12月30日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/12/29(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.390~2017年振り返り】

 なんやかんやで2017年も慌ただしく過ぎつつあり、もう本当にドン詰まりを迎えてしまった。今年我が国最大の危機・災難は、追いつめられ沈没間近かと思われた宰相・安倍が、民主(リベラルとも呼ぶ)陣営の乱れなど信じがたい敵失で息を吹き返し勝利を収め、かえって自信を深めその為に日本はますま奈落の底に引きずり込まれつつあること。更にこの世界を差配しているのが、トランプ、プーチン、金正日と言った悪のトライアングルで、そのトランプとプーチンにすり寄ろうとしているのが安倍と言う、最悪な構図も露呈してしまった。果たして来年はどうなるのか気が気でならない...。

 
翻って自分自身では、何と言っても3月末の伊豆山奥での交通事故遭遇。ほぼ正面衝突と言う最悪の事態だったが、生来の悪運の強さも味方してか、入院などと言う最悪ケースは避けられたが、どうも首廻りが変で首が回りにくい状況にもある。周りからは後遺症などと脅かされるが、そんなことはと...開き直ってのうのうと生き抜くしかない。

 
さて今年もまた年末のこの時期、ジャズこの1年を振り返ってベストアルバムを...などと雑誌社などから頼まれる。番組でも青木和富氏にこの1年を振り返って、印象的アルバムをいくつか紹介してもらった。そのラインアップについては別項で紹介されているはずだが、ここで面白いのはペコさん(伊藤君子)が唄う美空ひばりナンバー集からの1曲。
 
小豆島出身のペコさんはひばりに憧れ歌手を目指した人で、デビュー当時はポップス歌手でひばりナンバーも歌っていたはず。それがジャズに目覚め一躍進路をジャズに変更、長年の研鑽の末に第一人者の栄冠を勝ち得るようになった、まさに努力の人でもある。今やトップ・ジャズ・シンガーであるその彼女が、自身の原点であるひばりの持ち歌を歌う。これはかなり面白い企画で、彼女自身の提案で実現したものと思われる。そして純生ジャズとして青木氏が上げた一作がチャールス・ロイドの最新アルバム。ジャズレジェンドとも言えるロイドは各方面で高い評価を得ているが、ぼく自身は彼のテナー(ソプラノサックスも)プレーを昔から余り評価していないだけに、ここでのプレーも今イチ乗れなかった。だがキース・ジャレットやジャック・ディジョネットなどを擁した、あの黄金期のユニットに匹敵するものと、彼自身も自信を持つこのニューユニット。彼以外の面々は確かに素晴らしい出来栄えであるし、今年のジャズアルバムでも最も高く評価されるべきものと音を聴いて確信した。

 
ぼく自身の今年のマン・オブ・ザ・イヤーはサダオさん(渡辺貞夫)で決まりだと信じており、サダオさんには当番組来年初っ端の出演をお願いしたのだが、スケジュールの具合で実現ならず大変に残念な思いで一杯。サダオさんは俊才を従えた「リバップ」とバッハに果敢に挑戦した「プレイズ・バッハ」と言う2枚のアルバムをこの秋に発表、その充実ぶりをファンにアピールしてくれた。本来ならばこの2枚で今年は決まりなのだが、ぼくが選んだのは大好きなラテンジャズの分野から...。今注目の若手ベーシスト、カルロス・エンリケスの『ザ・ブロンクス・ピラミッド』と言う余り知られていない傑作。2管編成で実に生きのいいラテン&ネオバップジャズが全編に展開されており、あの60~70年代のジャズの良き時代の熱気を、ラテンジャズと言うフィルターを通して再提示した様な実に格好良い作品で、皆さんも是非聴いてみたら...と思う。この分野ではほかに大御所エディー・パルミエリや注目の新鋭アレックス・トスカの秀盤など心に残るものも多かった1年だった。

