3月30日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019/03/29(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.455~ハードボイルド小説】

 年を取る~チャンジー度が高くなると、どうも集中力や忍耐力の衰えが激しく成るようで、
本を読むスピードも遅くなり、中々一冊を読み切れない。このためこのところ大好きなハードボイルドものやプライベートアイ(私立探偵)ものも、残念ながら余り読んでいない。これにはぼく自身の加齢問題も関係しているのは間違いないが、同時にハードボイルド系(私立探偵ものも含め)小説の衰退傾向、端的に言えば余り面白い作品が無くなりつつある元気喪失傾向が顕著で、代わりにぼくの大嫌いな警察小説が幅を利かせていると言う事情も、大いに関係しているのかも知れない。
 ハードボイルドで最近読んだのは、各方面で評判の高い原尞の14年振りの新作、探偵沢木シリーズの「それまでの明日」。各書評などで絶賛されていたのだが、事件らしき事件も余り起こらず、それを淡々と処理する探偵、沢木の姿勢・心根。これには原氏の枯れ具合が加速されているようで、それなりに面白いのだが、期待が大きすぎただけにいささか残念な思いで読んだものだった。原尞は九州大出身で亡くなったピアニスト、辛島文雄と九州大でほぼ同学年。辛島が王道のピアノ路線を行ったのに対し、原の方はフリージャズの道に進み数年で引退、故郷の佐賀に戻り文筆業を始めたと言う経歴。それだけにジャズの対する愛着は半端ない作家でもある。そして今や最も活躍しているハードボイルド作家で、「探偵はバーに居る」等で知られる札幌在住の東直己、彼も大のジャズ好きで色々なミュージシャンやシンガーの名前が作品には登場する。この2人を代表格に結構ハードボイルド作家はいるのだが、イマイチ元気がないのは事実だ。

 
そんな中でぼくのおススメの一人が、異色のハードボイルド作家...と言うよりもピカレスク(悪漢)作家と表現した方が適切な、直木賞作家の黒川博行である。コテコテの大阪弁が飛び交う彼の関西ハードボイルド小説には2系列あり、一つは大阪府警の堀内・伊達コンビが活躍するマル暴シリーズ(両者とも悪事がばれクビになり東京に流れて来るのだが...)。そしてもう一つが、映画化やTVドラマ化され大人気の疫病神シリーズ、イケイケの武闘派やくざでいつも喧嘩三昧の桑原(疫病神)と、親父がやくざで自身は建設コンサルをしている二宮(彼は喧嘩の弱い堅気)のコンビによる作品群で、関西流ハードボイルドとでも言えそうなものなのだが、これがめっぽう面白い。凄惨なリンチやカチコミ(抗争)シーンでも、何かそこに関西流のユーモアが漂い飽きさせないのだ。その疫病神シリーズの最新刊「泥濘」も期待通りの面白さだった。これは週刊文春に連載されていたもので、今流行り(?)のオレオレ詐欺とその裏で糸を引く警察OBや桑原と敵対するやくざ組織の若頭の抗争を描いたもので、テンポよくストーリーが展開される。このシリーズ今までに「疫病神」「破門」など10冊近くが出されており、最高作は北朝鮮に侵入し散々な目に合う2人を描いた「国境」だと思うが、どれも秀逸で一度読むと何とも魅力的なこの2人のコンビにとにかく惹かれる。自分勝手で相手を嫌いつつもどこか好きあっており、持ちつ持たれつの関係にあるこの2人に感情移入してしまうのだ。
 その最新刊ではなんと桑原のジャズ好きが判明する。大阪のカラオケ屋(桑原の愛人が経営する)に繰り込んだ2人、イケイケ武闘派の桑原がリクエストして歌うのがなんとあのヘレン・メリルの銘品「ユード・ビー・ソー・ナイス...(帰ってくれたら嬉しいは)」。これには笑わされると同時に驚かされもする。「歌、うたえ」二宮に言う。「ズージャーや、ヘレン・メリル」「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ...」桑原は小さく歌った。「それ聞いたことある」「わしが唄う。入れてくれ」「ほら入れんか」「タイトルは」「歌手で検索せい」「ヘレン・メメリルストリーブね...」桑原は1曲歌った。ざっとこんな感じである。カラオケで「ユード・ビー...」を歌う、それも大阪やくざがである。
 そしてもう一つ、この凸凹コンビならではの面白会話を御紹介しよう。スマホの動画を使って相手やくざを脅かす策を桑原が披露する。それに対しコンサルの二宮は「その案なるほどスリランカですは...」「なんじゃスリランカとは」「正論(セイロン)です」「二宮君寒いギャグはやめとけや...」桑原は笑いもしない。
この洒脱感応えられません。そして登場するヘレン・メリルストリーブ。黒川流コテコテ・ハードボイルドの真髄、世界中に紹介されるべきものとぼくは信じています。 

