12月22日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2018/12/21(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、土曜曜22:00~、日曜22:30~で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.441~弘田三枝子】

 皆様は弘田三枝子と言うシンガー、ご存じだろうか...。50代以上の方ならば当然知っている名前だが、それよりも若い方達は誰その人...、そのおばちゃん...、となるかも知れない。ぼくと丁度同世代の歌い手、と言うことはもう相当のチャンバー(ばばあ)シンガーと言うことになるのだが、10代初め頃にデビュー。デビュー作はたしか洋楽カバーの「子供じゃないの」。以降も「ヴァケーション」など数々の和製ポップスを豪放に唄いヒットを飛ばし、和製RB娘などと言う愛称もあった。その後一時ヒットに恵まれなかったが、「人形の家」で歌謡ポップス路線にチェンジ、この曲は大ヒットし(山本嬢もカラオケ愛唱歌だと言う)紅白歌合戦などにも出場。一方愛人問題、整形疑惑等々様々なスキャンダルもあり、スキャンダルシンガーとしても色々と週刊誌を賑わせたりもした。

 その彼女、子供の頃(小学生)には立川などにあった米軍キャンプでジャズを歌い(当時はジャズとポップスの区分けが余り無かった)歌の巧い女の子がいると大評判になり、それを聞きつけたレコード会社にスカウトされデビュー、以降はポップス・歌謡曲の世界に入っていく訳だが、元々の原点はジャズ。意外に知られていないがジャズのアルバムも6~7枚出しており、現在もクラブでジャズを歌うことも多い様だ。そんな彼女が久しぶりにピアノトリオをバックに、ジャズアルバムを録音した...と言う話を、その当のピアニストの人から聞かされた。寺井尚子グループのピアニストとして高い人気を誇る彼とは、かつて久々のリーダーアルバムをプロデュースさせてもらった(ミュージックペンクラブ最優秀ジャズ賞を獲得した『アローン&トゥギャザー』)、結構親しい仲で時々会うことがある北島直樹さん。数々のスキャンダル話などもあり、結構ヤバイ人と言った印象もある彼女だが、北島氏に言わせると実にピュアな良い女性とのことで、アルバムも結構いい仕上がりだと言う。
 となればスタジオにぜひ遊びに来て欲しいと...オファーを出し、コンタクトに成功。「喜んでスタジオにお伺いしますよ」と快諾を得る。北島直樹トリオをバックにしたそのアルバムのタイトルは「イズント・イット・ロマンティック」。ジャズスタンダード集だが、スキャットも縦横に飛ばしまくり実に快調そのもの。その上最近のジャズシンガーの様な変な虚飾やフェイクも無く、実に素直に歌い綴っている。それだけにどんな話が聞けるのか...、いささかの怖さも混じりながら興味津々。

 スタジオにやってきた彼女、いささか風邪気味の様でマスク姿ではあったが、中々にチャーミングな女性。その上アルバムのプロデューサーはその少し前に行われた新宿「J」の40周年記念パーティーでぼくを見掛け、暮れに放送の「J」特番収録中のぼくの仕事振りに感心していました...などと嬉しいことを言ってくれる。持ち上げられればすぐに良い気持ちになってしまうぼくと、山本嬢もカラオケでは「人形の家」良く歌いますよと...、弘田三枝子女史をヨイショし、彼女から気に入られると、収録は終始和やかなムード。「わたし実はジャズが原点だと言うこと、殆どの人が知らないの、実に寂しんです...」等と言われると、じゃ一つお手伝いを...などと余計なお節介まで焼きたくなってしまう程、一見いたいけ可憐風な人でもありました。しかしその歌はストレートで堂々としており、変な飾りも無く実に気持ち良い。ヒットが出ない時期にはアメリカでも暮らしていたと言うだけに、英語の発音もかなりなもの。アルバムのラストは日本語で淡々と歌われる「星に願いを」、1曲目はこの曲の英語バージョン。この双方を聴き比べるのも中々に乙なもの。歌の巧さに驚かされる1枚です。

 収録終わりに「これからわたし千葉の富津迄長距離バスで帰るんですけど...」とつぶやかれ、それは大変と...入らぬ心配もしてしまった。今は富津住まいで仕事の時には東京湾を横断、仕事場に向かうのだと言う。「かなり近いんですが、台風など何かあった時が大変なの...」そうでしょう、そうでしょう、かつて色々な意味で大きくスポットが当たっていたこの人が、千葉の富津でひっそりと暮らす。これもまた一つの乙なジャズ人生なんですね。

【今週の番組ゲスト:歌手の弘田三枝子さん、プロデューサーのdoLuck Jazz平井清貴さん】
弘田三枝子さんの新譜「Isn't It Romantic?」から

M1sn't It Romantic?
M2One Note Samba
M3The Things We Did Last Summer
M4「星に願いを」