 
そして先週のこのコラムでも紹介したように、来年の「テイスト・オブ・ジャズ」なのだがこれがなかなかのラインアップになっている。ラジコのタイムフリー聴取調査で全国4位と言う意外な好結果に心良くして大物をブッキング。まず正月最初のゲストはサダオさんに変わり、同じ渡辺姓のビッグスターにしてギターレジェンド、渡辺香津美、そして2週目は怒れる実力派美女、大西順子女史。順子はなんと20数年振りの番組登場である。香津美、順子この並びは凄いと密かに自賛してしまう。
 まあ来年も「テイスト・オブ・ジャズ」よろしくお付き合いの程を...。


【今週の番組ゲスト:音楽評論家の青木和富さん】
「ジャズトーク」青木的今年のアルバム五選をご紹介いただきました。
M1「恋人よ我に帰れ / 伊藤君子」
  『Kimilo sings HIBAI〜伊藤君子、美空ひばりを歌う』
M2Passin'Thru / Chars Lloyd New Quartet
  『Passin'Thru
M3Dear Family / 桑原あい 石若駿」
  『Dear Family
M4Don't Think Twice It's Alright   / Chris Thile Brad Mehldau
  『Chris Thile Brad Mehldau
M5
Broken Leg  Days  / Brian Blade &Fellowship Band
  『Body And Shadow



12月23日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/12/22(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.389~私こそ、音楽】

 クリスマスなのでいつもならば「ジャズとクリスマス」と言う話題になるのだが、今回はちょっと趣を変える。先日ようやく見たい々と前から切望していたドキュメンタリー映画を見たのでそのことを...。元々ものぐさだけに、熱心に誘ってくれる人がいないとコンサートなどもスルーしてしまい、結構失敗を重ねるタイプだけに、この映画も見る機会を逸していた。映画は数年前公開で、ドキュメンタリーものとしては珍しくスマッシュヒット、全国でも上映され結構話題になった。邦題サブタイトルが「私こそ音楽」。なんともの凄いと言うか...自信過剰気味のもので、普通だったらすぐ鑑賞をスルーしてしまうのだが、この人のドキュメントならさもありなんという感じで、まさに天才なのである。その人の名はマルタ・アルゲリッチ。
 
クラシックでは辺境の一国とも言えるアルゼンチンの出身で実に魅力的な美女、超の付く実力派だけに人気も絶大、意思強固で奔放な生き方を誇る根っからの自由人。離婚も数回で大のインタビュー嫌い、その私生活は謎に包まれている...と来れば、ドキュメンタリー映画が話題を呼ぶのもある意味当然のこと。

 
実をいうとぼくは仕事柄好きなピアニストは...と聞かれれば、キース・ジャレット、ブラッド・メルドー、ジョン・ルイスなどとジャズピアニストの名前を上げる訳だが、「孤島の1枚(孤島に帯同したい唯一のアルバム)」とか「いまわの1枚(死ぬ直前に聞きたい1枚)」などと言う究極のアルバム選定~と言うことは最も愛しているピアニストと言う意味合いでもあるのだが...、グレン・グールドとアルゲリッチと言うクラシック界の天才2人と言うことになる。この2人の達人はそのピアノスタイルからして大違いで、理知派の代表格、グールドが極端に遅いスピードでバッハなどを弾き綴るのに対し、アルゲリッチはその奔放さを反映してか、実にスピード感溢れる急速調テンポで弾き込むのである。グールドが音楽コンクールなどは一切無視するのに対し、アルゲリッチはショパンコンクールで名を挙げ、その他のコンクールにも度々顔を出している。しかしこの天才達にも当然共通点はあり、互いに人嫌いでインタビューなども殆ど受けない。それだけに彼女の内面に食い込んだドキュメンタリー映画は、かなり興味深く音楽ファンにも捉えられた筈なのである。
 このフィルムの監督・撮影はステファーニ・アルゲリッチ。名前からも分かるように彼女の3女。上の2人も女性でそれぞれに父親は違う。マルタが最も可愛がっていたのがこのステファーニだけに、世界中のコンサートに同行、その舞台裏も廻しており、インタビューなどもそれと感じさせない程に自然で突っ込みも鋭い。彼女自身も何でも聞かれることを許しており、ここら辺がこのドキュメンタリーの出色なところ。気が向かないとすぐに公演キャンセルなども行うことでマルタは有名だが、そこら辺の心の揺れも見事なほど容赦なく捉えられているし、かつてのあの美女の70代後半の老女になっての信じがたいほど容貌の衰え、これにも容赦ない。
 