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富先生
今週はジャズトーク、 ライブ録音特集でお話し頂きました。

M1「Lester Leaps In / JATP」 (1944年 Jazz at the Philharmonic のライブ録音)
M2「 KOKO / Charlie Parker」( 1948年  Royal Roost のライブ録音)
M3「Comin' Home Baby /
Herbie Mann」(1961年 The Village Gate のライブ録音)
M4「Cubano Chant / Ray Bryant」(1972年 Montreux jazz Festival のライブ録音)
M5「The Köln Concert / Keith Jarrett」(1975年 ケルン、オペラ劇場のライヴ録音)

3月23日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019/03/22(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.454~ラグビー・サンウルブズ】

 今年はラグビーワールドカップイヤーで、日本のラグビー界にとって記念すべき年と同時に大変に重要な年でもあるのだが、どうもその盛り上がりも今イチの感がある。全国20か所近くの会場で行われるワールドカップのトーナメント、ラグビーが盛んな九州では確か3か所の会場で試合が行われるはずで、2月に別府に温泉探訪に行った時には街の各地でPR看板が立てられるなど、かなり熱心な大会告知が行われていたのだが、首都圏ではどうもいまいちの感も強い。まあこの時期はラグビーの端境期、盛り上がりに欠けるのは仕方ないのだがいささか心配になってしまう。
 そんな時期を埋めるのがスーパーリーグに所属する日本チーム「サンウルブズ」の動向。ニュージーランドに遠征しアウエー(敵地)で1勝を挙げたのは、特筆に値する画期的なことだし、それ以外の試合でもかなり拮抗した試合を毎回繰り広げ着実に力を付けているのは確かだが、人気や盛り上がりに欠ける点は否めない。そんなサンウルブズだけに事務方も色々とPR活動に務めていて、その一環として秩父宮ラグビー場で行われる国内第2戦では、チームジャージを着たラグビーファッションショーの実施を考え、その合間にラジオNIKKEIの番組「藤島大の楕円球にみる夢」の公開録音を実施することになった。番組開始数年にしての初めての公録、ぼくも久々にフロアディレクターなどとして、わずかばかりのお手伝いを言うことで、3月16日(土)のレッズ戦前の番組公開収録を行った。
 
この試合はあの東日本大震災が起きた3月11日以降に行われる初試合と言うことで、震災に遭った釜石市からもラグビー関連の高校生がボランティア参加すると言うチャリティー試合にもなっており、その高校生達もステージに上げたら...と言う提案が採用され、チャリティー試合の公録らしさもプラス出来た。更にサンウルブズからは共同キャプテンの一人、FWのクレイグ・ミラー選手も公開収録に参加してくれることになり、それなりに準備も整い、試合当日を迎えることになった。


 当日は天気予報では雨の可能性が高く、どうなることかと危ぶんだのだが...。どうやら晴れ間も見える天気具合となり、プロデューサーH嬢の運の強さに感心しきり。会場は秩父宮にはいる正面の階段下のステージ。階段でラグビーファッションショーが行われ、ステージはそのメインの見せ場、ハーフの美女モデルを含む数名のモデル達による10分位のショーの前半が終了、そしていよいよ番組公録がスタートとなった。
 収録の進行役は番組でもおなじみの「ラグビーマガジン」田村編集長。大学の準体育会でラグビーをやっていた氏は堂々と進行役を務め、メインゲストのミラーを呼び込み、パーソナリティーの藤島氏と共に、色々と彼に質問を投げかける。出身地のニュージーランドでは会計士も経験したこともあると言うミラーは、かなり知的な印象のプレーヤーで誠実に受け答えし、多くのラグビーファンからも好感を持って受け止められた。その後釜石から来た高校生~2人の女子高校生で一人はラグビー部のマネージャーとのこと~もステージに呼び込み、試合準備の為に退場するミラーと最後にラグビーボールのパス交換を行い、彼女たちは大感激。その後は彼女達にオジサン2人から高校生活、釜石で行われるラグビー試合への期待などいくつかの質問を投げかけ、彼女達は一つ一つ真摯に答える。そのやり取りにファンは熱く共感を覚えた様子...と言った感じで、公開収録はつつがなく終了、2部のファッションショーにバトンを渡した。
 当日、秩父宮には1万4千人を超えるファンが詰めかけ大盛況。番組とラグビーファンとの間で、かなり良い心の交流が実現できたようにも思われる。ぼく自身も久々のフロアーディレクター仕事、どうもこうしたイベントいくつになっても結構ワクワクものでそれなりに愉しませてもらった。

