京ジャスフェス】

 夏の終わりの東京でのジャズの話題となると、やはり「東京ジャズフェス」となる。8月31日(土)と9月1日
(日)の2日間、場所は昨年から渋谷のNHKホールに変わり、昼・夜の2公演で出演は毎回2バンド、合計8バンドが登場となる。今年はどういう風の吹き回しか、8月の半ばにはほとんどの公演がソールドアウト。担当のNHKエンタープライズのスタッフは、全ての公演売り切れを目指すと意気高らかだったので、いつもは8月初旬に手元に来るはずの招待状も10日前になっても無しの礫。今年はもう駄目か...とほぼ諦めていたところ、1週間前にようやく招待状が届きホッとする。

 考えてみればこのフェスも今年で18回目、ぼくは初回から一応毎年顔を出しており(1曜日だけの年もあったが...)皆勤賞もの。初回は調布にある味の素スタジアムで、グランドにマットを敷き詰めピッチを汚さない為に清涼飲料水禁止など、色々制約も多く問題山積みだったが、ハービー・ハンコックが全面的にプロデュースを担当、内容面は充実し刺激的なプログラムが並び、お祭りムードも満載と実に楽しく充実のフェス。なによりフェスに対するスタッフの意気込みが感じられたのが収穫だった。それが何回目からかホールコンサートとなり、ほぼライブアクトの積み重ねと言った感じで目新しさは皆無。屋外での無料ライブの方が内容的に...等と言う揶揄の声まで聞こえてくる始末。更に最近はNHKのおひざ元での開催となり、制約は増しジャズのお祭り的な要素も余り無くなってしまったのは大変に残念なこと。

 そんな前置きはさておき、今回18回目の今年、31日(土)の昼の部は歌うベーシスト、ミッシャル・ンデゲオチェロ、それと人気ポップシンガーMISIAとNY活躍中のトランぺッター、黒田卓也の共演と言った、歌姫中心のステージ。ンデゲオチャロの方はひたすら自身の道を突き進むと言った感じで、ロック色も強い地味目なコンサートだった。一方MISIAは流石の人気。ファンも多く声援がかかるなか堂々と自身のヒット曲をジャズ風に唄い上げ、聴き所多いステージだった。だが如何せん彼女のヒット曲を知らないし、その歌い口も独特だけに少しも歌詞が伝わってこない。歌唱力抜群な実力派と言うのは良く分かるが、持ち歌を知らないぼくなどには荷の重いステージではあった。


 夜の部はアビシャイ・コーエン・トリオとチック・コリアのアコースティック・バンドと言う、現代ピアノトリオを代表する好組み合わせ。チックはそのピアノテクニックの素晴らしさと客をのせるテクニックの素晴らしさ、芸術と芸能の粋を聴かせる流石のステージ振りだった。一方今注目のイスラエルジャズの総帥とも言えるベーシスト、アビシャイ・コーエン・バンドは、なんとドラムがぼくのお勧めマーク・ジュリアナで、ピアノには東欧のバクー出身の新鋭が加わると言う斬新なトリオ。期待通りの新鮮にして鮮烈なピアノジャズを展開、今回の随一とも言えるステージだった。それにしてもジュリアナのドラムは唯一無二のタイム感覚で強烈だった。

 
 日曜日の昼は新旧のサックスの大物、チャールス・ロイドとカマシ・ワシントンの2ステージ。ロイドの方はジュリアン・レイジ(g)など、素晴らしい面子が揃った新ユニットだったが、メンバー紹介が無く誰が加わっているかその時点では不明。ロイドのプレーには年令を感じてしまったが、他の面々はどれも素晴らしかった。メンバーが分かればもっと違った愉しみ方もあった筈だが...しかしロイドも今回の話題の中心、カマシ・ワシントンの登場に大分食われた感じありで、カマシの人気はかなりなものだった。ぼくの率直な感じではカマシはいささか持ち上げられすぎ...、そのテナーは良く鳴っており(ロイドよりも良かった?)それなりの迫力もあるのだが、全体のステージがスピリチュアルジャズのいかがわしさ(これが好いと言う人もいるが...)にポップな感じをプラスしたもので、かつて聴いたことがあり見たこともある...と言った既視感のあるステージのコラージュと言った趣きで、いささかこけおどしと言った感じをぼくは持ってしまった。しかしスター不在の昨今、彼の存在感はかなりなものだし、あのブルース・リーの「怒りの鉄拳」のテーマをジャズ化すると言ったアイデアは、今のアメリカの若い黒人達にも充分に受ける=フィットすることも、また理解は出来る。まあ全体にそれなりに興味深いステージであった。

 ラストの夜の部は、所用でチック・コリアのエレクトリック・バンドは聞けなかったが、カマシと人気を2分する異色の大編成バンド「スナーキーパピー」のステージは色々な意味で興味深いものだった。このバンド全部で参加する面子が30人余り、そのうち公演ごとに10人近くでユニットを組み、ツアーやライブなどに登場すると言った可変性ある独特なユニットで、グラミー賞も受賞の人気・実力派ラージユニット。名門ノーステキサス大出身者がメインの超インテリバンでもある。番組にも登場してくれたことのあるNY在住のドラマー、小川豪太くんもメンバーの一員だが、このツアーには参加しておらずその点は残念。ただジャズ、ロック、ブラジル、ラテンなど様々な要素が上手く絡み合い、独特のスナーキーサウンドとして昇華されており、愉しく聞くことが出来たし、ファンの興奮振りもかなりなものだった。

 
 第19回となる来年の東京フェスは、東京オリンピックの関係だろうと思うが5月開催になり、その告知もステージに大きく表示されていた。またまた来年もNHKホールに来てしまうのだろうなーなどと考えながら,賑わいのホールを後に一路渋谷の駅に向かった。疲れはしたが結構充実の2日間でした。

【今週の番組ゲスト:ユニバーサルミュージック 齋藤嘉久さん】
M1Spectrum / 上原ひろみ」
M2When I Say   / JAZZMEIA HORN
M3Blue World / JOHN COLTRANE
M4The Sidewinder / BLUE NOTE VOYAGE

 

96日(金)から、ブルーノート・レコード創立80周年を記念したドキュメンタリー映画『ブルーノート・レコード  ジャズを超えて』が公開されます。

https://www.universal-music.co.jp/cinema/bluenote/