何せ映画のスタートがパリかローザンヌか...、ヨーロッパのどこかの都市に佇む醜く太ったホームレスに見まがう老女(こんな人上野近辺でも見かける)、顔を見てもまさかこれがあのアルゲリッチとは思えなかったが、話が進むにつれなんとも魅力的な老女に変わって来る。演奏会、コンクール、付き合った男、それぞれに親の違う娘達、アルゼンチンの両親(母親は東欧移民のユダヤ系)など、彼女のモノローグが続き、その中に現在のピアノの練習やコンサート風景、ショパンコンクール当時の全盛期の模様など、フィルムもインサートされそれらについての彼女のコメントも興味深い。また彼女はあのぼくの大好きな温泉町、別府市で国際アルゲリッチ音楽祭を主催したことがある。それはもう数十年になっている筈で、以前別府に立ち寄った折が偶然その開催時、そこで音楽祭を聴いたこともある(と言っても彼女が弾いていた訳では無かったが...)。彼女の長女は中国系でヴァイオリン奏者だが、母親とは別れて育ち大変苦労もしたらしい。その辺の事情も判明し興味津々だし、また彼女はショパンコンクールの審査員として、あの天才ポゴレリッティが選ばれなかった時、憤然として審査員席を立ち抗議した、そのエピソードも筋を通す女性として忘れ難い。

 
そうした個人的事情・逸話だけでなく、いずれにしろ本当に凄いスケールの魅力たっぷりな稀有の女性音楽家で、改めてその素晴らしさに感銘を受ける。帰宅するや再度ぼくの一番好きな彼女のバッハのピアノ曲集アルバムをむさぼり聴いた。言うことなしのまさに天界の音楽だった。

 
アルゲリッチ映画に続いては、少し番組情報を...。来年のテイスト・オブ・ジャズ、新年の初回は、ジャズギターの...と言うよりも日本ギター界のレジェンドである渡辺香津美が登場。新しい年の抱負を披露、続いては日本ジャズシーン異端の実力派美女、折り紙付きの実力派ながら、その言動が何かと話題を集める大西順子等々、大御所や話題の新人の出演が次々と続きます。他局には無い豪華な面々。乞うご期待です!なお12月23日の番組は本放送が22:00-22:30になります。
【今週の番組ゲスト:JAZZバイオリニストの牧山純子さん】
先月リリースの『ルチア〜スロベニア組曲』をご紹介。
12月16日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/12/15(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.388~NYの売れっ子 中村恭士】

 本当は今回のコラム先週載せるべきだったものなのだが、種々の事情もあり今週掲載となった。今回の主役はベーシストの中村恭士。NY在住で今や当地でも有数の売れっ子、いわゆるファーストコールベーシストである。
その彼の本放送は先週(今も再放送分は流れている)、それが今回掲載になったのは彼の放送日が先週か今週か、放送前日まで決まらなかった為なのである。
 ちょうど今、彼は何回目かの全国凱旋ツアーを実施、短くも慌ただしいツアーが終わるとまたすぐにNYに戻ってギグが待っていると言う。その彼の録音を実施したのは帰国当日の金曜日(本放送の前日)の昼間。彼は大きなスーツケースを引っ張ってスタジオに恐縮そうに登場したのだが、もし何かのトラブルがあればオンエアーに穴が開いて、またまた始末書という訳。その上彼としてはツアーの予定も是非入れこんで欲しいとのことで、こちらもそれに最大限協力を...と言うことで、ぎりぎりまでスケジュールを決められなかったと言う次第なのだが、スタジオに来た彼によると全国ツアーのほとんどのチケットは、もうソールドアウトになってしまったとのことで、その人気の程も分かろうと言うもの。