 肝心のサンウルブズとレッズの試合の方だが、前半は完全にサンウルブスが主導権を握りかなりなリードで終了。かなり楽勝ケースかと思いきや、後半に入ると様相は一変、本来の力を発揮し出したレッズに押しまくられ、試合の終盤まで同点でもつれ込み、最後の最後にサンウルブズにミスが出て惜しくもうっちゃり負け。大変に残念な結果で終わってしまったのだが、番組の公開収録の方は自画自賛ではなく成功だったと信じる。何せ釜石の女子高校生達のすれていない溌溂とした可愛らしさ、久々に気持ち良いものを見た感がありました。彼女・彼ら(そして全国の高校生達)のボランティアスピリットが、今年のラグビーワールドカップをもきっと成功に導くに違いない。そんな感慨を抱かせてくれた一時だった。

 しかし本日、サンウルブズが2020年シーズンを最後にスーパーラグビーから除外という発表があった。収録当日もファンからサンウルブスのこれからについて質問が出たのだが、まあいろいろな事情はあったのだろうし、日本選手の登場が少なくて人気もいまいち...、など諸々あっての決定でこれは致し方ない。それにしてもワールドカップ終了後の日本ラグビー界、本当に心配の種が尽きません。まあぼくは早稲田ラグビー一筋と言うのは、これまでと変わりないのですが...。


【今週の番組ゲスト:ジャズピアニストの友金まゆみさん】
デビューアルバム「NEW YORK REUNION」から
M1Mr.T
M2 Old Folks
M3Sister Sadie

M4I Wish She Were Still Here

 



3月16日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019/03/15(金) 19:00

「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.453~ジャズ講座】

 昨年に引き続き今年もまた中野区の公民館から頼まれ、ジャズ講座を3回ほど行った。サブタイトルは昨年と同じく「知らなかったジャズ」。ぼく自身はジャズ講座などと言った大袈裟なものでは無くジャズトークと言った軽い感じを考えていたのだが、昨年はサブタイトルに「知らなかった」等と謳われている所為で「戦前にもジャズがあった」「中央線ジャズとは...」等、いささかマニアックだったのでは...と担当氏から注文が付き、今回は徹底して入門者向けとして、隔週の火曜日午後の2時間ほど3回に渡って実施した。

 
相手は50才以上の結構熱心なオジン&オバンがメインで、およそ40名程だったが、殆どはジャズなど全く知らない方達。そうなると入門講座は仲々に難しい。と言うことで1回目の「ジャズって愉しく・面白い音楽」では、ゲストに四谷のジャズ喫茶「イーグル」のマスター、後藤雅洋氏を迎えることにした。彼の所はもう半世紀近く続くジャズ名門店で、彼が慶応大の学生だった時に始めたもの。まあどうして彼を招いたのかと言うと、彼には2冊ほどジャズ入門を謳ったジャズ本があり、またカルチャースクールでも教えており、何より今や売れ行き絶好調なジャズムックシリーズ(小学館)の監修者・選曲者でもあること。彼と一緒にジャズの愉しさ、ジャズ喫茶の利用法など、ムック本収録曲中心にジャズ入門について語り合った。
 紹介したのはマイルス、上原ひろみ、ソニー・ロリンズなどの代表的演奏や美空ひばりのジャズ歌唱等々。中で一番受けたのはやはりひばりのジャズで、ムック本でも中高年層に大反響だったと言う。紹介する曲は2人ほぼ一致したのだが、彼の店で行った打合せの場で唯一意見が分かれたのが、帝王マイルス・デイビスの扱い。ぼくは世界中で最も売れ彼を代表するアルバムとして、当然名盤『カインド・オブ・ブルー』を推し、曲は「ソー・ワット」だと主張したが、彼は断固反対。あのアルバムでかえって入門者はジャズから離れてしまう。同じ「ソー・ワット」ならばここは『フォー&モア』(これも極め付きの名盤だが...)に収められた急速調演奏を選ぶべき...と言う。結局はゲストの意見を取り入れ『フォー&モア』を採用したのだが、これは今もって些か納得いかない所でもある。


