3月10日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2018/03/09(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.400~奄美大島】

  念願の奄美大島に2月末に行ってきた。わずか3日間の小トリップで当然の格安ツアー。但しこの島への飛行機便は、羽田からは1日往復僅か1便で、それも行きが12時発、帰りは現地発15時と言うことで、3日と言っても実質は1日半ほどの旅。時間の無駄な所もあるが何せ初めてのこと、まあ仕方ない。同じヤポネシア(奄美から沖縄に通じる南方の琉球島群の呼称)の沖縄には、これまで10数回足を運び(娘も沖縄で結婚式を挙げた)かなりな沖縄通を自負しているのだが、奄美大島は一度も訪れたことが無い。東洋のガラパゴスなどとも呼ばれ美しい自然・風土が残されているこの島、知り合いからも是非一度は訪れるべきと言われ続けて来て、この年令になってようやく訪れることが出来た。ぼくは見ていないのだが、NHKの大河ドラマの舞台にもなっていることもあり団体客の人気も高く、宿取りなど結構苦労したがどうにか確保、今回長年の念願の一部を叶えることが叶った次第。

 この奄美大島と言う島、これ迄何回も訪れている沖縄本島以上にぼくの興味・関心を引く風土・人物などが多い。まずは自然。その手つかずの森林植生や天然記念物の奄美黒ウサギ、瑠璃色の鳥ルリカケス、そして琉球アユ等、太古から続くこの地の固有種。それらが亜熱帯と温帯が絶妙に混じり合うこの島に息づき、かなり良く保全されていること(自然遺産登録を目指しているとのこと)。それ以上に作家の島尾敏雄・ミホ夫妻の出会いの地、日本画家田中一村がこの地で少なからぬ傑作をものした終焉の地、そして「ワダツミの木」などのヒットを持つ、独特な個性の輝きを放つ天才歌手、元ちとせの生まれ育った地(南端の瀬戸内町の出身、現在も拠点は島にあると聞く)、更にぼくの敬愛する人類学者でジャズ大好き人間の今福龍太が、10年ほど前から奄美自由大学を創立、現在まで継続し続けている魅力ある地など、文化的にもぼくの五感を痛く刺激する大変に興味深い島でもあるのだ。

 まずは作家の島尾敏雄だが、彼は今でこそ余り話題に上がることも無くなってしまったが、戦後文学を代表する偉大な一人。彼の戦記恋愛小説(「出発はついに訪れず」等)は学生特攻隊隊長としてこの奄美の南に接する加計呂麻島に派遣された彼と、島の族長の娘ミホとの切なくも美しい恋愛を描いた日本屈指の恋愛小説で、以前隔月でラジオ・ドラマを作っていた頃、ぼくの作った中でも最も出来栄えの良い自信作がこの「出発...」でもあった。同じ恋愛をミホの側から描いた、小説「海辺の生と死」は映画化され好評を博し、今DVDにもなっているので皆様も是非一度ご覧になってみては...。島尾はまた奄美に初めての公立図書館を作り、そこの初代館長としても活躍し地元にも貢献した人だが、残念ながら余り現地ではその名前を聞かないようだ。一方田中一村の方は、生涯孤高を通し50才を過ぎて移住した奄美大島でひっそりと亡くなった日本画家だが、その死後に作品がNHKの美術番組で紹介され大反響を集め、その極彩色で大胆な南洋風景は、全国的な人気を博し一躍奄美を代表する一人となった。数年前には彼の美術記念館も空港近くに作られており、今回は真っ先にそこに見に行ったが、30年ほど前に最初に横浜の高島屋で見た大々的な展覧会の印象が強烈すぎて、今回は作品の少ないことなどもありイマイチ感動には乏しかった。元ちとせはその生家の集落にも足を運んだが、ここが実に山深い海辺の集落で大苦労して到着、こんなのどやかだが山で隔絶された海浜集落から、良くあんな天才少女が...と思わせる場所で、かなり感動してしまった。
 島は沖縄よりも少し狭いぐらいだが、何せ道路事情が悪い。北の端にある空港から中心街の名瀬を通り、南端の瀬戸内町まで、南北に結ぶ国道R58一本しかなく、北から南端まで約2時間半余り、その殆どが山越えと言う過酷な環境で海際の集落同士を結ぶ道路はほとんど無い。一昔前までは隣の集落まで歩いていくよりも、船の方が便利だったなどと言う場所も多い。更にこの地には沖縄以上に魅力のある「島唄」があり、元ちとせは島のコンテストで優勝その力量を認められることになった。こうした奄美大島の島唄は、ある意味隔絶した集落を結ぶブルースソングだったようでもあるが、それぞれの集落は実に美しく印象的。

 
今回は「金作原」と言う山深い奄美最大の原生林が、自家用車の乗り入れ禁止と言うことで行くこと叶わず大変に残念な思いをしたが、次回はこの原生林と神が降臨したとされる奄美の最高峰、湯湾岳(遠目にも実に美しい森の山で、沖縄や八丈等離島の最高峰に登って来たぼくとしては是非...)、この2つの探訪を誓って奄美大島を後にした。短いながらもそれなりに極楽の島奄美を走り切り堪能した意義深い旅行でした。

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の杉田宏樹さん

昨年12月にオープンした新しいジャズサイト『PJ  PORTRAIT IN JAZZ

https://pjportraitinjazz.com/ Author

M1East Of The Sun / Steve Nelson
M2Sleepwalker / Maciej Obara
M3On Green Dolphin Street / Miles Davis
M4Let The Music Play / U-Nam
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