 
まあそんな彼だが最初にも書いたように、ギグ(仕事)は引く手あまたで、ジャズだけでなくロックやブルースのプレーヤー等との仕事も多いようである。彼は名門バークリー音楽院とジュリアード音楽大学の双方を卒業したと言う音楽界のエリートでもあるのだが、寺久保エリナや北川潔などと言ったアメリカ留学組で、現在も現地に残って活躍している面々とはいささか事情が違う。と言うのも彼は小学校の低学年頃から父親の仕事の関係で渡米(最初はアラスカにいたと言う)、小学校から高校までシアトル地域でほぼアメリカ人同様な生活。しかし日本語も普通にできるのはある意味凄いこと。ある渡米ミュージシャンなどは7&8年のNY生活だけなのに、もう日本語がおぼつかない状態だったが(Hと言う有名プレーヤーで、NYで話した時はびっくりさせられた)、実際子供時代に日本を離れるとそうした状況になってしまう場合もしばしば。それだけに中村君は素晴らしいと思ったものなのだ。

 力強いサポートで演奏の底部を支え、若さに似ず堅実さも誇る実力派の彼は、レジェンドとも呼ばれるジャズ大物からコンテンポラリープレーヤー、そしてロックやポップス迄様々なレコーディングやライブに呼ばれるため、相当に忙しいとこぼしていた。リーダーアルバムはこれまでに2枚発表しており、それは彼がNYでも一緒にやることの多い、ローレンス・フィッシュバーン(p)、クラレンス・ペン(ds)といった俊才とのトリオによるもの。2枚目の『ホームタウン』はこの夏に出されており、今の拠点であるNY生活をスケッチした彼のオリジナル中心で、ジャッケットもNYの街の様子をコンパクトに写した、小洒落なセンスの素敵なイラストもの。5曲目の「FRB」は「フォー・レイ・ブラウン」と言うことで、彼が最も好きで何回もそのプレーに接していた亡き巨匠レイ・ブラウンに捧げられている。ソロでもサポートでもブラウンの様な力強いベースプレーをやり続けたいと彼は語っていたが、これからの研鑽によっては、ブラウンにも並ぶような大きな存在になれる可能性も充分あるに違いない。実に素直で少しの驕りも無い素敵な人物だけに、その未来は期待大だと言えそうである。

【今週の番組ゲスト:ツインミュージック代表の生明恒一郎さん】
NOGUCHI AKANE PianoTrio meets ERIC MARIENTHAL LIVE at AKASAKA Bb,TOKYO』から3曲お届けします。
M1「雨のち晴れ」
M2「La Fiesta
M3「Mercy, Mercy, Mercy


12月9日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/12/08(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.387~信濃追分初冬模様】

 11月の末に4日ほど追分の山荘にいた。恒例の冬支度~水抜き仕事の他、今回は御代田町の総合病院での眼科検査もあり、止むを得ずと言った感じの山荘行だった。眼科検査と言うのは今年の夏の山荘滞在中、目に出来物が...と言うことで御代田の総合病院に見てもらいに行った折、その出来ものだけでなく様々な検査を実施、その結果医師から眼圧が高いことを告げられ緑内障の恐れもあるから...と、検査を続けるようにとのお達し。そこで9月と11月の2回検査に通った次第。山荘から車で10分ほどのこの総合病院は、最後寝たきりになってしまった母親を看取った病院であり何かと関係も深く、こと眼科に関しては東信地区随一との評判で、患者数も他科に比べ異様なほど多い。まあ様々な検査をしてくれるのは嬉しいのだが、山荘が水止めで使えなくなってしまうと、病院まで通うのも近所の病院とは違い、時間・費用共に大変で、どうしようかと思案していたが、医者からはまた来年1月の来院を告げられ、不承不承OKしてしまった。全く気の弱い男だと今回もつくづく反省した次第。


 そんなこんなで一日は病院通いの為、終日つぶれてしまいもう一日は水止め作業と、追分に来ても余り暇もなく余暇の愉しみも少なかった。残りは温泉場巡りと体に良い温泉水汲みに上田市の郊外まで出張った位。天候は訪れた日が雨から雪、そして晴れと目まぐるしく変わり、雪の状態は全くの吹雪だったが、それが止み雲が流れ去ってしまうとまたたく間に晴れと、目まぐるしくもダイナミックな変わりよう。流石信濃の山間地である。