 2回目は「ジャズ・ミーツ・クラシック」と言うことで、このコラムにも登場したこともあるジャズピアニストにしてパイプオルガン奏者の岩崎(小野田)良子さん。会場にはエレピも用意されていたので、彼女はエレピを弾きながら、ジャズとクラシックの融合、パイプオルガン演奏の難しさ、スペイン音楽~特にロマ(ジプシー)音楽の魅力などについて話してくれた。彼女がパイプオルガンを始めた切っ掛けは、2人目の子供を産むために聖路加病院に入院した30代半ばのこと。そこで新しいパイプオルガン導入の話を聞き、一念発起してこの楽器をマスター、子供を置いてのヨーロッパ留学など、その苦労談は聴衆のオバン連中には大いに感銘を与えた様で、講座終了後彼女の行うジャズライブに向かった人もかなりいたようだった。

 
3回目は「ぼくのMPB」と言うことで、ぼくの音楽原点とも言えるマイルス=M、タンゴ界の鬼才アストロ・ピアソラ=P、そして楽聖バッハ=B。この3人とジャズと言うテーマで一人語りする予定だった(このMPBとはブラジルのポップ・ミュージック、ムジカ・ポピュレイラ・ブラジレイラの略語)。しかし1回目の講座でマイルスの曲を紹介どれほど知っているか聞いてみたら、なんと僅か2名だけ。これにはがっかりでどうしようかと思っていた所、後藤氏とジャズはやはりライブだと言う話で纏まり、ジャズのライブスポットの愉しみ方の方が...と思い直した。
 そこで我らが新宿「J」の名物マスターバードマン幸田こと幸田稔氏に御登場頂くことにした。昨年暮れに新宿「J」40周年で1時間のジャズ特番をオンエアーした関係などもあり、その時の音源やタモリの「J」への応援・激励メッセージなども織り込みながら、40年を振り返りジャズの愉しさなどを語り合った。幸田氏はアルトサックスも持参、半世紀以上前の大学対抗バンド合戦優勝時早稲田ジャズ研の音源(ラジオ東京)なども披露、講座の最後には持参のアルトで「ラウンド・ミッドナイト」を吹き上げてくれた。学生No1だったころには及びもつかないが、現在の年令を感じさせる、枯れていながらもしみじみとした味わい深いソロ演奏で、オジン・オバンの皆様も大感激。バードマン氏もまんざらでない様子だった。やはり持つべきものは良き友なのである。


 まあこれで3回のジャズトークは無事終了。結構面倒くさいのだがいつもはあまり聞き直すことない名盤・名演の数々を、改めて聞き直しみてやはりジャズは素晴らしきもの、良きもの...だという認識を新たにさせてくれた、ぼくにも実のある講座実施でした。


【今週の番組ゲスト:ギタリスト 井上銘さん】
昨年秋に2枚同時リリースした『MONO LIGHT』『Solo Guitar』から
M1Dan feat.Kento NAGATSUKA
M2Desperado
M3Chega De Saudade
M4Nishinoomote-Kou















3月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019/03/08(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.452~山下洋輔健在】

 2月中旬のある夜telがあり「吉田さんと言う人から電話よ...」と家人から告げられる。どこの吉田かな...と訝りながら電話口に出ると「あー小西さん、吉田です。元気でやってます...」と闊達な声が響く。あーあの吉田さんねーと納得。ラジオNIKKEI4代前の社長で、ラジオたんぱからラジオNIKKEIに局名変更した当時の、元気印社長である。

 「小西さん、山下君(洋輔)が階段から転げ落ちた話知っているよね...」「知ってますよ、結構大変だったらしいですね...」「そうらしいね、それが1月末には大分良くなって今はもう大丈夫らしい。そこで彼の全快祝いを半蔵門にあるⅮホテルの中華料理店で28日にやろうと思うんだけど、空いてる?..」手帳を見ると何も予定なし。最近はこうした日が多くこれもチャンジーならではの悪しき特権(?)。「今の所は大丈夫のようですが...」と返すと、「じゃその日に設定しますからよろしく...」とのことで、数年振りの山下氏との会食となった。この夜は山下事務所=ジャムライスの代表、村松氏も同席するとのこと。山下さんが階段から転げ落ちたのは、去年ぼくも行った上野文化会館でのNYトリオによるコンサートの数週間後の話で、関係者もその経過を大分心配していた。
 
