7月27日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2019/07/26(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.472~ラージアンサンブル】

 モダンジャズの時代になってすでに70年以上。ちょうど今話題を集めているNHKの朝ドラ「なつぞら」。この連ドラも佳境を迎え(主演の広瀬すずがご贔屓なので久々に毎日見続けている)、今週は主役のなつが十勝の牧場で共に育った同い年の北大生、夕美子が駆け落ちして新宿の居酒屋にやって来るシーン。駆け落ち相手の青年はなんとジャズ評論家を目指しているのだそうで、彼のアイドルはジョン・コルトレーンとのこと。朝ドラでコルトレーンの名前が出て来るとはちょっとした驚きだし、ジャズプレーヤーの名前が聞かれるのも初めてだと思うが、確かあの頃の新宿(ぼくの新宿時代より10年ほど早い設定の筈)には、こんな青年も居酒屋に数多く屯していたと思わせる所はある。


 さてあの頃多くのジャズ喫茶が存在、街中を沸かせたモダンジャズだが、元々個々のジャズプレーヤーのソロ演奏の素晴らしさ(マイルス・デイビスやビル・エバンス、更にはコルトレーン等々)を愉しむもので、それらの巨星達のアドリブプレーがジャズを推進してきたとも言える訳でもある。しかし今やモダンジャズもスタート以来70余年、前述の巨星達は殆ど姿を消してしまい、個々人の努力・習練もある意味限界に達してしまった~行き詰まってしまった感もある。ソロと言った一瞬の閃きに全てを任せるのには、いささか硬直化も見られる様になってきた現在、改めて注目されているのがかなり練り込まれた感じもあるラージアンサンブルやフルバンドの分野である。ある意味ソロからペンに移行しつつあるとも言えそうでもある。

 
フルバンドなんかは古くからあるじゃないか...などと言われる方もあると思うし、デューク・エリントン、カウント・ベイシーと言ったフルバンドの確固とした歴史には、素晴らしいものがあるのは間違いない。しかし最近はかなり個々のプレーヤーの自由さ・奔放さなども生かしつつ、新たな感覚で描き出す、従来のものとは異なったフルバンドやラージアンサンブルが注目を集めており、それらが今の閉塞状況を打破する一つの大きな要素になりつつあるのもまた事実なのだ。
 マイルスとのコラボレーションで知られる鬼才ギル・エバンス、彼を始祖としてその弟子であるマリア・シュナイダーなど、新しい資質が数多く誕生しこのシーンを強烈に活性化しつつあり、日本人も狭間美帆、宮嶋みぎわなどと言った新進気鋭から、守屋純子、藤井郷子などのベテラン陣迄、多士済々の面々が揃う。更に最近では何かとお騒がせのピアニスト、大西順子もこのラージアンサンブルに強い興味を示し、新しいアルバムを発表している。

 
そんな折今回登場のピアニスト福井ともみも、新たに9重奏団によるユニットを結成、映画音楽を新鮮なジャズアレンジで取り上げるアルバム『マウント・ノネット』を発表した。そして今回そのアルバムを携えスタジオに遊びに来てくれた。横浜育ちの彼女は、バップの伝統を生かした素敵な演奏を披露してくれていたが、それだけには飽き足らず新たにアレンジも...と言うことで、ニューユニットを結成、新作も発表した訳だが、アルバムタイトルはそのユニット名をそのまま持ってきたもの。曲は彼女のオリジナルが1曲で,後は「007のテーマ」「ゴッド・ファーザーのテーマ」「風のささやき」等と言った良く知られる映画音楽がメイン。その他「カミン・ホーム・ベイビー」「夢のカリフォルニア」などジャズメンの演奏で大ヒットしたナンバーも加え、全部で10曲。高瀬龍一など手練れのホーン陣に藤井学などのリズム隊といずれもが実力派揃いの9人衆。有名曲だけにそのアレンジには中々に苦労したとも語っていたが、結果は上々。実に愉しめる意慾的な演奏に仕上がっている。

 特に「007」はこの有名テーマに、ジャズオリジナルとしても知られる「危険な関係のブルース」を加え、2曲のメドレーで取り上げると言った意表を突く企画で驚かせる。6本の管楽器のハーモニーも見事で、このシーンにまた新たな資質が登場したと頷かせるに足る充実の内容で、評判の美形ピアニストに新たな勲章が付加されたと言ってもいい。狭間、宮嶋などに続く遅まきながらの新人として、これからそのノネットの活動に注目してみたい。


【今週の番組ゲスト:ピアニストで作曲家、編曲家の福井ともみさん】

5年前から活動を始めたバント「福井ともみとMt. Nonet」の1stアルバム『Mt. Nonet』から4
M1Speak Softly Love (映画「ゴットファーザー愛のテーマ」より)
M2One More Chance
M3「風のささやき(映画「華麗なる賭け」より)
M4007のテーマ&危険な関係のブルースメドレー(映画「007と危険な関係」より)