 
 ところでこの時期の追分は、もうすっかり葉っぱも落ちてしまい、実に閑散として寒々とした景色が広がるが、観光客はほとんどおらず道や店もスカスカ。それだけにぼくなどはその寂寥感が仲々に好きなのだが、山荘のテラスには落ち葉が厚く積もり、それをどけるだけでも一苦労。ただ葉が落ちてしまった林の先に、何時もは全く見えないお山(浅間山)のてっぺんまで望め、その噴煙までも...と言うところが、この寒い時期の最良点。

 さてこんな時こそCD整理を...と思ったのだが、肝心のCDデッキが故障で残すべきアルバムと捨てるもの(一応聴いてから捨てるかを決めるので...)を決められない為、その作業も中止、時間も余ったので凍てつく感じもある御影用水脇を歩き、今年最後の挨拶を兼ね、平井さんの「カフェグルマン」に向かう。流石にこの時期、歩いている人も犬もいない。少し前に何気無くカフェグルマンのホームページを覗くと、「今年は12月半ばまでの営業で、後は4月半ばまで休業、少し形態を変えた形で再開するので、楽しみに待っていてください...」とある。まあどんなことを考えているのか...、そこら辺も確かめたくてお店に伺いたかったのだ。
 店に着くと広くてお山が一望出来る、自慢のテラスは材料や用具で溢れており、その中で大工さんのような人が作業に励んでいる。一時作業を中断してこちらを向くと、なんと平井さんご自身だった。まさに熟達のカーペンターである。カフェグルマンのテラスドームを一人で、3年以上かけて作り上げた素人職人の平井さんは、いままた新たなリフォーム作業に取り組んでいる。それも来年4月半ばの再開までに仕上げないとならない作業に没頭している最中。プラモデルのキット一つ組み立てられないぼくとしては、このリフォームを一人でやってしまう能力・腕力、眩しい限りである。どうやらお店が4月までお休みと言うのは、料理を作る娘さんが12月半ばからスキー場で知られる奥志賀高原の新設ペンションで、スキーシーズンだけ料理を手伝うための措置だと言う。その間平井さんは単身お店のリフォームに励み、新たなお店に仕上げる計画なのである。
 そのお店とはまだ一般には秘密なようだが、カフェだけでなく、もう一つ違う業種のお店を付け加えた形になるとのこと。そのもう一軒も彼一人で短期間のうちにリフォームし、再開&新装にこぎつけようと言うのだから立派すぎる。そのお店の新たな業態についてはここでは言えないが、素晴らしいものになる筈で、完成の暁にはぼくも勝手連としてPRなどで協力させてもらうつもりにしている。そしてその時に山荘の、数多のジャズCDが役に立つならばこれまた嬉しいことである。また来年春の再会を約束して店を後にした。仏語通訳者でもある奥さん、極上のキッシュなどを作る名コック&パティシエの娘さん。そして熟達カーペンターでもある平井さん。10周年を目指してこれからも頑張って欲しいものである。
【今週の番組ゲスト:NY在住のベーシスト中村恭士さん】
2ndアルバム 「HOME TOWN」から

M1Awsome Beef

M2FRB

M3Home Town

M4PP featuring BIG YUKI
image1.jpeg

12月2日の「テイスト・オブ・ジャズ」 [「テイスト・オブ・ジャズ」プログラム情報]
2017/12/01(金) 19:00
テイスト・オブ・ジャズ」は毎週土曜日18:00-18:30(本放送)ほか、各曜日で再放送中。番組進行は山本郁アナウンサー。 番組収録のウラ話はこちらのブログでも紹介されています。

【小西啓一の今日もジャズ日和Vol.386~松山晋也】

 最近のラジオ日経は、モアミュージックレストークを謳い文句にした、「RN2(第2放送の平日)」の登場で終日音楽放送と言う、これまでのたんぱ放送では考えられないプログラミングにより、徐々に音楽局でもあるのだと言う認識が高まりつつあるのだが、その昔の短波での音楽番組は色々と本当に大変だった。まず音が悪い、聞こえない、受信機は...などなど疑問だらけ、その上ノーギャラと来れば、新しいゲストミュージシャンやシンガーが来るたびに色々と質問攻め...。それをどうにかやり過ごしながら50数年ジャズ番組を続けている。今でも局の若手に時々、趣味でやられても...などと嫌味を言われることもあるが、若い頃の上司や先輩からの番組に対する露骨な干渉や嫌味などに比べれば、なんと言うことも無い戯言。かつては本当に番組つぶしに余念のない、嫌味な男までいたのだから...、今は隔世の感である。

