2月10日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報] [テイスト・オブ・ジャズ]
2018/02/09(金) 19:00
「テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.396~ユージン・スミスと安部克自のジャズ】

 ユージン・スミスと言う素晴らしい写真家がいる。写真史上最も偉大なドキュメンタリー写真家と称えられ、あの水俣を世界の「ミナマタ」として関心を向けさせ、同地で亡くなった(筈の)反骨の芸術家&思想家。その彼の生誕100周年(没後40年弱になる)と言うことで、恵比寿の東京都写真美術館で回顧展が開かれている。ぼく自身は写真にそう興味ある訳でないが、近くの渋谷でジャズ関連の会合があり時間が空いていること、また写真美術館も未だ機会が無く訪れていない...などもあり、丁度いい機会とユージン・スミス展を見ることにした。局員時代は良く訪れていた恵比寿ガーデンプレイスも本当に久しぶり、写真美術館にはいささか迷いながらもどうにか到着、ここは全部で展示室が3つもあり見やすい立派な写真美術館だった。

 今回はアメリカのある大学の所有する彼のオリジナルプリントが全部で150点余り。その写真家人生を10に分け、それぞれの時代の秀逸なモノクロ作品が展示されており、この硬骨にして反骨、底辺の人達に寄り添う正義漢、真実を見通す眼を有したこの稀有なドキュメンタリストの全貌が過不足なく捉えられている。
 展覧会でまず驚かされたのは、彼が日系アメリカ人写真家の作品に強く惹かれ写真家を志したというエピソード。それだけに日本に愛着を有するこの写真家は、太平洋戦争に派遣され硫黄島などでの日本の民間人の姿、そして戦後はあの一大コンツェルン「日立」の全貌を捉える写真も撮り、最後に工業化の悲惨な結末とも言える水俣病の患者の人達に至るという写真人生を描くことになる。彼はライフと言う世界的な写真雑誌を舞台に活躍した訳だが、常に雑誌の商業主義とも戦わなければならなかったし、その軋轢や苦悩もその写真から何となく読み取ることも出来そうな気もする。そしてライフで評判になったのが、あのアフリカでのシュバイツァー博士に密着したドキュメント、アパラチアの
炭鉱夫の生活記録などで、それらはどれもが見るものに生々しく迫って来る。特に水俣病の患者さん(女の子が多い)への限りなく優しい眼差し、そして原因となったチッソへの怒りと告発、このアンビヴァレンツな起伏多い感情が、凄くも素晴らしく心打たれる。

 こうした「ミナマタ」をはじめとする一連の社会派としての視線の中に混じり、彼が一時居としたNYヴィレッジでの何気ない写真もあり、これにも心惹かれた。時は60年代初頭、即ちジャズ全盛時代だけにジャズメンのポートレートも何枚かあるのだが、特にあの『マイ・ネーム・イズ・アルバート・アイラ―』『ゴースト』など、一連の欧州遠征での傑作アルバムで評判を集め、これから本場NYでの活動を...と意気込んでいる、彼の横顔が暗い画面の中に捉えられているポートレートは、大変印象深いものだし素晴らしい一枚で、なんとも心打たれた。彼とアルバート・アイラ―、予想外の結びつきだし日本のジャズ関係者の殆どが知らない筈で、これを見ただけでもこの展覧会大変に得した気分になった。

 そう言えばジャズ・ポートレート展と言えば、ぼくが最も敬愛しお世話になった先輩の一人、故阿部克自さんの回顧展も銀座の画廊で開かれており(2月中旬まで)、友人数人と見に行ったがこれも懐かしいものばかり。日本では今イチその存在を知られていないアベちゃんだがアメリカジャズ界では超有名人で、彼ならばと喜んで写真に応じるプレーヤー、シンガーも数多く、今回の写真展や出版社から貰った写真集にも数多くのジャズ・プレーヤー。シンガーが登場している。何せ彼はミルト・ヒントン賞という権威ある写真賞を獲得した唯一の日本人で、またその写真はアメリカでジャズ記念切手シリーズの一枚(デューク・エリントンのもの)に使われている程なのだから...。
 
ユージン・スミス、安部克自という今は亡きジャズをこよなく愛したこの素適な写真家達の偉業に乾杯!

【今週の番組ゲスト:話題の美人デュオ『村田中(むらたなか)』のトランペッター村田千紘さん】
1st
アルバム「selfie」から
M1
slow life
M2I'm getting sentimental over you
M3「Never Let Me Go」
M4
Smile