 そして当日、定刻少し前に中華料理店に着くと、既に山下、村松両氏と吉田さんも店にいて、すぐに乾杯と言う運びになった。山下さんはこれ一杯で、お酒はドクターストップとのこと。「いやー心配かけてすいません。1週間ほど入院はしたんですが、至って良好。新聞に何かのはずみで載ってしまい、大事になってしまったんですよ...」と語る山下洋輔さんは至って元気で、その健在振りをアピール。確かにいつもの山下氏と少しも変わらず、相変わらず洒脱でダンディーな優男である。

 この山下氏と吉田氏、実は名門私立校、麻生中・高校のなんと同級生。吉田氏もこの学園出身らしく家系も立派な良い所のお坊ちゃんで、彼もダンディーそのもの。それに対しぼくも村松氏も、都会の田舎者と言った感じで大分分が悪い。この夜も飲めない2人を置いて、ビール、紹興酒などを勝手に飲み干す次第。そういえば吉田氏がラジオたんぱの社長になった時(日経新聞本社から移籍)、「山下君はぼくの麻布学園の同級生なんで、何か番組企画出来ないかね...」と相談を受け、まず実現したのが、茅場町にある東京証券取引所でのライブ演奏会。12月30日の取引=大納会が終了し、最後の鐘が鳴り終わると同時に山下トリオの演奏が始まると言う、取引所としては初の試み。企画を持参すると先方の広報も直ぐに了解、実施しようと言うことになったのだが、問題はコンサート型グランドピアノの搬入。あんな重いものを入れると取引所の床が抜けるのでは...、またピアノ搬入で施設の様々を傷つけるのでは...などと難問山積。これらの問題を一つ一つ解決して行き、ライブ実現を成功に導いたのは、ひとえに事務所社長の村松氏と現在「台湾特番」を一緒にやっている、コーディネイター(当時はラジオたんぱ社員)のM女史、この2人の努力の賜物。前日の真夜中に全てのセッティングが終了、どうにかライブ実現まで辿り着いた時の翌朝はかなりな感激だった。当日の山下トリオの爆発具合いももの凄く、今もって結構な語り草になっているとも聞く。初もの好きの山下氏も勿論このイベントには大満足。全てが目出度し々だった。
 そしてその1か月ほど後には、1時間の山下スペシャルトーク番組もスタート。これは山下氏の多彩な人脈を生かした対談番組。初回のゲストが森田一義ことタモリ、その他筒井康隆、赤塚不二夫、坂田明など実に多士済々な面々が登場、知的な面白トークを繰り広げる番組で、ある雑誌の山下洋輔特集号では、綾戸智恵登場の回がそのままその雑誌に収録されたりもしたものだった。


 ところでぼくと山下トリオ(学生時代からファンではあったが...)との縁は40年近く前。当時たんぱの恒例企画だった、3時間になんなんとする正月特番で、タモリや研ナオコなどをメインに様々なゲストが集結する、阿鼻叫喚の面白特番を3年ほど連続でやっていたが、そのとき必ずお呼びしたのが山下さんの激烈・山下トリオ。アルトは坂田明、ドラムは後輩の小山彰太だったはず。タモリの正月特番では、先日軽井沢の陸橋から事故死(?)してしまった、何かとお騒がせな日本舞踊家、花柳幻舟も飛び入りで参加、山下トリオをバックに即興の日本舞踊を披露、実に知的にして破廉恥・馬鹿げた特番で、まあ良くやっていたものでもある。

 
 宴席では山下、吉田両氏と、アワビなどの高級食材をほおばりながら、タモリや高平哲郎、中村誠一などかつてのお仲間の噂話、吉田氏がコーディネイトとした日本人初の北アフリカ、チュニジアジャズ演奏旅行の話等々、1時間半ほど実に愉しい時間を過ごさせてもらった。山下氏の活動再開はどうやら4月下旬ごろからのようだが、自身は実に意気軒高、色々なことをやりたいと語ってくれた。会話の中でラグビーの話も飛び出し、山下氏は結構ラグビーも好き、とのことでそうであれば今年のワールドカップ、全国どこかのラグビースタジアムで、山下洋輔のピアノソロによる、国歌演奏が出来ないものか...などと言う話まで飛び出し、ぼくがラグビー協会にサウンドする羽目になってしまった。果たして神聖なグランドに、ピアノなどを搬入していいものか...。など様々な問題ありだが、一応協会に話はしてみようかな...とも思っています。何せ天下の山下洋輔のお声掛かりなんですから...。