 
それにしても50数年、ある意味こんなに長く続けている、続けられているのも、趣味などと言う甘いものではなく、かつてのそうした連中に対する、ぼく自身の執念、怨念のなせる業なのかも知れない。ただ一つ興味深いのは、そんな音楽に全く理解の無い、音楽番外地局だったラジオたんぱから、世間にも名の通った3人の音楽ライターが登場していること。これは音楽を売り物にしている他の中波やFMラジオ局に比べても、誇りにしていいことだと思う。

 ジャズの世界では、はばかりながら小生、そしてサルサを中心とした中南米音楽では、「エルカミナンテ」などと言う愛称を持つ岡本郁夫(大学クラブの後輩でもある)、そしてケルト音楽など渋いワールドミュージックの権威で、かつて「スタジオ・ボイス」の編集長でもあった松山晋也、この3人である。音楽がメインのラジオ局でもディレクターなどから専門のライターが登場することは余り無い。それが3人もと言うのだから...。しかし岡本、松山の2人は音楽軽視の実情に嫌気がさし早々と退社、定年まで勤め上げたのは恥ずかしながら小生一人のみ。まあこれは才能の多寡の問題かもしれ無いが...。

 
さてこの2人のうち、岡本は後輩と言うこともあり今迄も時々番組に顔を出していたが、松山の方は余り機会も無かった。だが今回彼が『ピエール・バルーとサラヴァの時代』(青土社)と言う素敵な音楽本を送り出した。まあ丁度いい機会と言うことで、今回その本持参でスタジオに遊びに来てもらった。バルーと言う人はあの名作「男と女」にも登場する俳優&シンガー(ボサノバ)、フランスを代表するシンガーソングライターにしてプロデューサー、レーベルオーナーなど多彩な顔を持つ才人にして知識人で、「サラヴァ」は彼自身が興したレーベルの名称。自身も、無鉄砲な人生と語るほどの自由人にして、ぼくの大好きなシンガーの一人で、大の親日家で知られ奥さんは日本人。
 
松山くんが古くからの知り合いである彼バルーの本をまとめていると言う話は、大分前から聞いていたのだが一向に出版とならない。どうしたのかと思っていたら、肝心のバルーが2016年に82才で死去。それに慌てたのか彼も永年の懸案だったバルー原稿をまとめ、ようやくこの夏出版の運びになったと言う次第。バルーと親交の深い彼は、個性的な音源の多い「サラヴァ」レーベルのコンピレーションアルバムをこれまでに何枚もてがけており、スタジオではその中からバルーの歌うものなど数曲をかけ、同時に彼の労作本を紹介してもらった。

 ラジオたんぱを退職してからは、今は無き「スタジオ・ボイス」編集長などを歴任、その後ライター稼業に入る。「音楽ライター一本でやっていくのは本当に大変ですよ」と収録後の飲み会で彼はぼやいていたが、まさにその苦労は想像に難くない。でも頑張って欲しいもの。虎ノ門での飲み会の席で「今たんぱ(ラジオ日経)がこんなに音楽をやっている音楽局になっているなんて...。そうならば辞めないで頑張っていれば、もう少しいい夢見られたかも...」などと宣うから、「いやここに至るまでは大変だったんだよ...」と小生も愚痴で返す。まあ2人とも大分オールドボーイ、もう悔やんでも相方無い所ですね。

【今週の番組ゲスト:音楽評論家の松山晋也さん】
松山さん著作の『ピエール・バルーとサラヴァの時代』についてお話し頂きました。
M1Samba Saravah(男と女のサンバ) / Pierre Barouh
M2Cet enfant que je t'avais fait(おまえに産ませた子供) / Brigitte Fontaine & Jacques Higelin
M3Mystifying Mama / Marva Broome & The Art Ensemble Of Chicago
M4 Boule qui roule (出逢いの星) / Pierre Barouh
M5La Nuit Masques(仮面の夜) / Dominique Barouh &  Pierre Barouh