6月1日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2019/05/31(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.464~誠一ちゃん】

 今回の番組ゲストは、今最も充実して人気も高いテナーマンの川嶋哲郎。ぼくの最も好きなジャズマンの一人だが、最近の彼は大作のジャズ組曲を自身で書き上げ収録することが多い。今回取り上げる新作も、タイトルはそのものずばりの「ウオーターソング」。彼の故郷、富山県が誇る美しく澄んだ水にまつわるオリジナルナンバーを集めたもので、メインは4部構成の組曲「スロウ(流れ)」。3千メートルの高峰から流れ出て海に達する流れをジャズで描いたもので、彼のサックスが木管ジャズオーケストラをバックに力強く唄い上げられるもの。いかにも彼ならではの力作だ。


 ところで今回のコラムの主役は彼の先輩テナーマンについて。先日、ラジオNIKKEIをかなり前に辞めてしまったある後輩から電話があった。彼は技術系のかなり優秀な男で、局員時代には海外取材なども数回一緒にやった仲。それ彼が、先日テナー奏者の誠一ちゃんこと中村誠一と一緒に飲んだという。その会話の中で、自分がラジオNIKKEIにいたことを誠一ちゃんに告げると、「じゃ小西さん知ってるよね...、彼とはもう40年近い付き合いなんだ...」等と言うことになり、お互いが小西話で大分盛り上がったのだと...。まあこういう時にはいい話などはほとん無く、笑い話のネタにされたのは間違いないだろうが、「誠一さんは色々と褒めてましたよ...」などと後輩はおべんちゃらを言ってくれる。まあ実際はどうなのか...は分からないが、「それにしても誠一さんって話題も豊富だし実に面白い人ですね」と後輩は改めて感じ入った様子。

 と言うことで今回は誠一ちゃんについて少し記してみることにしてみた。彼との付き合いは実に半世紀近くで、まさに昭和の付き合いである。当然山下洋輔トリオ時代からなのだが、その頃はまだあいさつ程度の仲。その後高平哲郎くんやタモちゃん(森田一義)等に正式に紹介され、一緒に「ホワイト」で飲んだり、お互いのご贔屓でもある、「青梅雨」と言う昔のゴールデン街唯一の割烹店で一緒になったりと、面白い時間を共有していたりもした。山下トリオ時代の彼は、正に闘士の前衛プレーヤーと言った趣きと演奏振りで、今思えばいささか重カッコいいミュージシャンだった。その後山下トリオを抜けてからはその重しが取れただけに、今度はバップからスイングジャズ迄自由自在に吹き・遊び捲るお気軽テナーマンへと変身した感もあった。その余りの変貌振りに、当時のうるさ型ジャズファンからは色々言われた様だが、誠一ちゃんはそんな世評を少しも気に留めていないように、飄々と自身の好きなプレーで貫き通していた。デクスター・ゴードンとかジーン・アモンズなどにも似た、楽器を朗々と鳴らす余裕たっぷりな男臭いそのプレーは、仲々にダンディーで格好良いものでもあった。その後洗足学園音楽大学に新設されたジャズ科の主任として後輩の指導に当たり、横浜ジャズ界の実力者として君臨してもいた。だが教職も数年前に引退、今はまたバリバリとライブ活動に勤しんでいる。

 数年前に愛妻を亡くした時は一時落ち込んでもいたようだが、生来の明るいジャズ芸人でもあるだけに、この所はライブ活動も充実、何より娘の紗理ちゃん(気鋭のジャズシンガー)との共演が愉しみになっている。我が「テイスト・オブ・ジャズ」にも数十年ご無沙汰だったが、数年前にはその娘さんと共に来局、2人の共演アルバムを紹介してもらった。実に魅力的な娘さんで本場のバークリー音楽大学にも留学、シンガーとしての力量もかなりなもの。一方誠一ちゃんも彼女のことになると、親馬鹿振りを最大限に発揮、単なるおやじに変身してしまう辺りもまた面白い所。

 ハナモゲラ語の創始者でもあり、文楽など落語の大御所達の真似をさせたら天下一品と言う才人の誠一ちゃん。彼とは今年の7月末、軽井沢大賀ホールでの「軽井沢ジャズ・フェス」で一緒になる筈だが、忘れられないのは昨年秋、新宿「J」の40周年パーティーでのタモちゃんとの掛け合いでたらめブルース。彼はパーティ―の司会も担当していたが、客席のタモちゃんを呼び出し博多のホテルでの有名な最初の出会いの話をした後、でたらめの大阪弁ブルースシャウトの掛け合いを延々繰り広げ、改めてその凄みを満喫させてくれたが、この勝負、タモリよりも誠一ちゃんに軍配を挙げたくなる出来栄えだった。その様子は昨年暮れの「テイスト・オブ・ジャズ・スペシャル」でオンエアーさせてもらった。「兄さんそうでんねん、違いまんねん...」と延々と繰り返す大阪弁ブルース・フレーズの仲々に迫力充分な掛け合い。なにとぞよろしゅうお頼もうします。


【今週の番組ゲスト:テナーサックス奏者の川嶋哲郎さん】
最新作の「WATER SONG」から
M1
CRESTA PRELUDE
M2HORIZON
M3Suite -THAW- Ⅰ 雪解け」
M4WATER OF TEARS