【今週の番組ゲスト:ベーシストの井上陽介さん】
1月リリースの新譜『NEW STORIES』から
M1Stella by Starlight
M2
Love Walked In
M3
The Way You Look Tonight
M4
Teen Town

3月2日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2019/03/01(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜23:00~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.451~春が来る】

 3月がスタートした。いよいよ春の到来である。米朝会談決裂、安倍内閣の統計隠蔽などなにかと騒がしい世の中だが、春は確実に訪れるのである。と言ってもこんなチャンジー=爺さんになってしまうと、若い頃に比べ格別この季節良いこともないのだが、何か心が浮き立つのだから不思議なものである。

 
ぼくはいま軽井沢の眼科に3か月に一度通院、老化に伴っての白内障の恐れ...などと女医さんから脅され、手術も勧められているのだが何とか回避。しかし冬の時期に軽井沢迄行くのは大変なのだが、今月末がまたその時期。但しこれもどんどん春めいてくると、感じは大分変って来る。軽井沢の町は通年で定点カメラを設置、町の交通状況や雪の状態がチェック出来て大変に便利、ぼくも時々その定点カメラで北國街道沿いの追分の街の様子を見ているのだが、今年は東京で雪が僅かに積もった時にも、現地はまるでその様子もなく通行も平常、全く信じられない落ち着き具合なのである。こんなならば水止めなどしなければ...、等とも思ってしまうだがそれが素人の浅はかさ。一度気温がグーンと冷え込むとすぐに水道管の破裂などと言う最悪状態に陥り、にっちもさっちも行かなくなる。かつて数度こうした経験があるだけに、水止めだけは厳格にしているのだが、こんな雪も無い状態を見ると、今年は3月末の病院診療の時には管理会社に頼んで水を通してもらい、山荘を使えるようにしてもらおうなどと考えてしまう。そうでないと眼科診療に通うためだけに新幹線代と小諸か佐久のホテル宿泊料がかかってしまい、予想外の出費になってしまうのだ。これはチャンジーの身としてはかなりつらい。しかし確実な事にもう春なのである。

 ところでこの春=スプリングの到来を歌った、ジャズのスタンダードソングはかなり数多く、それも殆どが希望に満ちたもの...と思えばさに非ず。アメリカ北部のNYやボストン、シカゴなどと言ったジャズに関連深い大都市では、春が来ることは間違いなく大きな喜びなのだろうし、その訪れは嬉しいことに違いないのだが...。日本でも春の到来を端的に告げるのは桜の開花。これを歌ったポップスはいずれもが名曲揃いで、かなりなヒットを記録しているのに、ある意味愉しい内容だけではないのと余りか、スタンダードソングも似ている様でもある。


 こうしたスタンダードソングでの春と言えば、まず何を置いても「スプリング・イズ・ヒア」だろう。ジャズピアノの名匠、ビル・エバンス・トリオの『ポートレート・イン・ジャズ』での演奏が秀逸だったが、歌い手ではクリス・コナー、キャロル・スローンと言った名家達の絶唱が印象深い。但しこの歌詞は決して明るい「春礼賛」などと言うものでは無い失恋のトーチソングで、春は来ても恋人がいない為少しも愉しくない...等と歌われている。もう1曲夫婦デュオのジャッキー&ロイやカーメン・マクレー、ダイアン・リーブスなどが唄った「スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モスト」も似たような失恋ソング。どうやらスタンダードの中で描かれた春は、ある意味結構シビアで余り明るいものとは言えない。
 
一方ジャズメンオリジナルでも、いくつか春がテーマになっており、まず最も有名なのは夭逝した天才トランぺッターのクリフォード・ブラウンの「ジョイ・スプリング」。これはタイトル通り春到来の喜びを爆発させた急速調のナンバー。一方同じトランぺッターで「静かなるブルーの人」等と言った形容句付きで語られることも多いケニー・ドーハム。彼には少し哀愁を帯びた「ブルー・スプリング」と言った佳曲もある。

 
いずれにせよジャズの世界でも、春と言った季節は重要なファクターの一つであることは間違いない。ぼくもロートルとは言え、春=スプリングを目一杯愉しもうと今思っている所なんです。 

【今週の番組ゲスト:3年ぶりのご出演nouon(ノウオン)のヴァイブラフォン&マリンバ奏者の山田あずささんとピアニストのケビン・マキューさん】
2ndアルバム『Flow』から
M1Selectness
M2Pigeons
M3Dicks
M4Kebiman Kebumen